『Жёны』(妻たち)

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090319-1

この週末はケンブリッジで活躍するアマチュアのロシア語劇を2つ見た。最初は、ロシア文豪の妻5人の夢の共演(?)、『Жёны』。詩人で劇作家のЕлена Исаеваの作品。

by Russian Amateur Dmitri Turchaninov Theatre in Cambridge

<登場人物>

Наталья Гончарова(プーシキンの妻ナタリア)

Анна Достоевская(ドストエフスキーの妻アンナ)

Софья Толстая(トルストイの妻ソフィア)

Ольга Книппер-Чехова(チェーホフの妻オリガ)

Елена Булгакова(ブルガーコフの妻エレーナ)

時代もまちまちだし、生前は会ったこともない5人が、図書室みたいな場所に招かれている。亡くなった夫とまた会える、と聞いて来たようだが、しばらく待たされ、そこに男が1人登場。実は会えるのは1人だけだと言う。妻として最も夫を愛していた人がその権利があるらしい。

「その権利ならわたしにある」と思うそれぞれが、夫との結婚生活、思い出を語る。が、「夫」たちがクセの強い作家ですから、そんなに平穏な生活ができた人はいない。紆余曲折あった。しかも話を聞いている他の4人が「再婚したくせに」とか(笑)、「あら、お手紙にはこんなこと書いてあったでしょう」と書簡集やら日記やらの抜粋を読みあげて反論したりする。

プーシキンの妻は社交界の花で、文学なんか全然分からず、ちょっと男関係軽はずみだったし。(お陰でプーシキンは決闘で命を落とすはめに)

ドストエフスキーの妻は夫のギャンブル依存症と貧乏に苦労。トルストイの妻が激しい性格で夫とケンカもしたことは有名だし。

チェーホフの妻は女優で(三人姉妹のマーシャを演じた人)、仕事があるから長期の別居婚。

ブルガーコフの妻エレーナはスターリン独裁体制で不遇な夫を支え、一番「同志的」つながりが強かったかもしれない。20世紀作家の妻、という印象。

面白いのは回想中の「夫」役はすべてさっきのおっさん一人が演じたこと。シャツを変えたり、帽子やらカバンやら小道具を使ったりしてささっと変化する。劇団員が足りなかったのでなく、元々「ひとりの男優が演じる」役だとのこと。

それぞれ性格の違う妻たちの特徴がよく出て、徹底的にリサーチした結婚生活の話も興味深くて、脚本がすごいと思う。

妻たちは自分が選ばれたくて舌戦もするが、「でも、この人は旦那さんの才能ではなく、本人自身に惚れていた、それが真の愛かも」と他の人を推薦に回ったりもする。さんざ苦労させられたことを思い出して自分はもう会う必要なし、と思ったのか??

作家とその妻の関係もいろいろですよね。同志的な妻より、文学なんか関係ない別の生物みたいな美女を求める人もいるだろうし、ミューズが必要な人、秘書が必要な人もいるだろう。派手なケンカもしながらどうも離れられないという結びつきの関係もあるだろうし。

「どう愛されたか」でなく「どう愛したか」という視点なのが良いです。

すでにモスクワとサンクトペテルブルクでプロの劇団が上演したそうだ。そのうち見てみたいな。今回の上演はアマチュアとしては質が高かったとはいえ、やはり演技の面では物足りない。プロならもっと丁々発止とやり合ってくれそう。ブルガーコフの妻役のマリア・ネチャーエワさんが一番堂々としていた。現代人に一番近いので演じやすいかもしれない。

会場はけっこう郊外の教会、写真を撮るのを忘れた。帰りは線路のような「バス専用道」を通るバスに乗ってみた。11時には誰もいない。プラットフォームがあるバス停。

110319-1

 

 

 

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英露・コメディ・ナイト@プーシキンハウス

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250219-1

春めいてきたというより、時々初夏の暖かさと日差しになる。すでに半袖やタンクトップの若いもんが出現。わたしは春コートに着替え。

そんな天気の良い今日、お散歩していたら、カラスに向かって「サンキュー、サンキュー!!」と大声でお礼を言っているご婦人に遭遇。こちらの視線に気づいたのか、彼女「あら、うるさくてごめんなさい。あのカラスさんがね、カーカー言って、今朝わたしがなくした鍵が道端に落ちているのを教えてくれたの。だからお礼を言っているの」とのことでした。「おばさん、そこに光ってるものあるよ!」と知らせたんですか、カラスさん、親切!

まだ四十九日も済まないのにロンドンのプーシキンハウスのコメディ・ナイトに行ってきた。

ANGLO-RUSSIAN COMEDY NIGHT

イギリス人のコメディアンで作家のViv Groskopさんと、ジャーナリストでプロデューサーになるのかな?ロシア人のAliona Muchinskayaさんが、イギリス人がロシアに住むのと、ロシア人がイギリスに住むのと、どっちが大変かを語り合うお笑いトークショー。

イギリス人のヴィヴ・グロスコップさんは、例の、『The Anna Karenina Fix』を書いた方ね。

まず会場に来ているお客のチェック。だいたいロシア人とイギリス人が半々、どちらでもない日本人やイタリア人がちょっと。あと、アイルランドの男性と、最近結婚したロシア人の奥さん、それがきっかけでロシア語を習い始めた姑さん(偉いね)が来ていた。アイルランド人の旦那さんは、

「で、あなたはロシア語習ってるの?」と聞かれて

「いいえ」と答え、

「やばいわよ、この結婚の未来は!」といじられていた。新婚さんにそんな不吉なことを言うのもあれなので、フォローのため、「わかった、そうしよう」だけロシア語で覚えればいい、とアドバイスされていたが(笑)。

イギリス人だが「先祖はロシア人かも」と勝手に思いこんでロシア語を勉強して留学もしたヴィヴさん、「グロスコップ」という苗字、ドイツっぽいけど実はイディッシュ語、結局ポーランド系ユダヤ人だったことが後になってわかったそう。彼女はロシア語の苦労が印象に残ったようだ。最初の授業が、英語ならハローで済むものが「ズドゥラーフストヴィチェ」だもんね、長いし面倒くさいよね。

一方仕事でロンドンに来て居ついてしまったアリオーナさんは、イギリス人の行動が面白いようだ。彼女がまず驚いたのが、パブかどこかの外の席で足元に大人しい犬を座らせていた紳士。急にワンちゃんが「ワン!」とほえた(英語だからワンじゃないが)。すると紳士は「I beg your pardon?」と聞いたそうだ。これで会場の半分強の人が笑う。「すみません今何とおっしゃいました?」というように上司にも使える言い回しですものね。

それからロンドンのオペラハウスで、超有名歌手が第一声を発しようとしたその時にゲホゲホ咳き込んだ客がいたけど、周囲の客がそちらを「ジーッ」と見ただけだったのも驚いたそう。ロシアだと「うるせー」と後ろの席から口ふさがれるのか?質問すればよかった。

それぞれどこに驚くかもお国柄、たぶん電車が遅れるのはロシア人には気にならないかも。

ヴィヴさんが「あのオリヴィエっていう、食べ物とも思えないサラダは何なの?」と苦情を言う。イギリス人にまずいもの認定される料理があるとは、どんだけ不味いんだ。でもアリオーナさんは、「あれはフランス人シェフが伝えた立派なサラダ、美味しいわ」と弁護。ちょっと食べてみたくなった。

結局「どっちが大変か」はわからずじまいですが、2人とも大変と言いながら楽しんでいる様子。もちろん2人の個人的印象でもあるけど、やはりかなり違った国民性の人たちだなあと思う。

おまけ:モスクワの地下鉄の注意。痛そう:

250219-2

 

 

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Анна Каренина (мюзикл) アンナ・カレーニナ(ミュージカル)@映画館

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220119-1

ちょっと(だいぶ)サボってしまいました〜。

かなり前に観た「アンナ・カレーニナ」のミュージカル! モスクワ、オペレッタ劇場のプロダクション、録画されたものを映画館で。
<キャストはまとめて>

Екатерина Гусева, Сергей Ли, Наталия Быстрова, Александр Маракулин, Денис Дэмкив, Максим Заусалин, Андрей Александрин, Лика Рулла

言わずと知れたレフ・トルストイの名作。19世紀帝政ロシアで政府高官の妻アンナが青年将校ヴロンスキーと道ならぬ恋をして社会から押し出され、息子とも引き離され、苦悩して悲劇の最期を迎える。対比して、田舎で大地と共に生きる地主リョーヴィンが令嬢キティ(ヴロンスキーに振られる)と結婚して幸せな家庭を作る話も語られる。

映画は昔から多数作られている。ストレートプレイやオペラ、バレエまでならまだわかるが、ミュージカル…? あのアンナがガンガン歌って踊るの? ――見るかどうか迷ったけど、せっかく「ステージ・ロシア」が地元に比較的近いケンブリッジの映画館でやってくれるのだから、と行ったら、エネルギッシュでスピード感あり、ダンスも歌もノリノリなパワフルな舞台が見られた。

220119-2

テーマは鉄道のようだ、大きな駅のシーンから始まる。駅長?(誰?)が「旅にはルールがあるよ、ルートを外れるなよ」みたいな歌を歌う。汽車がドドド〜と入ってくる。ここが舞踏会上やモスクワのスケートリンクなどに早変わりする。

お上品な上流階級、でも人妻の恋愛なんて普通のことだった。こっそり、軽く、家庭に迷惑かけない程度なら、誰も何も言わない。

真面目なアンナはどっぷり真剣に愛して家庭を壊す。「外れて」しまった女に世間は冷たい。

一方キティは、もう婚約間近と見られていたヴロンスキーを、一度の舞踏会であっさりアンナに取られて絶望する。実は理想家の地主リョービンに一度告白されていたのだが、どうもぱっとしない男のように感じて断ってしまった。結局彼と結婚、田舎の広大な農地でよく働く夫(関係ないが小作農夫が皆シックスパックのやたらいい男・笑)と暖かい家庭を築く。

舞台を2分割してアンナとキティが同じ歌詞を違う意味で歌う演出が面白かった。

そうそう、ヴロンスキーとアンナの夫も同じく、「アンナはどうしてやったら幸せになるんだ?(おれにこれ以上どうしろと?)」と舞台に並んで悩む。彼女は息子のセリョージャくんがいないとダメなんですよね。

ヴロンスキーはセルゲイ・リー、東洋人の顔だった。韓国か中国系?

アンナのエカチェリーナ・グーセワは美貌だし歌唱力抜群、花のある女優さん。初めて見たけど、ロシアのミュージカルは初めてだから当然、知らない人ばかりです。

特に踊りが全員キレがあり爽快だ、さすがロシア。違和感のないアンナ・カレーニナ・ザ・ミュージカルでした。

映画館版のトレイラー:

 

 

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バレエ『Mayerling』@映画館

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151018-1

本当はロイヤル・オペラハウスでのエドワード・ワトソンの回の『Mayerling』(邦題は「うたかたの恋」)を予約していたのですが、彼は負傷してしまったそうで、代役となり、行く気をなくしてリセールに出してしまった。ロイヤルではキャンセル・返金はできないが、リセールに出してもらってそれが売れたら手数料を引いた金額の返金となる。または別の公演に交換することもできるが、たいてい売れます。

また別キャストだが、映画館で中継されたものを観た。マックレーとラムのペア。

<Credits>
Choreography -- Kenneth MacMillan

Music -- Franz Liszt

<Performers>
Conductor -- Koen Kessels
Crown Prince Rudolf -- Steven McRae
Baroness Mary Vetsera -- Sarah Lamb
Countess Marie Larisch -- Laura Morera
Empress Elisabeth -- Kristen McNally
Princess Stephanie -- Meaghan Grace Hinkis
Mitzi Caspar -- Mayara Magri
Bratfisch -- James Hay
Emperor Franz Joseph -- Gary Avis
Colonel Middleton -- Nehemiah Kish

演劇的バレエを得意とするマクミランの、男性ダンサーを中心に置いた心理的な、しかし踊りはめっちゃ大変な作品。

1889年、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフが恋人の男爵令嬢マリー・ヴェッツェラと心中するという大スキャンダルを題材に、政治的に緊迫する重苦しい宮廷内で追い詰められ破滅にむかう皇太子を描く。よくバレエにしたもんだ。

無理に政略結婚させられたルドルフ、お妃が嫌いでいじめる。母のエリザベート皇后(美貌のシシー様)にはでかい図体で甘えようとして拒絶され、すねる。女性全般との関係がこじれたのはこの辺に原因が?

十代の少女マリーを紹介されると夢中になって、「いっしょに死んでくれ」と言う。マリーも若くてのぼせているから、恋のために死ぬワタシ、に酔って、盛り上がってしまう。危ない。

昔見たときはあまり細かいところがわからなかったけど、映画館の大画面でときにアップで見ると、それぞれの女性との関係がパ・ド・ドゥの違いにはっきり表れている。パートナーの体を投げるわ、肩にのせて回すわ、からまるわ、超絶ワザの連続。

インタビューでサラ・ラムがジョークで「お家で真似しないでね♪」と言っていた。無理だから心配しなくて大丈夫。

161018-1

堅苦しそうな宮廷から自堕落な娼館などを舞台に、王室内DVとかクスリ漬けとか18禁だ。ダークでヘンタイ、すばらしかった。2人がこれから死のうというときの踊りはもう、呼吸をするのを忘れるくらいスピーディかつスリリングな展開。座って観ているだけで疲労した。これを1978年に創ったマクミラン、おそろしいわ。

ダーシー・バッセルの紹介するリハーサル風景、「ちょっと簡単すぎるから変えるわよ」とか言って、コーチが鬼(笑):

 

 

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イアン・マッケランの「リア王」

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041018-1

プーシキンハウスでのスパイ・ドラマ上映中、拍手が上がったシーンがある。SSの上官があまり酷いことをするので、ドイツ兵が逆らう場面(というかボスを攻撃!)。組織の人間でも、自分の倫理観を優先した行為ですね。

「リア王」にも似た場面あったなあ、と考えていたら、イアン・マッケラン主演の舞台が映画館で中継されるではないか。直前に気づいたためあまり良い席はなかったけど、何とか見られた。

サー・イアンは10年前にもリア王を演じている(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー版)。今回のプロダクションはナショナル・シアターだが、チチェスタ―の小劇場向けの作を、ロンドンのウエストエンドに持ってきたもの。

『KING LEAR』
Duke of York's Theatre
Directed by Jonathan Munby

Luke Thompson    . . . . . . . . . . .    Edgar
Kirsty Bushell    . . . . . . . . . . .    Regan
Sinéad Cusack    . . . . . . . . . . .    Kent

Claire Price    . . . . . . . . . . .    Goneril
Anita-Joy Uwajeh    . . . . . . . . . . .    Cordelia
Anthony Howell    . . . . . . . . . . .    Albany
Jake Mann    . . . . . . . . . . .    Burgundy

Ian McKellen    . . . . . . . . . . .    King Lear
James Corrigan    . . . . . . . . . . .    Edmund
Daniel Rabin    . . . . . . . . . . .    Cornwall
Danny Webb    . . . . . . . . . . .    Gloucester

背景、衣装は完全に現代風。リア王の時代にユニオンジャックなんてないが、気にしない。

時代劇風だと「そんなもんか」と見る芝居も、普通にその辺にいる姿(王族はわたしの近くにいないけど)で見ると、今起きていることのようだ。今もよくある話かも、富豪の相続で子孫がもめるとか、親子、兄弟間の確執とか。

リア王は3人の娘に「わしを愛してる順」に財産分けをしようとして、本当は一番ひいきの末娘が「何いってるのお父さん、あほらしい」と反抗したら激昂、その場で勘当してしまう。

忠臣からの慕われ方からして以前は立派な賢王だったようなのに、認知症かな。突然発症したのか、みんな気づかなかったのだろうか。

弱った親をどんどん迫害する上の娘2人は血も涙もないが、よっぽど妹贔屓がひどかったのかな、と思ったり。

041018-3

キャスト紹介写真から、左からゴネリル、コーディーリア、リーガン

歳も違うが、お母さん違うよね?(笑)

もう最近は劇内家族で人種混ざっているのは珍しくないですが。そうそう、今回は忠臣ケントが女性でしたね(一番上の写真のスーツの方)。「悪い姉」2人の性格もくっきり区別して描かれていて、BBCの現代ドラマに出てきそうだった。

そしてグロスター伯の腹違いの兄弟。

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エドマンドとエドガー。

こちらは婚外子だからって分かりやすく差別されてきたエドマンドが、兄に濡れ衣を着せて追放させ、父の地位までも奪うも、最後は撃ちとられる。悪いやつだが、ひねくれちゃうのも理解できる。エドガーは辛い思いはしないで育った分、ぼーっとして人の悪意が想像できず、ひどい目に遭って初めてびっくりする。父親に対する愛情には疑いや曇りがなく、まっすぐだ。でもこの父ちゃん、奥さんの妊娠中に浮気してたんだよ、とんでもないな〜。昔の人は「エドマンドは成敗されて当然」で片づけたのでしょうか。やっぱり「ちょっと気の毒だ」と思ったよね。

舞台で本格的に土砂降りの雨になったりして、さすらう老リア王の体調が心配になっちゃいますが、彼は平気だそうです。役者は体力ある。そしてシェイクスピア劇ならではのキレのいい英語のセリフ、気分が良い。3時間40分と、ロンドンで観たらその日に帰るのは大変な時間、映画館で観られて楽だった。

イアン・マッケランがプロダクションについて語る:

 

 

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NT Live 『マクベス』

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240518-1

映画館で中継のナショナル・シアター『Macbeth』、ロリー・キニア主演ハート

Director - Rufus Norris
Set Designer - Rae Smith

<Cast>

Macbeth - Rory Kinnear
Lady Macbeth - Anne-Marie Duff

11世紀くらいのスコットランドの乱世を背景にしたシェイクスピアの原作を、現代のどことも知れない内戦の地に移した意欲作。

240518-2

荒涼とした風景に引き込まれる。

本編前にディレクターのインタビューが映されたが、ルーファス・ノリスが「世の中がガタガタになっちゃって、携帯電話も通じない、便利も安楽も、いろんなものが剥された状態の社会なんです。本来の秩序は意味がない。来たチャンスをつかむか逃すか、そして結果的に勝つか、敗れ去るか、それは紙一重」というようなことを語っていた。

確かなものは何もない時代に手探りで、迷いつつ走るマクベスだ。

240518-3

(赤い人はマクベスに殺されるダンカン王、Stephen Boxer)

人間だから不安だし後悔もする。魔女たちの言葉にすがる。夫婦がチームとなって戦い、結果は破れるが、その最期は潔い。

キニアは普通の人っぽい外見(?)に声がとてもきれいで通り、細かい感情の動きをくっきりと表現する。

夫人役のアンヌ=マリー・ダフも同じくらい実力がある。ときに「怖い奥さん」だったりするマクベス夫人、彼女の場合は「戦国の女なんだからいざという時にはこれくらい当たり前」と自ら鼓舞しているようだ。

元々マクベスって、「悪人」じゃないですよね。誰でも時と場合によってはこうなるかもしれない。それが恐ろしくもあり、同情もするところ。人間らしさがより強調されたプロダクションと感じた。主役2人の演技がすばらしい。

映画館ライブのトレイラー:

 

 

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チェーホフ「三人姉妹」手話版・RED TORCH THEATREの録画

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290418-1

久々にロンドンのプーシキン・ハウスまで出かけ、チェーホフ「三人姉妹」の中継録画・鑑賞会に参加。ノヴォシビルスクの«Красный факел»(赤い松明って意味かな)劇場、32歳の若手チモフェイ・クリャビン監督の野心作。すごいです。

何がすごいかというと、セリフがほぼ全部手話です!ロシア語字幕つき。

«Три сестры»

Режиссер-постановщик — Тимофей Кулябин
<Действующие лица и исполнители>
Соленый Василий Васильевич — Константин Телегин
Прозоров Андрей Сергеевич — Илья Музыко
Тузенбах Николай Львович — Антон Войналович
Наталья Ивановна — Клавдия Качусова , Валерия Кручинина
Ольга — Ирина Кривонос
Ирина — Линда Ахметзянова
Маша — Дарья Емельянова
Кулыгин Федор Ильич — Денис Франк
Федотик Алексей Петрович — Алексей Межов
Вершинин Александр Игнатьевич — Павел Поляков

話はご存じのとおり、モスクワ育ちのオリガ、マーシャ、イリーナの三姉妹(一番下に弟アンドレイもいる)は、軍人だった父の赴任で田舎町に住むに移ってきた。その父が亡くなり、退屈な町に埋もれる生活を味気なく思っている。姉弟全員が3〜4ヵ国語を話し音楽を愛し、教養があるのに、というか教養がありすぎて、町の人になじめず友達もできない。

オリガは教師の仕事に疲れ、早まって結婚したマーシャは夫を尊敬できずに悩み、世間知らずのイリーナは最初のうちこそ人生に希望を持っているが、働き出してみると職場に合わず、辛くてたまらなくなる。いつかモスクワへ戻ることだけを夢みている3人に、しかし現実は厳しい。

290418-2

左からオリガ、イリーナ、マーシャ。

これを手話でやります。もちろんロシアの手話、さっぱりわからん。ロシア語字幕だけが頼り。全部は読めないけど、話は知っているので何とかついていく。そのうち(拳を2つ作って合わせるのは「働く」って意味だな)とか、「わたしは」「知っていた」など手話も慣れてくる。(ああ、あと「自殺」は胸のところでハラキリみたいな真似していた)みんな喋れないけど笑ったり、あまりコントロールできない声は出すことができる。

いかに静かな舞台だろうかと想像していたのとは違って、音がいろいろある。みんな耳が聞こえないということは、自分のたてる音にも気を使わないということ、足音やラジオやヴァイオリンなど、家のどこかで音がしている。けっこううるさい。

振動は感じることができるので、ラジオに触ってみたり、テーブルの上の独楽を聴くために卓上に耳をつけたりするシーンが面白かった。

言葉を話せず手話だから、自分の内部を表現しきれないもどかしさ、伝わらない絶望が胸に響いてくる。この作品には合う演出かも、と思った。「モスクワに行きたいなら行けばいいじゃん」と今ならつい考えてしまうけど、20世紀になったばかりの頃は女性が自立して生きていくことすら難しかったのだ。ということを、想像するのでなく実感できた気がする。

それにしても俳優がプロだ。手話を1か月くらい特訓して身につけたそうで、きちんと自分のものにして、迫真の演技になっていた。休憩をはさみながら、正味4時間、いつもより集中して見てへとへと、でも感動した舞台。

映画館中継のトレイラー:

 

 

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オスカー・ワイルド『LADY WINDERMERE’S FAN』@シネマ

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140418-3

すっかり春になった。夕方のベランダのチューリップ。

映画館でオスカー・ワイルド作「ウィンダミア卿夫人の扇」の劇場中継を観た。1892年にロンドンで初演された作品。2018年の上演はVaudeville Theatreで。

140418-2

『LADY WINDERMERE’S FAN』 By Oscar Wilde

<CREATIVES & PRODUCTION>
KATHY BURKE DIRECTOR
PAUL WILLS DESIGNER
PAUL KEOGAN LIGHTING DESIGNER
SHANE CULLINAN COMPOSER
DOMINIC DROMGOOLE ARTISTIC DIRECTOR

<Cast>
Samantha Spiro (Mrs Erlynne)
Kevin Bishop (Lord Darlington)
Jennifer Saunders (Duchess of Berwick)
Joseph Marcell (Lord Lorton)
Joshua James (Lord Windermere)
Grace Molony (Lady Windermere)

若く美しいレディ・ウィンダミアは最近子供も生まれて幸せ。自分の誕生パーティを楽しみにしている。が、嫌な話を聞く。夫のウィンダミア卿が年上のアーリン夫人と懇意だというのだ。誰?そんな女性、親戚でもないし。さらに、夫本人が、誕生パーティにアーリンさんを招いた、というではないか。

会いたくない、と思っていても夫人は来てしまう。

140418-1

何か訳あって久しく社交界から離れていた彼女、最近また復帰したいと思っていて、それを夫が助けようとしているらしい。アーリン夫人を丁寧にもてなす夫を見てショックをうけたレディ・ウィンダミア、別の男に走ってやれ、と自棄を起こす。

ヴィクトリア時代に人妻が浮気したら上流社会から締め出されます。事態を察したアーリン夫人、「別の男」の家に乗り込む。そして自分の名誉を捨ててウィンダミア夫人を救おうとする。実はアーリン夫人の正体は…、という、ドタバタ喜劇仕立てで、お上品なヴィクトリア朝貴族社会を皮肉る、ワイルドらしいストーリー。

古風な劇場、衣装も昔風。ギリシャ悲劇でもシェイクスピア劇でも現代風の服装なのに慣れているので、逆に新鮮。

明るく軽いタッチで、笑える。有名なコメディエンヌのジェニファー・サンダースがベリック公爵夫人役でウケていた。みんな「あー面白かった」と劇場を去るわけですが、初演当時の19世紀なら、もっと鋭い社会批判になっていて、観客の胸に残るものは違っていたのかも。堅苦しい階級社会で足を踏み外すとどうなるか、ありあり実感ができたかもしれない。しかもその「踏み外し」には、たとえば男ならいいが女はダメとか、不平等な基準があった。

現代に共通するものもまだあるけれど、深く感情移入して見る感じではない。それでもワイルドのシャープなセリフをきれいな発音・発声で聴くのは楽しい。今年は「ワイルド・シーズン」として2作上演を予定しているVaudeville Theatre、中継も映画館で観られます。

トレイラー:

 

 

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Stage Russia「ワーニャ伯父さん」

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290118-1

なぜか林修先生と熱心に話し込んでいる夢をみて、起きたら11時近かった!しかも内容忘れた、なんだよ呆然。

さて、約5年前にロンドンで観たモスクワ・ワフタンゴフ劇場のチェーホフ作『Дядя Ваня』(ワーニャ伯父さん)の録画が映画館に来た。この舞台を見たあたりから、昔やって放置していたロシア語をもう一度やらなきゃなあと思った気がする。

ということで、もちろん出かけた。

<Creative Team>
Director - Rimas Tuminas
Music - Faustas Latenas
<Cast>
Ivan Petrovich Voynitsky - Sergey Makovetskiy
Aleksandr Vladimirovich Serebryakov - Vladimir Simonov
Elena Andreevna - Anna Dubrovskaya
Sofia Alexandrovna (Sonya) - Eugenia Kregzhde
Maria Vasilyevna Voynitskay - Liudmila Maksakova
Mikhail Lvovich Astrov - Artur Ivanov

チェーホフの古典をリトアニア出身の監督リマス・ トゥミナスが斬新に演出した作品。それぞれのキャラが立っていて面白い。

ロシアの劇場はレパートリー形式、同じ出し物を何年も続ける。その中で演出も役者も変化・成長していく。今回も前見たときと変えたところに何カ所か気づいた。ニワトリを追いかけるシーンはシンプルな前の方がよかったが・・・。

俳優が違うのも大きい。前回ドクターは「リヴァイアサン」にも出たウラジーミル・ヴダヴィチェンコフ。「もう昔のハンサムな面影はないねえ」と乳母のおばあちゃんにずけずけ言われるほどにはくたびれていなかったので、今回のアルトゥール・イワノフは適役なのかも(え、失礼?)。

290118-2

Артур Иванов、Анна Дубровская, Сергей Маковецкий

ヴダヴィチェンコフの方が格好いいが、しょうがない。教授の若い妻エレーナ役のアンナは相変わらず美人、持ちがいいわ。

初回の印象が強烈すぎ、前のをなぞっているかのように見てしまったが、今回は特にドクターに好かれ、自分も惹かれてしまって困るエレーナと、ドクターに片思いし失恋するソーニャの女同士の関係に新たな発見があったというか、面白さを感じた。

このプロダクション、主役マコヴェツキーがいつまでやれるかにかかっているが、元々老け顔(笑)、まだまだ行けそうな名優だ。

トレイラー、ドクター役は昔のヴダヴィチェンコフ:

 

 

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ENB「ジゼル」

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290917-1

去年秋のイングリッシュ・ナショナル・バレエ、アクラム・カーンの「ジゼル」、見終えてすぐに予約しておいた今年のパフォーマンスに行ってきた。

Akram Kharn's Giselle
Direction and Choreography - Akram Khan

Music, after the original score by Adolphe Adam - Vincenzo Lamagna

<Cast>

Giselle - Erina Takahashi

Albrecht - Isaac Hernandez

Hilarion - Oscar Chacon

Myrtha - Atina Quagebeur

ほとんど1年前の予約、配役なんて知らなかったのですが、偶然去年とほとんど同じだった。主役ジゼルがコジョカルから高橋絵里奈さんに替わっただけで、アルブレヒトもヒラリオンも同じ人。欲をいえばセザール・コラレスのヒラリオンが見たかったけど、皆すばらしく、不満はありません。

ロマンチックな原作を身分制度厳しいインドに移し、ビンボーな工場労働者とブルジョアの話に置き換えた。無駄な飾りもなく、生な感情が描きだされる。

去年はただただ驚いて呆然と見守った斬新かつ、象徴的なのに妙にリアルなジゼル、今回は落ち着いて、細かいところにも注意して見られた、と思う。

ジゼルが殺されたのもわかったし、問い詰められたアルブレヒトが開き直って抵抗し、「生まれが違うのがなんだ、人間の価値は同じはずだ」と主張さえしている様子なのが感じられた。ちょっと遊んだだけじゃない、本気でジゼルが好きだったんですね。だから彼は属していたクラスから排除されてしまうんだけど。

290917-2

(このジゼルが高橋さんに入れ替わった版でした)

第1幕は男女の速度ある群舞がとぎれずパワフルに躍動し、自分のせいじゃないのに社会の底に置かれている人の悲しみと怒りが伝わる。

2幕はジゼルが死体からゾンビ段階?を経てウィリになる、それからのアルブレヒトとのパ・ドゥ・ドゥが、絶望的なだけに美しい。

人間の複雑さ、ダメなところ、それでも生まれる愛情が個人・集団の肉体で表現される。

圧倒的なパフォーマンスを観ながら、人間は昔から変わらず差別し合い、殺し合って生きてきたのだよな、とつくづく思う。

みんなが食うや食わずだった狩猟採集時代はそうでもなかった気がするが。−−覚えてないし。

また機会があったら3回目以後も観ますよ。これは21世紀のクラシックだと思う。

今年のトレイラー:

 

 

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