アンドリュー・スコットの「ハムレット」

JUGEMテーマ:エンターテイメント

220617-1

今日あたりからまた涼しくなったけど、1週間ほどやたら暑くて30度前後だった。もっと南の方では40年ぶりの34度を記録。しかも草の花粉がすごい飛んで、アレルギー薬漬けの日々。こういう時にかぎって忙しく、2日続けてロンドンに通わなければならなかった。

さすがに疲れてキレそうになったので、ロンドン2日目の夜に芝居へGO。BBCドラマ「シャーロック」のモリアーティ役が可愛いアンドリュー・スコットの「ハムレット」。Almeida劇場(上のポスター)で好評だったプロダクションをハロルド・ピンタ―劇場で再演しているもの。

『Hamlet』 Harold Pinter Theatre
Director -- Robert Icke
<Cast>
Andrew Scott -- Hamlet
Juliet Stevenson -- Gertrude
Angus Wright -- Claudius 
Jessica Brown Findlay -- Ophelia
David Rintoul -- Ghost/Player King 
Joshua Higgott -- Horatio
Luke Thompson -- Laertes
Peter Wight -- Polonius

 

設定は現代。先王の幽霊は城内監視カメラの映像に登場するし、ノルウェー王の動向やロイヤルファミリーのイベントはテレビで報道される。

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デンマーク王の死後すぐに、その弟が王冠と王妃を引き継いだ!王子ハムレットにとっては叔父が父親になるという異様な事態。家族として表向きには仲良さそうにメディアに対応する3人。それが壁のスクリーンにニュース画面として映し出される。見出しがちゃんとデンマーク語(読めないが)になっていた。

あまりに有名なモリアーティの印象を払拭しなくてはならないアンドリューだが、たいへん良かった。話し方は基本低めでやわらかく、アイリッシュ訛りの巻いたRがセクシー。でも神経過敏ですぐ動揺し、激高して直後にそれを鎮めようとしたりする。発言は穏やかでも手が不安そうに動いていたり、全身をよくコントロールしたパフォーマンス。今まで見たことのないタイプの、感情と思考が内部で錯綜しているハムレット、うまいなーと思った。

アンガス・ライトのクローディアスはつかみどころのない政治家ふう。一番生の感情が出るべき「兄の殺害の結果を畏れて神に祈るシーン」でも、心の底の動きが見られない。長年仮面をつけすぎて顔に貼りついてしまった人のよう。

ガートルードはいつも難しい役だと思うが、ジュリエット・スティーヴンソンはさすが、女として新しい夫に夢中な姿(まっ人生そういうこともあるわよね)から、現夫の正体をようやく悟って息子の身代わりに毒をあおって死ぬところまで、変化を見せた。

ジェシカ・フィンドレーのオフィーリア、気丈な娘だったのに周囲からスパイの役など押しつけられて重圧で気がヘンになる。最後は車椅子で登場していた。

インテリアがシンプルすぎてほとんど粗末、これで王室?と思ったが、登場人物がゴージャスなのでそのうち気にならなくなる。面白いプロダクションだったが、結局は主役が良いという結論になるでしょう。

ところで仕事の会議の担当者がデンマーク人だったので雑談のときに聞いてみたら、

「シェイクスピアのハムレットは一度も見たことありません」とのこと。見たくない気持ちはわかる気がする。わたしもオペラ「蝶々夫人」は舞台では観てないわ(話が別?)。

監督とハムとオフェリアのインタビュー。カンバーバッチのハムレットは観たし、向こうもアンドリューのを見に来たけど、非常に個人的なものなので比較にならないそう。

 

 

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北斎展@大英博物館

JUGEMテーマ:アート・デザイン

150617-1

凱風快晴、1831 - 1833

大英博物館の「北斎展」、行ってきました。

Hokusai -- beyond the Great Wave

入場時間制限つきの予約制、時間内に入れば好きなだけいていい。非常に混んでました。

”大波を越えて”というタイトル通り、初期から中年期まではサラッと、歳とともにますます研ぎ澄まされた北斎(1760 - 1849)の後期に重点がおかれていた。

まずドキュメンタリーでも見た上の赤富士。実はこれは印刷の手間をちょと省略してしまったもので、北斎が意図したのはもっと薄い色の「ピンク富士」だったそう。

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色があせたんじゃなく、こっちが本当。2つ並べて見ると、確かにこちらの方がニュアンスが豊か。でも赤いのもインパクトある。

木版を刷る過程のビデオも流れていた。下絵の筆の方向まで注意して掘る人も、色をぴたっと合わせて刷る人も、磨きぬかれた技だ。

植物も美しい。

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朝顔に雨蛙、 1832

蛙?ああ、いたいた。静物だが動きがある。

「百人一首」も新鮮だった。

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百人一首、1835 - 36 

源宗于朝臣の
「山里は 冬ぞさみしさまさりける 人目も草もかれぬと思へば」

煙が生き物のよう。なんだか楽しそうで、あまり淋しくないけど・・・。

版画もすばらしいが、肉筆画はもっとすごい。ぐっと奥行きが出る。

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軍鶏図 1826 - 1834

やたら強そうな鶏!後ろの雌鶏がまた、旦那が偉いから自分もいばってます感があって可愛いわ。

初めて見て驚いた西瓜。

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西瓜図 1831 - 1832

な、なんと斬新な。「充電中のスマホ」を描いていたホックニーを思い出す。

北斎は西洋画も知っていて、遠近法も使ったりした。またオランダの商館?の偉い人に依頼されて日本の日常を描いたシリーズがオランダの美術館にある。

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「年始回り」

オランダ国立博物館の所蔵。年代のメモを忘れたが北斎50代の頃の作らしい。手前のわんこも年始の挨拶でおちりの嗅ぎあい・・・。

三女のお栄さん=応為の作もあった。彼女も立派な絵師。

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葛飾応為、関羽割臂図

大作だ。黒と赤が効いている。彼女の「色の作り方」や、北斎の死を報告した手紙など肉筆が展示されていた。筆の字、読めないけど。

日本はもちろん、世界から集めた選りすぐりの傑作ぞろいで堪能した。

死の間際の龍が迫力。辰年生まれで思い入れがあったのですね。

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龍雲図 1849

間近で見ると実に立体的でリアル。

90歳でも眼は衰えていなかったようだ。彼の野心通り、本当にあと20年寿命があったら、と思うとそら恐ろしい。人間としてこのくらいにしておいて正解だったのかもしれない。

8月までやっているので、機会があったらもう一度くらい見たいな。

 

 

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マトヴェイ神父『Отец Матвей』

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130617-1

ついにロシア正教会神父の探偵が!(笑)

1000ページの長い小説を読んでいて何もできない(仕事はしてますけど)。息抜きのテレビはロシアの2014年のドラマ『Отец Матвей』(マトヴェイ神父)。

Режиссер -- Валерий Девятилов

<актеры и роли>
Владимир Колганов -- отец Матвей (Матвей Петрович Корнеев)

Родион Галюченко -- Иван Шерман, лейтенант полиции

Виктория Адельфина -- матушка Валентина

イギリスのケンブリッジ近郊を舞台にした牧師探偵の「グランチェスター」に似ているような。自転車に乗っているとますます似ている。でも50年代イギリス、インテリや金持ちの多い地域の話と違って、このドラマは21世紀、そして庶民的。

知的でハンサムなマトヴェイ神父(ウラジーミル・カルガーノフ)はモスクワの大きな教会に勤めていた。奥さんが女の子を産んだばかりで幸せいっぱいだったのだが、ムショ帰りの実の弟にうっかり貴重な聖書の置き場を教えてしまい、あっさり盗まれる。弟はまた捕まり、兄の神父も犯罪を助けた疑いをかけられて左遷され、という始まり。

飛ばされたのはスーズダリ地区の小さな町。そこで起きる事件に何となく巻きこまれ、持前の観察の鋭さと推理力を発揮して解決に協力、という話。初回は夫が自殺したことが信じられないという女性に頼みこまれ、つい真相を探り始める。

神父に何かと助けてもらう警察の若手がロジオン・ガリュチェンコの演ずるイワン・シェルマン。

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まだ最初の数回しか見ていないが、悪いことした人に聖書の、「キリストが逮捕された時に『わたしは関係ありません』としらばっくれて一生後悔したペテロ」の話など持ちだして反省をうながしたり、そんなんで大丈夫かと思うのどかさが良いです。

この調子で、連続猟奇殺人などあまりひどい犯罪は起こらないまま、素朴にやってほしいです。

 

 

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『Hokusai』大英博物館@映画館

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『冨嶽三十六景』「神奈川沖浪裏

大英博物館で葛飾北斎(1760 - 1849)の大規模な展覧会が開催されている(8月13日まで)。

Hokusai -- beyond the Great Wave

もちろん予約した。その前に、映画館でこの展覧会にちなんだドキュメンタリーが上映されたので見に行く。

Producer & Director -- Patricia Wheatley

北斎といえばこの大波、日本人でなくても知っている、ほとんどモナリザやムンクの「叫び」と同じくらい有名な絵だ。この展覧会、そしてドキュメンタリーでは、北斎がこの波以後も、歳をとるごとにどんどん腕を磨いて傑作を描いていたことを紹介している。

NHKとの共同制作なので日本の映像も多く、実際に木版を掘ったり、芸大の学生が模写して見せたり、興味深い映像ばかりでためになった。

貧しい生まれだが小さいころから絵が好きで、浮世絵師として成功。破産したり火事で焼け出されたり、豊かではなかったが全然気にせず、90歳まで芸術に邁進。すごい画家だ。

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『冨嶽三十六景 尾州不二見原』 北斎改為一筆(葛飾北斎画)

自分も庶民だから働く人や町の人の登場が多く、活き活きしている。構図も斬新。

そして絵に動きがある。

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Poppies. Colour woodblock, 1831-1832

ちょっと「波」に似ているリズム。

イギリスの一流美術評論家が解説したり、こちらも長寿画家デヴィッド・ホックニーが、「北斎はすごい画家です。ぼくも長生きしてがんばりたいが、彼ほどには描けないけどね」と謙遜したりしている。

版画で大量生産されていたから、蕎麦2杯分で誰でも買えた。「たいへん民主的な芸術だ」と解説者が言っていたのが印象的。

そして版画の質が悪かったからべたっと赤くなった「赤富士」が有名になっているが、本当はあれはもっと薄い、ピンクの富士だったとか、聞いたことがあったような。今回スイスの収集家から借りて質の良い版を展示しているそうだ。

長年北斎を研究してきた人(名前失念)が今回ついに大英博物館での展覧会を実現させた。彼が感激屋さんでしょっちゅうウルウルしているのが可愛かった。少なくとも3回は声をつまらせていた。感無量なんでしょうね。

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Weeping cherry and bullfinch. Colour woodblock, c. 1834.

こういう空間のとり方とか、さかさまの鳥、すごいわー。

役者絵を描き、小説の挿画や漫画を描き、西洋画も研究した北斎、「この調子で110歳までいけばまともな絵が描けるかな」と言っていた、前向きさがすばらしくて元気が出る。地元映画館の2番目に大きいスクリーンは満員、人気を物語っている。

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『富士越龍図』(死の3か月ほど前の肉筆画)

辞世の絵でしょうか、実物を早く見たい。
トレイラー:

 

 

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「マドンナと奇跡」展@フィッツウィリアム博物館

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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Studio of Sandro Botticelli, Virgin and Child, Florence, c.1480–90, oil on panel

ケンブリッジ大学付属のFitzwilliam博物館の特別展、『Madonnas and Miracles』に行く。ルネッサンス期のイタリアで信仰が人々の生活の中に溶け込んでいた様子を、絵画だけでなく家具調度や工芸品で見せる。

キリスト生誕の様子を示したインク壺とか。(牛馬が主役っぽい)

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Inkstand with The Nativity, Attributed to Giovanni di Nicola di Manzoni dal Colle
Tuscany, c.1509–10, tin-glazed earthenware (maiolica)

各家庭のどこかに必ずマリア像や十字架があった。ロシアの家にイコンの置かれた片隅があるのといっしょですね。

あれ、ピカソがある!と思った。違うし。

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Virgin and Child. Italy, Umbria, c.1350–1450, tin-glazed earthenware (maiolica), 32 x 18 cm.

マヨルカ焼きは色が明るくていいなあ。

シリアスな象牙のジーザス、磔刑像。

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Crucifix figure (fragmentary), Italy, c.1599, partly painted ivory, V & A Museum

小さいが、迫力があった。各家庭で日々、こうした物を大事にし、祈っていた。

祈りのときに使うロザリオも。

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Rosary. Italy, 16th century, enamelled rock crystal beads mounted in silver-gilt, length 38 cm. Turin, Palazzo Madama, Museo Civico di Torino, Photo: Studio Gonella, Torino.

手が込んでいて美しい。相当リッチな方か貴族の持ち物でしょう。

↓この美しい貴婦人も、首から長いロザリオを下げている。

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Bartolomeo Veneto (1502-55), Portrait of a young lady, c.1500-10, oil on panel, 55.5 x 44.2 cm. National Gallery

信心深く、みんな神を信じ、奇跡も信じていた。医学もまだまだ発達せず、ペストなどの流行も恐ろしく、神頼みの部分は多かったですよね。

Ex-voto(エクス・ヴォート=奉納品)の展示が面白かった。願いがかなったり、特別に神や聖人に恩恵を受けたと感じたときに教会に収めた物品のことだそう。イタリア各地から集めた、絵のエクス・ヴォートが壁一面に。

これは地震があったけど家は助かった、ありがとうございます。というものらしい。

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The Viadana family prays to St Nicholas to save them from an earthquake. Italy, Le Marche, 16th century, tempera on panel

外に逃げないで祈ってたの?大丈夫か。助かって感謝する気持ちはわかる。

もうひとつ地震関係では、元々この展覧会用に借りることの決まっていたキリスト人形のある修道院が、昨年10月に大地震に見舞われてしまった。ところが人形は”奇跡的に”無傷。

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The Christ Child lies amid the rubble of the monastery in Camerino, Italy (Nuns of Santa Chiara, Camerino)

建物壊れて大変な時に「約束だから」と貸してくれた修道院も太っ腹かも。高貴な生まれで尼さんになった女性のために作られた人形だそうです。

実際の展示では服がなくて、ちょっと寒そう。

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The Christ Child. Italy, Camerino, c.1484–90, polychromed wood, 45 x 15 cm. Camerino, Monastero Santa Chiara.

「ええっと、あれは何だっけな、ほら…」と何か思い出そうとしているみたいな、大人っぽい顔ですね。15世紀の作、精巧。

キリスト教が人々の生活の中に浸透していたのがよくわかる展覧会。貴族も、農民も商人も、ドロボーもキリスト教徒でした。戦争もバンバンしていたし。人間てそういうものか。

トレイラー。

 

 

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偉大なロシア人投票(古いニュース)

JUGEMテーマ:日記・一般

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「ケンブリッジ北」という新しい駅ができたので早速行ってみた。郊外のサイエンスパークに近く、こっちでミーティングなどあるときに便利。見事に何もなかった。売店やカフェすらなし。窓口もなくて券売機だけ。左の電車は止まらず通過していくところ。

そして、到着した電車のドアが開かなくて車掌さんが手動で開けていた。ソフトウェアのアップデートが間にあわず、電車がここを「駅」と認識しなかったようだ。(変なところで止まった、怖い)と固まってしまったのね。もう何か月(年?)も前からここがオープンするの分かってたんだから、アップしとけ〜。

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さて、アレクサンドル・ネフスキーを調べていたら、2008年にロシアのテレビで行われた「偉大なロシア人」投票『Имя Россия』の話を発見。番組で著名な人々を紹介しながら、ネットや電話などで誰が一番偉大か、投票を募ったもの。イギリスで2002年に同じような投票番組があったのを真似たのかな。この時は妥当なところでウィンストン・チャーチルが一位だったけど。

2008年暮れの結果は:

1. Св. Александр Невский 聖アレクサンドル・ネフスキー
2. Пётр Аркадьевич Столыпин ピョートル・ストルイピン(1862 - 1911、ニコライ二世下の首相)
3. Иосиф Виссарионович Сталин ヨシフ・スターリン
4. Александр Сергеевич Пушкин アレクサンドル・プーシキン
5. Пётр I Великий ピョートル大帝
6. Владимир Ильич Ленин レーニン
7. Фёдор Михайлович Достоевский ドストエフスキー
8. Александр Васильевич Суворов アレクサンドル・スヴォーロフ(1729 - 1800、生涯不敗の元帥)
9. Дмитрий Иванович Менделеев ドミートリー・メンデレーエフ(元素の周期律表を作成)
10. Иван IV Грозный イワン雷帝
11. Екатерина II Великая   エカチェリーナ二世
12. Александр II Освободитель   アレクサンドル二世(1861年に農奴解放令)

すごーい、ネフスキーが1位!人気ある。やっぱりドイツをやっつけたのが痛快なんですかね。いつの間にか聖人になってるし。アレクサンドルというファーストネームの人が4人の高率。名前がちょっと偉そうだよね。

スターリンの3位はびっくり。自国民を百万人殺したのに。

イワン雷帝やピョートル大帝といった強くてうるさいやつに囲まれて、化学者のメンデレーエフが健闘しているのがすばらしい。彼にはお世話になった。作家はトルストイでなくドストエフスキー、それより上位に詩人のプーシキンというのも面白い。

テレビの投票ですから、厳密なものではないけれど、ロシアの世評が垣間見られる。ちなみに生きている人は候補にならないので、プーたんはいません。

 

 

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アレクサンドル・ネフスキー

JUGEMテーマ:映画

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近々、週末2日半ほどのロシア語集中講座に行く予定。モスクワ、サンクトペテルブルク2都市がテーマということで、ロシア史を調べている。

しかしまだモスクワにさえたどりつかない。先日テレビのドキュメンタリーで、アレクサンドル・ネフスキー(Александр Ярославич Невский, 1220 - 1263)をチェック。ノヴゴロド公であり、スウェーデンの侵攻をネヴァ河畔の戦い(1240)で阻止、ドイツ(ドイツ騎士団)の侵攻を、チュド湖上の戦い(1242)で撃退した、中世の英雄だ。20歳やそこらですごいね、天才武将だ。

チャンネル1のドキュメンタリー『Александр Невский. Между Востоком и Западом』では、700年後に第二次世界大戦でまたドイツに攻められたとき、スターリンがネフスキーを持ちだして徹底抗戦を鼓舞したエピソードを紹介していた。

ネフスキーというのはネヴァ河畔の戦いで勝ったことを記念に後世の人がつけた名だそうです。

さてこの人といえば、エイゼンシュタインの1936年のモノクロ映画「アレクサンドル・ネフスキー」。初めて見た。

Режиссёр -- Сергей Эйзенштейн

Композитор -- Сергей Прокофьев

<В ролях>

Николай Черкасов — князь Александр Ярославич Невский

ネフスキー役は、ニコライ・チェルカーソフ。(上の写真の人)

映画はドイツ騎士団との戦いに焦点を当てていた。

いわゆる北方十字軍、ドイツ騎士団はロシア正教も異教徒とみなして攻撃してきたわけです。ノブゴロドの近隣プスコフは降伏。ノブゴロドは政治的ごたごたで追放していたネフスキーにわびて帰ってきてもらってドイツに抗戦する。クライマックスがチュド湖上の戦いの1日。

ドイツがまるで狂信的な悪の軍団!戦争映画だからしょうがないですが。

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なんだこのカブトは。こんなのありません。第一次大戦のドイツ軍のヘルメットへのあてこすりです。後ろのバケツみたいなのは・・・いいのかな。ずれたら見えなくて大変。

噂に聞いていたすばらしいカメラワークは堪能した。構図が斬新でダイナミック。また、音楽担当のプロコフィエフは、映画用音楽を編集して、カンタータに作りなおしている。

ラストのネフスキーの決めゼリフは「Кто с мечом к нам придет, от меча и погибнет!」(剣をもって我らに向かってくる者は、剣によって滅びるであろう)。

もうひとつ、21世紀になってからの映画。

『Александр. Невская битва』(アレクサンドル ネヴァ河畔の戦い)2008年。

Режиссёр -- Игорь Каленов
<В ролях>
Антон Пампушный — князь Александр Ярославич
Светлана Бакулина — княжна Александра Брячиславна
Игорь Ботвин — Ратмир

290517-3

あら、イケメン♪

ネヴァ河での戦闘のほか、モンゴルも近くまで迫っていて、あっちもこっちも守らねばならない。

これはアクション映画っぽく、重厚さはなく、カッコよく作っているエンターテインメント。

あまり歴史の勉強になったような気がしないが、記憶には残るかな。

トレイラー:

 

 

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マーガレット・アトウッド『The Penelopiad』

JUGEMテーマ:読書

The Penelopiad: The Myth of Penelope and Odysseus (Myths)
The Penelopiad: The Myth of Penelope and Odysseus (Myths)

前回はちょっとふわふわした主婦の話だった。今度は20年も夫の不在に耐えた妻、ギリシア神話のあの方。Canongate社の神話シリーズで、実力派アトウッドが、ホメーロスの叙事詩『オデュッセイア』以外の史料も調べまくって書き上げた短めの1編「ペネロピアド」。

スパルタ王の娘ペーネロペーは、イタケーの王オデュッセウスの妻となる。夫はほどなくトロイ戦争で遠征に行き何年も家(城ですが)を空ける。実は戦争が終わった後で神話的冒険にまきこまれ、怪物と戦ったり、女神さまに気に入られてちやほやされてたりしていた。

その間一人息子を育てつつ城を守るペーネロペー、国の乗っ取りを狙って求婚者がわんさか100人以上やってきて、城に居座ってしまう。勝手に宴会を開くなど傍若無人な彼らにしつこく迫られてある計略をめぐらしたのは伝説のとおり。

最後にとうとう帰ったオデュッセウスが求婚者を殺してめでたし?だったのか?

この本は落着いたトーンのペーネロペーの語りで始まる。もうとっくに死んで、地下の薄暗い国にいる。肉体はないから、生きていたころにあんなに悩み、苦しかった記憶とは距離ができている。淡々と、やや突き放したように事実を語っていく。

彼女は美貌だったが、アンラッキーなことに従姉妹にヘレネーがいた。あの、トロイア戦争の元になった、ゼウスの娘と噂される傾国の美女。部屋に彼女が入って来たら、男の顔は全部、そっちに向いてしまうという人だ。ペーネロペーの結婚式ですら、男性ゲストはみんなヘレネーばっかり見ていた。

しかもヘレネーけっこう意地悪で、「年がら年中男に追いかけられるのは疲れるわー。いいわねあなた、そんなことないでしょう、そのご面相じゃ」とか言う。はははは、女に嫌われる女。このビッチ(笑)が夫のいる身で美男のパリスと駆け落ちしたためにトロイア戦争が起こって夫が遠征に出るはめになったのだ、実に腹立たしい。

もう死んでしまっている気安さから、本音が語られる。ずーっと音信不通で自分をほったらかした夫も、生意気に育ってしまって手に負えない息子テーレマコスにも、冷静な目を向けている。

そしてギリシア悲劇風に、コロス(合唱隊)の声も入る。これはペーネロペーの腹心のメイド12人で、帰還をとげたオデュッセウスに処刑されてしまったのだ。

身分が違うために、ペーネロペーに頼まれてしたことで不運に遭い、それを糾弾された形だ。12人は理不尽な運命を恨みがましく歌う。彼女たちに声を与えたのもアトウッドらしい。

「ギリシア神話版『デス妻』」と言っているレビューがあって笑った。言えているかも。皮肉な語りにダークなユーモアがあって、楽しめる。

和訳も出てます。

ペネロピアド (THE MYTHS)
ペネロピアド (THE MYTHS)

 

 

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ホックニー@Tate Britain

JUGEMテーマ:アート・デザイン

060517-1

Portrait of an Artist (Pool with Two Figures), 1972

金曜か土曜日にもらって火曜までに納品する仕事がレギュラーで来るようになった。面白いが、時間をとられる。だいぶ前に行ったホックニー展のことを今ごろ書いてます。

ちょっと前にしょっちゅうターナー展をやっている時期があったと思うが、最近はデヴィッド・ホックニー(1937年7月9日 -)を見る機会が多いような気がする。

29日までテート・ブリテンで大規模な回顧展が開催中。

David Hockney

「また?」なんていっている失礼な批評家もいるけれど、はやり面白い。特に今回は彼の長いキャリアを回顧するもので、昔の作品も見られる。

もうじき80歳の彼、70年くらいは毎日毎日描いているんではないでしょうか。そのエネルギーと絵への愛が作品にも表れている。

催眠術かけてる人・・・。

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The Hypnotist, 1963

なんじゃこりゃあ。映画だかドラマで見て気に入ったのだそうです。それをでかく描いてしまう。ヘンでおもろい。

若い頃の緻密なダブル・ポートレート、後ろの窓まで美しい。

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Christopher Isherwood And Don Bachardy, 1968

大きな画面に2人の人間がいる構図が多く、彼らの関係というか空間での距離の取り方がちょっと変わっている。静かなダイナミズム。

富士山と花があった。

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Mt. Fuji and Flowers, 1972

色も構図も、絶妙なバランス。

日本にも来て、竜安寺の庭を写真に撮ったりもしていた。

ドローイングも面白い。

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Ossie Wearing a Fairisle Sweater, 1970

これは色つきだが、繊細な鉛筆デッサンもたくさんあった。

旅先の風景が印象的。

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Breakfast At Malibu, Sunday, 1989

この後は明るい色のアメリカやヨークシャーの風景画で、以前の展覧会で見たものも多かった。

前回見た映像作品も1室にまとめて春・夏・秋・冬のシリーズで見るとまた新鮮。

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車に数台のカメラを積んで進みながら撮影。少しずつずれる画像が、いろんなところに飛ぶ人間の視線を再現する。

ラストのiPadアートの部屋がすごい。どこにでも持ち歩いて何でも描いている。窓辺のサボテンから靴、チャージ中のスマホ(!)まで。A1くらいの大きさのスクリーンが並び、中には制作過程を記録しているのもあって再生され、絵がひょいひょいとできていくのが見える。楽しい。

こうして見ると作風が年々変化していて、研究心の旺盛さがよくわかる。まだまだ元気なホックニー。これからもたくさん描いてください。

アリステア・スークが紹介する:

 

 

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『Он вам не Димон』メドヴェージェフ首相の汚職告発動画(映画)

JUGEMテーマ:映画

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会社で他の部署にロシア人とウクライナ人がいて、給湯室で仲良く2人でしゃべっていたりする。国同士の諍いは個人には関係ない。わたしもたまに混ぜてもらうが、じきに会話が英語に切り替わってしまう。情けない。

ウクライナくん(適当なあだ名)に教えてもらったドキュメンタリー、今年の3月に動画サイトにアップされて、今までに2100万人が見た『Он вам не Димон』(彼はあなたたちのジーモンではない)。ロシアのドミートリー・メドヴェージェフ首相の汚職をあばいたもの。タイトルの中のジーモンはドミートリーのごく親しい愛称で、気安く呼ぶな、ということですね。

制作はФонд борьбы с коррупцией (反・腐敗基金)、ナレーターは腐敗摘発活動をしている若手政治家Алексей Навальный(アレクセイ・ナヴァーリヌイ)がつとめる。

綿密な調査で、自ら「汚職を排除しよう」と言っているメドヴェージェフ首相が実は隠し財産を増やし、モスクワに大邸宅、ペテルブルクに高級マンション、秘密の別荘、さらにイタリア、トスカーナにワイナリーを持っていることを暴露している。あ、そうそうヨットももちろん。家族や大学の同級生のネットワークを使って本人の名前が出ないように表向きの会社を作っている様子が証拠とともに解説される。モスクワ郊外のお城のような大邸宅は、あるオリガルヒからのプレゼントだそう。

まだロシア語字幕つきで一度しか見ていないので、完全には理解してませんが(英語字幕でも話がわからないかもだが)、信憑性ある。

わりと文化人な趣のある穏やかそうな首相だけど、やっぱりヨットとか欲しいんですかねー。

「ロシアにはお金はたくさんあるんだ。でも貧しさに苦しんでいる人がたくさんいる。それはお金の分配が偏っているからです」と熱く語るナヴァーリヌイ。オフィシャルなマスコミは完全無視したようだが、このドキュメンタリーに触発されたデモも起き、波風は立ちはじめた。

「見たよー、すごいね」とウクライナくんに言ったら、

「あれがロシアさ」とクールな返答がかえってきた。

ナヴァーリヌイはこの4月に(さっそく?)何者かに顔に化学薬品をぶっかけられたそうだ。恐ろしい。生き延びてくださいよ。

最初の方、英語吹き替え。

 

興味ある方は、”Он вам не Димон”で動画サイトを検索すればこちら↓が出て来る。英語字幕も出るので、よかったらどうぞ:

 

 

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