『Семнадцать мгновений весны』マラソン上映会

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行ってきました。ロンドン、プーシキン・ハウスで、ソ連時代の大ヒットドラマ『Семнадцать мгновений весны』(春の十七の瞬間)を2日で12話一挙に上映するマラソン・イヴェントに。

SEVENTEEN MOMENTS OF SPRING: PUSHKIN HOUSE TWO DAY SCREENING MARATHON

本当に「マラソン」って言葉が入っている(笑)。

11時から6時までの予定になってたけど、2エピソードごとに休憩も入れるので、2日目に終わって外に出たときは8時近かったよ。全部は見きれないまま行ったので、最初から英語字幕つきで見られてかなり理解が深まり、面白かった。

初日にパネルディスカッションがあって、BBC・ロシアのAlex Kan、ジャーナリストのDina Newman、映画評論家のIan Christieと、もう1人音楽関係のスティーブンという人が話し合い、ネタバレしない程度に前知識を分けてくれた。

1話が1時間以上x12回という連続ドラマは当時は異例で、そのため視聴者がクセになって人気が出たとか。

KGBは良い仕事をしていた、と宣伝したくてKGBが作らせてチェックもした「プロパガンダ・ドラマ」、にも関わらず、立派な人間ドラマになっているのが奇跡である。

ナチスも以前のソ連作品のように野蛮なだけのマンガちっくな扱いでなく、知的で奥行きのある尊敬すべき敵として描かれているのが画期的であること、など、傑作である所以を聞いてから上映へ。

ナチスに支配されるドイツ第三帝国に潜入して、親衛隊大佐になりすましているソ連のスパイ、スティルリッツ、今回のミッションは、「ナチス高官の中で、ひそかに西側と交渉しようとしている者がいる、誰かつきとめろ」というもの。

ナチ・ドイツの最大の失敗は戦争で二正面作戦をとってしまったこと。その1つの西が終息してしまえば、東のソ連に全力を注げる。やっと攻勢に転じたソ連が困るわけです。しかしナチスの高官(ゲーリングとかヒムラー級)にはそんなに易々とは近づけない。下手に動くと失敗する。スティルリッツは熟考を重ねて慎重に事を運ぶ。

ですよね。本当のスパイは、走ってる列車の上で乱闘事件起こしたりしないんだよ。地味です。何しろスティルリッツが走ったシーンはなかったと思う。静かに銃で一発で仕留めて殺したのが一度。暴力もほとんど使わない。強いていえば、これか。↓

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貴重なブランデーの瓶で…ははは。でも殺してないですよここでは。

一緒に働いていた無線通信士の家が空襲で壊れ、通信機が敵の手にわたったり、協力してもらっている民間人がヘマをして亡くなり心を痛めたり、そのうちスティルリッツの正体に疑いを持つ者が出て来て尾行されたりと、地味に大変だ。とうとうバレそうになる危機もある。それをうまく潜り抜けて任務を達成しようとするスティルリッツ。SSとゲシュタポの仲の悪さを利用して、綱渡り。非常にハラハラする、うまくできたドラマ。監督はタチアナ・リオズノワ、女性です。緊迫したシーンの後に筋に関係ない可愛い動物が出てきたりして、上手い。

Режиссёр -- Татьяна Лиознова

Сценарист -- Юлиан Семёнов

Композитор -- Микаэл Таривердиев

<В ролях>
Вячеслав Тихонов -- штандартенфюрер СС Макс Отто фон Штирлиц

Олег Табаков -- бригадефюрер СС Вальтер Шелленберг
Екатерина Градова -- Кэтрин Кин (Катя Козлова)
Василий Лановой -- обергруппенфюрер СС Карл Вольф

Андро Кобаладзе -- Иосиф Сталин

スティルリッツの「頼りになる男」感がすごいです。奥さんはソ連に置いて単身赴任、いろんなものを犠牲にして国のために危険を冒している。人気が出るわけだ。

しかしわたしが一番気に入ったのは、いつもはクールな彼がソ連のお祝いの日に自宅でロシア人の本性を表して、暖炉の直火でじゃがいもを皮が黒くなるまで焼いて食べ、郷愁にひたるたシーンですが。

パネルも言っていましたが、このドラマはプーチンさんがスパイになろうとしたきっかけではないかもしれないが、彼が政治家として少なくとも初期の頃は信頼されたことに影響があったかもしれない。ドイツで働いていた元スパイ―ースティルリッツに似ている。何となく仕事ができそう?と騙された人がいたかも。そのくらいスティルリッツは「アーキタイプ」になったということですね。

主役以外の俳優陣も豪華、名優オレーグ・タバコフがSSの情報機関SDの国外諜報局局長だったり、「アンナ・カレーニナ」でヴロンスキーを演じたイケメン、ワシリー・ラノボイが親衛隊上級大将カール・ヴォルフ役だったり。スターリン役が激似でびっくり。

音楽もアルメニア人作曲家ミカエル・タリヴェルディエフの控えめで純粋なメロディーが画面を引き立てる。

「ワルツ」のシーン。

 

若いガビーはスティルリッツに片思い(SSの大佐とも、ましてソ連のスパイとも知らないけど)、ザウリヒ?おばさんはワルツを弾いて2人に踊ってもらう。ガビーが「ザウリヒさんにとても親切ですね、お母さんに似ているとか?」と聞くと、「人類の中でわたしは特に老人と子供が好きなんです」と答えるスティルリッツ。「あ・・・そうなんですか。わたしはどっちにも属してないですね」「うん…そうだね」

ガビーちゃんあっさり失恋、という場面です。オネーギンの方がよっぽど優しいな。哀愁を帯びたワルツがきれい。

 

 

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『The Seagull』(かもめ)

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やっと遅れを取り返し、通常運転になりました。はあ。

空いている時間があるかぎり誰とも口をきかず黙々と働いている間に、日本では台風で関空がちぎれそうになったり、その後は北海道で地震・全道停電、2日で電気復活と、ついて行けない。被災された方、お見舞い申し上げます。今捜索している町でも一人でも多く助かるといいのですが。

イギリスでは亡命していた元スパイを毒殺しようとしたロシア軍人の身元が割れたとかニュースになり、ロシア側が鼻で笑ったりしている。ロシアと仲が悪くなると困るんですけど。

そんな中、アメリカ映画のチェーホフ原作『The Seagull』(かもめ)がイギリスで公開された。

『The Seagull』(2018)

Directed by    Michael Mayer

<Cast>

Saoirse Ronan -- Nina Zarechnaya 

Billy Howle -- Konstantin Treplyov 
Annette Bening -- Irina Arkadina 
Corey Stoll -- Boris Trigorin コリー・ストール
Elisabeth Moss -- Masha
Mare Winningham -- Polina
Jon Tenney -- Dr. Dorn

きれいな湖のある田舎町に、いつもはモスクワで働いている大女優の母イリーナが、年下の人気作家トリゴーリンを連れて夏を過ごしに帰省する。作家志望の息子コンスタンチンは恋人のニーナを主役に前衛劇の上演会をするが、母に小バカにされて途中で幕を下ろしてしまう。しかも本気で女優をめざしたニーナは有名作家のトリゴーリンに惚れて、恋人まで盗られるコンスタンチン。その彼に片思いしているマーシャ、彼女を一方的に愛するさえない教師のメドヴェージェンコと、誰も恋がうまくいってないじゃないか。

最後は、ふわふわしていたニーナは二流女優として地に足をつけ、忍耐しながら生きていく決意を見せるが、取り残されたコンスタンチンは立ち直れずに終わる。

年代も舞台もきちんと20世紀初頭にし、特に現代化などせず忠実に、きれいに撮られている。景色はロシアじゃないけど(樹が違う)。キャストがとてもいい。

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アルカージナのアネット・ベニング(同乗しているのはドルン医師)、ザ・女優、みたいな我の強さを自然に演じ(たぶん地だ・失礼)、でも若さと美が失われるのを怖れている。それを隠そうと必死。可愛らしい。でもこういう人が母親だと大変。

息子のコンスタンチンは伯父の田舎の家で、孤独な暮らし。

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ビリー・ハウルはメイン・キャストの中で唯一イギリス人。繊細でマザコン、こじらせ具合の表現が上手だ。つい同情したくなる(でも関わると重くて大変だよね、こういう人)。

ニーナのシアーシャ・ローナンも初々しい田舎の女の子から世間を知ってしまった巡業女優への変貌を見せ、でも曲りなりにも自分の足で人生を歩いて、以前より強い、美しい人間に見えるのが立派。若いけどキャリア長いもんね、いい女優さんです。

あとはマーシャを演じたエリザベス・モス (『侍女の物語』はわたしは見てないけど)が、内攻させた恋をくすぶらせているせいかエネルギーが大きくて(?)印象的。

本家ロシアですごいアバンギャルドな演出をしていたり、アメリカで今回のようにオーソドックスに、喜劇性も大事に再現していたり、やはり「かもめ」は人気戯曲だ。

トレーラーはなんだかせわしないですが:

 

 

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〇マゾン・お試しプライムで映画

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今学期だけ久々にオリガ先生のロシア語教室に出ることにした。教科書どこまで行ったかな、と問い合わせたら。

「もう新しい本と問題集に入ったわよ」とのこと!2年はさぼってたのだから、当然ですね。最初の授業までに教科書が手に入らないかも、というときに思いついたのがAmazonのプライム会員の30日間無料お試し。さっそく手続きして、翌日配達をしてもらった!

ついでにタダで見られる映画もチェック。充実しているようだったらそのまま会員になってもいいし。

まず最初にホラー。

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"The Cult"
Director -- Paul Latushkin
Starring -- Yana Chapaeva, Vitalij Marks, Sergej Bubnov
けったいなもん見たわー。

若いカップルが初めて一緒に暮らし始める。男性の方が見つけた静かな家(隣りはみんな空き家)に合流したよう。きったなくって先の住人の物がまだあったりするが、若い2人は気にしない――はずが、夜中に電気がついたり消えたり、線がつながっていないはずの電話のベルが鳴って「危険だ、逃げろ」という声がしたり、怪奇な現象が起こる。しかし気づくのは彼女の方だけで、男は呑気に「気のせいだろ」なんて言っている。そのうちついに夜中、アヤシイ男の影が・・・。

思いきり広角で撮ったゆがんだ画面とか、効果は面白いけど、あんまり怖くないかな。アヤシイおっさん、「くまモン」がしなびたみたいな体型で笑える。家の中の汚さの方が怖い。

しかも英語字幕がひどい。ロシア語でずっとしゃべっているのに何にも出なかったり、適当にまとめてしかもズレていたり、「こんな映画、見るひといないよね」と思っているのか?悲しい。

もう一つはウクライナのテレビドラマ。

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『Пёс』(犬)(2015 - )

Продюсер -- Виктор Приходько
<В главных ролях>
Никита Панфилов  ー  Максим Максимов

Андрей Саминин  ー  Алексей Леонидов

Ольга Олексий ー  Елена Леонидова 

犬の一般的な名詞”サバーカ”でなく”ピョス”というタイトルで、この犬がオスであることがわかります。キエフが舞台。マクシムは元刑事だったが、奥さんを親友に取られたのが先か、アル中が先か、自棄になって仕事をクビになり独身に戻って人生どん底。ある日、元奥さんの父である警察の偉い人が殺された。殺人のはずだが、なぜか「自殺」で片づけようとする警察。現場を見ていたのは被害者の飼い犬だったワンコだけ。でも警察犬だ、犯人を見ればわかるかも? 犬を引きとって「犬」と名づけ、いっしょに捜査を始めるマクシム。捜査する権利はないが、義理はある…。

主人公は面白いし、賢すぎる犬も可愛い。(マクシムがウォッカを飲もうとすると妨害したりする・笑)しかし、ちょっと暴力が多い。しょっちゅう殴ったり殴られたり、縛られたりして頭や顔が血だらけのマクシム。「80年代のアメリカの暴力刑事ものみたい」と評しているイギリスの視聴者がいたが、当たっているかも。幸いワンコはうまく立ち回って、あまりひどい目には遭いません。1シーズン20話もある、途中で飽きるかもしれない。

今のところ、プライム会員になっても特典はそう美味しくないかな〜。

「犬」のトレイラー:

 

 

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『Как Витька Чеснок вёз Лёху Штыря в дом инвалидов』ヴィーチカはいかにしてリョーハをケアホームに届けたか

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英題だと「How Viktor “the Garlic” Took Alexey “the Stud” to the Nursing Home」

若手アレクサンドル・ハント監督(Режиссёр - Александр Хант、1985-)、2017年の作品。

<В ролях>
Алексей Серебряков — Лёха Штырь
Евгений Ткачук — Витька Чеснок

主人公ヴィクトル・チェスノーク(ニンニクの意味)をエヴゲーニー・トゥカチュクが、その父アレクセイをベテラン、アレクセイ・セレブリャコフが演じる。

ロシアの地方都市に住むヴィクトルは、小さいころ父が出ていき、その後母が亡くなったため孤児院育ち。遺伝なのか子供のころの愛情不足のせいか、やや無責任な性格。でき婚の妻子がいるけどすでにガールフレンドもいて、そっちに乗り変えたい。工場で真面目に働いているだけでは金もないし、住むところが確保できないなあ。

ーーと思っていたところ、自分を捨てた犯罪者の父アレクセイが生きているのがわかった。今は下半身不随で寝たきり。父に愛情のかけらもないヴィクトルは考えた。

(そうだ、このおっさんを障がい者施設に入れたらこのアパート、おれの物じゃん?)

部屋をいただくべく、父が動けないのをいいことにライトバンに載せて遠くの施設まで送り届けようとする。利己的な息子。父のほうも恩返しされるほどのことしてないし、どっちもどっち。

ただしそのまま大人しく運ばれている父なら俳優にセレブリャコフをもってこない。

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「寄るところがあるからそっちに行け」とかわがままに指示を出しはじめる。頭ははっきりしているようだ。

仕方なく寄った先で思いがけない人物たちに会うことになるヴィクトル。「悪霊」でシャートフを演じた面構えのいい、うまい俳優。ちょっとセレブリャコフに似ているかも。

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↑トゥカチュクと、若いころのセレブリャコフ↓:

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ФАНАТ (1989)、ソ連のアブないイケメンだw

薄情同士、でも似た者同士のヘンなペアの父と息子の珍道中にいろいろあって、どこなのか知らないけど行けども行けども広い風景、しょぼーいインテリアもかえって味があり、じわじわくる。感情がじめつかないのも好み。ロシア語のラップ・ミュージックも聴けて楽しいです。話は悲惨だったり野蛮だったりするんだけど。

ロシアは懐が深いのだ。

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トレイラー:

 

 

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アンドレイ・ズビャギンツェフ『Нелюбовь』と監督Q&A

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アンドレイ・ズビャギンツェフ『Нелюбовь』(2017年、英題「Loveless」。邦題も「ラブレス」だそう)がアカデミー賞の外国語映画部門でノミネートされている。英国映画協会(BFI)で一般公開前のプレミア上映と監督のQ&Aがあるというので、ロンドンへ。

Режиссёр -- Андрей Звягинцев
Композитор -- Евгений Гальперин

Оператор -- Михаил Кричман

<В ролях>
Марьяна Спивак -- Женя
Алексей Розин -- Борис муж Жени
Матвей Новиков -- Алёша сын Бориса и Жени
Андрис Кейш -- Антон любовник Жени
Марина Васильева -- Маша любовница Бориса
Алексей Фатеев -- Иван координатор поисково-спасательного отряда

モスクワに住むジェーニャとボリスの夫婦は離婚の準備中。円満でなく、かなり泥沼のもよう。12歳のひとり息子アレクセイの引きとりを押しつけ合うしまつ。その激しいケンカを、息子に聞かれてしまった。

両親離婚だけできついのに、「自分はいらない子」か〜。そしてアレクセイが行方不明に。お互いすでに恋人がいて、息子が家に帰ってないのを2日も気づかなかった両親、あせる。

ロシアの警察は行方不明届けを出しても、いろいろ手続きがあって、すぐに探し始めてくれないらしい。「民間のボランティア団体に依頼した方が早いです」と警官が勧めるくらいだ。

そしてボランティアはプロなはたらきを見せる。

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ビラ配りや近所の捜索などグループに分かれて緻密に探す。アレクセイの交友関係なども洗い、彼が逃げていきそうな場所の見当をつける。

こういう事件があると、改めて夫婦の関係が見直されるが、元々ダメな場合はさらに悪化してすごいことになる。結婚自体に無理があったこと、ジェーニャと実母との関係もうまくいっていないことなどが見えてきて、暗澹とした気分になる。それにしてもアレクセイはどこへ行ったのか。

現代ロシアの一面をすぱっと切り取った、あざやかな作品。離婚にともなう苦痛やSNS文化、どこの国にも共通する問題でもある。

Q&Aも盛り上がり、通訳が追いつかないほどズビャギンツェフ監督が滔々と話す場面も。アレクセイを演じた子役(とても上手い!)は台本を読まず、その場で感情を想像するように指導したそうだ。その際、親が離婚する〜とかでなく、本当に大事なものが手に入らないとわかった気持ち、などのように導いた。

ジェーニャの強烈なお母さんは、最初のシナリオでは旦那さんの伯父だったのが、途中で変わった、など面白い裏話を聞けた。人探しボランティアは本当にあって、頼りにならない警察の代わりをして、年間3000件以上ある捜索依頼で86%(だったかな、そのくらい)の発見率を見せているそうで。

ブリューゲルの絵を元にした雪の日のイメージなど、画面も美しくてすばらしい。都心で夜8時からの催しだったので帰りは終電、電車も速いのがなくて苦労したが、行ってよかった。もうすぐ地元で始まるので、また見に行こうかと思っている。

トレイラー。ジェーニャは先日アバンギャルドな「かもめ」のマーシャだったマリヤーナ・スピヴァーク:

 

 

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ミヒャエル・ハネケ『Happy End』

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今年の個人的、No.1映画はこれかな。ミヒャエル・ハネケ監督の『Happy End』。

Directed by  Michael Haneke

<Cast>

Isabelle Huppert as Anne Laurent
Jean-Louis Trintignant as Georges Laurent
Mathieu Kassovitz as Thomas Laurent
Franz Rogowski as Pierre Laurent
Fantine Harduin as Eve Laurent
Laura Verlinden as Anaïs Laurent
Toby Jones as Lawrence Bradshaw
Loubna Abidar as Claire

舞台はフランス北部のカレー。イギリスとフランスを結ぶユーロ・トンネルのフランス側入り口がある市で、近年は押し寄せる難民が頭の痛い問題となっている。建設業を営むローラン家の屋敷では、引退してちょっと認知症の老父ジョルジュと、家業を受け継いだ娘のアナとその息子ピエール、アナの兄(か弟)で医者のトマスとその妻が裕福に生活している。

ところが建設現場で事故が発生。対応に追われるアナ。

息子ピエールは、事故で重傷を負ってたぶんダメだろうと思われる移民労働者の家に謝罪に出向き、ボコボコに殴られて帰ったりする。

「すぐ警察に行かなくちゃダメじゃない。賠償交渉の時に有利になるのに」という母アナ。すごい、このくらいでないと経営者はやっていけないかも。ピエールはタフになりきれない性格のようだ。

ごたごたの中で、トマスの前妻が毒を飲んで入院、前妻の子エヴァが屋敷に一時引き取られる。

13歳のわりにあどけない顔のエヴァだが、実は毒物の取り扱いには慣れているのよね・・・。

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(12歳のファンティーヌ・アルドゥアン、もうすでにフランス女優の雰囲気)

物心ついたときからSNSがあった世代の彼女、お父さん(トマス)のパソコンに侵入して愛人とのメッセージを読むくらいお茶の子だ。でもその結果傷ついて無茶な行動に出たりする。

個性の強い人たちのエゴのぶつかり合いが見ている方としては面白く、「あ・・・ははは・・・」みたいに緩く笑える。

ブルジョアでも貧乏人でも、人生は面倒なことが次々と起こるものであり、都度、自分が最善と思う対処をとっていく。その連続で時間は経っていき、そのうちに新たな、理解できない若い世代も育ってくる。これは古代エジプト時代から変わっていない人間のいとなみだ。

父娘を演じるジャン=ルイ・トランティニャンとイザベル・ユペールはじめ俳優陣も良く、iPhoneのビデオや工事現場監視カメラなどの映像も駆使した、現代の様相を切り取った興味深いドラマ、とわたしは感じた。

ラストもびっくりで、ハッピーエンドなのかどうなのか、意見が分かれるところ。会場には失笑みたいなのがじわーっと広がっていた。

エヴァが引きとられたあたりのシーン:

 

 

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『Время первых』@ロシア映画祭

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今年の自分にとってのベスト映画がたぶん決まりましたが、その前に、ロシア映画祭で見たもう1本。

『Время первых』(2017)、英題は「The Spacewalker」となってましたが、もう1つのバージョン「The Age of Pioneers」(パイオニアたちの時代)の方が原題に近い。

主演がエヴゲーニー・ミローノフとコンスタンチン・ハベンスキーだから駆けつけただけですが、面白かった。冷戦時代にアメリカと宇宙開発を競っていたソ連で、初宇宙遊泳をなしとげた飛行士たちの話。

Режиссёр -- Дмитрий Киселёв

<Cast>

Евгений Миронов    -- космонавт Алексей Леонов
Константин Хабенский -- командир «Восхода-2» Павел Беляев
Владимир Ильин  --  генеральный конструктор Сергей Королёв

冷戦のさなか、宇宙開発競争は軍事競争でもあった。ソ連は世界で初めて人工衛星スプートニク1号を地球周回軌道にのせたり、ユーリイ・ガガーリンが初めて地球軌道を周回するなど、アメリカをリードしていた。次なる目標は、人間が宇宙空間に踏み出すこと。

ボスホート(Восход=夜明け)2号に乗り組むべく選ばれたのが、優秀で無茶なパイロットのアレクセイ・レオーノフ(1934- )と、優秀で冷静な先輩パーヴェル・ベリャーエフ(1925-1970)。

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本物のベリャーエフと、ハベンスキー。

性格が正反対の2人、最初はなかなかうまくいかない。

「お前は恐れを知らない。そんな危ないやつといっしょに飛びたくない」とベリャーエフがいったりする。が、とにかく猛追してくるアメリカに勝たなければならない。プロトタイプの打ち上げが失敗したのに、本番を飛んでしまう2人。無理矢理だー。

アメリカを出し抜いてレオーノフが宇宙遊泳に成功したのはいいが、宇宙服内の気圧が上がりすぎてパンパンに膨らみ、身動きできなくなったり。

やっと船内に帰れたと思ったら酸素が漏れ出したり、危機の連続。おそろしい。

ボスホートは軌道をちょっとだけ外れてしまい、どこに着地するか計算できない状態に。上部は「敵国に落ちて機密がバレるくらいなら、そのまま回ってろ」(=2人には死んでもらう)というが、開発責任者の天才科学者セルゲイ・コロリョフは宇宙飛行士たちを救おうとする。手動で大気圏再突入するのを許可。

どこに落ちるか分からないって、非常にまずい。ソ連は国土が広くてよかった。日本だと外れる可能性高いよなー。と感心している間もなく、今度は広すぎがアダになり、針葉樹の雪深い森の中に着地して、見つけてもらえない!!

せっかく任務を果たしたのに、こんなところで死んでは浮かばれない。でもマイナス30度、宇宙服に防寒機能はない。そのままだと確実に死ぬ。この最後のダメ押しのピンチがすごかった。彼らがアマチュア無線の民間人に発見されたエピソードも興味深かった。

わりと涼しい顔をして「勝った〜」なんていってたソ連、一歩間違えば大失敗の局面がかなりあったことがわかり、そんな中で沈着かつ大胆、時にはヤケクソで生きて還った2人がすばらしい。ピンチでもジョークを言ったり、性格が違ったから補い合ってうまくいったのだな、と映画を見たかぎりでは思った。

キセリョフ監督がゲストとして、まだ生きていて頭も冴えているレオーノフ本人に長時間インタビューして映画を作っていったなど、裏話を話してくれた。大気圏外から見た地球の非常に美しい映像は、大部分CGだそうだが、モスクワのソフトウェア・チームは、地球の位置と宇宙船の位置、そして星の配置を正確に再現しているのだそうだ。そんなところ観客は誰も気づかないだろうに、こだわっている。

あと、宇宙遊泳が成功しているときにはテレビでライブ中継し、まずいことが起きるといきなり「ボリショイ・バレエ」に画面が切り替わったのが笑えた。都合悪いとバレエ、よくあることだったそうだ。

観客とのQ&Aも盛り上がり、「あのブレジネフ書記長はどうなの?」と主としてロシア人が議論。「卒中前だからあのしゃべり方でOKなんだ」と細かいところで結論が出ていた。眉毛以外にもポイントあるのか。

この作品、もちろんロシアではウケたが、イギリスでは劇場公開予定はないそうで残念。でも今後、ソ連とアメリカの宇宙船が初ドッキングしたエピソードを撮る計画があるそうだ。これも期待できそう。

トレイラー:

 

 

 

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「ボリショイ」@ケンブリッジロシア映画祭

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”ケンブリッジロシア語会”からメールをもらって知った「ケンブリッジ・ロシア映画際」、ロンドンで行われている映画際の分家?だそうです。平日夜にカレッジの講堂で行われ、地味に6作公開。初日は「ボリショイ」、春にロシアのテレビでトレイラーをやっていて見たかったのが来てラッキー。

『Большой』 (2017)

Режиссёр -- Валерий Тодоровский

<В ролях>

Алиса Фрейндлих — Галина Михайловна Белецкая
Валентина Теличкина — Людмила Сергеевна Унтилова
Александр Домогаров — Владимир Иванович Потоцкий
Nicolas Le Riche — Антуан Дюваль
Маргарита Симонова — Юлия Ольшанская
Екатерина Самуйлина — Юля Ольшанская в детстве

ユーリャは田舎の炭鉱町からモスクワのバレエ学校に入った。ボリショイ劇場のバレリーナになるのが夢。ちょっと労働者階級の男の子がバレエをめざす「ビリー・エリオット(リトル・ダンサー)」みたいな設定で、入学以後の彼女の苦労を追う。

裕福な両親から十分なサポートを受けられる多くのクラスメートたちと違って、単身がんばらなければならないユーリャ、なかなか根性がある。先生に言われたことが納得できなければ言い返したりもする。彼女の才能を見抜いているガリーナ先生は応援してくれるのだが…。

ユーリャ役はリトアニア出身で今はポーランドの国立バレエのコリフェ、マルガリータ・シモノワ。なんと本人が会場に来ていた。

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他の出演者もプロかセミプロのダンサーなので、ダンスシーンがリアル。みんな毎日真剣に練習にはげんだり遊んだり、悩みも苦しみもあるけど、「ブラック・スワン」みたいなえぐい話はないです。(あれはサイコスリラーよね)

自分の技を磨くことに精一杯で、人の足をひっぱるとか意地悪する暇はない。

リッチな親が金を積んで娘の役を買おうとしたりはするけど、子供たちは真面目にとりくんでいるし、誰もががんばっているのを知っているから友達にも優しい子が多い。

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面白かったのは、男子が好きな女の子のリフトができなくなっちゃうエピソード。普通のクラスメートは大丈夫なのに、意識しすぎてダメなようです。大人になれば「仕事」だから嫌いな女だろうが元妻だろうが持ち上げちゃうのでしょうが、思春期は繊細だ。女子の方がドライに、「卒業公演終わったらつき合ってあげるから、とりあえず落とさないでくれる?」と言うのだった。さすがプリマをめざす女。

ぶっ飛んだ話でなくわりとありそう、普通の女の子が自分を疑いながらも覚悟を決めていく過程を描き、ダンスと音楽が楽しめる、爽やかな映画。脇をかためる俳優陣も、がリーナ先生のアリーサ・フレインドリフをはじめとしたベテラン。なにげにニコラ・ル・リッシュが出ていたのはびっくりした。

最後にゲストの主役マルガリータの質疑応答。可愛らしい人で、「ケンブリッジは初めて来ましたー♡」と上手な英語で挨拶。リトアニア出身でワルシャワで働いて、何カ国語できるんでしょうね。この映画のダンサー・女優募集はFacebookで知ったとか、今らしい。ボリショイの舞台に立ったことはなく、この映画のプレミアで体験、と嬉しそう。演技の勉強はしたことがなく、監督が撮影現場でうまく指示してくれたそうな。

自分の体験からも、この映画はリアルだと思うそう。卒業後はある程度自分が分かっているが、学校時代は精神的にも大変で、「地獄よ〜」と言っていた。実感こもった言葉だった。

もっと大々的に公開すればいいのに、映画館ではやらないようで残念。

トレイラー:

PS:少女時代の彼女を演じたのは体操選手のカーチャ・サムイリナで、オリンピック級なのだそうです、道理で体が柔らかいと思った。

 

 

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BBCドキュメンタリー『Gulag』

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ロシア革命100年ということで、テレビでも特集番組がある。ロシアの1チャンネルでは、革命に資金提供したアメリカのユダヤ人銀行家の動きの話などが面白かったが、ロシア語力が足りず、全部は理解できない。

再放送の2000年制作のBBCドキュメンタリー『Gulag』がパワフルだ。グラーク(ГУЛАГ)は強制収容所のこと。3時間の大作で、スターリン独裁下での収容所の生き証人をインタビューしている。ほとんど言いがかりのような「反革命」のレッテルを貼られて収容所送りになり苦しんだ人、その子供たち、看守、管理者、などなど、いろいろな立場の人が当時を回想する。

『Gulag』(2000)

Director: Angus MacQueen

レーニンの後継者としてソ連を強権支配したスターリン、邪魔になる者はがんがん粛清した。グラーグに収容された人100万人。「サボタージュ」とか「反スターリン」(雑談で悪口言っただけ)など罪はでっちあげられて「自白しろ」と拷問を受け、罪を認めるサインをせざるを得ない状態。その後すぐ処刑される人もいたが、多くは労働収容所で過酷な労働に従事した。

「すぐ処刑された人」が発掘された現場(スクリーンショット)、靴など映っている:

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親が逮捕されたという人は、夜中にKGBがやってきたことなどよく記憶している。その後子供は児童施設に送られて、「あなたのお父さんとお母さんは人民の敵だったのです」と教育されたそうな。おそろしい。

シベリア鉄道沿いに延々と収容所が配置されていた地図もすごい。収容所の労働力で一から作り上げられた都市もある。そこの地方政府の偉い人が自ら認めていたのは、

「自由な人を募って何もない土地に入植してもらう時間などなかった。囚人をたくさん連れてきて働かせればタダで開発ができる」

そういうことだったんですね。工場や鉱山など、囚人が作り上げた施設は無数にある。刑期を終えて収容所から出ても、他に行くところがなくて自分たちの作った市にとどまる人も多かった。

また優秀な科学者・エンジニアも捕まって軍事開発などに従事させられた。

そういう人はまだ待遇はましだったのかもしれない。一般労働者のひどい扱いはアウシュビッツと同じだ。女性だと別の身の危険もあって筆舌に尽くしがたい辛酸をなめた。だんだん見ているのが辛くなってくるが、3時間、見なければいけない。

看守など、管理側の人たちの記憶は囚人とだいぶ違う。

「しょうがない、当時はそういうものだと思っていたし、命令だったし」という。たしかにしょうがなかった。手を抜くと自分が密告されていつ囚人の立場になるかわからないのだから。それでも被害者でない人の記憶は正当化されるものだと思った。

「ピョートル大帝がペテルブルクを作るときは農奴を連れてきて働かせた。それと同じだ」なんていう人もいた。

でも、必要以上にサディストになった人間も多い。そういう人間が一定数出てくるものだ。

多数の人々が力尽きて亡くなった中、体力と気力があった囚人は生き残って昔を語っているが、今でも「常にパンがないと不安になって、まだあるのに買って貯めてしまう」という女性がいた。常に空腹だったときの名残だ。夜中に叫んでいる人はたくさんいるだろう。やられた方は忘れられないよね。

ロシア人だけでなく、勝手に村ごと根こそぎ移動させられたタタール人もいれば、戦争から返してもらえなかったドイツ人、日本人もいる。川を泳いで渡って来てみた中国人は、そのまま捕まってしまったそうだ。

「以前も泳いで行ったやつが二度と戻ってこなかったんで、こっちの暮らしはいいのかと思った」・・・ああ、アンラッキー。

スターリンひどいねー、だけでは済まない、人間性というものを考えさせられて嫌になるドキュメンタリー。でもロシア関係者でなくても見ておくべきと思う。動画サイトで「Gulag 2000 documentary」とかBBCとか入れると全編見れたりします。

 

 

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『Murder on the Orient Express』

JUGEMテーマ:映画

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もう1つ話題作を見てきた。ケネス・ブラナー監督の「オリエント急行殺人事件」。もちろんアガサ・クリスティー原作で、何度も映画やドラマになり、真犯人はたぶんほとんどの人が知っている。それでも新作が作られるのは、やはり魅力があるからでしょう。

『Murder on the Orient Express』

Directed by Kenneth Branagh

<Cast>

Kenneth Branagh as Hercule Poirot
Tom Bateman as Bouc
Penélope Cruz as Pilar Estravados
Willem Dafoe as Gerhard/Cyrus Hardman
Judi Dench as Princess Dragomiroff
Johnny Depp as Samuel Ratchett/John Cassetti
Derek Jacobi as Edward Henry Masterman
Masterman
Michelle Pfeiffer as Caroline Hubbard/Linda Arden
Daisy Ridley as Mary Debenham
Olivia Colman as Hildegarde Schmidt
Sergei Polunin as Count Rudolph Andrenyi

エルキュール・ポアロをブラナー監督が、というのはちょっとひっかかる。全体に丸いポアロに対して、彼はどちらかというと四角い。

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まあそれはそれで受け入れ、気にしないようにして見る。

ポアロの乗った豪華長距離列車「オリエント急行」車内で、富豪のアメリカ人ラチェット氏が殺された。その夜に列車は雪崩で脱線、立ち往生。雪に閉ざされた列車の中、乗客の誰かが犯人?それぞれの聞きとりと現場検証、そして推理で真犯人がわかってくるが、その扱いをどうするか、思いがけず悩むことになるポアロ。

豪華キャストの面々、みんな容疑者(この人たち以外にもいます)。

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役者がそろって、それぞれに割り当てられた時間は少なくなるが、楽しめる。ラチェットを演じるジョニー・デップは濃いキャラがうまいし、ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人のジュディ・デンチは貫禄ある。ミシェル・ファイファーの謎めいたキャロライン・ハバード夫人も、デレク・ジャコビの マスターマン(ラチェットの執事)も怪しい、いやみんなアヤシイ。

バレエダンサーのセルゲイ・ポルーニンがアンドレニ伯爵役。重点はそれほど置かれない役だけど、突然キレて暴れたりするので目立つ。え、こういう人物だっけ??映画の世界でもいけそうなセルゲイだ。

全体的にオーソドックスな演出できちんと作られている印象。ポアロのアクション(!)も見られます。元警察だし、引退後だって取っ組み合いくらいしますかね。ブラナーは次作も撮る気があるようですが、どうなるかな。

トレイラー、ロシア語のを見てみた:

 

 

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