ベルナール・ミニエ『Le Cercle』、のロシア語訳

JUGEMテーマ:読書

190418-1

フランスのミステリ作家ベルナール・ミニエ(Bernard Minier, 1960 〜)の『Le Cercle』( 2012年)をロシア語訳で。

フランス人の友達が「わたし英訳で読もうとしたけど挫折した」といっていた長編。和訳だと1000ページになるみたい。

ロシア版はБернар Миньер作、「Круг」と直訳タイトル。

フランス南西部が舞台。サッカー・ワールドカップ南ア大会が開催中なので2010年の話だとわかる。ブブゼラが懐かしい(笑)

優秀な高校・大学のある学園都市で雷雨の夜に、高校の女性教師が殺害される。彼女の家に居合わせ、容疑者になってしまったのが成績もよく人気者のイケメン高校生ユーゴ。

トゥールーズ署の警部セルヴァズに、「息子を助けて」とユーゴの母マリアンヌから直接電話が入る。実はマリアンヌはセルヴァズが高校時代につき合って親友に取られちゃった元カノだった。

つい駆けつけてしまうセルヴァズ。ユーゴの高校には自分の娘マルゴも行っている。なんかいろいろと近い。

そのうちシリーズ第一作(わたしは読んでないが)に出て来た連続殺人犯が怪しく思われ、しかし被害者の美人教師は地元の某有力者の不倫相手だったかもしれず。さらにアフリカから難民として来て清掃業をしている人物がからんできたり、高校でユーゴの友人の生徒数名が夜中に不審な動きをみせ、その上、監禁されているらしい女性のエピソードが合間にはさまれ…話が広がるー。

なかなかついて行くのが大変だ。しかも主役セルヴァズ警部は昔、文学の分野で将来有望と誰もが認めていた才能の持ち主で、身内が被害者となったある事件をきっかけに警察に進路を変えたという人物。好きな音楽家はマーラー。ラテン語なんか軽く読めます。彼の昔の回顧とか内省が長い。1000ページのうち200ページはあれこれ悩んでいるかも。考えてないで捜査しろ。こういうタイプが好きな人なら楽しめそう。

話は後半さらに思いがけない方向に進むが、全部をたくみにつないで結末に持って行く、作家の力技。「犯人」も裏をかかれた。ロシア語で読み通せたのは、やはり興味をそらさずに引きつけるストーリーなのだと思う。

ところでフランスのエリート高校って、「来週までに『アンナ・カレーニナ』と『ボヴァリー夫人』と『〇〇(忘れた)』を比較してエッセーを書いてこい」なんちゅう宿題が出るんですか、すごいね。

面白かったが、そろそろ外国語作品をロシア語訳したものでなく、ロシア作家の作品にもどろうかな。という訳で今、ホラーの中編を1つ読了したところ。

和訳タイトルはやはり”抒情的”?

死者の雨 上 (ハーパーBOOKS)

 

 

.

 

| ろき | word, word, word(読書) | comments(0) | - |
『Tom’s Daily Plan』

JUGEMテーマ:読書

Tom's Daily Plan: Over 80 Fuss-Free Recipes for a Happier, Healthier You. All Day, Every Day.
Tom's Daily Plan: Over 80 Fuss-Free Recipes for a Happier, Healthier You. All Day, Every Day.

オリンピック・アスリートの生活が自分の参考になるわけないです。土台の体も運動量も、同じ種類の動物とは思えないくらい違う。

でも図書館にあったので借りてみたこの『Tom’s Daily Plan』、”一般人”向け、健康な生活のレシピ本でした。著者は高飛び込みの選手トーマス・デーリー(1994〜)くん、ロンドン・オリンピックの銅メダリスト。ヘルシーな料理とエクササイズなどの紹介をしている。

料理は基本タンパク質豊富で野菜もたっぷり、でも炭水化物も適度に摂るという王道。たまに食べたければジャンクフードだって口にしてよし、というリラックスした態度。

240318-1

マフィンにのっけた朝食、527カロリー。おいしそう。普通のイングリッシュ・ブレックファストじゃん、という気もしないでもないが…。

パセリを入れたチーズ・スコーンや、おばあちゃんのレシピだというペンネ入り、ブロッコリ・ベイク(オーブン焼き、これもチーズたっぷり)を試してみて気に入る。ヘルシーです。

エクササイズ・パートは家の中でできる、日替わり20分プラン。トムがモデルになって写真で説明。普通バージョンと、体力ない人のための簡単バージョンがあって親切。やってみようかな、という気になりそう(まだやってないw)

結婚して旦那さんのいるトム、お家で料理とかしてるんでしょうかね。最近は「子供ができた」とインスタグラムでエコー写真を披露して物議をかもしたり(代理母ですね。どっちのDNAなのか?詳細は不明)。明るくポジティブな彼なので、何とかやっていきそうです。

近々返す期日だけど、延長してもっとよく読もうかな。

メイキング動画が笑える。ブロッコリ・ベイクを食べてます:

 

 

.

 

 

| ろき | word, word, word(読書) | comments(8) | - |
JP. ディレイニー『The Girl Before』

JUGEMテーマ:読書

The Girl Before: The gripping global bestseller (English Edition)
The Girl Before: The gripping global bestseller (English Edition)

トイレの水洗レバーがタンク内で壊れたので管理会社に連絡して10日、やっと「家主さんに連絡して修理依頼しました」とメールの返事があった。その後、日中誰か来てくれたようだが、5,6回キコキコとレバーを下げてやっと水が出る。これって直ったのかな?

なんていうのとは別次元の悩みのある借家人の話が、2017年の『The Girl Before』。

JP. Delaney (1962 -)は、ベストセラー作家トニー・ストロングの別名らしい。この作はディレイニー名で書いた最初の小説。

過去のエマと、現在のジェーンと、2人の女性の視点で交互に話が進む。2人に共通するのは、高名な建築家が建てたロンドンの家を借りた、ということ。完璧主義のミニマリストが造ったのは、無駄をいっさいはぶいた超ミニマルな住宅。石の壁には絵を飾るのも禁止。本棚禁止。照明のスイッチすらなく、個人の動きを察知するハイテクの集中管理で勝手に動く。庭なんか花を植えてはいけない「枯山水」!ぶはっ。

ルールだらけ、かつ面接で建築家のお目がねにかなわないと入居できないという面倒くさい物件。わたしだったら嫌だけど。だってシステム・ダウンしたらどうするの。ぜったいダウンする〜!

しかし見かけはすばらしく美しい家と、選ばれれば格安で借りられるとあって、住んでしまった2人。

そのうちジェーンは、以前にここに住んでいたエマという女性に起きたできごとを知り、「昔」のエマも、この家にかかわるある悲劇を知り…。

しかも事故物件じゃん。とっとと引っ越そうよ。でも2人は面倒くささの元である家主の建築家とも関わっていく。優秀で頑固でハンサムな男、魅力的なのかも。

「エマ」「ジェーン」と交互に読んで行くのに慣れると、だんだん謎が解けたり深まったり、あさっての方向にひねられたりして、先が気になる。くり返されるパターンも読者に見え、途中でジェーンも気づく。ただ2人の性格がとても違っていて、進む方向も変わってくる。なるほどそう来たか、というラスト。イギリス作家にしては珍しく…?

映画化も決まっているそうで、この「家」をどう作るのか、ぜひ見たい。

和訳もすでに出ています。

冷たい家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

 

.

| ろき | word, word, word(読書) | comments(6) | - |
ヨハン・テオリン『Rörgast』(をロシア語訳で)

JUGEMテーマ:読書

170218-1

ヨハン・テオリンのエーランド島4部作、最後の『Rörgast』(2013)をロシア語訳の「Призрак кургана」(墓場の亡霊)で読了。

最初はなかなか話に入りにくかった。夏になったエーランド島、一気に暑くなり、夜は10時でも明るい。観光客・リゾート客がわんさかやって来る。大規模な夏のフェスティヴァルも開かれてかなり騒々しい。いつものひっそりした島と違う!ここを舞台に、複数の登場人物の視点で時間・空間も隔たった場面が交互に描かれる。

リゾート施設を経営する伯父さんの家に滞在する少年ヨーナス。冒険のつもりで夜にボートで漕ぎだしたら幽霊みたいなものに出会ってパニック!彼を助けるのがおなじみの元船長の老イェルロフ。

夏の催しやクラブでのエンタメ要員としてやとわれた歌手&DJのリーザ、でも音楽活動以外に目的がありそう。

これに「帰ってきた男」と、たぶんこの男が活動した1930年代からの外国の回想。話が分からず混乱したまま読む。4部作の3冊読んで、ここで投げ出せません(笑)。そのうちストーリーが見えてきて、ついていけるようになる。後で知ったが日本語訳で500ページ超えるのね、長いと思った。

30年代、スウェーデンからも新天地を求めて移住した人たちは多かったようだ。たいがいアメリカをめざすところ、逆方向の、アメリカと仲がすごーく悪い大国に行ってしまった人の話が悲惨。なんでまたスターリン時代のソ連に?そのへんの事情も書いてあり、大人の判断でいっしょに連れていかれてしまった、イェルロフとほぼ同年代の少年が気の毒。

ただしソ連部分は、ロシア人の読者レビューによると、つっこみどころが多いようです。確かに話の展開はちょっと非現実的。そのへんはフィクションだから許されるということで。

最後の方でイェルロフが、20世紀はあんまり良い時代じゃなかったな、21世紀はもっとよくなると思うよ、と発言する。20世紀の大国として、ソ連をからませるのが重要だったのかもしれない。

「犯人」に同情はするが、やり方がまずいと言わざるをえない。正当な方法をとっている余裕のない深い恨み、というのは悲しいものだ。

秋から始まって季節を追った4部作、最後の夏は、ぱーっと明るいが暑さは表面だけ、8月も中旬になるとすでに秋の気配。長い歴史をささえているエーランド島の冷えた土に手で触れたような感覚があじわえる。いつか行ってみたいが、あまりにぎわっている時は避けて、たぶん秋か早春にするだろうな。

 

夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

 

.

| ろき | word, word, word(読書) | comments(4) | - |
ヨハン・テオリン『Blodläge』(のロシア語訳)

JUGEMテーマ:読書

270118-1

ヨハン・テオリンのエーランド島四部作の3つめ、『Blodläge』とは第1作にも出てきた石切り場のこと。ロシア語訳では「Кровавый разлом」。

老人のためのホームにいたイェルロフじいちゃん、ここで死ぬのを待つのは嫌だ、と自宅にもどって再びひとり暮らしを始める。お医者さんや福祉の担当者が見まわりにも来てくれるし、何とかなりそうだ。島の厳しい冬がやっと去り、まだ寒いけど明るくなり、春がやってきた。そろそろ都会から別荘族も訪ねてくる。

1作目でイェルロフの友達の石工が亡くなったが、その家を遺産として相続した親戚のペールが引っ越してきた。彼は最近離婚し、十代の息子と娘は元妻のところと行ったりきたりする生活。娘が難病にかかって頭が痛い。さらに、疎遠だった父が弱ってきたのも気にかかる。父ジェリーは家庭をほったらかして自由に暮らし、当時の「ポルノ文化」の先端を行って映画を作ったり雑誌を出したりの有名人だった。60〜70年代のスウェーデン、性の進歩度はすごかったようです。が、学校でからかわれる子供にとってはひたすら迷惑。その父も卒中で言葉も不自由になってボケちゃって、責任とらないまま子供に頼る。ずるい。そして父の別荘が火事になり、中から遺体が発見された!

これをきっかけに、ほとんど知らなかった父の過去をさぐっていくペール。

もうひとりの準主役がヴェンデラ、新しい立派な別荘に住む。やや横暴な夫に大人しく従っている。彼女はこの島出身で、貧しい子供時代はかなり苦労した。辛い生活の中で島の言い伝えの「エルフ」たちと仲良くなり、今でも彼らの存在を信じている。40代で妖精がいると思っているって、純粋なのか、もしかしてあやういのか。ヴェンデラの回想や、イェルロフの亡妻の日記などもはさんで、ペールの父にかかわる事件の謎が少しずつ明らかになっていく。

わたしも一応、謎解きを追っていたが、アダルト映画の関係者がみんなニックネームで、本名とごっちゃになり、さらに同じニックネームを複数の人が使い回していて、とうとう脱落した〜。「どういう人間が犯人か」は当たっていたけど。

イェルロフも要所で活躍する。ペールに協力して手がかりを探すのに昔のエロ雑誌を何冊も手に入れ、真剣に写真を見くらべているときに、女医さんが訪ねて来たりして笑えた。(あの分なら全然元気ね)と安心したことだろう?

5月1日の前夜から大きなかがり火で春の到来を祝う「ヴァルプルギスの夜」という行事が面白かった。やはり北欧、春は遅い。

固まっていたものが緩んで動いていくのが春か。前の2作ほどドラマチックさがなくて地味な感じもするが、ラストは希望があって、決着がついたこともある。読者として島自体と親しくなってきた気もする。次はラストだが、一気に読むのも惜しいので少し休もうかな。

和訳はこちら。

赤く微笑む春 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
赤く微笑む春 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

 

.

| ろき | word, word, word(読書) | comments(2) | - |
ヨハン・テオリン『Nattfåk』- 「Ночной шторм」

JUGEMテーマ:読書

170118-1

ヨハン・テオリンのエーランド島四部作、2作目『Nattfak』(後のaは上リングつき、2008年)をロシア語訳で読んでみた。ややこしくてすみません。ロシア語題は「Ночной шторм」(夜の嵐)とわりと直訳、作者名はЮхан Теоринと表記。

ヨアキムは妻と幼い娘・息子をつれてストックホルムからエーランド島に移ってきた。買いとった古い屋敷を改修・改装して、将来は小さなペンションを経営しようかと計画。ところが最愛の妻が海でおぼれて死んでしまった。

子供2人をかかえて途方にくれるヨアキム。そして以前から「部屋にだれかいる」と夜中にしょっちゅう母を呼びつけていた娘が、

「ママはすぐ近くに来ているの、でもお家に入れないの」とか言い出す。ぎゃーやめて、怖いじゃんか。

妻の死は事故ではないのか?というかこの話はホラーなのか、ミステリなのか?

どちらの要素も混じった状態で話が進み、前回活躍した元・船長イェルロフ、その姪で最近島に配属された新米女性警察官のティルダ、そして冬にがら空きになる別荘などを荒らす泥棒3人組など、いろんな人たちがからみ、さらにヨアキムたちの暮らす屋敷の歴史も語られる。

クライマックスはクリスマス。この島では死者がクリスマスに帰ってくるらしく。ヨアキムの妻・カトリンも来るのか?おりしも空前の大吹雪が島におしよせている。零下10何度、息もできない吹雪の中、停電!!なかなかの迫力です。クリスマスといえば冬至直後なわけで、午後2時には暗いし、外になんて出て道をまちがえばあっさり凍死します。ハラハラ要素もたっぷり、最後に探偵イェルロフが締めてくれる。

エーランド島をもう少し調べてみると、面積1,342km2、ギリシアのロードス島よりちょっと小さく、沖縄本島よりひとまわり大きい。かなり広いのに人口が現在2万5000人ほど。この話は1990年代のようなので少し誤差があるとして、人口密度は低い。特に秋〜冬は寂しい。緯度はラトビアのリガの少し南。そりゃ寒くて、冬は暗いわ。紀元前8000年から集落があったとのこと、独自の文化も、いろんな伝説もあるようだ。島の背景などわかってくると同時に、小説も面白く読める。名詞が平易なので動詞も推測でき、気になればクリックして辞書も見られる、Kindle仕様は便利だ。(しかし書く・話す能力はほとんどつかない・・・)

四部作、次は春かな。春でも寒そう。

今回も邦題は詩的な味つけ:

冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

 

.

| ろき | word, word, word(読書) | comments(4) | - |
ヨハン・テオリン「Echoes from the Dead」(Skumtimmen)

JUGEMテーマ:読書

Echoes from the Dead: Oland Quartet series 1
Echoes from the Dead: Oland Quartet series 1

ミステリ通の友だちの評価が高かったので、スウェーデン作家Johan Theorin(1963 -)の処女作を読んでみた。

英訳のタイトルは「Echoes from the Dead」。原題『Skumtimmen』はただの「Echoes」という意味らしい。スウェーデンの南部、バルト海に浮かぶ細長いエーランド島が舞台。

霧の日、5歳の男の子イェンスが、預けられていた祖父母の家をふらっとぬけ出て、そのまま行方知らずになってしまう。どこを探しても見つからず、何の手がかりもなくそのまま20年が経った。母親のユリアにしてみたら息子が生きているのか死んでいるのかさえわからない、地獄だ。何年たっても立ち直れない。

そこへケアホームに入っている老父イェルロフ(Gerlofをこう読むらしい)が突然電話してきた。イェンスのサンダルが片方、送りつけられたというのだ。別の町に移っていたユリアは父の住む島へともどり、新たな希望をもって手がかりを探すが・・・。

実質、探偵役をつとめるのがホームに入っていてリウマチが痛む80歳なので、スピード感はない(笑)。ゆっくりと進む。でもあなどれません、彼は元・船長、海の男だ。

島の平和を乱すような、問題を起こす人物がいたことはある。大地主の息子で、事件を起こして島を出て行った。そいつだったら非常にアヤシイが、イェンスの事件当時はもうとっくに死んでいたはず。イェルロフ老人は島の歴史もたどりながら、必要な人々に会って聞きこみをする。

また子供がいなくなる話なので、気の毒で悲しい。それが初秋といっても十分寒い10月のエーランド島の風景に合っている。夏は観光客でにぎわうが、シーズンが終わると閑散とする田舎に住む数少ない人たちとのかかわりは温かい。

話は事件以前の昔からのエピソードをはさみながら進み、だんだん事情がわかってくる。読者が気づいたときはイェルロフが悪いやつのすぐ横にいるので焦る。あー、あぶない。元・海の男の底力を発揮できるのか?

そしてラストのひねりが、うっかりしていて分からなかった。してやられました。

夏はいつもこの島で過ごして、第二の故郷のようなものらしい作家が、荒涼とした立地を生かして灰色のスリラーに仕上げている。

エーランド島・4部作になっているというので、読んでみるつもり。2作目はロシア語訳で読み始めたが、ホラーになりそうでややビビっている・・・。

和訳はタイトルがまったく違うのね:

黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

.

| ろき | word, word, word(読書) | comments(4) | - |
ブルガーコフ「犬の心臓」(Собачье сердце)

JUGEMテーマ:読書

020118-1

明けましておめでとうございます。

2日から仕事してます。

オフィスのコーヒーマシン・コーナーで、「1月2日から働くのはきつい」と愚痴ったら同僚が、

「そうそう。大晦日の飲んだくれパーティから1日じゃ回復しないわよねえ」と同意した。いやちょっとそういう意味じゃないけど。まあいいか。

戌年にちなんで、ミハイル・ブルガーコフ(1891 - 1940)の『Собачье сердце』(犬の心臓、1925年)を読んだ。中編なので何とか読みとおせた。

冬のモスクワをさまよう野良犬のシャリク、腹をすかせて負傷もしているところをフィリップ教授にひろわれ、何部屋もある立派なアパートメントに引きとられる。優しい教授――と思ったら、この医者の目的は別にあったのだ。ある日、行き倒れたアル中男の死体から取った脳の一部(脳下垂体らしい)と睾丸が犬に移植されてしまった。

シャリクはだんだん人間ぽくなり、小柄なオッサンみたいな外見で言葉を話するようになる。これは科学の大進歩?

ところが彼、素行が悪い。粗暴でずるく、メイドに手を出したり、やりたい放題。しかも教授の大嫌いな「プロレタリアート」に賛同し、ブルジョアを罵倒し始めた!

手のつけられなくなるシャリクが面白くて笑える。ちゃんと名前で呼べ、同志と呼べ、という。しかしタワーリシチ・シャリクって、同志ポチ、みたいな素朴な昔風ワンコの名前なので可笑しくてたまらない。すべて、同意もなしに手術した教授が悪いのだ。

この作品は出版が許可されなかった。そうだよね・・・犬並みの品性の人間に力を持たせるとこうなる、といっているよね・・・。

やっと1987年にソ連でも解禁。著者の死後45年以上経っている。すぐに1988年、Владимир Бортко監督がモノクロ映画にしている。ちょっと脚色してあるが、犬時代のシャリクも可愛くて表情豊か、名作。

020118-2

<В главных ролях>
Евгений Евстигнеев — Профессор Преображенский
Борис Плотников — Иван Арнольдович Борменталь, доктор, ассистент профессора
Владимир Толоконников — Клим Чугункин / Полиграф Полиграфович Шариков

オッサン化してしまったシャリク、ははは、バラライカが出てくるところがロシアだ:

和訳も何種類か出てます。

犬の心臓 (KAWADEルネサンス)

 

 

.

 

| ろき | word, word, word(読書) | comments(8) | - |
ジョナサン・エイクリフ『Naomi's Room』

JUGEMテーマ:読書

Naomi's Room
Naomi's Room (English Edition)

Jonathan Aycliffe (1949-)はペンネーム。本名はDenis MacEoin、北アイルランド生まれ。ダブリンやエディンバラ、ケンブリッジで文学・イスラム文化を研究した学者。でもダニエル・イースターマンというペンネームで伝奇小説を、そしてこのジョナサン・エイクリフというペンネームではホラー小説を書いているという多才な人だ。
『Naomi's Room』(1991)は電子図書館で借りた。

初老の大学教員チャールズが回想しているという設定。

将来を嘱望された若い学者のチャールズは、ケンブリッジ大学のあるカレッジに地位を得る。奥さんのローラもフィッツウィリアム博物館の学芸員だったが子育てのため休職、一人娘のナオミを育てている。家も買い、幸せいっぱいな生活だった。

ところが、1970年のクリスマスイブ、チャールズは4歳のナオミをロンドンのおもちゃ店に連れていく。混んだ店内で数十秒ほど目を離したら・・・娘が消えていた。

子供って、ほんの一瞬であっさりいなくなってしまうことがある。すぐに店の人も動員して探しても見つからない。ついに警察ざたになり、数日が過ぎ、最終的には店からかなり離れたロンドン東部で発見されたのは、変わり果てた娘の遺体だった。

親にとってはこれ以上ない悪夢だ。が、事態は意外な方向へ。事件後に報道目的で2人を撮影していたカメラマンが家を訪れ、撮れた写真を見せてくれる。そこには写っているはずのない姿が!

ええ、そっち行ったか、と驚く展開。死んでしまった愛娘、幽霊でも出て来てくれれば可愛いだろうか?でも娘の変化(へんげ)には邪悪な存在がかかわっているとしたら? やがてヴィクトリア時代に実在した人間が鍵をにぎっていることがわかる。

前半が、子供が行方不明になった親の心労が生々しいし、その後の現象がわけわからないので超怖い。後半は、理由が解明されてくるので普通のホラーになるものの、やはり気持悪い。最後はグロい。しかも舞台はケンブリッジやロンドンのよく知っている場所ばかりなので、じわっとくる。通りの名前や商店も実在するもので、今度〇〇通りを歩いているときに(今ここの街灯が全部消えたら)と思うとおそろしいじゃないか。

結末もダークで、ホワイトクリスマスにもならず雨がじとじと降った暗い日々にぴったりのホラーでした。

 

 

.

| ろき | word, word, word(読書) | comments(4) | - |
カリン・スローター『The Good Daughter』

JUGEMテーマ:読書

The Good Daughter: The best thriller you will read this year
The Good Daughter: The best thriller you will read this year

これもリラックス用に電子図書館で借りたが、お風呂で読む本としては失敗。途中で止められず、気がついたら浅い風呂のお湯がぬる〜くなっていたりした。しかもかなり心理的にやられる。リラックスなんかできず。でもとてもうまい作家だと感心。

米南部生まれのKarin Slaughter(1971 -) の2017年の作品『The Good Daughter』。

父は弁護士、母は科学者という家庭の姉妹サム(サマンサ)とチャーリ―(シャーロット)、頭がよく、運動でも奨学金を狙えるレベル。普通なら何不自由なく生活しているはずなのに、最近放火で家を焼け出され、一家でボロい農場に住んでいる。

実は父は犯罪者を弁護する立場。信念をもって熱心に引き受けている。殺人犯など重大な犯罪者をかばっている(ように見える)彼は、被害者やその身内、全然関係ない人までから憎まれていた。

しかも弁護してもらった犯罪者の中にも感謝するどころか逆恨みしたりするやつも。

そしてある日、家が襲撃を受ける。母は射殺され、姉妹のうち一人は走って逃げ、一人は森にとどまった。

ーー のが28年前のこと、姉妹のうち姉はニューヨークで特許弁護士に(遺伝的に見て最適)、妹は地元で父のような弁護士になり、互いに疎遠だった。その地元で再び重大な犯罪がおきた。小学校の発砲事件で教師と児童がひとりずつ殺される。アメリカでは毎月起きているケースだけど。そのときたまたま現場にいたのが妹のチャーリ―だった。

父はもちろん容疑者の弁護を引き受ける。現在の事件を探っていく中で父娘関係と姉妹関係の複雑なもつれが明るみに出、過去の事件の真実も明らかになる。

昔の事件は姉の視点と妹の視点で2度語られ、最後にまた別バージョンまであり、3回も残酷な暴力場面を読まなくてはならず、気持ち悪さが腹にくる。話の通じないどうしようもない人間というのはいるもので、そういのが武器を持つとどうなるか、ということが克明に書かれる。

でも実際に犯罪の被害者になった人なら記憶はこびりついて何度も思い返し、夢に見るだろう。安全圏にいる(しかもフィクションの)読者が3回ひどい場面を読むくらい、我慢しなさいよ、という作者の意図かな。

緻密に編まれたプロットに、登場人物ひとりひとりが単純でなく人間らしいのが面白く、ラストは良い方向に動いたので救われる。そこに行きつくまでが犠牲がいろいろ出て壮絶だけど。銃撃で頭が半分ふっ飛ぶとか、リアルな暴力描写が大丈夫な人にはお勧め。お風呂では読まないようにね。

 

 

.

| ろき | word, word, word(読書) | comments(4) | - |
/ 1/31PAGES / >>