ミヒャエル・ハネケ『Happy End』

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今年の個人的、No.1映画はこれかな。ミヒャエル・ハネケ監督の『Happy End』。

Directed by  Michael Haneke

<Cast>

Isabelle Huppert as Anne Laurent
Jean-Louis Trintignant as Georges Laurent
Mathieu Kassovitz as Thomas Laurent
Franz Rogowski as Pierre Laurent
Fantine Harduin as Eve Laurent
Laura Verlinden as Anaïs Laurent
Toby Jones as Lawrence Bradshaw
Loubna Abidar as Claire

舞台はフランス北部のカレー。イギリスとフランスを結ぶユーロ・トンネルのフランス側入り口がある市で、近年は押し寄せる難民が頭の痛い問題となっている。建設業を営むローラン家の屋敷では、引退してちょっと認知症の老父ジョルジュと、家業を受け継いだ娘のアナとその息子ピエール、アナの兄(か弟)で医者のトマスとその妻が裕福に生活している。

ところが建設現場で事故が発生。対応に追われるアナ。

息子ピエールは、事故で重傷を負ってたぶんダメだろうと思われる移民労働者の家に謝罪に出向き、ボコボコに殴られて帰ったりする。

「すぐ警察に行かなくちゃダメじゃない。賠償交渉の時に有利になるのに」という母アナ。すごい、このくらいでないと経営者はやっていけないかも。ピエールはタフになりきれない性格のようだ。

ごたごたの中で、トマスの前妻が毒を飲んで入院、前妻の子エヴァが屋敷に一時引き取られる。

13歳のわりにあどけない顔のエヴァだが、実は毒物の取り扱いには慣れているのよね・・・。

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(12歳のファンティーヌ・アルドゥアン、もうすでにフランス女優の雰囲気)

物心ついたときからSNSがあった世代の彼女、お父さん(トマス)のパソコンに侵入して愛人とのメッセージを読むくらいお茶の子だ。でもその結果傷ついて無茶な行動に出たりする。

個性の強い人たちのエゴのぶつかり合いが見ている方としては面白く、「あ・・・ははは・・・」みたいに緩く笑える。

ブルジョアでも貧乏人でも、人生は面倒なことが次々と起こるものであり、都度、自分が最善と思う対処をとっていく。その連続で時間は経っていき、そのうちに新たな、理解できない若い世代も育ってくる。これは古代エジプト時代から変わっていない人間のいとなみだ。

父娘を演じるジャン=ルイ・トランティニャンとイザベル・ユペールはじめ俳優陣も良く、iPhoneのビデオや工事現場監視カメラなどの映像も駆使した、現代の様相を切り取った興味深いドラマ、とわたしは感じた。

ラストもびっくりで、ハッピーエンドなのかどうなのか、意見が分かれるところ。会場には失笑みたいなのがじわーっと広がっていた。

エヴァが引きとられたあたりのシーン:

 

 

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『Время первых』@ロシア映画祭

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今年の自分にとってのベスト映画がたぶん決まりましたが、その前に、ロシア映画祭で見たもう1本。

『Время первых』(2017)、英題は「The Spacewalker」となってましたが、もう1つのバージョン「The Age of Pioneers」(パイオニアたちの時代)の方が原題に近い。

主演がエヴゲーニー・ミローノフとコンスタンチン・ハベンスキーだから駆けつけただけですが、面白かった。冷戦時代にアメリカと宇宙開発を競っていたソ連で、初宇宙遊泳をなしとげた飛行士たちの話。

Режиссёр -- Дмитрий Киселёв

<Cast>

Евгений Миронов    -- космонавт Алексей Леонов
Константин Хабенский -- командир «Восхода-2» Павел Беляев
Владимир Ильин  --  генеральный конструктор Сергей Королёв

冷戦のさなか、宇宙開発競争は軍事競争でもあった。ソ連は世界で初めて人工衛星スプートニク1号を地球周回軌道にのせたり、ユーリイ・ガガーリンが初めて地球軌道を周回するなど、アメリカをリードしていた。次なる目標は、人間が宇宙空間に踏み出すこと。

ボスホート(Восход=夜明け)2号に乗り組むべく選ばれたのが、優秀で無茶なパイロットのアレクセイ・レオーノフ(1934- )と、優秀で冷静な先輩パーヴェル・ベリャーエフ(1925-1970)。

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本物のベリャーエフと、ハベンスキー。

性格が正反対の2人、最初はなかなかうまくいかない。

「お前は恐れを知らない。そんな危ないやつといっしょに飛びたくない」とベリャーエフがいったりする。が、とにかく猛追してくるアメリカに勝たなければならない。プロトタイプの打ち上げが失敗したのに、本番を飛んでしまう2人。無理矢理だー。

アメリカを出し抜いてレオーノフが宇宙遊泳に成功したのはいいが、宇宙服内の気圧が上がりすぎてパンパンに膨らみ、身動きできなくなったり。

やっと船内に帰れたと思ったら酸素が漏れ出したり、危機の連続。おそろしい。

ボスホートは軌道をちょっとだけ外れてしまい、どこに着地するか計算できない状態に。上部は「敵国に落ちて機密がバレるくらいなら、そのまま回ってろ」(=2人には死んでもらう)というが、開発責任者の天才科学者セルゲイ・コロリョフは宇宙飛行士たちを救おうとする。手動で大気圏再突入するのを許可。

どこに落ちるか分からないって、非常にまずい。ソ連は国土が広くてよかった。日本だと外れる可能性高いよなー。と感心している間もなく、今度は広すぎがアダになり、針葉樹の雪深い森の中に着地して、見つけてもらえない!!

せっかく任務を果たしたのに、こんなところで死んでは浮かばれない。でもマイナス30度、宇宙服に防寒機能はない。そのままだと確実に死ぬ。この最後のダメ押しのピンチがすごかった。彼らがアマチュア無線の民間人に発見されたエピソードも興味深かった。

わりと涼しい顔をして「勝った〜」なんていってたソ連、一歩間違えば大失敗の局面がかなりあったことがわかり、そんな中で沈着かつ大胆、時にはヤケクソで生きて還った2人がすばらしい。ピンチでもジョークを言ったり、性格が違ったから補い合ってうまくいったのだな、と映画を見たかぎりでは思った。

キセリョフ監督がゲストとして、まだ生きていて頭も冴えているレオーノフ本人に長時間インタビューして映画を作っていったなど、裏話を話してくれた。大気圏外から見た地球の非常に美しい映像は、大部分CGだそうだが、モスクワのソフトウェア・チームは、地球の位置と宇宙船の位置、そして星の配置を正確に再現しているのだそうだ。そんなところ観客は誰も気づかないだろうに、こだわっている。

あと、宇宙遊泳が成功しているときにはテレビでライブ中継し、まずいことが起きるといきなり「ボリショイ・バレエ」に画面が切り替わったのが笑えた。都合悪いとバレエ、よくあることだったそうだ。

観客とのQ&Aも盛り上がり、「あのブレジネフ書記長はどうなの?」と主としてロシア人が議論。「卒中前だからあのしゃべり方でOKなんだ」と細かいところで結論が出ていた。眉毛以外にもポイントあるのか。

この作品、もちろんロシアではウケたが、イギリスでは劇場公開予定はないそうで残念。でも今後、ソ連とアメリカの宇宙船が初ドッキングしたエピソードを撮る計画があるそうだ。これも期待できそう。

トレイラー:

 

 

 

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「ボリショイ」@ケンブリッジロシア映画祭

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”ケンブリッジロシア語会”からメールをもらって知った「ケンブリッジ・ロシア映画際」、ロンドンで行われている映画際の分家?だそうです。平日夜にカレッジの講堂で行われ、地味に6作公開。初日は「ボリショイ」、春にロシアのテレビでトレイラーをやっていて見たかったのが来てラッキー。

『Большой』 (2017)

Режиссёр -- Валерий Тодоровский

<В ролях>

Алиса Фрейндлих — Галина Михайловна Белецкая
Валентина Теличкина — Людмила Сергеевна Унтилова
Александр Домогаров — Владимир Иванович Потоцкий
Nicolas Le Riche — Антуан Дюваль
Маргарита Симонова — Юлия Ольшанская
Екатерина Самуйлина — Юля Ольшанская в детстве

ユーリャは田舎の炭鉱町からモスクワのバレエ学校に入った。ボリショイ劇場のバレリーナになるのが夢。ちょっと労働者階級の男の子がバレエをめざす「ビリー・エリオット(リトル・ダンサー)」みたいな設定で、入学以後の彼女の苦労を追う。

裕福な両親から十分なサポートを受けられる多くのクラスメートたちと違って、単身がんばらなければならないユーリャ、なかなか根性がある。先生に言われたことが納得できなければ言い返したりもする。彼女の才能を見抜いているガリーナ先生は応援してくれるのだが…。

ユーリャ役はリトアニア出身で今はポーランドの国立バレエのコリフェ、マルガリータ・シモノワ。なんと本人が会場に来ていた。

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他の出演者もプロかセミプロのダンサーなので、ダンスシーンがリアル。みんな毎日真剣に練習にはげんだり遊んだり、悩みも苦しみもあるけど、「ブラック・スワン」みたいなえぐい話はないです。(あれはサイコスリラーよね)

自分の技を磨くことに精一杯で、人の足をひっぱるとか意地悪する暇はない。

リッチな親が金を積んで娘の役を買おうとしたりはするけど、子供たちは真面目にとりくんでいるし、誰もががんばっているのを知っているから友達にも優しい子が多い。

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面白かったのは、男子が好きな女の子のリフトができなくなっちゃうエピソード。普通のクラスメートは大丈夫なのに、意識しすぎてダメなようです。大人になれば「仕事」だから嫌いな女だろうが元妻だろうが持ち上げちゃうのでしょうが、思春期は繊細だ。女子の方がドライに、「卒業公演終わったらつき合ってあげるから、とりあえず落とさないでくれる?」と言うのだった。さすがプリマをめざす女。

ぶっ飛んだ話でなくわりとありそう、普通の女の子が自分を疑いながらも覚悟を決めていく過程を描き、ダンスと音楽が楽しめる、爽やかな映画。脇をかためる俳優陣も、がリーナ先生のアリーサ・フレインドリフをはじめとしたベテラン。なにげにニコラ・ル・リッシュが出ていたのはびっくりした。

最後にゲストの主役マルガリータの質疑応答。可愛らしい人で、「ケンブリッジは初めて来ましたー♡」と上手な英語で挨拶。リトアニア出身でワルシャワで働いて、何カ国語できるんでしょうね。この映画のダンサー・女優募集はFacebookで知ったとか、今らしい。ボリショイの舞台に立ったことはなく、この映画のプレミアで体験、と嬉しそう。演技の勉強はしたことがなく、監督が撮影現場でうまく指示してくれたそうな。

自分の体験からも、この映画はリアルだと思うそう。卒業後はある程度自分が分かっているが、学校時代は精神的にも大変で、「地獄よ〜」と言っていた。実感こもった言葉だった。

もっと大々的に公開すればいいのに、映画館ではやらないようで残念。

トレイラー:

PS:少女時代の彼女を演じたのは体操選手のカーチャ・サムイリナで、オリンピック級なのだそうです、道理で体が柔らかいと思った。

 

 

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BBCドキュメンタリー『Gulag』

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ロシア革命100年ということで、テレビでも特集番組がある。ロシアの1チャンネルでは、革命に資金提供したアメリカのユダヤ人銀行家の動きの話などが面白かったが、ロシア語力が足りず、全部は理解できない。

再放送の2000年制作のBBCドキュメンタリー『Gulag』がパワフルだ。グラーク(ГУЛАГ)は強制収容所のこと。3時間の大作で、スターリン独裁下での収容所の生き証人をインタビューしている。ほとんど言いがかりのような「反革命」のレッテルを貼られて収容所送りになり苦しんだ人、その子供たち、看守、管理者、などなど、いろいろな立場の人が当時を回想する。

『Gulag』(2000)

Director: Angus MacQueen

レーニンの後継者としてソ連を強権支配したスターリン、邪魔になる者はがんがん粛清した。グラーグに収容された人100万人。「サボタージュ」とか「反スターリン」(雑談で悪口言っただけ)など罪はでっちあげられて「自白しろ」と拷問を受け、罪を認めるサインをせざるを得ない状態。その後すぐ処刑される人もいたが、多くは労働収容所で過酷な労働に従事した。

「すぐ処刑された人」が発掘された現場(スクリーンショット)、靴など映っている:

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親が逮捕されたという人は、夜中にKGBがやってきたことなどよく記憶している。その後子供は児童施設に送られて、「あなたのお父さんとお母さんは人民の敵だったのです」と教育されたそうな。おそろしい。

シベリア鉄道沿いに延々と収容所が配置されていた地図もすごい。収容所の労働力で一から作り上げられた都市もある。そこの地方政府の偉い人が自ら認めていたのは、

「自由な人を募って何もない土地に入植してもらう時間などなかった。囚人をたくさん連れてきて働かせればタダで開発ができる」

そういうことだったんですね。工場や鉱山など、囚人が作り上げた施設は無数にある。刑期を終えて収容所から出ても、他に行くところがなくて自分たちの作った市にとどまる人も多かった。

また優秀な科学者・エンジニアも捕まって軍事開発などに従事させられた。

そういう人はまだ待遇はましだったのかもしれない。一般労働者のひどい扱いはアウシュビッツと同じだ。女性だと別の身の危険もあって筆舌に尽くしがたい辛酸をなめた。だんだん見ているのが辛くなってくるが、3時間、見なければいけない。

看守など、管理側の人たちの記憶は囚人とだいぶ違う。

「しょうがない、当時はそういうものだと思っていたし、命令だったし」という。たしかにしょうがなかった。手を抜くと自分が密告されていつ囚人の立場になるかわからないのだから。それでも被害者でない人の記憶は正当化されるものだと思った。

「ピョートル大帝がペテルブルクを作るときは農奴を連れてきて働かせた。それと同じだ」なんていう人もいた。

でも、必要以上にサディストになった人間も多い。そういう人間が一定数出てくるものだ。

多数の人々が力尽きて亡くなった中、体力と気力があった囚人は生き残って昔を語っているが、今でも「常にパンがないと不安になって、まだあるのに買って貯めてしまう」という女性がいた。常に空腹だったときの名残だ。夜中に叫んでいる人はたくさんいるだろう。やられた方は忘れられないよね。

ロシア人だけでなく、勝手に村ごと根こそぎ移動させられたタタール人もいれば、戦争から返してもらえなかったドイツ人、日本人もいる。川を泳いで渡って来てみた中国人は、そのまま捕まってしまったそうだ。

「以前も泳いで行ったやつが二度と戻ってこなかったんで、こっちの暮らしはいいのかと思った」・・・ああ、アンラッキー。

スターリンひどいねー、だけでは済まない、人間性というものを考えさせられて嫌になるドキュメンタリー。でもロシア関係者でなくても見ておくべきと思う。動画サイトで「Gulag 2000 documentary」とかBBCとか入れると全編見れたりします。

 

 

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『Murder on the Orient Express』

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もう1つ話題作を見てきた。ケネス・ブラナー監督の「オリエント急行殺人事件」。もちろんアガサ・クリスティー原作で、何度も映画やドラマになり、真犯人はたぶんほとんどの人が知っている。それでも新作が作られるのは、やはり魅力があるからでしょう。

『Murder on the Orient Express』

Directed by Kenneth Branagh

<Cast>

Kenneth Branagh as Hercule Poirot
Tom Bateman as Bouc
Penélope Cruz as Pilar Estravados
Willem Dafoe as Gerhard/Cyrus Hardman
Judi Dench as Princess Dragomiroff
Johnny Depp as Samuel Ratchett/John Cassetti
Derek Jacobi as Edward Henry Masterman
Masterman
Michelle Pfeiffer as Caroline Hubbard/Linda Arden
Daisy Ridley as Mary Debenham
Olivia Colman as Hildegarde Schmidt
Sergei Polunin as Count Rudolph Andrenyi

エルキュール・ポアロをブラナー監督が、というのはちょっとひっかかる。全体に丸いポアロに対して、彼はどちらかというと四角い。

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まあそれはそれで受け入れ、気にしないようにして見る。

ポアロの乗った豪華長距離列車「オリエント急行」車内で、富豪のアメリカ人ラチェット氏が殺された。その夜に列車は雪崩で脱線、立ち往生。雪に閉ざされた列車の中、乗客の誰かが犯人?それぞれの聞きとりと現場検証、そして推理で真犯人がわかってくるが、その扱いをどうするか、思いがけず悩むことになるポアロ。

豪華キャストの面々、みんな容疑者(この人たち以外にもいます)。

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役者がそろって、それぞれに割り当てられた時間は少なくなるが、楽しめる。ラチェットを演じるジョニー・デップは濃いキャラがうまいし、ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人のジュディ・デンチは貫禄ある。ミシェル・ファイファーの謎めいたキャロライン・ハバード夫人も、デレク・ジャコビの マスターマン(ラチェットの執事)も怪しい、いやみんなアヤシイ。

バレエダンサーのセルゲイ・ポルーニンがアンドレニ伯爵役。重点はそれほど置かれない役だけど、突然キレて暴れたりするので目立つ。え、こういう人物だっけ??映画の世界でもいけそうなセルゲイだ。

全体的にオーソドックスな演出できちんと作られている印象。ポアロのアクション(!)も見られます。元警察だし、引退後だって取っ組み合いくらいしますかね。ブラナーは次作も撮る気があるようですが、どうなるかな。

トレイラー、ロシア語のを見てみた:

 

 

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「ブレードランナー 2049」

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今まで見た映画の中でお気に入りトップ3には絶対入る『Blade Runner』、オリジナルは1982年。もちろんストーリーも面白いが、それよりも美術や音楽を含めた雰囲気に中毒性がある。ディレクターズ・カットやら何やら、機会があるたびに映画館で観ている。その続編ができたのだから、あまり期待しすぎず(笑)出かけてみた。

『Blade Runner 2049』
Directed by Denis Villeneuve
<Cast>
Ryan Gosling as K
Harrison Ford as Rick Deckard
Ana de Armas as Joi
Sylvia Hoeks as Luv
Robin Wright as Lt. Joshi
Mackenzie Davis as Mariette
Carla Juri as Dr. Ana Stelline

前回から約30年たって、新型の無害なレプリカントができている一方、まだ古い型も生き残っていて、それをリタイアさせる「ブレードランナー」も仕事している。ロサンゼルス警察の新人のK、捜査の途上でとんでもないものを発見してしまう。人間とレプリカントを区別する一線が壊れるかもしれないという、やばい証拠。それを隠滅する指示を受ける彼だが、自分自身の存在にかかわる疑問がわき、それを解決するためにも、ずっと行方をくらましている昔のブレードランナー、デッカードを探すことになる。

背景、セットなど、すばらしく美しい。ピカピカにきれいな都市と、ばっちい場末や市外の廃棄物処理場まで、オリジナルを踏襲したリアルな作り。うれしい。

対して人物のビジュアルがやや弱いような(失礼)。

だってオリジナルに出ていたのは若きハリソン・フォードに、敵がダリル・ハナとかルトガー・ハウアー。

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主役のライアン・ゴズリングは可愛いが、作るときに比率を間違ったみたいな顔しているし(ほんと失礼!すみません)。21世紀にはあまりアクの強い俳優がいないのかな。

前回と比べると今の時代、AIは発達しているし、遺伝子工学も進んでいる。レプリカントもかなり現実味があるのではないだろうか。人間と彼らを隔てるギャップは、だんだん狭くなってくる。それも「SF」という感じではなく、ごく近い将来かも。

Kのバーチャル彼女、けなげですよ。いろいろ面倒くさい現実の女より良かったりして。

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あのくらいリアルなら、バーチャル・ジャーマン・シェパードのペットとかほしいな〜。

しかしテクノロジーの進歩は諸刃の剣、最終的に自分たちを脅かすものを作り上げてしまうのもまた人間だ。賢いのかアホなのか…。

「変な続編を作ったら許さん」というコアなファンが特に多いであろうこの作品、プレッシャーに負けずに良く作ったと思う。楽しめた。この次、もありそう?

トレイラー:

 

 

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英ミステリのフランス版、『La Cérémonie』など

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英作家の原作小説をフランスで映像化した作品を2つ見たので覚え書き。もちろんロシア語ボイスオーバーで見た、あはは。

最初のはアガサ・クリスティのポアロもの『Peril at End House(邦題:邪悪の家)』を原作にした「La Maison du péril」(2009)、これはテレビのPetits Meurtres d'Agatha Christieシリーズの4話目。

これもポアロは出てこなくて、代わりにフランス警察のラロジエール警視が事件を解決する。もしかしてベルギー人のポアロのキャラはフランスでは使いにくいのかな。

Antoine Duléry : le commissaire Jean Larosière
Marius Colucci : l'inspecteur Émile Lampion

この2人はシリーズ通して主役のよう。他にキャストは:

Elsa Kikoïne -- Joséphine dite « Jo »
Gilian Petrovski -- Abel
Juliette Coulon -- Suzanne
Éric Naggar -- Paul
Clémentine Poidatz -- Eléonore

ラロジエール警視が、命を狙われているらしいお屋敷のジョセフィーヌに会ったとたんに「あなたは何て美しいんだ」と口説き始めたのはびっくりだ。惚れちゃったらしい。

あんた、何してんの。

休暇中の部下エミルを無理矢理呼び出して召使のようにこき使ったり(鶏を絞めたりの下働きw)、原作にない場面がたくさんあって、もしかしてこっちの方が面白いかも。何というかひと昔の日本のベタなサスペンスドラマの香りがして笑えた。ラストは当然、崖っぷちシーンだった!

もうひとつはもっと真面目で、シリアスな映画『La Cérémonie』(1995)。

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Directed by Claude Chabrol

<Cast>

Sandrine Bonnaire -- Sophie
Jacqueline Bisset -- Catherine
Isabelle Huppert -- Jeanne

原作がルース・レンデルの『A Judgement in Stone(ロウフィールド館の惨劇)』ということもあり、骨格がしっかりしている。ちなみに作者もこの映画を気に入ったそう。

人里離れた裕福な家に雇われた家政婦のソフィーは料理もうまく、女主人で画廊経営をするカトリーヌほか、趣味の良い4人家族に気に入られる。でもソフィーには秘密があった。字が読めない。文盲ということではなく、ディスレクシアという症状のようだ、がそれを必死に隠している。バレそうなときは何とかごまかす。家の人は親切で、車の免許がないなら援助するから教習を受ければなど言ってくれるのだが。

劣等感をこじらせ、教養あるブルジョワ家族への黒い感情が育っていく。最寄りの村で郵便局員のジャンヌと知り合って友達になるが、ジャンヌがまた悪影響。この人、陽気で楽しい性格なのだが、気に入らないやつの郵便を捨てちゃったりする無責任な、どこか普通でないところがある。

問題解決に一風変わった手段を用いるこの2人が意気投合するうちに、壮絶な惨劇が起こる、という後味の悪い話。

同じ人間なのに深い溝がある。それはブルジョワとビンボー人というだけでなく、人間としてノーマルな人と”逸脱した”人との、分かりあえない隔たりだ。

サンドリーヌ・ボネールとイザベル・ユペールの演技が冴えている。分からない人間を観客が納得できるように演技するプロだ。

犯人の心理をもっと知りたいので原作にあたりたいところだが、今レンデルは別なのを読んでいて、これもヘビー。続けては読みたくないかも。

 

 

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『Le grand alibi』(華麗なるアリバイ)

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念願の(大げさ)フランス映画『Le grand alibi』(2008年)を見た。ロシア語ボイスオーバーだけど。ロシア語だとポスターのように「Большоe алиби」=でかいアリバイ。アリバイは外来語なので中性名詞なんですね。邦題は「華麗なるアリバイ」だそうです。

Directed by Pascal Bonitzer
<Cast>
Pierre Arditi -- Henri Pages
Miou-Miou -- Éliane Pages
Lambert Wilson -- Pierre Collier
Anne Consigny -- Claire Collier
Valeria Bruni Tedeschi -- Esther Bachmann
Mathieu Demy -- Philippe Léger
Caterina Murino -- Léa Mantovani
Céline Sallette -- Marthe

アガサ・クリスティーの『The Hollow』(ホロー荘の殺人)を土台にしながら、かなり原作と違い、フレンチ・テイストに仕上がっている。

週末、ある議員の邸宅に招かれた客のうち、医師のピエールが銃で殺される。プールサイドに倒れた彼のそばにはピストルを持った妻のクレールが呆然として立ち、そのそばには友達の彫刻家、だけど実はピエールの愛人のエステルが。

ピエールは女癖が悪かった。妻クレールがおっとり不用心なのをいいことに、ガールフレンドがわんさか。前夜にも元恋人で女優のレアまでパーティに乱入してアヤシイ雰囲気になっていたところ。

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(隣りはレアではなく議員の親戚のマルト)

イケメンでエリート医師ですから、モテるよね。しょうがないじゃん。でも最後にバチが当たったわけです。

持っていたピストルはピエールを撃った銃弾に合わないことが判明し、妻は釈放されるけど、他に愛人たち、愛人のひとりを好きな男とか、その男を好きな女とか、疑える人物多数。

映画にはポアロは出てこない。そのうちに原作にはない第二の殺人が!さらに次の未遂事件も。

痴情のもつれで一人の犠牲者で済むはずない、というフランス的解釈の結果かと・・・?

俳優陣も豪華、ビジュアル的に美しくできていて楽しめた。みんな着ているものがお洒落。真犯人の可憐な暴走も怖いが理解できて、映画としてうまい作品だなと思った。ランベール・ウィルソンが殺されちゃうので後半出てこないのが残念ですが。

トレイラー:

 

 

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『Alone in Berlin』

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実話を元にハンス・ファラダ(「 Nightmare in Berlin 」の作者)が書いた遺作、1947年の『Jeder stirbt für sich allein』(ベルリンに一人死す)が今世紀になって英訳され、映画化されたもの。ドイツ語圏では数回ドラマなどになっている。邦題は「ヒトラーへの285枚の葉書」だそう。

『Alone in Berlin』 2016

Directed by Vincent Pérez

Emma Thompson -- Anna Quangel
Brendan Gleeson -- Otto Quangel
Daniel Brühl -- Escherich
Mikael Persbrandt -- SS Officer Prall
Katharina Schüttler -- Claire Gehrich
Louis Hofmann -- Hans Quangel

オットーとアンナはベルリンに住むごく普通の庶民。まだ21歳の一人息子が戦死したとき、ヒトラーのやり方に疑問を抱くようになる。絵葉書にメッセージを書いてこっそり配るという小さな抗議行動を始める。

「わたしの息子はヒトラーに殺された。あなたの息子もそうなるだろう」というようなシンプルな言葉から始め、コツコツと書いてはアパートの階段に置くなどしたカードの数は2年間で300枚近く。

そのほとんどはゲシュタボに渡される。事件を捜査するのがエッシェリヒ。ナチス党員ではなく、警察としてプロ意識のある捜査官だ。

ちゃんと順を追って仕事しているのに「早く捕まえろ」とナチにぶん殴られたりする。ひどい。

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(相変わらず可愛いダニエル・ブリュール)

ハガキの発見場所を地図に記録し、電車のどの線を使っているか割り出し、文言の特徴から人物像を特定していく。

個人が始めた地味な抗議活動、組織があるわけでもなく、やはりいつかは捕まりますね。

しかし報告されなかったハガキ(わずか18枚)以外、メッセージをすべて読んだのがエッシェリヒだったことになる。

当時の状況では当然、夫婦に明るい未来はないけど、息子を失い、その後いっしょに抵抗運動をすることで絆が強まった二人の静かな愛情がきれいだ。

周りがどうだろうと「やっぱりおかしい」と思って、さらに行動する、これは簡単なことではない。工場で働くオットーと、ナチスの婦人会に入っていたアンナの”目が覚めた”ことが尊いと思った。主役二人のトーン低め、地味な演技がすばらしい。

実際の夫婦はOtto HampelとElise Hampel、亡くなったのは息子でなくエリーゼの兄(か弟)だったとのこと。ベルリンの二人の住まい跡には記念のプレートが貼ってある。

原作はそのうち読みたいが、気力のあるときにしよう。

日本版のサイトはここ。東京ではもう公開してますね。

トレイラー:

 

 

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映画「クトゥーゾフ」1943年

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もうすぐ出席するロシア語中級講座の宿題がきて、中にプーシキンの「エヴゲーニー・オネーギン」のモスクワに関する一節を訳すというのがある。ナボコフの決定版英訳を持っているので、つい書き写したくなるが、見ないようにしてますw

その部分は、タチアーナがモスクワの社交界に送られたところで語り手プーシキンがモスクワへの思いをつづるところ。1812年、ロシアに攻めこんだナポレオンがモスクワに入城!したものの都はもぬけの殻、ロシア軍が自ら放った火でぼうぼう燃えていた・・・というくだり。恋愛の話だけじゃないのです「オネーギン」、脱線が面白いの。

そこでロシア・K(カルチャー)チャンネルのアーカイブから、1943年の古いモノクロ映画「クトゥーゾフ」を見てみた。

『Кутузов』

Режиссёр -- Владимир Петров

<В главных ролях>
Алексей Дикий — генерал - фельдмаршал Михаил Илларионович Кутузов

Николай Охлопков — генерал от инфантерии Михаил Богданович Барклай-де-Толли

Семён Межинский — император Наполеон Бонапарт.

ミハイル・イラリオーノヴィチ・ゴレニーシチェフ=クトゥーゾフ公爵は1812年にナポレオンのロシア遠征を迎え撃った総司令官。ボロジノの戦いで大激突し、両軍合計10万人近くの死者を出すが決着がつかず。

モスクワを明け渡すと見せてナポレオン軍を引きこみ、包囲。そのうち「ロシアの冬」(神風と同義)が来てあきらめて撤退する仏軍を猛追してすごい勢いで追い出した。という英雄。

とめどなく広い国土の奥に誘いこんで冬を待てば、だいたい勝てるロシアである。

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仏頂面のナポレオン。

「モスクワを失っても、ロシアは失われない」と周囲を説得するクトゥーゾフ将軍、終始落着いて戦局を把握している。実際はどうだったのかは、わからないけど。

この映画が封切されたのは1943年、まだ第二次世界大戦の真っただ中。ソ連がドイツ軍に対して巻き返し、どんどん領土を奪回していた年だが、作っていたのはもっと前だったわけで、戦争で苦しくてもこうして映画を作っていたんだなあ、と思う。プロパガンダの意味はもちろんあるだろう。それにしてもかなり物資も人間も投入して大作を撮ったものだ。

この1812年の戦いは祖国戦争(Отечественная война)と呼ばれ、1941年6月22日から1945年5月9日の対独戦は大祖国戦争(Великая Отечественная война)と呼ばれる。祖国戦争の名がついたのはこの2つだけ。

↓ ロシアKチャンネルのページ。イギリスからは普通に見られます。ありがたい。

Кутузов. Х/ф

 

 

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