マコヴェツキーの「黒衣の僧」

JUGEMテーマ:エンターテイメント

270317-1

行ってきました、プーシキンハウスでのチェーホフ原作「黒衣の僧」劇場録画の上映。劇場はМосковский театр юного зрителя(若い世代のモスクワ劇場、かな)。

Режиссёр -- Кама Гинкас
<Действующие лица и исполнители>

Коврин -- Сергей Маковецкий
Чёрный монах -- Игорь Ясулович
Таня Песоцкая -- Юлия Свежакова
Песоцкий, её отец -- Валерий Баринов

若き哲学者のコヴリンが、自分ひとりだけに見える黒衣の修道僧と会話するようになり、現実と折り合えなくなってくる。自分を愛して尊重してくれていた親代わりのエゴールの娘ターニャと結婚するが、不幸な結果になってしまう。

舞台の作りが変わっていて、前方の両側のバルコニー席をつぶして橋渡しをするように床が作ってある。たまに役者がオーケストラ・ピットに飛びこんだりできる。エゴールが大事にしている庭と果樹園の象徴として、孔雀の羽根が床から生えている他はさっぱりとした舞台美術。

面白かったのはセリフ。地の分もセリフに入っている。原作は小説だから「ト書き」というものはないが、それにあたるところまで、声を出して言ってしまう。

「ターニャ退場」と言いながらターニャが舞台上手に消えていったり。たまに「彼は――した」と言いながら演技では違うことしてみたり。

後で聞いたら、この手法でチェーホフ作品を3つ手がけているそうだ。

音楽はヴェルディの「リゴレット」の同じ四重唱が繰り返し流れ、また登場人物が歌ったりした。『Bella figlia dell'amore』(美しい愛らしい娘よ)。あの、とんでもないプレイボーイの公爵が別の女の子を口説いているのを、捨てられたジルダが見て嘆き、ジルダの父のリゴレットが、泣いたってしょうがないだろ、となぐさめる場面。父と娘のテーマが、関係なくもないか。元気でハイパーなときのコヴリンは確かにイタリア語を勉強していましたが。

黒衣の僧が派手に登場するのが笑えた。黒いノボリみたいなものを立てて来て、本人は上半身裸。ヘンな人。コヴリンの暴走する潜在意識の象徴なのでしょうか。

コヴリンのセルゲイ・マコヴェツキーはやはり演技がうまい。黒目の動きまできちんとコントロールしている。この役には少しお歳なんじゃ、と思ったら、このプロダクションは1999年初演で、その後もレパートリーとして続いているのだそうだ。

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だいぶ若いころの写真。

ロシアの劇場は、いくつものレパートリーを日替わりで出す。プログラムは入れ替わるが、人気のあるものはずっと続ける。「黒衣の僧」は今年もやっているから、20年近いとは息が長い。俳優は歳を取るが、その分演技も磨かれてくるだろう。リピーターもいそう。

来週はリベンジ「アンナ・カレーニナ」です。

僧とお話していて、とうとう奥さんに「誰と話してるの!」と言われる場面。

 

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チェーホフ「黒衣の僧」& ソ連映画

JUGEMテーマ:読書

200317-1

今度の日曜日にアントン・チェーホフ(1860 - 1904)原作の芝居の中継を見に行くため、予習として読む(例の、プーシキン・ハウスで。今度は大丈夫か)。

1894年の中編『Черный монах』(黒衣の修道僧)は異色作。

哲学者で文学修士のコヴリン、勉強のしすぎで疲れてしまった。療養も兼ねて、田舎のエゴールの果樹園で過ごすことにする。エゴールは親代わりにコヴリンを育ててくれた人。

エゴールの娘で幼なじみのターニャがすっかり美しい女性に成長しているのに魅せられるコヴリンだが、一方で伝説の「黒衣の僧」を目にするようになる。どうやら自分しか見えていないようだ。だいいちその伝説をいつどこで聞いたのかもさっぱりわからない。しかし思いきって話してみると、穏やかな、立派な僧だ。彼と話をするうちに、コヴリンは自分が特別な使命をもった天才であるという確信を得る。

もちろんそれは彼の妄想なのだろう。結婚して妻になったターニャは椅子に向かってしゃべっている夫を発見、「あなたは病気よ」と心配してさっさと病院に送る。

”治って”僧を見なくなったコヴリンは自分が凡庸になったように感じ、不幸になり・・・。という、全体的に不気味な雰囲気をただよわせる作品だ。和訳が「怪奇小説傑作集 ドイツ・ロシア編」に入っちゃっている。

千年前にも現れたという、コヴリンに姿を見せた僧は何なのか。幻覚が見えていたときは絶好調だった彼の仕事は、人類にとって価値があるのでは。などいろいろ考えさせられる。時間ができたら辞書を引きながら精読したい1編だ。

1988年にモスフィルムが映画化している。

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Режиссёр -- Иван Дыховичный
Станислав Любшин — Андрей Васильевич Коврин
Татьяна Друбич — Таня Песоцкая
Пётр Фоменко — Егор Семёнович Песоцкий

「そして誰もいなくなった」にも出ていたタチアーナ・ドゥルビッチがターニャ。少しものうげな繊細さを見せる。

詩的な演出で、風にゆれるカーテンや、高い森などの背景がなにごとか語るようだ。タルコフスキーに影響されている?

肝心の黒衣の僧は一度も姿を現さず、コヴリンがこちらに向かって、まるで視聴者が僧かのように話すのが面白い。

暗めの、圧迫感のある雰囲気がよく出ていた。もう少し、理屈っぽい部分をくわしく見せてほしかったかな。理解できないかもだけど。

映像で主人公の精神状態を表現するシーン。

この作は戯曲ではないので、セリフなども脚本家の自由。日曜日に見るМТЮЗ(モスクワ、若い世代のための劇場)がどう料理したのか、楽しみだ。

和訳。読んでないけどこの本は訳が良いはず。

怪奇小説傑作集5<ドイツ・ロシア編>【新版】 (創元推理文庫)
怪奇小説傑作集5<ドイツ・ロシア編>【新版】 (創元推理文庫)

 

 

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BBCドキュ・ドラマ 『1066: A Year to Conquer England』

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左からノルウェー王ハーラル、イングランド王ハロルド、ノルマンディー公ウィリアム

イギリスが本土で戦争に負けたのは1066年が最後。有名なヘイスティングスの戦いで、アングロサクソンのイングランド軍がノルマンディー公に破れた。この決戦を頂点とする同年の重要な歴史の動きを追うドキュメンタリーに、ドラマも合わせて見せる3回シリーズ。

Producer/Director  --  Tim Dunn
Presenter  --  Dan Snow

William the Conqueror  --  Ed Stoppard
Harald Hardrada --  Clive Russell
Harold Godwinson  --  Adam James

お目当てはもちろん、プレゼンターのダン・スノウです(笑)。

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戦史が専門の彼、戦地を訪れ、実戦法を専門家に習ったりして楽しそう。

1066年1月、イングランドのエドワード王(Edward the Confessor、懺悔王)が亡くなった。跡継ぎとなる子供がいない。最も近い血縁、甥の息子のエドガーはまだ十代の子供だったため、義兄ハロルドが即位。

ところがこれに反発したのがフランスのノルマンディー公ウィリアム。 エドワード王の従甥の彼、15年前に王から「次はお前な」と言われていた、と主張する。一地方の君主にすぎない、しかも庶子だった彼、上昇志向が強い。

もうひとり、ヴァイキングのノルウェー王ハーラル。ヴァイキングは一世代前にはイングランドを支配していたのだ。王位が空いたのなら、いっちょう行こうか、と狙う。波乱は避けられない状況となった。

ドラマ部分の主役、ウィリアム。

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久しぶりに見たエド・ストッパード。

さらに歴史学者がそれぞれのリーダーの立場で、彼らの考え、戦略などを語る。

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若手学者たちの舌戦が面白かった。それぞれの役になりきって相手を口で攻撃。

ハーラル役の人がウィリアム役の人に向かって、

「だいたい君は元々ヴァイキングの血筋だなんて言っているけど、もうフランス化しちゃってるよね!」

こちらは反論して、

「わたしはフランス語をしゃべるが、魂はヴァイキングだ!」

フランス人が聞いたらムッとしそう。よくあることです。

さて、ウィリアムは夏には兵を集めてイングランドにわたる機会を待つが、強い北風が吹いて船が英仏海峡を渡れない。2か月も待機するはめになる。

ハロルドはワイト島でウィリアムが来るのを待ち構えていたのに、来ない。軍には農村から集めた庶民の兵もいる。収穫の農繁期も近いし、いったん解散、ロンドンに帰る。

が、そこへ北からノルウェー軍が攻めて来たという知らせが。ウィリアムを押しとどめていた風はハーラルにとっては順風だったのだ。しかもハーラルに味方し、手引きしていたのがハロルドの実弟トスティ。兄に追放されて恨んでいたのだ。兄弟は他人の始まりどころではなく、敵のはじまり。

ハロルドは兵を集めなおして必死に北上。ヨークシャーでノルウェーとイングランドが戦ったのがスタンフォード・ブリッジの戦い。狭い橋でたった一人のノルウェー兵が斧で40人ものイギリス人をやっつけたという伝説があるが、結果はイングランドの勝利。

やれやれ、と思ったその2日後に風向きが変わり、ついにウィリアムの船団が押しよせた。

人に任せず自分で戦いたかったハロルドは疲労をおして急いで南下。激しいバトルはバイユーのタペストリーに描かれているとおり。

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ハロルドは目に矢が刺さって死んだと伝わるが、時代の近い史料によるともっと悲惨な最期で、地上戦で倒れた後、バラバラにされたという話も。

布陣図など視覚的解説がよく頭に入り、人間的なエピソードも面白い。

ウィリアムは天気のせいで出陣できないなど、最初からケチがついた。風向きが変わってやっと船出、ところが彼の船は船団とはぐれてしまい、一時は自分の軍が見えなくなったという。やっとイングランドに上陸した時にはすっ転んで両手を地についてしまった。悪い前兆?いや、「わたしはこの手でイングランドの地をつかんだぞ」と解釈。

さらに戦場に出るとき、最初に鎖帷子を後ろ前に着てしまった。笑ってごまかし、着なおした。

普通の人なら運が悪いと思ってしまうようなアクシデントがあっても気にせず邁進、絶対に王位を取る、という信念があったウィリアムが勝利、ウィリアム一世として即位した。

イギリスにとって最も重要な転機といってもいいノルマンの征服を、いろんな角度から見せてもらって興味が尽きなかった。この後、言葉も政治・社会も「フランス化」して、アングロサクソンのイングランドが今のイギリスになる基礎ができた。

また、ヴァイキングによる侵略はこれ以後なりをひそめることになった。

初めての情報が多くて勉強になったわたしのような者はもちろん、学校で習ってよく知っているイギリス人にとっても面白い番組だったと思う。

 

 

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北欧ミステリ2冊追加

JUGEMテーマ:読書

北欧ミステリをロシア語訳で読む、一石二鳥?で邪道なロシア語勉強法を続けています。

アルヴテーゲンは例によって「人体デッサン」ポーズの表紙、しょうがないな。

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2003年の作品『Svek』、裏切り、ロシア語でも「Предательство」。

三十代のエーヴァとヘンリックには幼い息子がいる。在宅勤務の夫が保育園の送り迎えも含め、かなり家のことをしてくれるので、バリバリ働いているエーヴァだが、最近夫が冷淡だと感じていた。ついにある日、彼の浮気を発見してしまう。

しかも相手は許せない立場の身近な女。悩んだ挙句、エーヴァは大胆なイヤガラセ行動に出る。ばれたら問題だけど、大丈夫かな。

彼女に協力者が現れる。悩んでいたときにバーで出会った青年ヨーナスだ。意識不明の恋人が亡くなるまで毎日見舞っていたこともある献身的な、しかしどうも思いこみの激しい彼、エーヴァに同情し、頼まれもしないのに勝手に独自の方向に走っていく。善意のストーカーみたいなものでしょうか。

エーヴァの行為による波紋とヨーナスの暴走がからまって、事態はどんどん悪い方向へ。

これもまたそれぞれの登場人物の心理が的確に描写されていて、同じ場面を両方の立場から書いていたりもし、よく理解できるとともにおそろしい。結末はちょっと納得いかないが、映画などにすると本当にぞーっとする衝撃のラストとなることだろう。

次はアイスランド作家にいってみた。

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アーナルデュル・インドリダソン(1961-)、北欧ミステリの「ガラスの鍵賞」を受賞したという『Grafarþögn』(2001)。和訳の題は「緑衣の女」、ロシア語題だと「Каменный мешок」=石のバッグ、牢獄のことだそう。英題は「Silence Of The Grave」。

レイキャヴィク郊外で人骨が発見され、考古学者と警察が呼ばれる。骨はかなり古い。現場の住宅造成地には、第二次大戦時にはイギリスやアメリカ軍の基地もあった。警察チームを率いるのはエーレンデュル刑事。急いで仕事をしようという意識がまるでない学者に手を焼いたりしながら、地道に捜査していく。

それと並行して、60年前のある家での暴力が描かれる。外では気さくで働き者の父親が、家では妻に毎日肉体的・精神的暴力をふるっている。幼い子供が3人、なすすべもなくそれを見ている。発見された骨は、当然この家族の誰かなんだろう。

一方仕事の外では、エーレンデュル刑事の娘、エヴァ(ヤク中で妊娠中)が意識不明の重体になっていた。娘の母とは離婚して疎遠。エーレンデュルは暇さえあれば病院に行って反応のない娘に語りかけ、仕事では現場近くに住んでいた人々に聞きとり調査、事件の真相に迫っていく。

謎解きミステリとしてはそれほど凝っていない。骨の正体は誰でも推理できると思うし、最後は事情を知っている人が現れてあっさり種明かしをする。

ただ「ドメスティックバイオレンス」というものを何とかしようという意識とか、シェルターなどもなかった時代の、人の魂を殺す暴力が克明に書かれている。読んでいると黙って殴られている方にも腹が立ってくるが、あまりいじめられていると精神も壊れるから、反撃どころか、正常な判断ができなくなるんだよね。一番可哀そうなのは子供だ。

暴力をふるう本人も、何かの理由で辛くて暴れている。近い将来にはうまく治療できるようになるんだろうか。「昔はこんなのも治せなくて悲惨だったんだね」と思う時代になってほしい。そうそう、ついでにアルヴテーゲンのヨーナスのストーカー気質も治してやって。

話は重いが笑える場面もあり、プライベートで難問をかかえたエーレンデュルにも興味が持てる。次を読むとしたら、少し丁寧に、英訳にしようか。

 

和訳:

 

裏切り (小学館文庫)
裏切り (小学館文庫)

 

緑衣の女 (創元推理文庫)
緑衣の女 (創元推理文庫)

 

 

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ロイヤル・アカデミー、ロシア革命期のアート展

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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Борис Кустодиев
The Bolshevik, 1920
Oil on canvas. 101 x 140.5 cm, State Tretyakov Gallery, Moscow

今年はロシア革命から100年。ロイヤル・アカデミーで革命からソ連初期のアートを集めた展覧会が開催されている。

Revolution: Russian Art 1917–1932
(11 February — 17 April 2017)

ボリス・クストーディエフの絵がゴジラみたいですが・・・。

1917年、第一次大戦で疲弊していたロシア帝国で国民の不満が爆発、二月革命でロマノフ朝のニコライ二世が退位。10月にはレーニン率いる元・ロシア社会民主労働党の多数派・左派のボリシェヴィキが労働者の武装蜂起を先導して臨時政府を倒す。これでソヴィエト(評議会)に権力が集中した。この後内戦を経て、1922年にソ連が誕生。

アートとのかかわりでは、初期段階では革命に賛同する芸術家も多く、新しさを追求するアバンギャルドが活発になる。

しかし20年代になるとソ連政府はこうした活動を批判しはじめ、例の、農場や工場のたくましい男女が真面目な顔をしている”社会主義リアリズム”を推奨、芸術家受難の時代となる。1932年にはスターリンが、社会主義リアリズムだけが真の芸術だと宣言した。乱暴だ。

一方で革命の宣伝、プロパガンダとしてのアートも盛んに制作される。1917年から32年にかけての、幅広いロシアの芸術が集められ、絵画だけでなく映画や彫刻、陶磁器も見られた。

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Isaak Brodsky. Lenin in Smolny

イサーク・ブロツキーは社会主義リアリズムの波にのって成功した画家。

一方、カンディンスキーは最初のころレーニンには認められたが、だんだん居心地が悪くなり、スターリンが権力を握る前に逃げ出した。

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Wassily Kandinsky, Blue Crest (detail), 1917
Oil on canvas. 133 x 104 cm

画家として市民として、どう生き延びるか、考えて行動することは必須だ。

初めて見たイーゴリ・グラーバリの風景画。

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Igor Grabar, By the Lake, 1926

彼は後に社会主義リアリズムの絵を描かされます(好きだったのかも?)。

アリスタールフ・レントゥーロフ(Аристарх Лентулов)はアバンギャルド派、舞台美術なども手がけた。色がロシアらしい。

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Aristarkh Lentulov, Tverskoy boulevard, 1917

激動の時代に、自分の芸術と向き合い、何を考えて制作していたのか、それぞれの芸術家たちに聞いてみたい気がする。延々と愚痴を聞かされたりして。

カジミール・マレーヴィチと、クジマ・ペトロフ=ヴォトキンの作品にはそれぞれ1室与えられていた。

ペトロフ=ヴォトキンはイコン画家として修業した人、透明感ある色の重ね方にそれが現れている。

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Kuzma Petrov-Vodkin, Fantasy, 1925.

Oil on canvas. 50 x 64.5 cm

この人のは、静物画なども美しかった。

絵画以外では、陶器も、他では見られない題材が。

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なんかこういうの、欲しいかも(笑)。特におじいちゃん、赤いルバーシカがナイス。ロシアの蚤の市なんかで掘り出し物として発見できないかしら。

最後の方の部屋では、スターリンの「大粛清」で逮捕された人々の写真が1枚ずつ映される映像が流れていた。名前と職業、いつ逮捕、どうなったか(銃殺、釈放、収容所内で病死、病気で収容所を出される、などなど)という情報と、写真だけ。

見ているともうランダムで、訳がわからない。詩人(オシップ・マンデリシュタームがいた)からエンジニア、主婦、会計士、元兵士、教師etc. なぜ逮捕されたのか。処置も、ある人は1週間後に銃殺、別の人は5年後に銃殺。釈放してからまた逮捕を繰り返した人もいる。理解できない状況で処刑された人達、無念だったろう。

生まれる場所・時代をちょっと間違えば、誰でもこういう目に遭う可能性はあるわけですよね。

いろいろ考えさせられた。ここに画像をはった作品は中でもきれいなものですが、しょうもないプロパガンダの作品がた〜くさんありましたよ。資本主義の豚の支配するイギリスにももうじき革命が起こるであろう、みたいなマンガとか。それも歴史的価値があるし、色彩感覚や構図は、大胆ですばらしくセンスが良い。食料配給チケットまで斬新なデザインだった。

会場にはロシア人がけっこう来ていた。なかなかまとめて見る機会もないし、貴重な展覧会だ。

 

 

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『Dancer』

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バレエ・ダンサーのセルゲイ・ポルーニン(1989 - )を追ったドキュメンタリー映画。ロンドンとの中継で、映画の後に本人のパフォーマンスとインタビューもついた企画。

Director: Steven Cantor
Stars: Sergei Polunin, Jade Hale-Christofi

ウクライナ共和国(ぎりぎりソ連)生まれのポルーニンは13歳でロイヤル・バレエ学校に入学、2009年には史上最年少の19歳でプリンシパルに出世して活躍、なのに2012年1月、突然退団して騒ぎになる。不良ダンサーと呼ばれたりした。映画はその頃から撮影が始まり、5年かけて完成したもの。

彼の退団は驚いたが、わたしは「ん〜、反抗期?」なんて軽く考えていた。本人の悩みは相当深かったことを知った。

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ウクライナの田舎町で生まれたセルゲイ、赤ちゃんの時に彼の体をチェックしていた看護師さんが、股関節がどこまでも開くのでビビったそうだ。最初から並外れて柔軟だった。小さいころから体操教室、その後ダンスのクラスへ。

(この地方都市に息子の未来はない)と考えていたお母さん、バレエの道で行けそうなセルゲイと共に首都キエフに移ってバレエ学校に(ザハロワも通ったところ)。そこでもやはり、どのクラスでも一番できるセルゲイを見て、外国に出そう、と決意したそう。孟母三遷。

彼の才能は最高の場所を要求した。けれど家の経済力はそれに見合っていなくて、お父さんはポルトガルに、お祖母さんまでギリシアに出稼ぎに行ってセルゲイの留学を支える。

英語も話せない状態で学校に入ったセルゲイ、家の期待にも応えたく、人一倍練習した。が、離れて暮らしているうちに家族は壊れてしまう。父と母が離婚。まるで自分のせいみたいに。あんまりだ。

子供のころからの映像も入れながら、ただ楽しいだけだった踊りが重く、若い体にのしかかってきた過程が描かれ、急にキレたようにロイヤルを辞めたのも、ついに限界だったように思える。

その後はロシアで、テレビの若手ダンサーのコンテスト番組(大バレエ)に出るところから始めたとは知らなかった。スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ劇場で良いメンターと会い、コンテンポラリーも踊り、新たなキャリアを築きつつある。

特異な才能を持った人の苦悩というものが、ちょっとは理解できるような。随所に挿入される踊りの場面の彼は、どの段階のどの役でもすごい。

YouTubeで1900万回近く再生されている『Take Me to Church』も映画の中で見られる。

ロンドンの会場では映画の後にポルーニンが出て来てこれを踊り、その後Q&Aに答えた。インタビュアーや会場の聴衆からだけでなく、ツイッターからの質問にも答える。

これからも踊ってくれますか、というファンの問いに、最近やっとまた踊りが楽しくなってきたので、これからも踊るだろうとのこと。

母世代の女性からは、子育てについての質問も。それには、「バランスが大事だと思う。才能があるなら伸ばしてあげるといいが、本当に子供が好きでやっているか確認して」と答える。でも母に厳しくバレエをさせられなかったら、

「犯罪者になってたかな〜」とぼそっと言っていた(笑)。

自分が苦労したことから、若いダンサーの精神的なサポートも含めたマネジメント・システムを作っているところだと言う。過去から学んで何かをつかんでいるところが立派だ。

「映画も好きなようですが、バレエにしてみたい映画ってありますか?」と聞かれ、

「えーそれは難しい質問。わからないな」と言ってから、「・・・ランボー?」とつぶやいて笑わせてくれた。それだけはやめて。

まだ27歳なのに、かなり悟りをひらいたように見える彼、さらに大物になってバレエでもそれ以外でも活躍することだろう。

ドキュメンタリーは日本でも夏に公開のようです。

 

 

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水曜デッサン会(先々週)

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忙しいのにまたアルヴテーゲンを読んでしまい(今度は「裏切り」)、いろいろ時間がない。ロシア語訳で読むのは坂道を上るくらいの負荷がかかって、面白くないと辛い。が、彼女の作は疲れも感じず読み続けられるので助かる。

そんな訳でアップを忘れていた、前回の水曜デッサン会。先週は行けなかったのできっと先々週だ。

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ArtRage, iPad mini.

モデルはテリーおじさま、お久しぶり。

クイックポーズではA3スケッチブックに、イングリッシュ・ナショナル・バレエのワークショップでウォーミングアップに使った、赤と黒のペンを2本いっしょに握って二重線になる描き方を試してみた。ぐちゃぐちゃになった(笑)。

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ArtRageを使うのも久しぶり。先日、電車から朝の空を描こうとして中途半端になっていたものを、背景に流用。

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先にあった背景の色に影響されている。色を濃くしてみようかな。後でコピーを作って加工できるのがいいです。

最後の20分はポートレート。

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顔は難しいです。

先週はデッサン会の代りに、ダンス公演のリハーサル風景を描く会に参加しようとしたのだけれど、その日はすごい強風。線路にいろんな物が落ちて電車が遅れ、時間までにたどり着けず諦めたのでした。特別企画だったのに残念。

春の嵐には逆らえません。またの機会に。

 

 

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アルヴテーゲン「影」(Тень)

JUGEMテーマ:読書

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なんか前回のもですが、デッサン教室のモデルみたいな表紙のロシア語版。

またロシア語訳で読んだ、カーリン・アルヴテーゲンの「Тень」(影=原題『Skugga 』、2007年作。

ひっそり亡くなった孤独な老女イエルダ。その身辺の後始末と葬式の手配などのため、役所の職員が、数少ない連絡先にコンタクトをとる。そしてイエルダが、ノーベル文学賞を受けた高名な文学者アクセル・ラグナーフェルトの家で長年家政婦をつとめていたことがわかった。

卒中発作の後で体が麻痺し、今では寝たきりのアクセル。

息子のヤン・エリックは創作はせず、いわば父の威光で講演会やチャリティ・プロジェクトを運営して名士となっている。妻ルイザとの仲はすっかり冷めているが、父が書いた遺書の縛りで離婚できない。

そしてアクセルの元友人で久しく疎遠になっていた作家や、孤児として養父母の元で育った三十代のクリストファーも連絡をうけた。

前半はそれら登場人物の個人的な状況がていねいに語られて、ストーリーがぜんぜん進まない。Kindleで読んでいると、47%済んだけどまだ〜?みたいな(笑)。それでも投げだす気にならないのは、作者の筆力だろう。気になって先を読みたくなる。

そのうち、子供のころ可愛がってくれたイエルダの写真でもないかと探したヤン・エリックは、家族の過去にまつわるとんでもない証拠を発見

また、親を知らないクリストファーは、面識のなかったイエルダがなぜ自分を知っていたのか、両親についての手がかりがないか、と調査に動き出す。

それから話は加速し、ヒューマニズムを追求した作家であるはずのお父さんのヘタレな過去に、ヤン・エリックが留学中に交通事故で亡くなったと聞いた妹の死の真相など、やばい真実が出てくるわ出てくるわ。

過ちを隠蔽するためにまた重ねる過ち、追いつめられての最悪の判断ミスが人を巻きこみ、読んでいても頭をかかえたくなるほどの混迷が明らかになってくる。

「影」とは尊敬され人を導く立場であった作家の隠していた真っ黒な部分であり、また偉大な父に常に前をふさがれていた、影の中にいたヤン・エリックの象徴でもある。救いはあるんでしょうか。

エンディングはあいまいさを残し、特に明るくはない。無理矢理、希望を見出そうと思えばできるかな。

フツーの人=家政婦さんの死がこんな破壊力を持つとは。デビュ―から5作目、アルヴテーゲンの筆が冴えている。壮絶な作品です。

日本語版:

影 (小学館文庫)
影 (小学館文庫)

 

 

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空振り「アンナ・カレーニナ」

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一応記録しておきます・・・見られなかったけど

ロンドンのプーシキン・ハウスで、モスクワ・ヴァフタンゴフ劇場のダンス版「アンナ・カレーニナ」の中継録画上映会でした。

Режиссер-постановщик -- Анжелика Холина
Сценография -- Мариус Яцовскис

<CAST>
Анна Каренина -- Ольга Лерман
Алексей Каренин -- Евгений Князев
Алексей Вронский -- Дмитрий Соломыкин
Степан Облонский (Стива) -- Валерий Ушаков
Дарья Облонская (Долли) -- Мария Волкова
Екатерина Щербацкая (Кити) -- Екатерина Крамзина

主役オリガ・レルマンは1988年バクー生まれ、女優だがバレエは本格的に習っていた。旦那のカレーニン役は有名俳優のエヴゲーニー・クニャゼフですね、あまり踊らない役かな。

土曜日にモスクワからライブ中継、翌日の日曜に再上映ということで日曜にしたが、まずたどり着くまでが大変だった。日曜によくある保線作業のため、電車の代わりに1時間バス輸送、その後電車に戻って30分でロンドンへ。バスだといつもと景色が違って面白いけれど、時間がかかる。無駄に早起きしなければならなかった。

あとは順調な地下鉄で無事プーシキン・ハウスへ。大英博物館の近く。

ここはロシア文化をイギリスに紹介する拠点として、図書館があったり、ロシア語クラスがあったり。展覧会も常時行われているそう。今回初めて行った。

入り口の黒い扉のベルを押して待っていたら、外の歩道で煙草吸っていたおばさまが、

「開いてるから入っていいわよ」とロシア語で教えてくれた。ここはもうロシアか。

なぜ見られなかったかというと、プロジェクターの調子が悪いのかちゃんとつながっていないのか、シグナルが受信できてなかったり、映像が出ても音が出ない。女性スタッフが3人集まって携帯電話で誰かと話しながらいろいろ試していたが埒が明かず、ついに、

「あのう、お客様の中でこのシステムに詳しい方いらっしゃいませんか」と飛行機で急病人が出たときみたいな呼びかけをする始末。「詳しくないけど」と助けを申し出た女性がいたが、やっぱり駄目だった。

会場は40人くらい入れる、大き目の会議室程度の広さ。けっこういっぱいになっていたのに、どうしても機械が動かず、上映会は中止、その場でチケット代金払い戻しとなった。え〜。

「田舎から振り替えバスで来たのに」といったら隣りのロシア人女性が同情してくれ、ちょっと世間話でロシア語をしゃべった。

日曜日の午後3時に暇になってしまった。博物館に行こうかとも思ったが微妙な時間だし、ハーフターム(学期なかばの休暇)だから子供たちで混んでいそう、と面倒になり、画材屋で画材の補給をするにとどまった。

ストレートプレイも野心作が多いヴァフタンゴフ劇場による、バレエとはまた違うモダンな踊り版アンナ、観られなくて残念。でもまた機会はあるでしょう。

ちなみに帰りは線路の工事が終わって、直通電車が復活していた。面白い休日だったと思えばいいか。

<追記>翌日メールが来まして、イベント開催できなかったことの謝罪と、4月に改めて上映会をするので無料で来てくださいとのこと。それに1年プーシキン・ハウスの会員にしてくれるそうだ。図書館で本を借りられるのかしら。ロンドンにはしょっちゅう行けないし、どうしようか考え中。

トレイラー。

 

 

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K.アルヴテーゲン「恥辱」

JUGEMテーマ:読書

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スノードロップが咲いた。春は近い。

140217-2

カーリン・アルヴテーゲンの2005年作『Skam』のロシア語訳を読んでみた。ロシア語題は「Стыд」、かなり強い”恥”。

彼女の文体は平明な言葉で複雑な心理をわかりやすく書いているので、ロシア語でもわかるかと思って。大筋は追えたかな〜程度ですが。

ストックホルムに住む2人の女性:

38歳のモニカは医師として成功しているが、十代のころに兄を事故で亡くしている。母子家庭のスターだった兄が死んで自分だけ生き延びたのが後ろめたく、責任があるかのように感じている。日本語訳の「恥辱」よりも、罪悪感に近い。

もう一人は50代のマイブリット、体が不自由でヘルパーに見の周りのことを世話してもらっている。(超肥満のため、というところを読み取りそこねていた。修業が足りない)

美少女であった彼女、宗教的に凝り固まった両親から、お前は教会に役に立つようにと産んだのだ、自分で選んだ相手と結婚なんかもってのほか、と「原罪教育」を叩きこまれて育った。恋をして家出同然に結婚しても、親の呪いから逃げられず、夫とうまくいかなくなり・・・という事情がある。

お互い面識もないこの2人が、ある事故をきっかけに接点を持ち・・・という話。

「それで、殺人はいつ起こるの?」と読んでいたが、最後まで起こらず。あくまで心理的なスリラー。それでも十分ハラハラする展開。

”この事故”が記憶にある”あの事故”のパターンとぴったり一致した、とモニカが思いこんだことから、いつもは理性的な彼女が暴走しはじめる。

その行動を偶然目撃するのがマイブリット。

モニカの壊れ方とその大胆な行動には、こっちまで心拍数が上がります。

子供のころに理不尽に植えつけられた罪の意識の破壊力がおそろしい。植えつけた親も、自分でもどうしようもなかったり、あるいはむしろ子供に良かれと思っていたりするので、単純な糾弾はできないのだが。

最後に多少の救いと平和が垣間見られるので、読後感は悪くない。救いをもたらすのが、現実に本当に「罪」を犯してそれを償っている人であるというのが面白い。

アルヴテーゲンの作はマフィアが出てきてカーチェイス、とかはなく、身近で起こっても不思議はない事件をテーマにしていて、飛躍がないため話がたどりやすい。邪道な読み方で作者には悪いけど、もう1作くらいロシア語訳でチェックしようかと思う。

英訳:

Shame
Shame

ただし後に「Sacrifice」(犠牲)という題に変えられている。

和訳:

恥辱 (小学館文庫)

 

 

 

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