NT Live 『マクベス』

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240518-1

映画館で中継のナショナル・シアター『Macbeth』、ロリー・キニア主演ハート

Director - Rufus Norris
Set Designer - Rae Smith

<Cast>

Macbeth - Rory Kinnear
Lady Macbeth - Anne-Marie Duff

11世紀くらいのスコットランドの乱世を背景にしたシェイクスピアの原作を、現代のどことも知れない内戦の地に移した意欲作。

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荒涼とした風景に引き込まれる。

本編前にディレクターのインタビューが映されたが、ルーファス・ノリスが「世の中がガタガタになっちゃって、携帯電話も通じない、便利も安楽も、いろんなものが剥された状態の社会なんです。本来の秩序は意味がない。来たチャンスをつかむか逃すか、そして結果的に勝つか、敗れ去るか、それは紙一重」というようなことを語っていた。

確かなものは何もない時代に手探りで、迷いつつ走るマクベスだ。

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(赤い人はマクベスに殺されるダンカン王、Stephen Boxer)

人間だから不安だし後悔もする。魔女たちの言葉にすがる。夫婦がチームとなって戦い、結果は破れるが、その最期は潔い。

キニアは普通の人っぽい外見(?)に声がとてもきれいで通り、細かい感情の動きをくっきりと表現する。

夫人役のアンヌ=マリー・ダフも同じくらい実力がある。ときに「怖い奥さん」だったりするマクベス夫人、彼女の場合は「戦国の女なんだからいざという時にはこれくらい当たり前」と自ら鼓舞しているようだ。

元々マクベスって、「悪人」じゃないですよね。誰でも時と場合によってはこうなるかもしれない。それが恐ろしくもあり、同情もするところ。人間らしさがより強調されたプロダクションと感じた。主役2人の演技がすばらしい。

映画館ライブのトレイラー:

 

 

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チェーホフ「三人姉妹」手話版・RED TORCH THEATREの録画

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290418-1

久々にロンドンのプーシキン・ハウスまで出かけ、チェーホフ「三人姉妹」の中継録画・鑑賞会に参加。ノヴォシビルスクの«Красный факел»(赤い松明って意味かな)劇場、32歳の若手チモフェイ・クリャビン監督の野心作。すごいです。

何がすごいかというと、セリフがほぼ全部手話です!ロシア語字幕つき。

«Три сестры»

Режиссер-постановщик — Тимофей Кулябин
<Действующие лица и исполнители>
Соленый Василий Васильевич — Константин Телегин
Прозоров Андрей Сергеевич — Илья Музыко
Тузенбах Николай Львович — Антон Войналович
Наталья Ивановна — Клавдия Качусова , Валерия Кручинина
Ольга — Ирина Кривонос
Ирина — Линда Ахметзянова
Маша — Дарья Емельянова
Кулыгин Федор Ильич — Денис Франк
Федотик Алексей Петрович — Алексей Межов
Вершинин Александр Игнатьевич — Павел Поляков

話はご存じのとおり、モスクワ育ちのオリガ、マーシャ、イリーナの三姉妹(一番下に弟アンドレイもいる)は、軍人だった父の赴任で田舎町に住むに移ってきた。その父が亡くなり、退屈な町に埋もれる生活を味気なく思っている。姉弟全員が3〜4ヵ国語を話し音楽を愛し、教養があるのに、というか教養がありすぎて、町の人になじめず友達もできない。

オリガは教師の仕事に疲れ、早まって結婚したマーシャは夫を尊敬できずに悩み、世間知らずのイリーナは最初のうちこそ人生に希望を持っているが、働き出してみると職場に合わず、辛くてたまらなくなる。いつかモスクワへ戻ることだけを夢みている3人に、しかし現実は厳しい。

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左からオリガ、イリーナ、マーシャ。

これを手話でやります。もちろんロシアの手話、さっぱりわからん。ロシア語字幕だけが頼り。全部は読めないけど、話は知っているので何とかついていく。そのうち(拳を2つ作って合わせるのは「働く」って意味だな)とか、「わたしは」「知っていた」など手話も慣れてくる。(ああ、あと「自殺」は胸のところでハラキリみたいな真似していた)みんな喋れないけど笑ったり、あまりコントロールできない声は出すことができる。

いかに静かな舞台だろうかと想像していたのとは違って、音がいろいろある。みんな耳が聞こえないということは、自分のたてる音にも気を使わないということ、足音やラジオやヴァイオリンなど、家のどこかで音がしている。けっこううるさい。

振動は感じることができるので、ラジオに触ってみたり、テーブルの上の独楽を聴くために卓上に耳をつけたりするシーンが面白かった。

言葉を話せず手話だから、自分の内部を表現しきれないもどかしさ、伝わらない絶望が胸に響いてくる。この作品には合う演出かも、と思った。「モスクワに行きたいなら行けばいいじゃん」と今ならつい考えてしまうけど、20世紀になったばかりの頃は女性が自立して生きていくことすら難しかったのだ。ということを、想像するのでなく実感できた気がする。

それにしても俳優がプロだ。手話を1か月くらい特訓して身につけたそうで、きちんと自分のものにして、迫真の演技になっていた。休憩をはさみながら、正味4時間、いつもより集中して見てへとへと、でも感動した舞台。

映画館中継のトレイラー:

 

 

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オスカー・ワイルド『LADY WINDERMERE’S FAN』@シネマ

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140418-3

すっかり春になった。夕方のベランダのチューリップ。

映画館でオスカー・ワイルド作「ウィンダミア卿夫人の扇」の劇場中継を観た。1892年にロンドンで初演された作品。2018年の上演はVaudeville Theatreで。

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『LADY WINDERMERE’S FAN』 By Oscar Wilde

<CREATIVES & PRODUCTION>
KATHY BURKE DIRECTOR
PAUL WILLS DESIGNER
PAUL KEOGAN LIGHTING DESIGNER
SHANE CULLINAN COMPOSER
DOMINIC DROMGOOLE ARTISTIC DIRECTOR

<Cast>
Samantha Spiro (Mrs Erlynne)
Kevin Bishop (Lord Darlington)
Jennifer Saunders (Duchess of Berwick)
Joseph Marcell (Lord Lorton)
Joshua James (Lord Windermere)
Grace Molony (Lady Windermere)

若く美しいレディ・ウィンダミアは最近子供も生まれて幸せ。自分の誕生パーティを楽しみにしている。が、嫌な話を聞く。夫のウィンダミア卿が年上のアーリン夫人と懇意だというのだ。誰?そんな女性、親戚でもないし。さらに、夫本人が、誕生パーティにアーリンさんを招いた、というではないか。

会いたくない、と思っていても夫人は来てしまう。

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何か訳あって久しく社交界から離れていた彼女、最近また復帰したいと思っていて、それを夫が助けようとしているらしい。アーリン夫人を丁寧にもてなす夫を見てショックをうけたレディ・ウィンダミア、別の男に走ってやれ、と自棄を起こす。

ヴィクトリア時代に人妻が浮気したら上流社会から締め出されます。事態を察したアーリン夫人、「別の男」の家に乗り込む。そして自分の名誉を捨ててウィンダミア夫人を救おうとする。実はアーリン夫人の正体は…、という、ドタバタ喜劇仕立てで、お上品なヴィクトリア朝貴族社会を皮肉る、ワイルドらしいストーリー。

古風な劇場、衣装も昔風。ギリシャ悲劇でもシェイクスピア劇でも現代風の服装なのに慣れているので、逆に新鮮。

明るく軽いタッチで、笑える。有名なコメディエンヌのジェニファー・サンダースがベリック公爵夫人役でウケていた。みんな「あー面白かった」と劇場を去るわけですが、初演当時の19世紀なら、もっと鋭い社会批判になっていて、観客の胸に残るものは違っていたのかも。堅苦しい階級社会で足を踏み外すとどうなるか、ありあり実感ができたかもしれない。しかもその「踏み外し」には、たとえば男ならいいが女はダメとか、不平等な基準があった。

現代に共通するものもまだあるけれど、深く感情移入して見る感じではない。それでもワイルドのシャープなセリフをきれいな発音・発声で聴くのは楽しい。今年は「ワイルド・シーズン」として2作上演を予定しているVaudeville Theatre、中継も映画館で観られます。

トレイラー:

 

 

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Stage Russia「ワーニャ伯父さん」

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290118-1

なぜか林修先生と熱心に話し込んでいる夢をみて、起きたら11時近かった!しかも内容忘れた、なんだよ呆然。

さて、約5年前にロンドンで観たモスクワ・ワフタンゴフ劇場のチェーホフ作『Дядя Ваня』(ワーニャ伯父さん)の録画が映画館に来た。この舞台を見たあたりから、昔やって放置していたロシア語をもう一度やらなきゃなあと思った気がする。

ということで、もちろん出かけた。

<Creative Team>
Director - Rimas Tuminas
Music - Faustas Latenas
<Cast>
Ivan Petrovich Voynitsky - Sergey Makovetskiy
Aleksandr Vladimirovich Serebryakov - Vladimir Simonov
Elena Andreevna - Anna Dubrovskaya
Sofia Alexandrovna (Sonya) - Eugenia Kregzhde
Maria Vasilyevna Voynitskay - Liudmila Maksakova
Mikhail Lvovich Astrov - Artur Ivanov

チェーホフの古典をリトアニア出身の監督リマス・ トゥミナスが斬新に演出した作品。それぞれのキャラが立っていて面白い。

ロシアの劇場はレパートリー形式、同じ出し物を何年も続ける。その中で演出も役者も変化・成長していく。今回も前見たときと変えたところに何カ所か気づいた。ニワトリを追いかけるシーンはシンプルな前の方がよかったが・・・。

俳優が違うのも大きい。前回ドクターは「リヴァイアサン」にも出たウラジーミル・ヴダヴィチェンコフ。「もう昔のハンサムな面影はないねえ」と乳母のおばあちゃんにずけずけ言われるほどにはくたびれていなかったので、今回のアルトゥール・イワノフは適役なのかも(え、失礼?)。

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Артур Иванов、Анна Дубровская, Сергей Маковецкий

ヴダヴィチェンコフの方が格好いいが、しょうがない。教授の若い妻エレーナ役のアンナは相変わらず美人、持ちがいいわ。

初回の印象が強烈すぎ、前のをなぞっているかのように見てしまったが、今回は特にドクターに好かれ、自分も惹かれてしまって困るエレーナと、ドクターに片思いし失恋するソーニャの女同士の関係に新たな発見があったというか、面白さを感じた。

このプロダクション、主役マコヴェツキーがいつまでやれるかにかかっているが、元々老け顔(笑)、まだまだ行けそうな名優だ。

トレイラー、ドクター役は昔のヴダヴィチェンコフ:

 

 

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ENB「ジゼル」

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290917-1

去年秋のイングリッシュ・ナショナル・バレエ、アクラム・カーンの「ジゼル」、見終えてすぐに予約しておいた今年のパフォーマンスに行ってきた。

Akram Kharn's Giselle
Direction and Choreography - Akram Khan

Music, after the original score by Adolphe Adam - Vincenzo Lamagna

<Cast>

Giselle - Erina Takahashi

Albrecht - Isaac Hernandez

Hilarion - Oscar Chacon

Myrtha - Atina Quagebeur

ほとんど1年前の予約、配役なんて知らなかったのですが、偶然去年とほとんど同じだった。主役ジゼルがコジョカルから高橋絵里奈さんに替わっただけで、アルブレヒトもヒラリオンも同じ人。欲をいえばセザール・コラレスのヒラリオンが見たかったけど、皆すばらしく、不満はありません。

ロマンチックな原作を身分制度厳しいインドに移し、ビンボーな工場労働者とブルジョアの話に置き換えた。無駄な飾りもなく、生な感情が描きだされる。

去年はただただ驚いて呆然と見守った斬新かつ、象徴的なのに妙にリアルなジゼル、今回は落ち着いて、細かいところにも注意して見られた、と思う。

ジゼルが殺されたのもわかったし、問い詰められたアルブレヒトが開き直って抵抗し、「生まれが違うのがなんだ、人間の価値は同じはずだ」と主張さえしている様子なのが感じられた。ちょっと遊んだだけじゃない、本気でジゼルが好きだったんですね。だから彼は属していたクラスから排除されてしまうんだけど。

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(このジゼルが高橋さんに入れ替わった版でした)

第1幕は男女の速度ある群舞がとぎれずパワフルに躍動し、自分のせいじゃないのに社会の底に置かれている人の悲しみと怒りが伝わる。

2幕はジゼルが死体からゾンビ段階?を経てウィリになる、それからのアルブレヒトとのパ・ドゥ・ドゥが、絶望的なだけに美しい。

人間の複雑さ、ダメなところ、それでも生まれる愛情が個人・集団の肉体で表現される。

圧倒的なパフォーマンスを観ながら、人間は昔から変わらず差別し合い、殺し合って生きてきたのだよな、とつくづく思う。

みんなが食うや食わずだった狩猟採集時代はそうでもなかった気がするが。−−覚えてないし。

また機会があったら3回目以後も観ますよ。これは21世紀のクラシックだと思う。

今年のトレイラー:

 

 

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サティリコン劇場「かもめ」上映

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240917-1

チェーホフ作「かもめ」の録画上映を見てきた。

THE SEAGULL

Written by Anton Chekhov​

Satirikon Arkady Raikin Russian State Theatre

観客は30人くらいかな、そのうち6人はオリガ先生とロシア語のクラスメートだった(笑)。モスクワの劇場の公演、ロシア語上演英語字幕つきを、ロンドンでなく近場で観られて助かる。

<Creative Team>
Director - Yury Butusov
Music - Faustas Latenas

<Cast>
Irina Nikolaevna Arkadina - Polina Raykina
Konstantin Gavrilovich Treplev - Timofey Tribuntcev
Petr Nikolaevich Sorin - Vladimir Bolshov
Nina Zarechnaya - Agrippina Steklova
Ilya Afanasyevich Shamraev - Anton Kuznetcov
Polina Andreevn - Lika Nifontova
Masha - Mariana Spivak
Boris Alekseevich Trigorin - Denis Sukhanov
Evgeniy Sergeevich Dorn - Artem Osipov

サティリコン劇場は風刺劇専門、いろいろ思いきった演出をするが、これも例外ではなかった。

「かもめ」は湖のある田舎町が舞台。片思いだらけ。

文学青年のコンスタンチンは大女優の母アルカージナがかまってくれなくて片思い。一時は両想いだったガールフレンドのニーナまで、母の恋人で人気作家のトリゴーリンに取られてしまう。

トリゴーリンには1年で捨てられるニーナだが、ずっと彼が好き。

コンスタンチンを好きだが全く振り向いてもらえず、好きでもない教師と結婚するマーシャ。結婚後も夫に冷たくして、夫は片思い。

マーシャのお母さんのポーリーナまで、旦那を嫌って医者のドールンに惚れている。「ぼくはもう55歳だよ、今さら人生を変えるのは無理」と冷たくされる。

みんな不幸〜。

今回のニーナは、夢見る乙女、存在感あり。

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右がコンスタンチン。内向してひねくれている。

あまり人のこと(自分の息子のことすら)細かく考えず、自分とその芸のことだけ考えている2人、アルカージナとトリゴーリン。性格はアレだが仕事はできる。

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グレーのコートがアルカージナのポーリーナ・ライキナ。迫力ある。コンスタンチン・ライキンの奥さんかと思ったら娘だった。まだ20代で40代の役。

チェーホフはこれを「喜劇」としているが、本当に笑える、ドタバタ・コメディのような騒がしい舞台。背景は(キタナイ系の)現代アートのようで楽しい。

55歳には絶対見えないドクターも踊ってるし。

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(先日「リア王」でエドガーをやってたくらいの若手オシポフ、可愛いw)

中高年も若い人が演じるのは、走り回り動き回るので、本当に50代だともたないからかも。

ラスト、作家にはなったが才能の限界を感じているコンスタンチンと、あこがれの女優にはなり、でも二流で終わりそう、けれどこれでやっていこうと決意しているニーナが会う場面、いろんな人が交代で二人の役をする。そして場面が繰り返される。

人間は皆役者、誰が入れ替わってもおかしくない、っていう意味かな。

カラフルで斬新で、休憩を入れて4時間ほど、退屈しなかった。もっとも休憩後帰ってしまったお客さんも数人いたが(オリガ先生も「セリフをどなりすぎ」と帰った)。

なかなか見られないロシアの劇場の上演を、近くで見られると嬉しいので、ステージ・ロシアさんにはがんばって儲けてもらいたい。

たまにはオーソドックスな演出のをやったらどうかと思うが・・・。今回もクラスメートのイギリス人で、「かもめ」を初めて観た人がいた。昔のソ連映画版などで見たら逆に「え。こういう話だったの」と驚きそう。

 

 

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「終わりよければ全てよし」@Cambridge Shakespeare Festival

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210717-1

ケンブリッジ大学の庭で上演されるケンブリッジ・シェイクスピア・フェスティヴァル、

Cambridge Shakespeare Festival

当然ながら屋根がなく、天気が悪いとあまり楽しくないので、行かない年もある。今年はダウニング・カレッジでの『All’s Well That Ends Well』(終わりよければ全てよし)を鑑賞。

昔、本で読んだだけ、上演を見るのは初めて。

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Director: David Personae

<Cast>

Bertram -- James Eken

Countess -- Kaitlin Howard

Helena -- Kay Dent

Parolles -- Lawrence Watling

Diana -- Jasmine Horn

最近父を亡くしてロシリオン伯爵の地位をついだ若いバートラム、フランス王に仕えるためにパリに赴く。彼のことをずっと好きなのが、孤児で伯爵家の世話になっているヘレナ。でも身分も違うし、と諦めている。ヘレナの亡き父親は医者、優しく賢い娘だ。

上の公式写真の人と違う配役はケイ・デント。

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そんなヘレナが気に入っているロシリオン伯爵夫人=つまりバートラムのお母さんは、息子が彼女と結婚することに賛成して励ます。勇気づけられたヘレナ、自分もパリへ行き、体調の悪い王様の治療を申し出る。父に教わった療法で見事王の病気が完治。「何でも望むことをかなえてやろう」という約束だったため堂々と、

「ロシリオン伯爵バートラムさんと結婚したいです!」と答える。外堀を埋めた

当のバートラムは子供のころから知っている貧乏なヘレナに異性としての興味なし。王の命令で結婚させられるも、初夜前にとっとと逃亡。

そんなことでは諦めないヘレナ、巡礼の仕度をして後を追う。イタリアでダイアナという娘と知り合うと、偶然にも彼女はバートラムに言い寄られているという。そこで彼女と協力。ダイアナに、彼にとうとうなびいたふりをしてもらった。

「じゃあ今夜、来てくださっていいわ。でも口きかないで、明かりもつけないでね♡」

喜んで“ダイアナの寝室”に忍んでいったバートラム…実はそこにいたのは…ワナだ。逃げたほうが――もちろんまんまと引っかかる。

そして数ヶ月後、ダイアナと結婚しようとするバートラムの目の前に妊娠した妻へレナが現れる。ダイアナにあげたはずの指輪をヘレナが持っているのも知って、観念した(笑)彼は本来の妻の元にもどるのだった。

これに、バートラムのいいかげんでほらふきな従者ペーローレスが懲らしめられるエピソードも混じって、全編笑える話ではあるが、バートラムから見ると愛のない相手と結婚させられるわけで、子供ができたと聞いてちょっと情はわいたようだけど、行く末が心配である。「終わりよければすべてよし」って、まだ終わりじゃないだろう、と思った。

17世紀当時はみんな納得していたのかな。母がいいという相手と結婚しろってこと?

とはいえ屋外上演は楽しい。たまに俳優がお客さんのピクニックの食べ物を失敬したりするのもお約束。バートラム母=伯爵夫人なんか赤ワインのボトルを奪ってラッパ飲み、「これいいワインだわ」と言って返していた。彼女の演技はとても良かったが。ほら吹きのペーローレスもうまくて笑えた。ヘレナは、純情そうなわりに腹黒い手を使って男を追い詰める、にしては大人しい感じがしたかな。そこが怖いってことか。

とりあえず教訓は「ベッドでは顔くらい確認しろ」ということで良いでしょうかね・・・。

フェスティヴァルは8月前半まで開催中、天気にもよるけど、もうひとつくらい観たい。

 

 

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アンドリュー・スコットの「ハムレット」

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今日あたりからまた涼しくなったけど、1週間ほどやたら暑くて30度前後だった。もっと南の方では40年ぶりの34度を記録。しかも草の花粉がすごい飛んで、アレルギー薬漬けの日々。こういう時にかぎって忙しく、2日続けてロンドンに通わなければならなかった。

さすがに疲れてキレそうになったので、ロンドン2日目の夜に芝居へGO。BBCドラマ「シャーロック」のモリアーティ役が可愛いアンドリュー・スコットの「ハムレット」。Almeida劇場(上のポスター)で好評だったプロダクションをハロルド・ピンタ―劇場で再演しているもの。

『Hamlet』 Harold Pinter Theatre
Director -- Robert Icke
<Cast>
Andrew Scott -- Hamlet
Juliet Stevenson -- Gertrude
Angus Wright -- Claudius 
Jessica Brown Findlay -- Ophelia
David Rintoul -- Ghost/Player King 
Joshua Higgott -- Horatio
Luke Thompson -- Laertes
Peter Wight -- Polonius

 

設定は現代。先王の幽霊は城内監視カメラの映像に登場するし、ノルウェー王の動向やロイヤルファミリーのイベントはテレビで報道される。

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デンマーク王の死後すぐに、その弟が王冠と王妃を引き継いだ!王子ハムレットにとっては叔父が父親になるという異様な事態。家族として表向きには仲良さそうにメディアに対応する3人。それが壁のスクリーンにニュース画面として映し出される。見出しがちゃんとデンマーク語(読めないが)になっていた。

あまりに有名なモリアーティの印象を払拭しなくてはならないアンドリューだが、たいへん良かった。話し方は基本低めでやわらかく、アイリッシュ訛りの巻いたRがセクシー。でも神経過敏ですぐ動揺し、激高して直後にそれを鎮めようとしたりする。発言は穏やかでも手が不安そうに動いていたり、全身をよくコントロールしたパフォーマンス。今まで見たことのないタイプの、感情と思考が内部で錯綜しているハムレット、うまいなーと思った。

アンガス・ライトのクローディアスはつかみどころのない政治家ふう。一番生の感情が出るべき「兄の殺害の結果を畏れて神に祈るシーン」でも、心の底の動きが見られない。長年仮面をつけすぎて顔に貼りついてしまった人のよう。

ガートルードはいつも難しい役だと思うが、ジュリエット・スティーヴンソンはさすが、女として新しい夫に夢中な姿(まっ人生そういうこともあるわよね)から、現夫の正体をようやく悟って息子の身代わりに毒をあおって死ぬところまで、変化を見せた。

ジェシカ・フィンドレーのオフィーリア、気丈な娘だったのに周囲からスパイの役など押しつけられて重圧で気がヘンになる。最後は車椅子で登場していた。

インテリアがシンプルすぎてほとんど粗末、これで王室?と思ったが、登場人物がゴージャスなのでそのうち気にならなくなる。面白いプロダクションだったが、結局は主役が良いという結論になるでしょう。

ところで仕事の会議の担当者がデンマーク人だったので雑談のときに聞いてみたら、

「シェイクスピアのハムレットは一度も見たことありません」とのこと。見たくない気持ちはわかる気がする。わたしもオペラ「蝶々夫人」は舞台では観てないわ(話が別?)。

監督とハムとオフェリアのインタビュー。カンバーバッチのハムレットは観たし、向こうもアンドリューのを見に来たけど、非常に個人的なものなので比較にならないそう。

 

 

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ロマン・ヴィクチュク劇場「女中たち」

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ロシアのカルチャー・チャンネルで観た劇場録画「Служанки」(女中たち)、原作はジャン・ジュネ。わーいいのかこんなのテレビで(嬉)。18歳以上対象だそうですけど。

ソランジュとクレールという姉妹の女中が、マダムがいない間に、”奥様と女中”ごっこをして遊んでいる。だんだんエスカレートしてきて、現実の陰謀へ、さらにとんでもない方向へつき進む・・・。

舞台監督ロマン・ヴィクチュク(1936〜)の名を冠した劇場が、彼のプロダクション(プレミアは1988年)を上演。

「Служанки」

Автор -- ЖАН ЖЕНЕ

Постановка -- РОМАН ВИКТЮК

<Действующие лица и исполнители>

Соланж -- ДМИТРИЙ БОЗИН (ロシア連邦功労芸術家)

Клер -- АЛЕКСАНДР СОЛДАТКИН

Мадам -- АЛЕКСЕЙ НЕСТЕРЕНКО

Месье -- ИВАН НИКУЛЬЧА

登場人物全員を男性俳優が演じる。4人とも長身、ありえないほどの肉体美に目が吸いつき、しばらく音声情報が頭に入りません。

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左からクレール、マダム、ソランジュ。

顔見たときは、

「ん……デーモン閣下?」と思ったが、歌舞伎のようでもある。見慣れると面白い。

芝居がかったセリフ回しは、劇中でお芝居しているので当然。そして体がよく動き、踊れる。フレンチ・ポップス、というよりシャンソンかな?がうまくはさまれている。特にダリダの『Je suis malade』(わたしはビョウキ)がはまる。

女の意地悪が、ガタイの良い男がやると根本的にはすぱっと可愛かったりする。

すごーい。ヘン。でもジュネらしい。ロシアの先端は実に鋭利だわ。

トレーラー:

2時間半、呆然と見守りました。物語が終了してからフィナーレのダンスの披露も、観客大喜び。見ると8割が女性ですね。みなさん好きね、ははは。

聖堂でポケモンGOしたのをSNSにアップして有罪になったりするが(ニコライ二世の一家が殺された現場の上に建てた慰霊の聖堂だからねえ)、こういう芝居もやっている。ロシアは奥が深い。

 

マダムの”東洋風の踊り”。閲覧注意。18歳以下は見ちゃだめ。

(曲はHelwa ya Baladi)

 

 

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NT ライブ「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」

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劇場中継を録画で映画館鑑賞、トム・ストッパードの『Rosencrantz & Guildenstern Are Dead』。オールド・ヴィック座での上演から50年を記念して、同じ劇場での公演。(初演は1966年、エディンバラだそう)

『Rosencrantz & Guildenstern Are Dead』

By Tom Stoppard

Director: David Leveaux
Set Designer: Anna Fleischle

<Cast>
Daniel Radcliffe -- Rosencrantz
Joshua McGuire -- Guildenstern
David Haig -- The Player
Matthew Durkan -- Alfred
Luke Mullins -- Hamlet

この劇のおかげもあって世界で最も有名な端役、ローゼンクランツとギルデンスターンを、それぞれダニエル・ラドクリフとジョシュア・マクガイアが演ずる。

ハムレットの学友の2人、新王クローディアスから甥をスパイするよう依頼(というより命令)されるが、彼らより頭のいいハムレットに見破られてしまう。軽い扱いの小物。

劇ではこの2人を主役にしたことで、虚構世界のゆがみが展開する――とわたしは解釈している。

冒頭から、コインを投げての賭けで、表ばっかり80回とか続けて出る。通常の法則が動いていないようだ。フィクションの世界の中だからね。

ギル(めんどくさいから省略)がロー(省略)に、

「お前、最初の記憶って、なに?」と聞くが、ローは覚えてない。

「目を覚ましただろう」とか言う。

記憶なんかないのだ。チョイ役なんだから。シェークスピアもそこまで考えてないの。

いつから、何のためにここにいるかわからない。その後役割を与えられるが、全体の話が見えていないから、右往左往する。可笑しいが、恐ろしい。

普通の人間だって、そうだよね。彼らよりはましでも、気がついたら生きていて、自分が何のために存在するのか、本当に存在するのか、さっぱり確証ないわけです。

出番少ないからゲームをして時間をつぶしたり、非生産的なギーとロー。まるで漫才のようなやりとりの応酬が笑える。ギーがツッコミ、ローがボケ。

2人と対照的なのが、旅芸人の団長。

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おれは役者だ、と堂々と自信たっぷりだ。常に力いっぱい演技している。不確かなのは同じなんだけど。

ストッパード二十代の出世作、不条理劇の系譜に連なる作品かもしれないが、今見てもちっとも古くない。新鮮だ。

とりわけ頭と口が良く回る(空回り気味だけど)ギーが冴えていたが、団長も迫力あり、女形のアルフレッドや、すかしたハムレットも面白かった。ローもボケ具合が可愛い。大好評で公演日程が延長されているそうだ。

ジョシュアとダニエルが伝統ある劇場をガイド:

 

 

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