『Ирония судьбы, или С лёгким паром!』(運命の皮肉)

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ロシア語講座の中で、映画鑑賞があった。1975年ソ連製のラブコメ映画、タイトルは「運命の皮肉、あるいはいい湯を」。

そういえばオリガ先生のクラスでも、「ロシアのサウナ」を説明するときに一部を見せてもらった。

発表当時から大ヒットし、それから毎年、テレビで大晦日に放送され、みんなで見る映画として文化の一部になっているそうな。

Режиссёр -- Эльдар Рязанов

Композитор -- Микаэл Таривердиев 
<В ролях>
Андрей Мягков -- хирург Евгений Михайлович Лукашин
Барбара Брыльска -- учительница русского языка и литературы Надежда Васильевна Шевелёва
Юрий Яковлев -- жених Нади Ипполит Георгиевич

ソ連時代、どこも似たり寄ったりの殺風景な高層集合住宅が建てられた。見分けがつかないくらいそっくり。しかもどこの町も市も、通りの名前もありがちなものが多い。さらに、アパートの鍵もあんまりパターンがなくて、自分の鍵が他人に家のドアに合ってしまう可能性は十分あった、というのが予備知識として説明される。

大晦日の日、モスクワに住むジェーニャは恋人にプロポーズして、その夜は2人だけで過ごすことを約束。でもその前に、毎年恒例の友人たちとのサウナ・パーティに顔を出す。もちろんすぐ帰れるはずがなく、全員ひどく酔っ払い、その夜レニングラードに向かう別の友達と間違われて飛行機に乗せられるジェーニャ。着いた空港で目を覚ました彼は、なぜこんなところに?と戸惑うも、家に帰らなければ、とタクシーを呼んで自分の住所を言う。そしてレニングラードの同じ名の通りの似たようなアパートに着き、自分の鍵で中に入って寝る…。

そして本当の住人であるナージャさんが戻って来て、「え、だれこの人!」とびっくり。そこへ彼女がつき合っているイッポリート(ジョン・クリーズ似)もやって来て、フィアンセのアパートになぜズボンを脱いで寝ている男がいるのか!と怒りーーというドタバタ・コメディ。

岡目八目の視聴者には、元々の相手より、ジェーニャとナージャの方がカップルとして知的レベルも似て、性格的にも合いそう、とはわかるのですが、どうなることやら。

この映画が愛されている理由のひとつに、状況にぴったり合った、レベルの高い歌が挿入されていることがある。しかも歌詞は、多くが当時当局から禁止に近い扱いを受けていた詩人たち(ツヴェターエワ、エフゲニー・エフトゥシェンコなど)の作品。なにげに大胆だな。作曲はスパイ物「春の十七の瞬間」でも音楽を担当したミカエル・タリヴェルディエフなので、良い曲になっている。

あとで授業で詩を各々1編訳すことになって四苦八苦した。一流の詩が入った映画が幅広い視聴者に受けたというのがソ連の面白さだ。

アニメーションによるイントロはこちらです。

ところでヴェラ先生が、「この映画の続編も21世紀に作られたけど、箸にも棒にもかからないから見ちゃダメ」と言っていたので、チェックしてみました(笑)。

『Ирония судьбы. Продолжение』(続・運命の皮肉)、2007年

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Режиссёр -- Тимур Бекмамбетов
<В ролях>
Константин Хабенский -- Константин Евгеньевич Лукашин
Елизавета Боярская -- Надежда Ипполитовна
Сергей Безруков -- Ираклий Петрович Измайлов

あら豪華キャスト。ハベンスキーにボヤールスカヤ、それにセルゲイ・ベズルーコフ。

これはソ連時代の2人の子供世代の話で、似たような事態になる。偶然ではなく、誰かが裏で仕組んだものということがわかるが、こじつけ感は免れません。しかしオリジナルの2人が出ているのが驚く。特に新ヒロイン・ナージャの母のナージャ(ややこしい)がまだまだ美しい。それなりに楽しい娯楽作品で、ソ連時代の、ひょっとしたら上映禁止されるかも的な、すれすれの緊張感と矜持はないのは仕方ありません。

現代だとみんな携帯を持っていたり、オリジナルのナージャの恋人はソ連の役人(闇でいろいろ手に入る)で車はラーダ、21世紀のナージャの彼氏は携帯でのべつしゃべっているビジネスマンで車がトヨタ・カムリ(だったと思う)など、時代と体制の変化が面白い。

ポスターがにぎやか:

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ロシア映画祭@ケンブリッジ

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順番がぐちゃぐちゃですが、ロシア語合宿の前後にケンブリッジ・ロシア映画祭で2作品を見た覚え書き。

まず宇宙もの。

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『Салют-7』

Режиссёр -- Клим Шипенко
<В ролях>
Владимир Вдовиченков --  командир экипажа «Союз Т-13» Владимир Фёдоров
Павел Деревянко -- бортинженер «Союз Т-13» Виктор Алёхин

実話に基づいたストーリー。1985年、宇宙ステーション「サリュート7号」からの信号が途絶えた。そのときは無人の状態で、何が起きたかわからない。制御不能になり、このままでは地球に落ちる。

まだ宇宙開発戦争中でもあり、アメリカ側が、

「うちらが回収しましょうか?」なんて言っている。

それはまずい!というわけで、人類史上初、無人の宇宙船を追いかけて行ってドッキングし、修理を試みるというミッションが、ソユーズT-13号にあたえられる。その乗組員の体験する数々の困難を描く。

監督が挨拶に来ていて、T-13のミッションだけだと「退屈な映画になるので」他の宇宙ミッションのエピソードもてんこ盛りして作ったと説明、なるほどアメリカンな娯楽大作に仕上がっている。無重力の中、浮遊するウォッカをしゅるっと飲んだり(笑)。

質疑応答中、観客の中で最低2人はすごく怒っていた(まじで。たぶんロシア人)。事実とだいぶ違うのだろう。

「ぼくはソ連崩壊時に9歳だったんで、ソ連のことは知らないんだ」とアメリカ英語で話す35歳の監督、新世代ですね。

これはこれで楽しめたが、しっかりしたドラマ映画が面白かった。

『Не чужие』(他人じゃない、という意味)

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Режиссёр -- Вера Глаголева
Автор сценария --  Ольга Погодина-Кузмина

<В ролях>
Санжар Мади — Рустам
Татьяна Владимирова — мать Галины и Милы
Лилия Волкова — Мила
Анна Капалева — Галина

英題「Clay Pit」粘土採掘抗みたいな意味だと思う。そのまま、オリガ・パガジーナ=クズミナ?作の戯曲の題。

ミーラという若い(といっても30歳前後かな)女性がモスクワから田舎町に帰ってくる。仕事でも恋愛でもいろいろあって、夢破れて実家にもどったようだ。実家には母がひとり。姉のガリーナは近くに住み、最近自分よりだいぶ若い中央アジア出身・イスラム系の青年ルスタンと婚約している。前の夫はアル中で亡くなっていて、その息子が2人、まだ小学生。

ここからどういうドラマが展開するのかと見ていたら、すごいことに。(ネタバレするので、観る機会がありそうな方は読まないでね)

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ミーラは姉の幸せが不愉快なのか、暇つぶしか、姉の夫ルスタンを誘惑、あっさり不倫が始まる。

ルスタンにも何か辛い過去があるようで、感情が一部死んでいるみたいだ。ガリーナに「よその男の子供は育てたくない」と言い、ガリーナは亡夫との子を母に預けっぱなしにする。みんなひどいなあ。お母さんはまともなんだけど、娘2人が自分勝手で気の毒。そのうち不倫がばれ、子供がお母さんに捨てられたことを悟り…。家族でののしり合い、言ってはいけないセリフの応酬!「他人じゃない」関係がこじれた泥仕合はことさら壮絶なものがある。

これはオリジナルの劇で見ると迫力だろうなと思った。というか怖い。映画は非常に美しいカメラワークで質が高い。監督のヴェラ・グラゴーレワさんはこの作品の撮影途中でガンのため亡くなったそうで、残りはスタッフががんばって撮り終えたとのこと。ラストは戯曲と違っているそうで、その方が良かったと思う。でないと救いがまるでないところだった。緊迫した秀作です。

字幕がないけど、絵がきれい、というのはわかると思うトレイラー:

 

 

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『Aufbruch』(Departure)

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ケンブリッジ映画祭は地味な佳作が多い。ここ数年は家族連れが楽しめるアニメ部門なども開拓しているようだが、わたしが見るのはやはり派手なところが全然ない作品だ。オーストリア映画、ドイツ語の『Aufbruch』(出発)を鑑賞。ルードウィッヒ・ヴュスト(あるいはヴスト)監督が主演もしている。

Director: Ludwig Wüst
Writers: Ludwig Wüst, Claudia Martini
Stars: Claudia Martini, Ludwig Wüst

偶然会った他人同士、どちらも若くなく、人生でがっくりすることがあった。そういう人は他人が抱えている悲しみも分かるのだろう。何となく助け合う。お互いほとんど話さず、自分の中に沈みこみながら、行動を共にする。女性が向かっている目的地に男性が同行してやっているという感じだが、助けてもらっても「ありがとう」も言わない彼女。自分を助けることで実は彼も助かっているのだ、ということがわかるのかも。

文学的な映画。女性はロシア詩人の詩集を持ち歩いてメモを書き入れたりしていた。誰のだか不明。

途中でイモを焼いて食べる。絶望していても、腹はすく。スティルリッツの食べ方と違うかも…というか、イモが長い。オーストリアでさつまイモを作ってる?と余計なことが気になる。やけにおいしそうだった。絶望して、戸外で食べているからかな。

特に風光明媚でも、目立つ建物があるのでもない、普通のヨーロッパの田舎の景色がきれい。

監督は小津安二郎が好きだそうで、小津ファンの監督、世界中で多いねー。すごい影響力です。

しいて言えば音楽が好みでないけど、人生こういうこともあるよな、としんみりしました。イギリスでのプレミア上映だそう、今後一般公開するのだろうか。

誰もしゃべらないトレイラー:

 

 

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『万引き家族』

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『万引き家族』をやっと見た。ケンブリッジ映画祭の一環、カンヌ映画祭最高賞受賞ということもあり、一番大きいスクリーンでの上映が満席だった。ちなみに英題は「Shoplifters」、ショップリフターズか、なんかドリフターズみたいっすね。

監督    是枝裕和
脚本    是枝裕和

<キャスト>

柴田治:リリー・フランキー
柴田信代:安藤サクラ
柴田亜紀:松岡茉優
柴田祥太:城桧吏
柴田初枝:樹木希林

ストーリーはご存じのとおり、柴田さんちは貧しいが仲良く暮らしている。ばあちゃんの年金と少ない収入、それに万引きで生計がなりたっている。父と息子のチームワークで上手に盗む。おいおい。

ある寒い夜にお腹をすかせた幼い女の子を保護。ご飯を食べさせて家に返そうとするが、連れていってみると、どうも帰らせてはまずい状況の家庭のようだ。そのまま、家で育てることにしてしまう。厳密にいって、いや適当な意味でも誘拐?

保護された子は家になじんで元気になり、万引き見習いまでするようになるが…こういうのはいつかはバレ、捕まることになる。警察沙汰になってみると、仰天の真実が続々と明らかになり…。

さすが是枝監督、表面的でない、何層もある作品になっている。道徳というか人間社会のルールに独自の解釈をして、結果大幅にずれているが、心の温かい人たち。どういう人間に育てられても、いつかは自分で考えるようになる子供。血はつながっていてもダメな関係しか作れない場合、家族とは何か、など、観た後もぐるぐると考えてしまう。ベテランから子役までみんな演技力があって印象深かった。

個人的な感じだけど、是枝監督はロシアのズビャギンツェフ監督と似ている。どちらも自国以外の人に見られると「うわーまずいな」と感じる恥ずかしい面をあっさり描いている。『万引き家族』も、底辺家族の暮らしぶりもそうだが、アヤしいJKビジネスがヤバい。みんな(こんなの日本では普通だろう)という顔して見ていたのがまた恥(笑)。

つい字幕を読もうとしてしまって可笑しかった。日本映画しばらくぶりなので、字幕がなくてもわかるのを忘れていた。

面白かったのは、友達の旦那さん(イギリス人)の疑問。行方不明だった女の子が数か月ぶりに見つかって両親の元に帰った。翌日たくさんの報道陣がやってきていろいろ聞いた中に、「お嬢さんは昨日何を食べました?」という質問がある。

「なんでそんなこと聞くの?大事なの?」とすごくびっくりしていた。そうか、変かな。何をどういう風に食べたかで、いろいろ情報が得られると思うけど、イギリスでは気にしないのか。

 

 

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ドキュメンタリー(とドラマ)『Nureyev』

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20世紀有数の男性ダンサーで大スター、ルドルフ・ヌレエフ(Рудольф Хаметович Нуреев、1938 - 1993)のドキュメンタリー映画。

Directors: David Morris, Jacqui Morris
Writers: David Morris, Jacqueline Morris

Russell Maliphant  ...    choreography

走行中のシベリア鉄道の列車内で誕生し、田舎からレニングラードに出てワガノワ・キーロフバレエ学院に学ぶ。1961年に西側に亡命、ダンサーとして世界で活躍、80年代はパリ・オペラ座芸術監督、AIDSで54歳で死去。というドラマチックな生涯を映像やインタビュー、知人の証言などで綴り、ドラマ・パートはラッセル・マリファントの振付でダンスで表現される。

アメリカでのファンの興奮ぶりなど、ロックスター並みの人気だったことが理解できた。彼は民族的にはロシア人でなくタタール系だそうで、初めて知った。気性は激しそう。お父さんは軍人で、息子が踊りたいというと「バレエだとお?」とぶん殴ったとか。でも踊るべき人はやはり踊らざるを得ないんですね。

ロイヤル・バレエでのマーゴ・フォンテーンとのパートナーシップは有名。今見ると、マーゴの方はエレガントなんだけど最近のアスレチックなバレリーナたちに比べ、テクニック的に最高とは感じないような。でもヌレエフはテクニックもスピードも魅力もすごいのがわかる。ソ連は彼に逃げられて損した。「その手があったか」と彼に続いたダンサーなど芸術家も多かったし。

一人亡命すると、その家族、友人たちへの影響は計りしれない。お父さんはたぶん軍人としてのキャリアは終わったのじゃないか。アカデミックな友人たちも大学にいられなくなり、苦労した。そういうことを考えて思いとどまる人もいたわけだが、やっぱり止められない人もいる。

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マリファントの振付けたバレエ場面が、彼独特のくるくる流れるように回る動きが美しく、きれいだった。こんな場面と別の映像が次々に切り替わって忙しく、やや疲れるが、一生動き回ったヌレエフにふさわしいのかも。

ゴルバチョフの時代になってやっと里帰りできた彼が、最初に地元でバレエを手ほどきしてくれた先生に会ったシーン、100歳を越えるお婆さんになった先生はヌレエフを覚えていて、「Мой мальчик!」(My boy!)と歓迎していた。間に合って良かったな。それが1987年。彼本人の死まで6年しかなかった。すごい速さで踊りきった人生だ。

ところで10月1日の「世界バレエ・ディ」でボリショイの部を見ていたら、ヌレエフを描いた新しい(去年の暮れが初演)バレエをリハーサルしていて、ヌレエフがパリのブーローニュの森で女装のお兄さんたちにとり囲まれる(そして嬉しそう?)なシーンや、恋人でデンマーク人ダンサーのエリック・ブルーンとのパ・ド・ドゥなどを見られた。すんばらしい、さすがボリショイ。見たいわ。

ボリショイでなく、このドキュメンタリーのトレイラー:

 

 

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『Семнадцать мгновений весны』マラソン上映会

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行ってきました。ロンドン、プーシキン・ハウスで、ソ連時代の大ヒットドラマ『Семнадцать мгновений весны』(春の十七の瞬間)を2日で12話一挙に上映するマラソン・イヴェントに。

SEVENTEEN MOMENTS OF SPRING: PUSHKIN HOUSE TWO DAY SCREENING MARATHON

本当に「マラソン」って言葉が入っている(笑)。

11時から6時までの予定になってたけど、2エピソードごとに休憩も入れるので、2日目に終わって外に出たときは8時近かったよ。全部は見きれないまま行ったので、最初から英語字幕つきで見られてかなり理解が深まり、面白かった。

初日にパネルディスカッションがあって、BBC・ロシアのAlex Kan、ジャーナリストのDina Newman、映画評論家のIan Christieと、もう1人音楽関係のスティーブンという人が話し合い、ネタバレしない程度に前知識を分けてくれた。

1話が1時間以上x12回という連続ドラマは当時は異例で、そのため視聴者がクセになって人気が出たとか。

KGBは良い仕事をしていた、と宣伝したくてKGBが作らせてチェックもした「プロパガンダ・ドラマ」、にも関わらず、立派な人間ドラマになっているのが奇跡である。

ナチスも以前のソ連作品のように野蛮なだけのマンガちっくな扱いでなく、知的で奥行きのある尊敬すべき敵として描かれているのが画期的であること、など、傑作である所以を聞いてから上映へ。

ナチスに支配されるドイツ第三帝国に潜入して、親衛隊大佐になりすましているソ連のスパイ、スティルリッツ、今回のミッションは、「ナチス高官の中で、ひそかに西側と交渉しようとしている者がいる、誰かつきとめろ」というもの。

ナチ・ドイツの最大の失敗は戦争で二正面作戦をとってしまったこと。その1つの西が終息してしまえば、東のソ連に全力を注げる。やっと攻勢に転じたソ連が困るわけです。しかしナチスの高官(ゲーリングとかヒムラー級)にはそんなに易々とは近づけない。下手に動くと失敗する。スティルリッツは熟考を重ねて慎重に事を運ぶ。

ですよね。本当のスパイは、走ってる列車の上で乱闘事件起こしたりしないんだよ。地味です。何しろスティルリッツが走ったシーンはなかったと思う。静かに銃で一発で仕留めて殺したのが一度。暴力もほとんど使わない。強いていえば、これか。↓

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貴重なブランデーの瓶で…ははは。でも殺してないですよここでは。

一緒に働いていた無線通信士の家が空襲で壊れ、通信機が敵の手にわたったり、協力してもらっている民間人がヘマをして亡くなり心を痛めたり、そのうちスティルリッツの正体に疑いを持つ者が出て来て尾行されたりと、地味に大変だ。とうとうバレそうになる危機もある。それをうまく潜り抜けて任務を達成しようとするスティルリッツ。SSとゲシュタポの仲の悪さを利用して、綱渡り。非常にハラハラする、うまくできたドラマ。監督はタチアナ・リオズノワ、女性です。緊迫したシーンの後に筋に関係ない可愛い動物が出てきたりして、上手い。

Режиссёр -- Татьяна Лиознова

Сценарист -- Юлиан Семёнов

Композитор -- Микаэл Таривердиев

<В ролях>
Вячеслав Тихонов -- штандартенфюрер СС Макс Отто фон Штирлиц

Олег Табаков -- бригадефюрер СС Вальтер Шелленберг
Екатерина Градова -- Кэтрин Кин (Катя Козлова)
Василий Лановой -- обергруппенфюрер СС Карл Вольф

Андро Кобаладзе -- Иосиф Сталин

スティルリッツの「頼りになる男」感がすごいです。奥さんはソ連に置いて単身赴任、いろんなものを犠牲にして国のために危険を冒している。人気が出るわけだ。

しかしわたしが一番気に入ったのは、いつもはクールな彼がソ連のお祝いの日に自宅でロシア人の本性を表して、暖炉の直火でじゃがいもを皮が黒くなるまで焼いて食べ、郷愁にひたるたシーンですが。

パネルも言っていましたが、このドラマはプーチンさんがスパイになろうとしたきっかけではないかもしれないが、彼が政治家として少なくとも初期の頃は信頼されたことに影響があったかもしれない。ドイツで働いていた元スパイ―ースティルリッツに似ている。何となく仕事ができそう?と騙された人がいたかも。そのくらいスティルリッツは「アーキタイプ」になったということですね。

主役以外の俳優陣も豪華、名優オレーグ・タバコフがSSの情報機関SDの国外諜報局局長だったり、「アンナ・カレーニナ」でヴロンスキーを演じたイケメン、ワシリー・ラノボイが親衛隊上級大将カール・ヴォルフ役だったり。スターリン役が激似でびっくり。

音楽もアルメニア人作曲家ミカエル・タリヴェルディエフの控えめで純粋なメロディーが画面を引き立てる。

「ワルツ」のシーン。

 

若いガビーはスティルリッツに片思い(SSの大佐とも、ましてソ連のスパイとも知らないけど)、ザウリヒ?おばさんはワルツを弾いて2人に踊ってもらう。ガビーが「ザウリヒさんにとても親切ですね、お母さんに似ているとか?」と聞くと、「人類の中でわたしは特に老人と子供が好きなんです」と答えるスティルリッツ。「あ・・・そうなんですか。わたしはどっちにも属してないですね」「うん…そうだね」

ガビーちゃんあっさり失恋、という場面です。オネーギンの方がよっぽど優しいな。哀愁を帯びたワルツがきれい。

 

 

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『The Seagull』(かもめ)

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やっと遅れを取り返し、通常運転になりました。はあ。

空いている時間があるかぎり誰とも口をきかず黙々と働いている間に、日本では台風で関空がちぎれそうになったり、その後は北海道で地震・全道停電、2日で電気復活と、ついて行けない。被災された方、お見舞い申し上げます。今捜索している町でも一人でも多く助かるといいのですが。

イギリスでは亡命していた元スパイを毒殺しようとしたロシア軍人の身元が割れたとかニュースになり、ロシア側が鼻で笑ったりしている。ロシアと仲が悪くなると困るんですけど。

そんな中、アメリカ映画のチェーホフ原作『The Seagull』(かもめ)がイギリスで公開された。

『The Seagull』(2018)

Directed by    Michael Mayer

<Cast>

Saoirse Ronan -- Nina Zarechnaya 

Billy Howle -- Konstantin Treplyov 
Annette Bening -- Irina Arkadina 
Corey Stoll -- Boris Trigorin コリー・ストール
Elisabeth Moss -- Masha
Mare Winningham -- Polina
Jon Tenney -- Dr. Dorn

きれいな湖のある田舎町に、いつもはモスクワで働いている大女優の母イリーナが、年下の人気作家トリゴーリンを連れて夏を過ごしに帰省する。作家志望の息子コンスタンチンは恋人のニーナを主役に前衛劇の上演会をするが、母に小バカにされて途中で幕を下ろしてしまう。しかも本気で女優をめざしたニーナは有名作家のトリゴーリンに惚れて、恋人まで盗られるコンスタンチン。その彼に片思いしているマーシャ、彼女を一方的に愛するさえない教師のメドヴェージェンコと、誰も恋がうまくいってないじゃないか。

最後は、ふわふわしていたニーナは二流女優として地に足をつけ、忍耐しながら生きていく決意を見せるが、取り残されたコンスタンチンは立ち直れずに終わる。

年代も舞台もきちんと20世紀初頭にし、特に現代化などせず忠実に、きれいに撮られている。景色はロシアじゃないけど(樹が違う)。キャストがとてもいい。

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アルカージナのアネット・ベニング(同乗しているのはドルン医師)、ザ・女優、みたいな我の強さを自然に演じ(たぶん地だ・失礼)、でも若さと美が失われるのを怖れている。それを隠そうと必死。可愛らしい。でもこういう人が母親だと大変。

息子のコンスタンチンは伯父の田舎の家で、孤独な暮らし。

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ビリー・ハウルはメイン・キャストの中で唯一イギリス人。繊細でマザコン、こじらせ具合の表現が上手だ。つい同情したくなる(でも関わると重くて大変だよね、こういう人)。

ニーナのシアーシャ・ローナンも初々しい田舎の女の子から世間を知ってしまった巡業女優への変貌を見せ、でも曲りなりにも自分の足で人生を歩いて、以前より強い、美しい人間に見えるのが立派。若いけどキャリア長いもんね、いい女優さんです。

あとはマーシャを演じたエリザベス・モス (『侍女の物語』はわたしは見てないけど)が、内攻させた恋をくすぶらせているせいかエネルギーが大きくて(?)印象的。

本家ロシアですごいアバンギャルドな演出をしていたり、アメリカで今回のようにオーソドックスに、喜劇性も大事に再現していたり、やはり「かもめ」は人気戯曲だ。

トレーラーはなんだかせわしないですが:

 

 

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〇マゾン・お試しプライムで映画

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今学期だけ久々にオリガ先生のロシア語教室に出ることにした。教科書どこまで行ったかな、と問い合わせたら。

「もう新しい本と問題集に入ったわよ」とのこと!2年はさぼってたのだから、当然ですね。最初の授業までに教科書が手に入らないかも、というときに思いついたのがAmazonのプライム会員の30日間無料お試し。さっそく手続きして、翌日配達をしてもらった!

ついでにタダで見られる映画もチェック。充実しているようだったらそのまま会員になってもいいし。

まず最初にホラー。

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"The Cult"
Director -- Paul Latushkin
Starring -- Yana Chapaeva, Vitalij Marks, Sergej Bubnov
けったいなもん見たわー。

若いカップルが初めて一緒に暮らし始める。男性の方が見つけた静かな家(隣りはみんな空き家)に合流したよう。きったなくって先の住人の物がまだあったりするが、若い2人は気にしない――はずが、夜中に電気がついたり消えたり、線がつながっていないはずの電話のベルが鳴って「危険だ、逃げろ」という声がしたり、怪奇な現象が起こる。しかし気づくのは彼女の方だけで、男は呑気に「気のせいだろ」なんて言っている。そのうちついに夜中、アヤシイ男の影が・・・。

思いきり広角で撮ったゆがんだ画面とか、効果は面白いけど、あんまり怖くないかな。アヤシイおっさん、「くまモン」がしなびたみたいな体型で笑える。家の中の汚さの方が怖い。

しかも英語字幕がひどい。ロシア語でずっとしゃべっているのに何にも出なかったり、適当にまとめてしかもズレていたり、「こんな映画、見るひといないよね」と思っているのか?悲しい。

もう一つはウクライナのテレビドラマ。

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『Пёс』(犬)(2015 - )

Продюсер -- Виктор Приходько
<В главных ролях>
Никита Панфилов  ー  Максим Максимов

Андрей Саминин  ー  Алексей Леонидов

Ольга Олексий ー  Елена Леонидова 

犬の一般的な名詞”サバーカ”でなく”ピョス”というタイトルで、この犬がオスであることがわかります。キエフが舞台。マクシムは元刑事だったが、奥さんを親友に取られたのが先か、アル中が先か、自棄になって仕事をクビになり独身に戻って人生どん底。ある日、元奥さんの父である警察の偉い人が殺された。殺人のはずだが、なぜか「自殺」で片づけようとする警察。現場を見ていたのは被害者の飼い犬だったワンコだけ。でも警察犬だ、犯人を見ればわかるかも? 犬を引きとって「犬」と名づけ、いっしょに捜査を始めるマクシム。捜査する権利はないが、義理はある…。

主人公は面白いし、賢すぎる犬も可愛い。(マクシムがウォッカを飲もうとすると妨害したりする・笑)しかし、ちょっと暴力が多い。しょっちゅう殴ったり殴られたり、縛られたりして頭や顔が血だらけのマクシム。「80年代のアメリカの暴力刑事ものみたい」と評しているイギリスの視聴者がいたが、当たっているかも。幸いワンコはうまく立ち回って、あまりひどい目には遭いません。1シーズン20話もある、途中で飽きるかもしれない。

今のところ、プライム会員になっても特典はそう美味しくないかな〜。

「犬」のトレイラー:

 

 

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『Как Витька Чеснок вёз Лёху Штыря в дом инвалидов』ヴィーチカはいかにしてリョーハをケアホームに届けたか

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英題だと「How Viktor “the Garlic” Took Alexey “the Stud” to the Nursing Home」

若手アレクサンドル・ハント監督(Режиссёр - Александр Хант、1985-)、2017年の作品。

<В ролях>
Алексей Серебряков — Лёха Штырь
Евгений Ткачук — Витька Чеснок

主人公ヴィクトル・チェスノーク(ニンニクの意味)をエヴゲーニー・トゥカチュクが、その父アレクセイをベテラン、アレクセイ・セレブリャコフが演じる。

ロシアの地方都市に住むヴィクトルは、小さいころ父が出ていき、その後母が亡くなったため孤児院育ち。遺伝なのか子供のころの愛情不足のせいか、やや無責任な性格。でき婚の妻子がいるけどすでにガールフレンドもいて、そっちに乗り変えたい。工場で真面目に働いているだけでは金もないし、住むところが確保できないなあ。

ーーと思っていたところ、自分を捨てた犯罪者の父アレクセイが生きているのがわかった。今は下半身不随で寝たきり。父に愛情のかけらもないヴィクトルは考えた。

(そうだ、このおっさんを障がい者施設に入れたらこのアパート、おれの物じゃん?)

部屋をいただくべく、父が動けないのをいいことにライトバンに載せて遠くの施設まで送り届けようとする。利己的な息子。父のほうも恩返しされるほどのことしてないし、どっちもどっち。

ただしそのまま大人しく運ばれている父なら俳優にセレブリャコフをもってこない。

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「寄るところがあるからそっちに行け」とかわがままに指示を出しはじめる。頭ははっきりしているようだ。

仕方なく寄った先で思いがけない人物たちに会うことになるヴィクトル。「悪霊」でシャートフを演じた面構えのいい、うまい俳優。ちょっとセレブリャコフに似ているかも。

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↑トゥカチュクと、若いころのセレブリャコフ↓:

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ФАНАТ (1989)、ソ連のアブないイケメンだw

薄情同士、でも似た者同士のヘンなペアの父と息子の珍道中にいろいろあって、どこなのか知らないけど行けども行けども広い風景、しょぼーいインテリアもかえって味があり、じわじわくる。感情がじめつかないのも好み。ロシア語のラップ・ミュージックも聴けて楽しいです。話は悲惨だったり野蛮だったりするんだけど。

ロシアは懐が深いのだ。

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トレイラー:

 

 

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アンドレイ・ズビャギンツェフ『Нелюбовь』と監督Q&A

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アンドレイ・ズビャギンツェフ『Нелюбовь』(2017年、英題「Loveless」。邦題も「ラブレス」だそう)がアカデミー賞の外国語映画部門でノミネートされている。英国映画協会(BFI)で一般公開前のプレミア上映と監督のQ&Aがあるというので、ロンドンへ。

Режиссёр -- Андрей Звягинцев
Композитор -- Евгений Гальперин

Оператор -- Михаил Кричман

<В ролях>
Марьяна Спивак -- Женя
Алексей Розин -- Борис муж Жени
Матвей Новиков -- Алёша сын Бориса и Жени
Андрис Кейш -- Антон любовник Жени
Марина Васильева -- Маша любовница Бориса
Алексей Фатеев -- Иван координатор поисково-спасательного отряда

モスクワに住むジェーニャとボリスの夫婦は離婚の準備中。円満でなく、かなり泥沼のもよう。12歳のひとり息子アレクセイの引きとりを押しつけ合うしまつ。その激しいケンカを、息子に聞かれてしまった。

両親離婚だけできついのに、「自分はいらない子」か〜。そしてアレクセイが行方不明に。お互いすでに恋人がいて、息子が家に帰ってないのを2日も気づかなかった両親、あせる。

ロシアの警察は行方不明届けを出しても、いろいろ手続きがあって、すぐに探し始めてくれないらしい。「民間のボランティア団体に依頼した方が早いです」と警官が勧めるくらいだ。

そしてボランティアはプロなはたらきを見せる。

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ビラ配りや近所の捜索などグループに分かれて緻密に探す。アレクセイの交友関係なども洗い、彼が逃げていきそうな場所の見当をつける。

こういう事件があると、改めて夫婦の関係が見直されるが、元々ダメな場合はさらに悪化してすごいことになる。結婚自体に無理があったこと、ジェーニャと実母との関係もうまくいっていないことなどが見えてきて、暗澹とした気分になる。それにしてもアレクセイはどこへ行ったのか。

現代ロシアの一面をすぱっと切り取った、あざやかな作品。離婚にともなう苦痛やSNS文化、どこの国にも共通する問題でもある。

Q&Aも盛り上がり、通訳が追いつかないほどズビャギンツェフ監督が滔々と話す場面も。アレクセイを演じた子役(とても上手い!)は台本を読まず、その場で感情を想像するように指導したそうだ。その際、親が離婚する〜とかでなく、本当に大事なものが手に入らないとわかった気持ち、などのように導いた。

ジェーニャの強烈なお母さんは、最初のシナリオでは旦那さんの伯父だったのが、途中で変わった、など面白い裏話を聞けた。人探しボランティアは本当にあって、頼りにならない警察の代わりをして、年間3000件以上ある捜索依頼で86%(だったかな、そのくらい)の発見率を見せているそうで。

ブリューゲルの絵を元にした雪の日のイメージなど、画面も美しくてすばらしい。都心で夜8時からの催しだったので帰りは終電、電車も速いのがなくて苦労したが、行ってよかった。もうすぐ地元で始まるので、また見に行こうかと思っている。

トレイラー。ジェーニャは先日アバンギャルドな「かもめ」のマーシャだったマリヤーナ・スピヴァーク:

 

 

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