『Hokusai』大英博物館@映画館

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『冨嶽三十六景』「神奈川沖浪裏

大英博物館で葛飾北斎(1760 - 1849)の大規模な展覧会が開催されている(8月13日まで)。

Hokusai -- beyond the Great Wave

もちろん予約した。その前に、映画館でこの展覧会にちなんだドキュメンタリーが上映されたので見に行く。

Producer & Director -- Patricia Wheatley

北斎といえばこの大波、日本人でなくても知っている、ほとんどモナリザやムンクの「叫び」と同じくらい有名な絵だ。この展覧会、そしてドキュメンタリーでは、北斎がこの波以後も、歳をとるごとにどんどん腕を磨いて傑作を描いていたことを紹介している。

NHKとの共同制作なので日本の映像も多く、実際に木版を掘ったり、芸大の学生が模写して見せたり、興味深い映像ばかりでためになった。

貧しい生まれだが小さいころから絵が好きで、浮世絵師として成功。破産したり火事で焼け出されたり、豊かではなかったが全然気にせず、90歳まで芸術に邁進。すごい画家だ。

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『冨嶽三十六景 尾州不二見原』 北斎改為一筆(葛飾北斎画)

自分も庶民だから働く人や町の人の登場が多く、活き活きしている。構図も斬新。

そして絵に動きがある。

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Poppies. Colour woodblock, 1831-1832

ちょっと「波」に似ているリズム。

イギリスの一流美術評論家が解説したり、こちらも長寿画家デヴィッド・ホックニーが、「北斎はすごい画家です。ぼくも長生きしてがんばりたいが、彼ほどには描けないけどね」と謙遜したりしている。

版画で大量生産されていたから、蕎麦2杯分で誰でも買えた。「たいへん民主的な芸術だ」と解説者が言っていたのが印象的。

そして版画の質が悪かったからべたっと赤くなった「赤富士」が有名になっているが、本当はあれはもっと薄い、ピンクの富士だったとか、聞いたことがあったような。今回スイスの収集家から借りて質の良い版を展示しているそうだ。

長年北斎を研究してきた人(名前失念)が今回ついに大英博物館での展覧会を実現させた。彼が感激屋さんでしょっちゅうウルウルしているのが可愛かった。少なくとも3回は声をつまらせていた。感無量なんでしょうね。

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Weeping cherry and bullfinch. Colour woodblock, c. 1834.

こういう空間のとり方とか、さかさまの鳥、すごいわー。

役者絵を描き、小説の挿画や漫画を描き、西洋画も研究した北斎、「この調子で110歳までいけばまともな絵が描けるかな」と言っていた、前向きさがすばらしくて元気が出る。地元映画館の2番目に大きいスクリーンは満員、人気を物語っている。

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『富士越龍図』(死の3か月ほど前の肉筆画)

辞世の絵でしょうか、実物を早く見たい。
トレイラー:

 

 

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アレクサンドル・ネフスキー

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近々、週末2日半ほどのロシア語集中講座に行く予定。モスクワ、サンクトペテルブルク2都市がテーマということで、ロシア史を調べている。

しかしまだモスクワにさえたどりつかない。先日テレビのドキュメンタリーで、アレクサンドル・ネフスキー(Александр Ярославич Невский, 1220 - 1263)をチェック。ノヴゴロド公であり、スウェーデンの侵攻をネヴァ河畔の戦い(1240)で阻止、ドイツ(ドイツ騎士団)の侵攻を、チュド湖上の戦い(1242)で撃退した、中世の英雄だ。20歳やそこらですごいね、天才武将だ。

チャンネル1のドキュメンタリー『Александр Невский. Между Востоком и Западом』では、700年後に第二次世界大戦でまたドイツに攻められたとき、スターリンがネフスキーを持ちだして徹底抗戦を鼓舞したエピソードを紹介していた。

ネフスキーというのはネヴァ河畔の戦いで勝ったことを記念に後世の人がつけた名だそうです。

さてこの人といえば、エイゼンシュタインの1936年のモノクロ映画「アレクサンドル・ネフスキー」。初めて見た。

Режиссёр -- Сергей Эйзенштейн

Композитор -- Сергей Прокофьев

<В ролях>

Николай Черкасов — князь Александр Ярославич Невский

ネフスキー役は、ニコライ・チェルカーソフ。(上の写真の人)

映画はドイツ騎士団との戦いに焦点を当てていた。

いわゆる北方十字軍、ドイツ騎士団はロシア正教も異教徒とみなして攻撃してきたわけです。ノブゴロドの近隣プスコフは降伏。ノブゴロドは政治的ごたごたで追放していたネフスキーにわびて帰ってきてもらってドイツに抗戦する。クライマックスがチュド湖上の戦いの1日。

ドイツがまるで狂信的な悪の軍団!戦争映画だからしょうがないですが。

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なんだこのカブトは。こんなのありません。第一次大戦のドイツ軍のヘルメットへのあてこすりです。後ろのバケツみたいなのは・・・いいのかな。ずれたら見えなくて大変。

噂に聞いていたすばらしいカメラワークは堪能した。構図が斬新でダイナミック。また、音楽担当のプロコフィエフは、映画用音楽を編集して、カンタータに作りなおしている。

ラストのネフスキーの決めゼリフは「Кто с мечом к нам придет, от меча и погибнет!」(剣をもって我らに向かってくる者は、剣によって滅びるであろう)。

もうひとつ、21世紀になってからの映画。

『Александр. Невская битва』(アレクサンドル ネヴァ河畔の戦い)2008年。

Режиссёр -- Игорь Каленов
<В ролях>
Антон Пампушный — князь Александр Ярославич
Светлана Бакулина — княжна Александра Брячиславна
Игорь Ботвин — Ратмир

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あら、イケメン♪

ネヴァ河での戦闘のほか、モンゴルも近くまで迫っていて、あっちもこっちも守らねばならない。

これはアクション映画っぽく、重厚さはなく、カッコよく作っているエンターテインメント。

あまり歴史の勉強になったような気がしないが、記憶には残るかな。

トレイラー:

 

 

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『Он вам не Димон』メドヴェージェフ首相の汚職告発動画(映画)

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会社で他の部署にロシア人とウクライナ人がいて、給湯室で仲良く2人でしゃべっていたりする。国同士の諍いは個人には関係ない。わたしもたまに混ぜてもらうが、じきに会話が英語に切り替わってしまう。情けない。

ウクライナくん(適当なあだ名)に教えてもらったドキュメンタリー、今年の3月に動画サイトにアップされて、今までに2100万人が見た『Он вам не Димон』(彼はあなたたちのジーモンではない)。ロシアのドミートリー・メドヴェージェフ首相の汚職をあばいたもの。タイトルの中のジーモンはドミートリーのごく親しい愛称で、気安く呼ぶな、ということですね。

制作はФонд борьбы с коррупцией (反・腐敗基金)、ナレーターは腐敗摘発活動をしている若手政治家Алексей Навальный(アレクセイ・ナヴァーリヌイ)がつとめる。

綿密な調査で、自ら「汚職を排除しよう」と言っているメドヴェージェフ首相が実は隠し財産を増やし、モスクワに大邸宅、ペテルブルクに高級マンション、秘密の別荘、さらにイタリア、トスカーナにワイナリーを持っていることを暴露している。あ、そうそうヨットももちろん。家族や大学の同級生のネットワークを使って本人の名前が出ないように表向きの会社を作っている様子が証拠とともに解説される。モスクワ郊外のお城のような大邸宅は、あるオリガルヒからのプレゼントだそう。

まだロシア語字幕つきで一度しか見ていないので、完全には理解してませんが(英語字幕でも話がわからないかもだが)、信憑性ある。

わりと文化人な趣のある穏やかそうな首相だけど、やっぱりヨットとか欲しいんですかねー。

「ロシアにはお金はたくさんあるんだ。でも貧しさに苦しんでいる人がたくさんいる。それはお金の分配が偏っているからです」と熱く語るナヴァーリヌイ。オフィシャルなマスコミは完全無視したようだが、このドキュメンタリーに触発されたデモも起き、波風は立ちはじめた。

「見たよー、すごいね」とウクライナくんに言ったら、

「あれがロシアさ」とクールな返答がかえってきた。

ナヴァーリヌイはこの4月に(さっそく?)何者かに顔に化学薬品をぶっかけられたそうだ。恐ろしい。生き延びてくださいよ。

最初の方、英語吹き替え。

 

興味ある方は、”Он вам не Димон”で動画サイトを検索すればこちら↓が出て来る。英語字幕も出るので、よかったらどうぞ:

 

 

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ドラマ「アンナ・カレーニナ」ロシア・チャンネル1

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月曜から毎日、夜に帰宅するなりロシア・チャンネル1をつけている。去年から首を長くして待っていたドラマ「アンナ・カレーニナ」がついに放送されている。

しかも1晩2話ずつ、月〜木で一気に8話完結までやってしまうという無茶ぶり。怒涛のアンナ祭り。

『Анна Каренина』

Режиссёр -- Карен Шахназаров

<В ролях>
Елизавета Боярская — Анна Аркадьевна Каренина
Максим Матвеев — Алексей Кириллович Вронский, граф, полковник
Виталий Кищенко — Алексей Александрович Каренин
Кирилл Гребенщиков — Сергей Алексеевич Каренин
Иван Колесников — Стива Облонский
Виктория Исакова — Долли Облонская

でも写真↑が何だかヘンですよね。こんな場面あったっけ?

実はこのドラマ、おなじみレフ・トルストイの名作に、ヴィケンチー・ヴェレサエフ(Вересаев, Викентий Викентьевич、1867〜1945)の«Рассказы о японской войне»(日露戦争の話)をくっつけたもの。写真の人はセルゲイ・カレーニン。そう、アンナが家に置いてきた愛息子のセリョージャ(当時8歳くらい)が成人し、軍医として満州で働いているのだった。そこへ、負傷して運ばれてきたのが50代になったヴロンスキー伯爵という設定。あんた、生きてたの。

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ヴロンスキー(昔の)。

負傷兵の世話や手脚の切断手術で毎日忙しいセルゲイ医師だが、暇をみつけてはヴロンスキーのベッドへやってきて、

「なぜ母がああいう死に方をしたのか、教えてください」という。子供だったからきちんと教えてもらっていないだろうし、父や周囲に何と説明されたかわからないが、納得していないのだろう。幸い命に別状ないヴロンスキーが昔話をする、という設定。

政府高官の妻アンナ・カレーニナが若い将校ヴロンスキーと恋に落ちて家庭を捨てるが、貴族社会から冷遇され、何より愛する息子と離ればなれになって精神が不安定に、そして不幸な結末を迎える。

ちょっと2話を見逃したら、3話ではすでに、離婚するなら息子を取られる、と重苦しい雰囲気になっていた。幸せな時間は一瞬だった〜。

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アンナを演じるエリザヴェータ・ボヤルスカヤ。ややイメージとは違うけど、美貌です。わりに声にドスがきいている。ヴロンスキーのマキシム・マトヴェエフは実生活の旦那さん。美男美女夫婦だが、やりにくくないかな。プロだから切り替えるのでしょう。

ドラマはトルストイの本通り進行、ただし田舎の地主リョービンの話は一切なし。アンナに集中している。ヴロンスキーがいない場面もあるけど、アンナがくわしく話していたのかな。まあそのへんは突っ込まないでおこう。

今のところ、満州の野戦病院がどう生きてくるのかわからない。「セリョージャ」とヴロンスキーの関係は円満な和解になるのか。2人とも日本軍の攻撃でXされちゃうとか(まさか)。残るはあと2話です。

チャンネル1の宣伝がすごくて、うるさいほどたくさんあるトレイラーのひとつ:

 

 

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『Dancer』

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バレエ・ダンサーのセルゲイ・ポルーニン(1989 - )を追ったドキュメンタリー映画。ロンドンとの中継で、映画の後に本人のパフォーマンスとインタビューもついた企画。

Director: Steven Cantor
Stars: Sergei Polunin, Jade Hale-Christofi

ウクライナ共和国(ぎりぎりソ連)生まれのポルーニンは13歳でロイヤル・バレエ学校に入学、2009年には史上最年少の19歳でプリンシパルに出世して活躍、なのに2012年1月、突然退団して騒ぎになる。不良ダンサーと呼ばれたりした。映画はその頃から撮影が始まり、5年かけて完成したもの。

彼の退団は驚いたが、わたしは「ん〜、反抗期?」なんて軽く考えていた。本人の悩みは相当深かったことを知った。

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ウクライナの田舎町で生まれたセルゲイ、赤ちゃんの時に彼の体をチェックしていた看護師さんが、股関節がどこまでも開くのでビビったそうだ。最初から並外れて柔軟だった。小さいころから体操教室、その後ダンスのクラスへ。

(この地方都市に息子の未来はない)と考えていたお母さん、バレエの道で行けそうなセルゲイと共に首都キエフに移ってバレエ学校に(ザハロワも通ったところ)。そこでもやはり、どのクラスでも一番できるセルゲイを見て、外国に出そう、と決意したそう。孟母三遷。

彼の才能は最高の場所を要求した。けれど家の経済力はそれに見合っていなくて、お父さんはポルトガルに、お祖母さんまでギリシアに出稼ぎに行ってセルゲイの留学を支える。

英語も話せない状態で学校に入ったセルゲイ、家の期待にも応えたく、人一倍練習した。が、離れて暮らしているうちに家族は壊れてしまう。父と母が離婚。まるで自分のせいみたいに。あんまりだ。

子供のころからの映像も入れながら、ただ楽しいだけだった踊りが重く、若い体にのしかかってきた過程が描かれ、急にキレたようにロイヤルを辞めたのも、ついに限界だったように思える。

その後はロシアで、テレビの若手ダンサーのコンテスト番組(大バレエ)に出るところから始めたとは知らなかった。スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ劇場で良いメンターと会い、コンテンポラリーも踊り、新たなキャリアを築きつつある。

特異な才能を持った人の苦悩というものが、ちょっとは理解できるような。随所に挿入される踊りの場面の彼は、どの段階のどの役でもすごい。

YouTubeで1900万回近く再生されている『Take Me to Church』も映画の中で見られる。

ロンドンの会場では映画の後にポルーニンが出て来てこれを踊り、その後Q&Aに答えた。インタビュアーや会場の聴衆からだけでなく、ツイッターからの質問にも答える。

これからも踊ってくれますか、というファンの問いに、最近やっとまた踊りが楽しくなってきたので、これからも踊るだろうとのこと。

母世代の女性からは、子育てについての質問も。それには、「バランスが大事だと思う。才能があるなら伸ばしてあげるといいが、本当に子供が好きでやっているか確認して」と答える。でも母に厳しくバレエをさせられなかったら、

「犯罪者になってたかな〜」とぼそっと言っていた(笑)。

自分が苦労したことから、若いダンサーの精神的なサポートも含めたマネジメント・システムを作っているところだと言う。過去から学んで何かをつかんでいるところが立派だ。

「映画も好きなようですが、バレエにしてみたい映画ってありますか?」と聞かれ、

「えーそれは難しい質問。わからないな」と言ってから、「・・・ランボー?」とつぶやいて笑わせてくれた。それだけはやめて。

まだ27歳なのに、かなり悟りをひらいたように見える彼、さらに大物になってバレエでもそれ以外でも活躍することだろう。

ドキュメンタリーは日本でも夏に公開のようです。

 

 

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マーレン・アーデ監督 『Toni Erdmann』

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また夜の内職が始まってあまり時間がないわりに、遊びには行っている。

ケンブリッジ映画祭でドイツ/オーストリアのコメディ映画『Toni Erdmann』を見た。

Directed by Maren Ade

<Cast>

Peter Simonischek as Winfried Conradi / Toni Erdmann
Sandra Hüller as Ines Conradi
Lucy Russell as Steph
Michael Wittenborn as Henneberg
Thomas Loibl as Gerald
Trystan Pütter as Tim

ヴィンフリートは音楽の先生だがそんなに忙しくない。引退間近かな。エキセントリックな性格で、プラクティカル・ジョークの度がすぎる、ヘンなおじさん。

スーパー・シリアスにビジネスの世界で活躍する娘イネスに会うために、ルーマニアのブカレストにアポなしで訪れる。

イネスはコンサルタントとしてクライアントと最後の詰め段階、ストレス度マックスだっていうときに突然、母と離婚した父ちゃんが現れて仰天。気をとりなおして穏便にやり過ごそうとするのに、ヴィンフリートはクライアントのお偉いさんに、

「娘があんまり忙しくてかまってくれないから、代理の娘を雇ったんですよ、これが良い娘でね、足の爪も切ってくれるの」とかアヤしい話をしている。ぎゃーやめて。

数日かまって、やっと帰したと思ったら、父は今度はカツラと入歯で変装し、

「トニ・エルドマンです、コンサルタントでライフコーチ」と再登場。

全く違う世界で生きている父親のおかげで、こっちの現実にヒビが入りそう。娘のキャリア=人生を壊すつもりなのか??それでも何とかつきあう優しい娘のイネスもだんだん自棄になり、キレてくる。

そのキレ方が、「おお〜そっち行くか!」と感心する突拍子もないもので、さすが父のDNAが入っている。素質あったのね。

非常に真面目な顔つきのザンドラ・ヒュラーが真剣な表情のままとんでもない行動に出るのが可笑しく、父のボケとの間合いが絶妙で、笑ったのなんの、涙と鼻水が出て呼吸困難になりそうだった。会場が悲鳴とヒステリックな笑い声で満ちるという、ドイツ映画には珍しい反応。ああ、腹痛い。

根本は父の「そんな出世のためにあくせくしてないで、今という時間を楽しまないと、人生なんてあっという間に終了だぞ」という愛のある心配なのだ。いつ離婚したのか知らないが、娘が小さいころにはいっしょに楽しく遊んで可愛がっていたことがうかがえる。なのでラストでは和解にいたる。あまり深刻な確執の話でなくてよかった。

映画祭でのドイツ語作品、あとは「レーダーホーゼン・ゾンビの襲撃」なんてオーストリア映画もあったんだけど、さすがに行く時間がなかった。そのうちいつか。

 

US版トレイラー:

 

 

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映画版『The Girl on the Train』

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原作が面白かったポーラ・ホーキンズの「ガール・オン・ザ・トレイン」、映画化されて先週公開。さっそく見てみる。

Directed by     Tate Taylor

<Cast>

Emily Blunt as Rachel Watson
Haley Bennett as Megan Hipwell
Rebecca Ferguson as Anna Watson
Justin Theroux as Tom Watson
Luke Evans as Scott Hipwell
Allison Janney as Detective Sgt. Riley
Édgar Ramírez as Dr. Kamal Abdic

舞台は原作のロンドンからニューヨークに移されている。

アル中の失業者レイチェル、用もないのに毎日乗っている通勤電車から、かつて自分が住んでいた通りをながめ、元の家の2軒先の幸せそうなカップルを理想化していた。

ところがある日、その幸せな家でいつもと違う場面を目撃。数日後、カップルの妻の方が行方不明になったとニュースで報道される。

自分の情報が役に立つかもと警察に告げに行くレイチェルだが、記憶のあやしい酔っ払いの彼女は信用してもらえない。

それどころか、失踪した女性ミーガンが元旦那の家のベビーシッターだったことや、レイチェルが勝手に元の家に侵入した事件もあって、逆に疑われるはめに。しかもミーガン失踪の日、レイチェルは血まみれの服装で帰宅、何があったかさっぱり覚えていなかった。

原作がよくできているので、映画にしても面白くなったパターンと思う。本ではよくわかる登場人物の心理描写が犠牲になるのは仕方ないが、映像で見てなるほどと納得するところもある。

レイチェルのエミリー・ブラントはイギリス人女優、酔ったり混乱したりして大抵の場合ひどい顔をしている役どころをよくがんばっている。

消えた女、ミーガンが色っぽかった。

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Haley Bennett

舞台がアメリカということで、原作から想像していた風景とかなり違っていた。ユーストン駅がグランド・セントラルに。家並みもアメリカン。それもまた面白い。

主人公(たち)の内面を読める小説に対し、スリラーを楽しめるのが映画かな。それにしても真犯人はとんでもない人間だ。あまりいないが、全くありえないという訳でもないところが怖い。

 

ガール・オン・ザ・トレイン(上) (講談社文庫)
ガール・オン・ザ・トレイン(上) (講談社文庫)

 

 

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「モスクワは涙を信じない」

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1980年のソ連映画。

原題『Москва слезам не верит』を直訳した題「モスクワは涙を信じない」だと、何かソ連のプロパガンダっぽくて見る気にならず。でもロシア語クラスのオリガ先生が良いと言っていたので、モスフィルムのサイトで無料だし、チェックしてみた。

"モスクワは涙を信じない"というのはロシアのことわざで、泣いたってどうにもならないよ(現実は、泣いてるだけじゃ変わらない)、って意味だそうで。だいぶ感じが違うわ。

Режиссёр -- Владимир Меньшов

<Cast>

Вера Алентова — Катерина Тихомирова, главная героиня
Алексей Баталов — Георгий Иванович (Гоша), слесарь из НИИ
Ирина Муравьёва — Людмила Свиридова, подруга Катерины
Юрий Васильев — Рудольф (Родион) Рачков, телеоператор из Останкино, отец Александры

 

1958年ソ連、モスクワ。地方都市から出てきて工場で働く若い女性カチェリーナとリュドミーラは性格は違うが仲が良い。夜学で化学を学んでキャリアを積もうとしているカチェリーナに対し、リュドミーラは、

「リッチな男を捕まえて楽するのが勝ち組の女ってもんよ」という態度。

リュドミーラは「いいとこのお嬢さんのふり」をして、ランクが上の男性を捕まえようとする。カチェリーナも嫌々ながら協力する形で大学教授の娘の演技をしたら、ロジオンというTV局で働くボーイフレンドができた。リュドミーラは人気アイスホッケー選手をゲット。大リーグ級?のスターですね。

その後リュドミーラの正体がバレてもホッケー選手の彼は、

「その方が気楽だよ、結婚しよう」と言ってくれたのに、カチェリーナのロジオンはさっさと逃げる。子供できてたんだけど。ソ連に強制認知とか養育費はなかったのか。

そして突然話は1979年に。カチェリーナはシングルマザーとして娘を育てあげ、出世して大きな工場のディレクターになっている。リュドミーラの旦那はすでに現役引退して酒浸り。

仕事で成功しているが愛情には恵まれなかったカチェリーナに新たな彼氏ができたと思いきや、テレビのインタビューで元彼女の成功を知ったロジオンが

「娘に会いたい」とやって来て・・・。ごたごたする。

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関係ないが新恋人ゴーシャとその友達とのピクニックシーン、普通に参加している巨大わんこが可愛い。

どういう時代・国家だろうと、人間の泣き笑いは似たようなもの。人生思うようにはいかないけど、いいことだってあるよね、というような、しんみりしてユーモアもある佳作。

そうそう、男2人がアパートの一室でガンガン大きな音を立てているので「ケンカか?」と人が駆けつけたら、干物の魚を柔らかくするためにテーブルにぶつけていた。ウォッカに合いそうなのよね。

カチェリーナの新恋人ゴーシャが、インテリだし男気のあるやつなんだけど、「自分より稼いでる女とはつき合えない」と思っているのがやはり70年代ですかね。今の人ならガールフレンドがエグゼクティブだったら「ラッキー」って思いそうだけど、そうでもないのかな。

ロシア語字幕つきなのが勉強になるが、まだまだ聞きとれません。

 

トレイラー:

 

 

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キューブリック監督『Barry Lyndon』

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日曜日の恒例、古典作品を上映する会。スタンリー・キューブリックの「バリー・リンドン」を見に出かけた。1975年の作品。

バリー・リンドンという名前の人の話なんだろう、ということ以外は全く知識なし。原作はウィリアム・サッカレーの小説だそうで。

『Barry Lyndon』

Directed by     Stanley Kubrick

<Cast>

Ryan O'Neal as Redmond Barry (later Redmond Barry Lyndon)
Marisa Berenson as Lady Lyndon
Leon Vitali as Lord Bullingdon

一番小さいとはいえ100人近くは入るだろうスクリーン3が完全満席で驚いた。上映はこの1回だけ。わたしのようにまだ見ぬ名作をキャッチアップする人の他、懐かしい映画を大画面で見たいという人もいただろう。

18世紀のアイルランドから始まる、ある男の半生を描いた物語。

1750年代に母子家庭の農家の一人息子として育ったレドモンド・バリー。お父さんは決闘で死亡したらしい。

息子も頭に血が上りがちな傾向があり、ある日、恋の三角関係から決闘騒ぎを起こして故郷から逃亡。いろいろあって、イギリスの軍隊に雇ってもらう。

ヨーロッパで七年戦争に参加、戦功を立てたり、でも嫌になって別の国の軍人になりすまして逃亡はかったり、プロイセンの警察につかまったがスパイとして採用してもらったり。綱渡りっぽい流れ者。スパイするはずだった怪しい人物と共謀するようになってギャンブルで稼く。

最大のギャンブルは、死にそうな高齢の貴族リンドン卿の若い妻であるレディー・リンドンと恋仲になったこと。旦那さんはすぐに死去、二人はあっさり結婚する。

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絵のように美しいマリサ・ベレンスン・・・しかしすごい髪

ここで「休憩」が入った。長いと思ったら全部で3時間5分もあるのか!ありがたくトイレに行かせてもらう。

トイレ休憩までの第一部では、危ない目に遭ったりしながらもうまく世の中を渡っていったバリーだが、第二部ではなんだか下り坂になってくる。

彼の行動も良くない。結婚したとたん妻に興味なくなって浮気し放題、妻の連れ子の少年・バリンドン子爵を邪険にする。実の息子は溺愛して何でも言うことを聞いちゃう。

連れ子=バリンドン子爵 から見たら、父の生前から母に言い寄っていた得体のしれない男が”父親”面して威張り、しかも爵位まで狙っているのだ。深く恨みを内向させるのは当然。そして少年はいつまでも少年ではない。彼が成長したときに、”バリー・リンドン”年貢の納め時も近いだろう。

スーパーヒーローでもなくごく普通の人間、その性格のずるさ、弱さから、自業自得の目に遭う男を一歩引いたところから見ている感覚。皮肉交じりな語り手の暗めのユーモアが効いている。たぶん語りはサッカレーの文章なのだろう。

18世紀では人の身分は固定している。そこから出るにはギャンブルのような手に出るほかないということも事実。賭けに出て、敗れ去るのも人生だ。

細部までこだり(ロウソクの光で無理矢理撮影するなど 。Carl Zeiss Planar 50mm f/0.7レンズを使用)18世紀を再現したキューブリック監督の映像がきれいだった。

ライアン・オニールのバリーを思い出そうとすると、なぜか顔がマット・デイモンになる現象がおきている。なぜだ。ハンサムなんだが何となくもっさりしているところが似ている?(失礼な)

 

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タルコフスキー『Иваново детство』(僕の村は戦場だった)
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英題が直訳の「Ivan's Childhood」、ちょっと見てイワン雷帝の子供時代の話かと思っちゃったよ。違った。
1962公開、タルコフスキーの「僕の村は戦場だった」でした。見たことがないので、映画館に出かけた。

『Иваново детство』

<В ролях>
Николай Бурляев — Иван
Валентин Зубков — капитан Холин
Евгений Жариков — старший лейтенант Гальцев
Степан Крылов — старшина Катасонов
Николай Гринько — подполковник Грязнов
Валентина Малявина — Маша

タルコフスキー初の長編作品。彼は1932年生まれだから、撮ったのは30歳になる前。ヴェネツィア国際映画祭でサン・マルコ金獅子賞受賞、サルトルほかの知識人に称賛されたそうだ。

第二次大戦下、ドイツ兵に母と妹を殺されたイワン少年、国境警備の父も多分死んでしまって孤児となる。パルチザンに参加し、その後ソ連の赤軍に拾ってもらった。まだ12歳くらいだが戦う気まんまん。小さい体が見つかりにくいのを活かして、何度か偵察任務を達成した。

でも子供だからねー。グリズヤノフ中佐など、イワンを心配する大人は、彼を前線から離して学校に送ろうとする。軍事学校がふさわしいだろう。
それを拒否するイワン。今戦いたいということしか眼中にない。復讐したい、という思いだけ。

復讐で武力を使えばエンドレスになる、ということを大人も言ってあげられない。自分たちだって今戦争中なんだから。
悲惨な「子供時代」だ。子供時代がない、と言ってもいい。
そしてイワンは最後のミッションに出て行く。

人間が照明弾打ち上げたり偵察し合ってごたごたしている現場の森がひっそり静かで美しい。

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タルコフスキーらしい詩的な表現にあふれる。
それにやはり水がある。ソ連軍と独軍を間に流れる川、イワンの夢に出てくる井戸、しょっちゅうどこかで水音がしている。
夢の中にだけ家族との幸福な生活があるイワン。その子供らしい表情と、兵士になった固い顔つきを演じ分けている少年俳優ニコライ・ブルリャーエフがうまい。

こういう子供は今でもたくさんいる。
劇中誰かが、「これが最後の戦争になるのかな」と言っているが、そうだったらよかったんだけどね。

モノクロの映像が美しいが、ヘビーな映画。しばらく見返す気にはなれないと思う。
見たくなったら、モスフィルムがYouTubeで公開しているから、いつでもここで全編見られます(英語字幕あり)。

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↑  ズビャギンツェフ監督「リヴァイアサン」のクジラの骨を思い出したシーン。
地面に刺さってますが。パイロットのドイツ空軍の人、ちゃんと脱出できたのかしら、心配。


イワンの夢のシーンのひとつ。お母さんが、「井戸が本当に深いと昼でも星が見える」と大嘘ついてます。



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