ブルージュの美術館・教会

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歴史ある街を訪ねるときは、美術館や博物館が楽しみ。

ブルージュでは3日間有効で13の施設に入れる「Musea Brugge Card」(ブルージュ美術館カード)を活用した。28ユーロだけど、大き目の美術館は入場料12ユーロ、すぐに元がとれます。さらに泊まるホテルによってはこのカード自体が4ユーロ割引になるところもあり、お得。寒い日には手近な室内にすぐ入れて助かる(笑、この理由で考古学博物館にも入った)。

まず行ったのは聖ヨハネ施療院(Sint-Janshospitaal)。ヨーロッパでも最古の病院のひとつが博物館になっている。

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St. John's Hospital in 1778, Jan Beerblock 

地元ブルージュの画家が描いた、18世紀の忙しい病院の内部。昔から教会は医療活動の中心。当時の医療器具などの展示もあり、興味深かった。

半分は宗教画の美術館となっている。

有名なハンス・メムリンク(ca.1430-40 – 1494) はドイツに生まれブルージュに居ついた画家。彼の作が集まっているので、メムリンク美術館とも呼ばれる。

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Altaarstuk van Johannes de Doper en Johannes de Evangelist、Hans Memling、1479

中世の宗教画は素朴な信仰心が表れている。そして発色がとても良くて鮮やか!(修復のたまものかな?)

『聖女ウルスラの聖遺物箱』(Shrine of St. Ursula), 1489年がお宝。

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ブリテン島のお姫様だそうです。聖堂型の置き物のパネルにメムリンクが精緻な絵を描いている。

「アーシュラ」という女性名はウルスラから来てますね。意味は子熊(雌の)、可愛いかも。

他にも無名の画家の印象深い作品もあり。

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twee luiken met de Boodschap、anonymous, Flanders, 15th C

2人とも白い衣装で清らか。

次に行ったのは、

グルートゥーズ博物館(Gruuthusemuseum)

街が最も栄えた時代の貴族の屋敷に、美術品、工芸品を集めている。グルートゥーズ家はビールの醸造に関係した名家だそう。

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ベルギービール醸造家の守護聖人、聖アーノルドの盾。いろんな守護聖人がいるもんだ。盾は直径50cmくらいあったと思う。

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大天使ミカエルのステンドグラス、1500年ごろ。

こうした大きな家は運河に面していて交通の便がよく、街を見下ろす高さもある。富を感じさせます。

ヨーロッパ各地から美術品が集まっている。

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聖アグネス、南ドイツ、1490 - 1500

13歳で殉教したそうで。上の聖ウルスラさんもそうだが、信仰のために亡くなった若い女性の伝説は多い。

絵画も、静物や肖像などが豊富だった。

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Portret van een deken van het Brugse Sint-Michielsgilde、Jan Hals、1631
ん、ハルス?と注目したら、有名なフランス・ハルスの息子のヤン・ハルス  (1620–1654)だった。父子ともにオランダ黄金時代の画家。お父さんの方が闊達な雰囲気かな。あれ、この絵はヤンが11歳で描いたことになるが、どっちかの年が間違っているんじゃないかな。そのうち調べます。

美術館関係は多くが月曜休み。なので月曜は、いつでもオープンしている鐘楼の階段366段(いい運動!)を上ったり、聖母教会でミケランジェロの聖母子像を見るのに費やす。

聖母教会(Onze-Lieve-Vrouwekerk)

さすがカソリックの荘厳な作りで、内部の装飾がすみずみまで美しいが、やはりメインはこちら:

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Madonna by Michelangelo, 1501–1504

全然幸せそうじゃない顔がいいですね。お母さんマリアは何がなし悲しそうだし、小さいジーザスはすでに家庭的なものから心が離れているよう。さすがミケちゃんだ、恐れ入った。

もうひとつ、聖母のこんな絵も:

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Our Lady of the Seven Sorrows, Adriaen Isenbrant(1490 - 1551)、1518 〜 1535

マリア様が息子の短い生涯のエピソードを思い起こしている。家業の大工修業もろくにせずに教会に入り浸って大人と議論し、成人したら新興宗教の教祖になって逮捕、34歳で処刑される…親不孝ものだねー。教祖とはそんなものですが。

この絵は息子が死んですぐ、復活するとは知らない時ですね。

これについてちょっと質問したら、ステファニーさんという若い女性学芸員がめっちゃ熱心に教えてくれた。質問なんかする人が珍しかったか。この画家アドリアーン・イゼンブラントは北方ルネサンスの重要な人物とのこと。聖母の衣装は黒に見えるが濃い紺だそうだ。

他にもここでしか見られないだろう美術工芸品が多数で、贅沢な時間を過ごせた。

今回見られなかったグルーニング美術館 (Groeninge Museum)にはヤン・ファン・エイクやヒエロニムス・ボス(大好きw)から、マグリットやデルヴォーまであるそうなので、次回は真っ先に行きたい。

 

 

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『Pre-Raphaelite Sisters』ナショナル・ポートレート・ギャラリー

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Fanny Cornforth, Dante Gabriel Rossetti, 1874
イギリスのヴィクトリア朝時代に活躍した画家・美術評論家集団「ラファエル前派」、世界一美しい水死体「オフィーリア」を描いたジョン・エヴァレット・ミレーを筆頭に、ウィリアム・ホルマン・ハント、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティなどがいる。

今ナショナル・ポートレート・ギャラリーで開かれているのは、ラファエル前派に関わった女性たちをテーマにした展覧会、『Pre-Raphaelite Sisters』。ロマンチックな絵に欠かせないモデル、画家の妻になった人、自分でも制作した人など、いろんな女性12名をフィーチャーした。

12人:Joanna Wells, Fanny Cornforth, Marie Spartali Stillman, Evelyn de Morgan, Christina Rossetti, Georgiana Burne-Jones, Effie Millais, Elizabeth Siddal, Maria Zambaco, Jane Morris, Annie Miller, Fanny Eaton

全員は無理なので、面白かった人たちをピックアップして覚え書き。

まずエフィー・グレイ(Effie Gray Millais、1828 - 1897)は映画にもなった、ラスキンと結婚中にミレーと恋仲になり、後に正式に妻になった人。

「お父さんが帰ってきて喜ぶ犬」の絵の奥さんのモデル↓

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The Order of Release, John Everett Millais, 1852 - 53

彼女が不幸な結婚から解放される未来を暗示しているのかも。

その後は旦那は出世してサーの称号がつき、最終的にはロイヤル・アカデミーの会長にもなった。幸福な結婚生活だったようだ。

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Portrait of Effie Millais, Sir John Everett Millais, 1873

威厳を感じます。

一方、クリスティーナ・ロセッティはダンテ・ゲイブリエルの妹で詩人。奴隷制反対や、性産業で働く女性の保護などの運動にも熱心だったそう。若いころ、兄のモダン(19世紀当時)な受胎告知の絵のモデルになっている。

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Ecce Ancilla Domini, Dante Gabriel Rossetti, 1850

この絵では清楚な美少女だが、怒らせると怖かったらしい(笑)。

かんしゃくを起こす彼女を描いたスケッチ。

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Christina Rossetti in a Tantrum, Dante Gabriel Rossetti, 1862

おおー、手がつけられん。お兄さん、妹が可愛かったんでしょうね(少し恐ろしいけど)。

ロセッティの女性関係は複雑でわたしにはついていけませんが、彼が結婚したのは、ミレーの「オフィーリア」のモデルであった燃えるような赤毛のエリザベス・シダル(Elizabeth Siddal、1829 - 1862)。

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Ophelia, John Everett Millais, 1865-66

これはテート・ブリテンにある大きな油絵(1851–2年)の後に、小さく描いたバージョン。個人蔵です。

30代前半で亡くなってしまったが、彼女はロセッティに手ほどきを受けて、自分でも絵を描いたりしていた。

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Lovers Listening to Music, Elizabeth Siddal, c1854

美術の専門の学校できちんとデッサンなど学ぶ機会があれば、もっと説得力ある作品が描けただろうが、まだまだ女性には門が開かれていなかった。

1968年にスレード美術学校が設立されて女性を受け入れ始める。70年代に学生だったのがイーヴリン・モーガン(Evelyn Morgan、1855 - 1919)。

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Night and Sleep, Evelyn Morgan, 1878

これは大作だった。もちろん本人の才能だが、教育を受けたということも大事だったと思う。

ジョアンナ・メアリー・ボイス(Joanna Mary Boyce、1831 – 1861)は水彩画のGeorge Price Boyceの妹。フランシス・ステファン・キャリーの美術学校で学ぶ。ロイヤルアカデミーの予備校のような学校だったらしい。

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Elgiva, Joanna Mary Boyce, 1855

10世紀のアングロサクソンの貴婦人だそうです。イングランド王エドウィと結婚していたのに、当時の大司教に政治的迫害を受け、結婚を破棄されてしまったとか。なので悲しそうな表情。ボイスは出産で30歳の若さで亡くなってしまい、惜しまれた。

そんなわけで「シスターズ」の絵画作品はあまり多くない。やはり目を引くのは「ブラザーズ」の作品。

同じモデルでも結果がだいぶ違う。後にウィリアム・モリスの妻になったジェーン・バーデン:

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La Belle Iseult, William Morris, 1858

ロンドンの街中でロセッティにスカウトされたそうで、長身で目を引く美女だった。

ロセッティが描くとこうなる:

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Proserpine(部分), Dante Gabriel Rossetti, 1877

全然違うじゃん。モデルから何を引き出すかは画家の勝手ですから。

ロセッティはジェーンがモリスと結婚してしまってからも彼女のことが好きで大変だったらしい。恋愛体質なのでしょうがない。↑一番上の絵のモデル、ファニー・コーンフォース(Fanny Cornforth、1835 - 1909)も彼のモデルで、彼がエリザベス・シダルと結婚する前と後の恋人でもあった。本当にもう。

絵画の展覧会としてみたら、すごい傑作が目白押しというわけにはいかない。しかし制約の多い時代の中で、少ないチャンスを活かして努力した(奮闘・バトルだった人も)さまざまな女性の生き方に、「自由な環境で恵まれているのに、ボーッとしてちゃいかん」と思わされます。

 

 

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『Rembrandt's Light』展@ダリッジ・ピクチャー・ギャラリー

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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The Denial of Peter, 1660 

というわけで、ダリッジのお目あて「レンブラントの光」展です。絵具で巧みに光と影を表現したレンブラント、そのためにどんなセッティングで描いたのかがわかるよう、展示室を同様のライティングで照らすという趣向。

暗い絵だと暗めの部屋になる。

「え〜、普通のライティングで見やすくしてほしいのに」と見る前は思ったが、体験してみると面白かった。たとえば上の絵はドラマチックなライティング、光をスポットライトのように使った。場面はイエス・キリスト逮捕の現場で「あら、この人もお仲間じゃない?」と指さされた親しい弟子のペテロが、

「わたしはあんな人知りませんよ」と三回も否定してしまった場面。やっちまったな…。右側に手を後ろで縛られたキリストがこっちを振りむいている。怖い。

暗さを追求したエッチング。

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Student at a Table by Candlelight, ca. 1642

ローソクだけがぽっと明るい。電気のない時代の闇は深い。

イエスが死後よみがえってマグダラのマリアに見つかった場面の絵は室内の照明が徐々に消え、真っ暗になり、まただんだん明るくなっていく仕掛けだった。

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Christ and St. Mary Magdalene at the Tomb, 1638

イエスの墓参りに来たのに墓がからっぽで驚いているマリア、ふと後ろを見ると…

「やだ先生!そこにいたんですか?」

「やあ待たせたな」みたいな。なにかカジュアルで明るい感じ。

ジーザスはなぜか庭師の格好をしているそうで、わたしはまた、手にしたスコップで自分で墓を掘って出て来たのかと思った!そんなバカな。

真っ暗闇から明るくなるときに、まずキリストの衣装、そして背景の空と、ぼーっと白く浮き上がるのが面白い。

レンブラントは弟子の指導にも熱心だった。

これは彼が構図を決め、光源が2つ(窓と、炎)ある場合にどう処理するか、課題をあたえたものだそう。

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(Rembrandt and pupil) Tobit and Anna with the Kid, 1645

窓はいいけど、炎はうまく描けていないような気がしません?周囲に照り返しがあるはず。そして窓と違って赤味が強いはず…なんて偉そうに言ってみる。

↓弟子の描いたスタジオのテーブル。「よし、今日もがんばろう」という気持ちが表れている。

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(Attributed to) Willem Drost、 An Artist's Work Table by a Window - Overlooking a Roof, c.1650 - 55

レンブラントを超えたと思える弟子はいないようですが、優秀な人も多かった。

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Arent De Gelder,  Jacob's Dream, c.1710 - 15

アールト・デ・ヘルデル(1645 – 1727年)はレンブラント最後の弟子のひとりで、師のスタイルを守った人だそう。広がりのある空間が表現されている。

最後の部屋はレンブラントの人物画が並ぶ。

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A Woman in Bed, c.1647

スーパーセクシー(レンブラントとしては)な白い肌の美人。背後の暗さが効果的。

そしていつ見ても可愛い、このギャラリー所蔵の窓辺の少女。

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Girl at a Window, 1645

この絵の飾られたボードが面白くて、スチュアート・センプルというアーティストの作ったBlack 3.0という世界で最も黒いアクリル絵具、可視光線の99%を吸収してしまうという「瓶入りのブラックホール」。うん…確かに黒かった。

でもレンブラントが描いた帽子なんかの黒も、同じくらい黒く見えた。色は相対的なもの、人の目は騙されるので。

一晩中どこかで明かりがついている、ベッドでもついスマホを光らせてしまう現代人には、なかなか真の暗闇は描けないかもしれないなあ、と思ったりした。

短い展覧会の紹介:

 

 

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ダリッジ・ピクチャー・ギャラリー訪問、まず常設展

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(まだクリスマス気分の入り口)

コメント欄で話題にしたら行きたくなってきて、ちょうど気温高めで天気も良いし、ロンドンの郊外南東部にあるダリッジ・ピクチャー・ギャラリー(Dulwich Picture Gallery、「ダルウィッチ美術館」と呼ばれることもあり)に出かけた。

ロンドンを越えていくのでちょっと面倒だが、ケンブリッジまで出ればロンドンブリッジまで乗り替えなしに行ける電車もできたことだし…と思っていたら、その電車はキャンセルされた。「スタッフが不足のため」だそうです。みんなまだ休暇中?こんなこともあろうかと、かなり早めに駅に着いていたから、別の電車を利用、地下鉄に乗り替えたりなどして遅刻せずに到着した。

お目当てはちょっと変わった趣向のレンブラント展ですが、その前に常設展を鑑賞。

このギャラリーは個人の美術コレクションだったものを展示するため200年ほど前に開設された。常設展は17世紀からのポートレートや風景画が充実している。

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George Digby, 2nd Earl of Bristol, Anthony van Dyck, c.1638

あ、この人最近テレビで見た。ジョージ・ディグビー、第2代ブリストル伯爵。清教徒革命からのチャールズ1世の処刑をテーマにしたドキュメンタリーで、美男で政治家として人気も実力もあったのに、性格がやや不安定、王党派として肝心なときにうまく動けず、結果、王の立場を悪くしちゃった人物として描かれていた。ヴァン・ダイク(1599 - 1641年)の筆が冴えている。

ヴァン・ダイクが亡くなった年にオランダからイングランドに渡ったピーター・レリー(1618 - 1680年)は彼の後を継ぐように活躍した。

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Portrait of a Lady in Blue holding a Flower, Peter Lely, c.1660

ドレスのさらさらいう衣擦れの音が聞こえそう。上流階級の人々がこぞって描いてもらったのもうなずける。

彼はチャールズ1世も、その政敵オリバー・クロムウェルも描いている。さらに故王の息子として王政復古で地位についたチャールズ2世には主席宮廷画家に任命されたという売れっ子。

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A Boy as a Shepherd, Peter Lely, c.1658-60

こんな羊飼いの少年がいるわけないけど。そういうセッティングね。

ポートレート以外では、いろんなポーズを描いてみた習作なのではと思われているこれが大作だった。

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Nymphs by a Fountain, Peter Lely, early 1650s

足の裏がなんかセクシー(笑)。

アムステルダムの画家を集めた部屋があった。大きなのびのびした風景画がこちら。

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Landscape with Sportsmen and Game, Adam Pynacker, c.1665

アダム・ペイナッケル(1622 - 1673年)の作。手前の葉っぱが青い。奥の人物の服と同系色なのでなじむが、不思議な配色だ。狩りに付き添う仕事熱心な犬が精悍。

そうそう、こちらは18世紀の作になるけど、いつも見つけると嬉しくなってしまうティエポロ。

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Virtue and Nobility putting Ignorance to Flight, Giovanni Battista Tiepolo, c.1743

青と黄土色の組合せが絶妙。それにしても、いろんな角度から人体デッサン練習しただろうなあ。

あまり広くないので疲れずゆったり見られる。その後、時間制入場の特別展へ。それについては年明けに書きます。みなさま良いお年を。

帰りにロンドンの駅から。

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『Feast & Fast』@フィッツウィリアム博物館

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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Winter Landscape with Bird trap
Pieter Brueghel the Younger, c.1626

ケンブリッジ大学フィッツウィリアム博物館の特別展『Feast & Fast: The Art of Food in Europe, 1500-1800』、ヨーロッパの食の文化をテーマにしたユニークな企画。絵画や工芸品ほか、文献など、珍しい展示物が多い。上の写真はピーテル・ブリューゲル(父)のオリジナル(c.1565)を、息子が17世紀に模写した作品。右手前に鳥の罠がある。

17世紀イングランドの刺繍(部分)

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アルカディアを描いているそうで、鳥や動物がいて楽しそう。動物が身近な存在だったのが感じられる。ユニコーンもいるけど(笑)。

こちらはウサギに逆襲されて、狩人がローストされている図(横長なので、部分):

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The world turned upside down: hares roasting a hunter, Virgil Solis, 1530-1562

ウサギを怒らせると怖いのである。ドイツ、ニュルンベルクの芸術家ヴァージル・ソリスによる版画。

料理道具や食卓の実用品も面白い。

18世紀、ジンジャーブレッドの木型。ジョージ3世の国章なので、王宮のディナーで使われたんでしょうか。

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牛さんの乗ったバター皿、優雅。

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18世紀には食べ物そっくりの陶磁器も流行ったそうで、カラフルで美味しそう。

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会場のディスプレイも凝っていて、砂糖のお城が飾られたり、白鳥のパイをメインにした食卓がしつらえてあった。

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タイトルのうち”Fast”(断食)の方はどうしたのか、というと、宗教的な理由で質素にしていた修道士などの像がちょこっとあった程度であった。地味ですからね。↓ このデルフト製のタイルは、聖書の中で食べ物が出てくる場面を描いたもの。18世紀の作品。

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絵画ももちろん華やかな食卓、新鮮な果物の描かれた作品がいくつも展示されているが、描くのに時間かかっちゃって(?笑)腐ったやつが――すばらしい!

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Still life with rotting fruit and nuts on a stone ledge, Abraham Mignon, c. 1670

甘〜い腐敗臭がただよってきそうだ。アブラハム・ミグノン(1640〜1679年)はドイツの画家。もちろん普通は新鮮なのを描いてます。信心深かったそうで、この作品に影響があるのかもしれない。38歳で亡くなっているのが惜しまれる。

日常から非日常まで、人間は毎日食べ物に関わっている。たいていの人には興味のある分野でもあって、そこから芸術を見渡しているこの展覧会、楽しく鑑賞できた。

4時には外は暗くなっている。博物館の庭では現代作家のBompas & Parrによる巨大パイナップルがライトアップされていた。熱帯の果物らしく元気があってよろしい。

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ポール・ゴーギャンのポートレート展@ナショナルギャラリー

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Still Life with ‘Hope’,  1901

ポール・ゴーギャン(1848 - 1903)の人物画特集を、ポートレート・ギャラリーではなく、お隣りのナショナル・ギャラリーの方で開催中。

Gauguin Portraits』(7 October 2019 – 26 January 2020)

ゴーギャンはパリ生まれ、株式仲買などのビジネスで成功していたが、市場が大暴落、そこから突然「絵で生計を立てる」とほとんど妻子を捨てて勝手に画家になる。フランスの田舎から、タヒチなど南の島へ移住して制作。同時代人にはあまり受け入れられないまま54歳で死去。(ドガは彼の絵を買っていたが)

わが道を行った彼の人生を表す人物像の数々、やはり人間は面白い。

上の写真は「surrogate portrait(代理ポートレート)」というらしい。ひまわりの花を描き、南仏で共同生活をしたがケンカ別れに終わった元友人のファン・ゴッホをしのんだ作品。背景にある2枚の絵、上がピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824 - 1898)の「希望」(1871 - 1872)、下のはエドガー・ドガの版画だそう。

自画像もたくさん描いているゴーギャン、面白い作が何枚も展示されていた。

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Self portrait, dedicated to his friend Daniel, 1986
鼻が特徴的。彼は先祖がペルーに住んでいたため、南米先住民の子孫だ、なんて吹聴していたらしいが、実際はペルーに入植したスペイン人だったそうで、先住民と血はつながってません。「今いるところが気に入らない」性格なのだと思う。

自分をキリストに見立ててゴルゴダの丘を描いたりもしている。大胆だね。

タヒチやブルターニュ、パリを行き来していたころの。

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Self Portrait with the Idol, c.1893

黄色いトーフみたいな形のものが目立ちすぎ!(笑)――椅子の背なんですね。後ろにタヒチの偶像が。

偶像?を使って失敗した例は:

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Young Breton Woman, 1889

これはブルターニュのとある高貴なお家のお嬢さんを描いたものだが、背後に自作の彫像を入れている。で、像は下半身から出血している。伯爵令嬢であろうと、女性は大人になったら普通に定期的に血を流すものとはいえ、背景にいれちゃいましたか。当然ながらモデルの母の伯爵夫人はこの絵を買わなかった。だから失敗、とはいえ、絵としては少女の不機嫌な表情とか、とっても面白い。

ブルターニュで描かれた別のポートレート:

Portrait of a Pont-Aven Woman (Marie Louarn?), 1888

これも好きな作品。色が明るく、人物もめずらしく正面を向いている。

陽光が感じられる。彼女はこのあたりの芸術家のモデルとして人気があったそうだ。

これも正面向き、タヒチで描かれた作品:

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Portrait of Suzanne Bambridge, 1891

英系・ポリネシアの有力な家の女性だそう。ボリューム感とか衣装の色とか、温かくて良いと思うんだけど、モデルは気に入らなかったらしい。あまり「美化」してなさそうだしなあ。依頼者が気に入るような肖像を描く、なんて頭になかったのだろう。

展覧会場のすぐ外の部屋で上映されていた解説フィルムによると、ゴーギャンはタヒチでもフランスの植民地政策が気に入らなくて、フランス人社会の偉い系の人(牧師とか)とよくケンカしたらしい。現地住民の立場に立ったともいえるが、自分は13歳の女の子を現地妻にしたりしていた…。死因の大きなものに「梅毒」がある。素行はよろしくない。

早死になので晩年といっても50歳そこそこだが:

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The Sorcerer of Hiva Oa (Marquesan Man in the Red Cape), 1902

地元のヒーラーを、西洋的な「ポートレート」の様式で描いたもの。よくいる貴族の肖像なんかの足元にいる愛犬の代わりなのか?変な動物が気になる。可愛いな。

最後の自画像は、よけいなものがそぎ落とされて、シンプル。

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Self-portrait, 1903

肩の力が抜けたというか、もう力が入らないほど健康を害していたかもしれない。けれど表情が素直になった。人にどう言われようと自分の好きにしか生きられなかった人間が、最期に自分に向き合った姿。この作は、自分を世話してくれていたベトナム人の青年にプレゼントしたそうだ。

「クール」な色のヘレン・シャルフベックの後で、気温が20℃違いそうなゴーギャンの色を見ると、もわっとした湿気ある熱がただよってくるようだった。まあでも北国育ちなので、寒い方がいいかな…。

 

 

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ヘレン・シャルフベック展@ロイヤル・アカデミー

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Fragment, c.1904

 

というわけで、また行ってきましたロイヤル・アカデミー。

今回は天気が悪くて、ゴームリーの赤ちゃんが雨ざらし…。

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なんか、秋に開催したのは良くなかったかも〜。

去年完成した大規模改築の結果、大きな展覧会も2つ同時に開けるようになったロイヤルアカデミー、通路でつながっている別館での展覧会。

Helene Schjerfbeck

フィンランドの画家ヘレン・シャルフベック(Helene Schjerfbeck、1862–1946)の作品を60点以上、まとめて紹介。

スウェーデン語を話すフィンランド人中流家庭の出身。4歳のとき階段から落ちたとかで腰を痛め、それからずっと歩くとき足を引きずることになった。幼いころに生涯背負う事故に遭ったのは気の毒だ。けれどそのお陰で、長期休養の間に気晴らしとして絵を描くよう、お母さんが教えた。それがとんでもなくうまくて、美術の学校に入学年齢に達する前に入ることになったのが11歳のとき。人生何が幸いするかわからない。その後18歳で奨学金を得てパリほか、ヨーロッパで学ぶ。

勉強熱心だったのがわかる。一番上の写真『Fragment』は油絵だが、フレスコ画の効果を出すために、一度描いて削り落とす作業を繰り返したとのこと。

こちらは二十歳そこそこの作品。セザンヌが好きだったそう。

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Shadow on the Wall (Breton Landscape), 1883

さりげなく描いていて、バランスのとれた色使い、構図。

ちょっとムンクみたいなのもあり。

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The Tapestry, 1914-17

絵の教師をしながら、フィンランドの芸術協会の依頼でサンクトペテルブルクに派遣されて名画の模写をしたりと忙しかった彼女。体は強い方でなく、疲れてしまって1902年に教職を辞し、ヘルシンキから少し離れた田舎で年老いた母の世話をして暮らした。

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At Home (1903)

大人しくて世話しやすそうに見えるお母さんだ。

田舎にほぼ引きこもっても制作を続け、フィンランドで最も尊敬されている画家のひとりだという彼女、全然知りませんでした。

自画像の部屋がとても面白かった。

若いころから:

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Self-portrait, 1884-85

年齢を重ねるにつれての表現法の変化が順に追える。

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Self-Portrait, 1912

50歳くらいですか、いい感じですね。

でもここで止まらないのがすごい。

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Self-Portrait, Light and Shadow, 1945

亡くなるちょっと前か。

これが最後のセルフ・ポートレート↓

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うおお。すごいです(語彙が貧弱…)。

彼女の静物も好き。

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Still Life in Green, 1930

ちょっとスレード美術学校の流儀に似ているような感じがする。ずーっと見てられます。

これも、色が良い。

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Still Life with Blackening Apples, 1944

今年一番感動した展覧会です。27日までなのでもう一度行くのは無理そう。

「肖像画の部屋」がもう少し詳しく見える動画:

 

 

 

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アントニー・ゴームリー展@ロイヤル・アカデミー

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Antony Gormley, Body and Fruit, 1991/93

忘れた頃に更新するブログになり果てております…。

ロンドンのロイヤル・アカデミーで『Antony Gormley』を見てきた。去年もっと近場のケンブリッジで小規模な展覧会を見て感銘を受けた人。

会場に入らないうちから仕掛けが。

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Iron Baby, 1999

誰ですか、こんなところに赤ちゃん落っことしたの!

これはゴームリーの生後6日の娘さんから型どった鉄の赤ちゃんだそうで。芸術家の子供も楽じゃないね。もう二十歳くらいになってますね。

人間のボディにこだわるゴームリー、ケンブリッジでは1体だった鉄の像が増殖。

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Lost Horizon I, 2008

コウモリ人間が天井から落ちてきそうでちょっと怖い。

人体だけではない。自由なドローイングを3Dにして、かつ巨大化したみたいなこれ、面白かった。

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Clearing VII, 2019

中に入って自由に動き回っていいです。鉄の線をまたいだりくぐったり、楽しい。子供はもちろん、大人も歩き回って面白がっていた。

真っ暗な空間が作られていた。中に入る前に、「本当に暗いので、常に左手を壁に触れてお進みください」と係りの人が説明してくれた。中は久々に体験する暗さ。自分の体が見えないくらいで、手の感触を頼りに歩く。

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Cave, 2019

途中で天井の穴から明かりがさしてほっとする。何がなんだか、って写真ですが〜。この「洞窟」には27トンの鋼鉄が使われているそうだ。スケールが大きい。

部屋丸ごと水浸し。

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Host, 2019

バッキンガムシャーの粘土の上から大西洋の海水を注いだものだそうです。これはもちろん室内には入れず、開いたドアから覗いて見るだけです。いつも動いている大洋の水がこんなところにひっそり。ちょっと不満そうに感じた(笑)。

彼の小さなスケッチブックがずらっと並んだ部屋も圧巻であった。細かいドローイングは、すべての作品のアイデアの元、下描きになっている。3Dの線描きの何種類かの下描きもちゃんとあった。毎日毎日、このスケッチブックを埋めてきたのだな。

繊細なドローイングからスケールの大きな(でもやはり繊細)鋼鉄作品まで、幅広くて刺激的、楽しめる。今回はロイヤル・アカデミーのフレンドになっている友人のお陰で無料で入ったので、また自腹で行ってもいいなと思う。

 

今回は時間がなくて入らなかったヘレン・シャルフベック展も気になる。こちらは今月中に終わるので、早々に行かねば。

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Helene Schjerfbeck, Self-Portrait, Black Background, 1915(部分)

 

 

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オノ・ヨーコ『SKY PIECES』@Heong Gallery

JUGEMテーマ:アート・デザイン

270819

締め切りまであとちょっとだー。せっかく秋の気配と思ったら、先週末は30℃超えで閉口した。夕方になると突然雨になったりして空が不安定。

ケンブリッジ大学ダウニング・カレッジの小さなギャラリーHeong Galleryが、オノ・ヨーコ(1933年 - )の展覧会をしているというので、出かけてみた。

YOKO ONO SKY PIECES

こんな展示。

「Sky TV」は空を映したテレビが25個並んでいるもの。(シャープ製だった)

グレーの、なんだかダルい空。

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カラスの鳴き声などがスピーカーから流れてくる。じーっと見ていると鳥が画面を横切る以外、変化ほとんどなし。なんじゃこれは。そして気がついた。制作年は1966年だ。もしかして、白黒テレビか?!だったらグレーなわけです。道理で、鳥がみんな白か黒だと思った。

青いと想像してみたりすると、面白い。

それにしても、今ならこんな展示は普通ですが、60年代にというのは前衛ですね。

「ヘルメット」は天井から吊るされた兵士のヘルメットに、ジグソーパズルの大きめのピースが詰まっているもの。パズルの完成形は「空」のようだ。

ギャラリー内だけでなく、外にも展示が。「Skyladders」は梯子のインスタレーション。適当に梯子が置いてある。登ってもいいみたいw

あまりに外が暑くて、眺めるだけにしておいた。根性がない。

彼女って最も有名な日本人のひとりだと思いますが、作品を見ることはなかった。時代の最先端というか、飛び出していたすごいアーティストだったんだな。ビジュアルと、詩人や音楽家の要素が全部混ざっている。昔はパフォーミング・アートもやってましたね。元々「自由学園」で教育を受け、家庭でも音楽が重視されていたそうだ。

会場には書きこんでもいい本が置かれ、外には小さいカードに好きなお願いを書いてぶら下げていい木もあり(七夕?「これは日本では1年に一度する」と言ったらイギリス人の友達が面白がっていた)。小さいギャラリーで参加型の展覧会、頭に刺激を受け、楽しかった。

 

 

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Beggarstaffs: William Nicholson & James Pryde@フィッツウィリアム博物館

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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The Beggarstaff Brothers, ‘Kassama’ Corn Flour, 1894

ありがたいことに夏休み時期だってのに仕事がつまってて、あんまり余暇がありません。仕事も遊びのうちだからいいけれど、ケプレルの本とか早く書かないと内容忘れそう!

上のポスターを見て、友達が「これ絶対行かなくちゃ!」と言っていた、ケンブリッジ市Fitzwilliam Museumの展覧会、最終日に滑り込みで行ってきた。

Beggarstaffs: William Nicholson & James Pryde

実をいうとポスターだけだと、それほどすごいとは思わなかったんですが、内容の濃い展覧会だった。しかもよく見たらこれ、1894年の作なんですね、ヴィクトリア朝時代よ、めちゃ新しいじゃないの。

ベガースタッフ・ブラザーズは若い画家のウィリアム・ニコルソン(1872 – 1949)とサー・ジェームス・プライド(1866 – 1941)の共同制作ネーム。ジェームスのお姉さん(やはり画家)とウィリアムが交際、後に結婚したのが縁、本当に義理の兄弟だった。

絵で食べるのが大変なため、ポスターやデザイン、イラストの仕事をしたわけだけど、出来がすばらしかった。

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Hamlet, poster, 1894

有名なポスター、シンプルなハムレットが渋い。

彼らがいなければ、ストリートアーティストの「バンクシー」は生まれなかったろう、と言われているそうで、納得してしまいます。とにかくセンスがいい。

元々一風変わった視点で描ける人たち。

網まで描いているフラミンゴ。

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William Nicholson, Flamingos, 1891

構図も色使いも驚く。

一目で誰かわかるイラストも腕がいい。

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William Nicholson, Miss Havisham, 1900

もちろん、「大いなる遺産」のハヴィシャムさんです。

共同の活動は1899年くらいに終了し、それぞれキャリアを積んでいった2人、ここからがまた面白い。

ジェームスの方は建築や風景(しかも暗いの)に興味が。

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James Pryde, A Venetian Bridge, 1911 - 1912

これはさすがにヴェネツィアだから明るめ。何ともいえない青。

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James Pryde, The Slum, 1916

不気味な建物とやたら小さい人物が特徴の建築シリーズ、引き込まれる。

晩年はボヘミアン的生活が破滅的方向に進み、友達を心配させたとか。

一方、ウィリアムの方は真面目にコツコツ描いて、「サー」の称号もついて、幸せな芸術家人生だった感じがする。制作意欲が全く衰えないのが立派だ。

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William Nicholson, The Silver Casket, 1919

彼はどうも手袋フェチなような(笑)。有名な、「破れた手袋の女」もあるし。

わんこも手袋くわえてるし…。

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William Nicholson, The Greyhound with the Glove

得意そう。どこから取ってきた?

かなり晩年にできた弟子、ダイアナさんのポートレートが美しい。

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William Nicholson, Diana Low(部分), 1933

彼女が師を描いた作品も横に飾ってあり、画家として実力があるのもわかった。指導のたまもの?

見たことのある絵も少しあったが、まとめて2人の画家としての成長がわかる展示は初めて。とても新鮮で、滑り込んでよかった。できればもっと早く行って、時間をおいて2〜3回見たかったが、もう遅い〜。

作品リストがここで見られます

 

 

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