映画『Сатисфакция』by エヴゲーニー・グリシコヴェツ

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ビデオ飲み会はまだ参加したことがないが、ロシアの作家・俳優・ミュージシャンのエヴゲーニー・グリシコヴェツ(1967〜)のチャンネルで「いっしょに晩飯(ときどきコーヒーのこともある)しよう」動画をライブか録画で視聴している。いろいろできる多才な人なのにセレブ臭がなく、「普通のおっさん」感満載なのが親しみやすい。画面では自宅のダイニングで彼が手酌でビールやワインを飲み、奥さんの作った料理を食べながらとりとめのない話をする、楽しい(笑)。

そういえば彼がブレイクした独り舞台が「わたしはいかにして犬を食べたか」というタイトルだが、犬を食べたСобаку съелは、あるものごとに精通していることを示す成句だそうだ。掛けていたのか、ということを数年後に知りました〜。

その彼の2011年の映画『Сатисфакция』(Satisfaction)が面白かった。

Режиссёр -- Анна Матисон
Продюсер -- Евгений Гришковец; Александр Орлов etc.
Автор сценария  --  Евгений Гришковец; Анна Матисон

<В ролях>
Евгений Гришковец — Александр Григорьевич Верхозин, крупный бизнесмен
Денис Бургазлиев — Дмитрий, помощник и советник Верхозина

グリシコヴェツが演じるアレクサンドルはシベリアの都市イルクーツクのビジネスマン、仕事を成功させ、金持ち。しかし最近奥さんが浮気していることを知る。しかも相手は自分の片腕として頼りにし、友達と思っていた部下のドミートリーではないか!

冷静な彼は証拠を抑え、ドミートリーをとあるレストランに誘う。全店貸し切りにしたらしく、他にお客はいない。

ロシア男がこういう場合にすることは決まってます―ーそう、決闘
2人きりになり、アレクサンドルは部下に証拠をたたきつけて決闘を申し込む! でもなぜレストラン?

一晩いっしょに酒を飲み明かし、先につぶれた方が負け、というルールを勝手に決めていたアレクサンドルだった。なんだそれは。

逆らってもダメと悟ったドミートリー、決闘に応じることにして、飲み比べは始まる。ウォッカをガンガン。シャンパンも出てくる。おつまみのザクースカがいろいろ美味しそう。

「テキーラまずっ!やっぱりウォッカに限る」とか言いながら、2人で飲む。

しかも、話すテーマをちゃんと考え、A4の紙に書き出してきたアレクサンドル。テーマは友情や孤独、子供など――もうここらへんで腹筋崩壊しそうになる。ヘンです。なにやってるの、あんたたち。真面目に議論する彼ら、だんだんろれつが回らなくなってきつつ、本音を吐き、心の内を語り出す。

一方キッチンでは、お客が2人だけの貸し切りなので暇。酒を切らさないようにし、たまにおつまみを出し、どちらかトイレに行くときにズルしないか監視(笑)するだけでいい。大事なお得意様だから失礼があってはいけないが、眠くなってくる。トランプで遊び始めたり、料理人の助手は英語を勉強していたり。ダル〜い雰囲気が出てこっちも可笑しい。

結局夜明けまで飲んだアレクサンドルが、いかにして満足(сатисфакция)を得たか、という話です。決闘には…勝ったのかな?

巨額の製作費をかけずに頭で傑作を作れることを証明している。さすがだ、犬を喰っただけある。

話がさっぱりわからないトレイラー。

 

 

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アントニオ・バンデラス主演「Pain and Glory」

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だーいぶ前、去年見た映画で印象深かった「ペイン・アンド・グローリー」(原題『Dolor y gloria』)、ペドロ・アルモドバル監督のスペイン映画。

Directed by Pedro Almodóvar
<Cast>
Antonio Banderas as Salvador Mallo
Penélope Cruz as Jacinta Mallo, Salvador's mother
Raúl Arévalo as Venancio Mallo, Salvador's father
Leonardo Sbaraglia as Federico Delgado
Asier Etxeandia as Alberto Crespo
Cecilia Roth as Zulema

アントニオ・バンデラスというと(えっと…ゾロ?)くらいしか思い出さず申し訳ない。母国スペインではアクションより演技力を買われている俳優だそう。彼がアルモドバル監督の自伝ぽいといわれる本作で主人公の映画監督サルヴァドールを演じる。

サルヴァドールは30年前の代表作で相当に有名だが、最近はさっぱり作品を発表していない。その原因は主として健康状態。いろんな病気をして、あちこち体が痛む。痛みを薬でまぎらわす日々、精神にも影響する。

ところが最近、例の30年前の傑作が再び脚光を浴び、主演俳優と共にQ&Aに出なければならなくなった。その俳優アルベルトとは、30年前の試写会以後口を聞いていない仲だ。両者は再び顔を合わせることになり、過去のわだかまりをどう解決するか、決断を迫られる。本音をガンガン言いまくる対決が面白い。これだけ隔てなくものを言えるのは、底に信頼があるんじゃ?と思う。

結局アルベルトには、長年あたためていたモノローグ形式の新作一人芝居を演じてもらうことに。

50代もそろそろ終わりくらいの年齢設定だろうか。その頃には一度人生の見直しみたいなものをすると、見えなかったものが見えてくるのかもしれない。過去の回想シーンが色鮮やかに描かれ、美しい。

たとえば彼の子供時代の貧しい家。

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きれいやんか!でもこの部屋には屋根がないのだ。洞窟を利用した住居。若いお母さん(ペネロペ・クルス)は引っ越してきて「ええ、洞窟に住むのー!」と絶望していた。

いろんな出会いが人生の分かれ道に影響をあたえる。回想しながら、心の中でその人たちと折り合いをつけていくようだ。実際に体を動かして会う人もいる。アルモドバル監督版の「8 1/2」のような感じ。

画面の配色が斬新で、贅沢な映像の世界が展開。主人公はあまり感情移入をゆるすようなタイプじゃないが、他人の人生を垣間見る気がする作品。

スペイン版トレイラー:

 

 

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古典映画イタリアン&フレンチ@飛行機

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(前泊したホテルの窓から)

もう戻ってきた。慌ただしい。

飛行機の上では最近あまり映画は見ず、飛行中の下を映した映像のわきに地図を出して見ている。ロシア極東からシベリアを越え北欧に入るルートが魅力的すぎる。大蛇がのたくったような大河や、糸ミミズが必死で逃げた跡のような小川、冠雪した山など、見飽きない。雲が一面に出たり夜で何も見えないときだけ、映画やテレビの映像を見る。

今回は行きでフェリーニの「8 1/2」、帰りにルネ・クレールの「夜ごとの美女」を鑑賞。えらい昔のストックがあるものだ。

『8½ 』(Otto e mezzo)、1963年

Directed by Federico Fellini

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<Cast>
Marcello Mastroianni as Guido Anselmi, a film director
Anouk Aimée as Luisa Anselmi, Guido's wife
Rossella Falk as Rossella, Luisa's best friend and Guido's confidante
Sandra Milo as Carla, Guido's mistress
Claudia Cardinale as Claudia, a film star

映画監督のグイドは最近疲れているため、保養地に休みに来た。が、次の仕事の準備もあるし、奥さんが来たり、ガールフレンドが来たり、気が休まらない。新たなミューズとなる若手女優にも心惹かれる。現実はごたごたするし、幻覚?夢?記憶みたいなものも彼を苦しめる。はっきりいって自業自得な面もあるが(笑)、だんだん訳のわからないことになり…意味をつかもうとすると失敗する作品だ。映像に引き回されるのが快感。ラストにみんなが手をつないで踊るシーンは有名で、昔見たきりのわたしも、ここだけ覚えていた。不思議で、面白い。チャーミングなマストロヤンニ、自分勝手な監督役が似合う。

『Les belles de nuit』、1952年

Directed by    René Clair

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<Cast>
Gérard Philipe as Claude
Martine Carol as Edmee
Gina Lollobrigida as Leila / Cashier
Magali Vendeuil as Suzanne

貧乏な音楽教師のクロード、作曲家をめざしてオペラを書いたりしているが、芽は出ず、教え子の悪ガキたちにも軽く見られ、さえない毎日。眠るといろんな時代に生まれ代ってやたら美女に好かれる。夢の方が楽しい〜。ボーッとしているうちに、家賃滞納でピアノを差し抑えられたりしてピンチに陥る。しかも、夢の中でも雲行きが怪しくなり、フランス革命時に誤解からギロチンにかけられそうに…また寝たら夢の続きを見てやばいことになりそう。

と、端正な美男(イケメンなんて軽い言葉では表せない)のジェラール・フィリップが出ているというのに爆笑コメディだった。貧乏仲間や幼なじみの警官が心配して、おせっかいを焼いてくれる。ポンコツ車で「過去」から脱出!「人情長屋」ふうの物語。そういえば昔のモノクロ・フランス映画って下町を舞台の名作があったなあ。

夢の中、自作オペラの初演というときに現実の外の騒音が混じって来る場面。おや、登場人物が手をつないで踊るシーンがある(チェコ語字幕つき)。フェリーニはクレールに影響を受けたのかしらん。

 

 

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ウクライナ映画「Homeward」

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10月中に行われた「Cambridge Film Festival」で1本だけ見た作品。

原題はクリミア・タタール語で『Evge』、ウクライナ語で「Додому」、英語で「Homeward」、家へ、という意味ですね。ロシア語だと「Домой」になる。

Directed by    Nariman Aliev
Written by    Nariman Aliev
<Cast>
Akhtem Seitablaev(Ахтем Сеітаблаєв) as Mustafa
Remzi Bilyalov as Alim

クリミア・タタール人のムスタファとその息子アリムが主人公。クリミア危機・ウクライナ東部紛争で戦場に出ていた長男が亡くなったという悲報を受け、キエフに遺体を確認しに行く。現地は混乱しているため、とりあえずキエフに全員運んでしまうらしい。

確認を終え、遺体を引きとると、父ムスタファは、「クリミアに帰って埋葬する」という。距離は今調べたら900km前後ある。

「そんな移動させなくても、埋葬はキエフでもいいじゃん」という次男で大学生のアリムを無理矢理つれ、長男の彼女(ウクライナ正教徒のようだ)は置き去りにして、車でクリミア半島へと南下する。

この映画、上映前にケンブリッジ大学のRory Finnin博士からバックグラウンド、特に言語についての説明があった。クリミア・タタール人は代々クリミア半島に住んでいたのに、スターリンによって中央アジアなどに強制移住させられた。村・町ごと根こそぎ、乱暴だ。その後ペレストロイカの時期に帰ることを許された(ただし完全に元の場所に戻れない場合もあったと映画の中でいっていた)。クリミア半島は、ソ連崩壊からはウクライナに属していた(現在ロシアと係争中)。そういうわけで、お父さんのムスタファはソ連時代のロシア語と、クリミア・タタール語を話すが、キエフの大学で学ぶアリムにはウクライナ語の方が楽だ。なので親子げんかになると、父のタタール語に無意識でウクライナ語で返したりする、ということだ。

わたしにはムスタファが役人に話すときのロシア語が理解できた。少し似ているけどウクライナ語だと意味がわからない。タタール語はもちろんまったく不明。コーランはアラビア語で読んでいるんですかね?字幕を色分けしてください、と思うくらい、言語が錯綜していた。

国家(その独裁者)の都合で住みなれた故郷から追い出され、その後「帰ってもいいよ」と言われても、状況は同じではない。白人というか正教徒、非ムスリムから差別もされる。お父さんのムスタファは昭和の頑固おやじのようだけど、どうも自分も心臓?が弱っているようで、体調は良くない。それでも息子の亡骸を故郷の土地に、母の隣りに埋めてやりたくて先を急ぐが、途中で検問所があってウクライナ人にパスポートをチェックされ、「この棺は長距離移送に適していないから運んじゃダメだ」といわれたりする。自分たちに関係のないところで決められたルールに阻まれる。

成人したばかりの息子を亡くしただけですごい悲劇なのに、その後の艱難辛苦が気の毒すぎる。最初反発していたアリムも何とか父の希望をかなえようと決心するが、間に合うのか。

ナリマン・アリイェフ監督(弱冠26歳)もムスタファ役のアフテム・セイタブライェフもクリミア・タタール人、深刻な問題がリアルに描かれている。クリミアの紛争もまだ現在進行中だが、さらにその中にタタール人も住んでいて彼らには別の苦悩もあるというのはあまり表に出ない。貴重な作品だと思う。カンヌ映画祭でも上映されたとのことで良かった。

きれいな海のある美しい土地なんだから、人々も穏やかに暮らしていけるようになってほしい。まだしばらくかかるのだろうか。

話が全然わからないトレーラー:

 

 

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『The Aftermath』

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初夏にバレエを見に北ドイツのハンブルクに行くことにした。初めてなので楽しみ。街の様子を予習できるかもと、ハンブルクが舞台の映画を鑑賞。

『The Aftermath』

Directed by James Kent
Based on "The Aftermath" by Rhidian Brook

<Cast>

Keira Knightley as Rachael Morgan

Jason Clarke as Lewis Morgan, Rachel’s husband
Alexander Skarsgård as Stefan Lubert

Flora Thiemann as Freda

いや、予習どころか…町並みはありませんでした。瓦礫だった。

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(これは映画の写真ではなく、記録写真から)

舞台は第二次大戦終結後数か月、戦争中に未曾有の大空襲を受けたハンブルク市がまだ後始末をしている時期だった。だからタイトルの、戦争や大災害が起こった後のことを示す'Aftermath'。

ドイツ第二の都市に大量の爆弾を投下した空襲、コードネームは「ゴモラ作戦」だそうです。悪徳の都市を潰すという、神からの視線のようなネーミングがむかつくわ、しょうがないけど。

戦後すぐ、ハンブルク再建の指揮官に任命されて赴任している英国陸軍大佐のルイスの元に、妻のレイチェルがやって来て合流する。占領軍は個人の家を好きに占拠する権利があるようで、とある郊外の邸宅を与えられる。元の住民は戦争で建築家としての仕事も妻も失ったステファンと、反抗期の娘フリーダ。気の毒に思ったルイスは、「屋根裏なら空けられる、どうぞ住み続けてください」と提案する。

数か月前の敵国人同士、勝利者と敗者、家を占領している人と奪われた人、で、緊迫した状況だ。親切がアダにならないといいけど。

ルイスの仕事は過酷だ。毎日瓦礫の中に出て行って指揮したり、元ナチスとそうでない人の選別を監督、完璧に壊れた都市を立て直すための仕事は山ほどあるのに、ドイツ人には感謝もされない。逆にデモが起きたり、ナチの残党に命を狙われたりする。それでも一言も愚痴を言わず毎日仕事する。

そんな夫の姿は見ていないレイチェル、言葉もわからない敵国に連れて来られて放置されるのが寂しい。さらに夫婦は大事な人を戦禍で亡くしているのに、夫が冷酷に仕事に逃げているように感じる。つまり「あなたもちゃんと悲しんで。わたしをわかって!」と思っている。

20世紀半ばのイギリス男、そんな豊かに感情表現できないですから。レイチェルは軍人の妻に向いてないかも。

そのうち事件が起こって人間関係がぐちゃぐちゃになるのだが、全員の気持ちは理解できるし、誰も悪人でないので気の毒にも思う。また、一度ぐちゃぐちゃにならないと、どうにもならなかったのかも、とも思う。Aftermathは個人の危機の「その後」でもあった。

ドイツ語の題は「Niemandsland」(no-man's land)だそうだけど、この映画、ドイツではあまり人気なさそう。

トレイラーはベッドシーンがあるのでやめて、代わりに統計数字を。BBCの「ゴモラ作戦」についての記事によると、”一度の空襲”で亡くなった人の人数:ゲルニカ=250、ロンドン(1941年3月10日)=1436、ハンブルク(1943年7月23日)=推定2万、だそうです。

1945年3月10日の東京大空襲は10万とか、やはり焼夷弾でばーっと焼けたのは被害大きいですね。何か月後かにもまだ死体が掘り返されたりするレンガの瓦礫も大変ですが。

というわけで、瓦礫から見事に復興したハンブルク、敬意をもって訪問したいと思います。

 

 

 

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映画『The Wife』と『Die Buddenbrooks』

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飛行時間は11時間を超える、ということで、なるべく眠るけど、映画も1本くらいは真剣に見ます。行きと帰りで見た映画。

1.イギリスから日本(日本の航空会社):

『The Wife』 (2017)

Directed by    Björn Runge
<Cast>
Glenn Close as Joan Castleman
Jonathan Pryce as Professor Joseph Castleman
Max Irons as David Castleman

ノーベル文学賞を獲得した大作家の夫、陰で長年支えてきた妻、しかし2人の間には誰にも言えない秘密があった…。

となると(こういうことなんだろう)と予想がつくのですが、それは当たっていた。どうしてそうなったかも、当時(60年代や70年代)の事情もわかる。秘密を抱えつつ二人三脚でやってきたが、どっちかが耐えられなくなるときが来そう〜。

グレン・クローズの演技が冴える。上手いですねこの方。いろいろ、いろいろあって最後のシーン、また創作の意欲がわいてニンマリする表情が秀逸。芸術家の顔だ。ジェレミー・アイアンズの息子にしてはぱっとしない(ごめんねーいつも枕詞のように)マックス・アイアンズが、偉大な作家と同じ道を選んで苦悩する新進作家役。

2.日本からドイツ(フランクフルト経由だった)(ルフトハンザ):

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Die Buddenbrooks(独語原題) (2008)
Directed by    Heinrich Breloer
<Cast>
Jessica Schwarz as Antonie "Tony" Buddenbrook
Mark Waschke as Thomas Buddenbrook
August Diehl as Christian Buddenbrook
Armin Mueller-Stahl as Consul Johann "Jean" Buddenbrook
Iris Berben as Elisabeth "Bethsy" Buddenbrook
Léa Bosco [fr] as Gerda Buddenbrook

帰りは直行便が取れず、ドイツ経由だった。映画のラインナップが違っていて面白い。原作は読んだがすっかり忘れた『Die Buddenbrooks』、(見ればわかるかも?)と字幕なしで見てみた。映像があるのであらすじは把握できたものの、言葉は時々しかわからず。言わずと知れたトーマス・マンの1901年の小説「ブッデンブローク家の人々」の何度めかの映画化。

港湾都市リューベックを舞台に、豪商ブッデンブローク家が徐々に衰退していく姿を描く。名家の子供として育った3人きょうだい、長男トーマス、次男クリスティアン、長女トーニ。大人になるとトーニは政略結婚で好きでもない男と結婚しなくてはならず、でもそいつが破産してさっさと帰ってきたり。弟が放蕩に走って真面目な兄と衝突したり。また兄が結婚した女性が、美しいが商売になんか興味ない人、生まれた子も芸術家肌…。名家の跡取りに芸術家が生まれたら、終わりは近いですよね。決して悪い意味でなく、家系にも寿命はあり、祖先が実業をがんばって家を富ませた結果、最後に生活感のない芸術家が生まれるのはむしろ誉かも、なんて思う。原作を読み返したくなる、良い映画。映像も美しい。ただし本当は映画でなく、ゆったりとドラマにすべき作品かも。トーマス役のマルク・ヴァシュケがイケメンだと思ったら、『Barbara』(邦題「東ベルリンから来た女」にも西独側の恋人の役で出てましたね。

「ブッデンブローク」の方のトレイラー:

 

 

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『Tulip Fever』

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邦題は「チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛」だそうです、映画館の会員タダ券がまだあるので行ってみた。

『Tulip Fever』、2017

Directed by Justin Chadwick

Screenplay by  Deborah Moggach & Tom Stoppard

<Cast>
Dane DeHaan as Jan van Loos
Alicia Vikander as Sophia Sandvoort
Christoph Waltz as Cornelis Sandvoort, Sophia's husband
Jack O'Connell as Willem
Holliday Grainger as Maria
Judi Dench as the Abbess of St. Ursula

お目当てはアリシア・ヴィキャンデルのヒロインと、フェルメールの絵を意識したという画面づくりです。

背景は17世紀のオランダで起きたチューリップ・バブルの崩壊。オスマン帝国から輸入された可愛らしい花が大人気となり、球根の先物取引がされるようになると価格がどんどん高騰、相場にハマる人がたくさんいた。

ヒロインのソフィアは修道院づきの孤児院で育ち、美貌で選ばれリッチな商人の後妻となる。前妻をお産で亡くした旦那コルネリスは、早く子供がほしい。ソフィアも自分を「奥様」の身分にしてくれた夫の期待に応えようと思うが、ロマンチックさも何にもない子作り作業に疲れてくる。

そのうちコルネリスは、中流階級に流行っていた夫婦のペア肖像画を描いてもらおうと思い立ち、巨匠は高いから新進の若い画家に注文する。修道院育ちで若い男なんかあまり見たことがないソフィア、画家のヤンに恋してしまい、ヤンもソフィアの美しさに一目惚れ。何とか2人で生活したいが、画家は文無し。チューリップで大金が入れば?…と危険な賭けに出る、という話。

たしかに画面がきれいだ。フェルメールを意識しまくり。

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絵を見すぎて、ストーリーに注意がいかない。またその筋書がけっこう入り組んでいて、やや忙しい。長編小説の映画化で、原作者が脚本を書いたためか(さらにトム・ストッパードも参加したけど)、盛り込みすぎかな。

活気あるアムステルダムの港やウォールストリートばりの(?)取引所の喧騒などは、場面として面白く見られた。実はロケは多くがイギリスで行われたとか。

もう1組の、相場に翻弄されるソフィアの家の女中のマリアとボーイフレンドの魚屋さんや、修道院の元締め(とは言わないが、チューリップの栽培を取り仕切っていて、凄みがあってぴったり)のジュディ・デンチなど、多彩な顔触れ。

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人間の欲でふくらんだバブルはいつか崩壊するのが法則だ。夢が崩れるのはあっけない。でもそのスリルも含めて人生だよね。

この映画、批評家には「ごちゃごちゃしすぎ。話が浅い」と評判がよくなく、興行的にも失敗だったようですが、画面は美しいです。実際に肖像画を描いている現代人の画家さんも実力がある。ちょっと現代的すぎるのは、ヴィキャンデルが21世紀の美人なんだからしょうがない。

ロシア語のトレイラーを見てみた。「Тюльпанная лихорадка」

 

 

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『Ирония судьбы, или С лёгким паром!』(運命の皮肉)

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ロシア語講座の中で、映画鑑賞があった。1975年ソ連製のラブコメ映画、タイトルは「運命の皮肉、あるいはいい湯を」。

そういえばオリガ先生のクラスでも、「ロシアのサウナ」を説明するときに一部を見せてもらった。

発表当時から大ヒットし、それから毎年、テレビで大晦日に放送され、みんなで見る映画として文化の一部になっているそうな。

Режиссёр -- Эльдар Рязанов

Композитор -- Микаэл Таривердиев 
<В ролях>
Андрей Мягков -- хирург Евгений Михайлович Лукашин
Барбара Брыльска -- учительница русского языка и литературы Надежда Васильевна Шевелёва
Юрий Яковлев -- жених Нади Ипполит Георгиевич

ソ連時代、どこも似たり寄ったりの殺風景な高層集合住宅が建てられた。見分けがつかないくらいそっくり。しかもどこの町も市も、通りの名前もありがちなものが多い。さらに、アパートの鍵もあんまりパターンがなくて、自分の鍵が他人に家のドアに合ってしまう可能性は十分あった、というのが予備知識として説明される。

大晦日の日、モスクワに住むジェーニャは恋人にプロポーズして、その夜は2人だけで過ごすことを約束。でもその前に、毎年恒例の友人たちとのサウナ・パーティに顔を出す。もちろんすぐ帰れるはずがなく、全員ひどく酔っ払い、その夜レニングラードに向かう別の友達と間違われて飛行機に乗せられるジェーニャ。着いた空港で目を覚ました彼は、なぜこんなところに?と戸惑うも、家に帰らなければ、とタクシーを呼んで自分の住所を言う。そしてレニングラードの同じ名の通りの似たようなアパートに着き、自分の鍵で中に入って寝る…。

そして本当の住人であるナージャさんが戻って来て、「え、だれこの人!」とびっくり。そこへ彼女がつき合っているイッポリート(ジョン・クリーズ似)もやって来て、フィアンセのアパートになぜズボンを脱いで寝ている男がいるのか!と怒りーーというドタバタ・コメディ。

岡目八目の視聴者には、元々の相手より、ジェーニャとナージャの方がカップルとして知的レベルも似て、性格的にも合いそう、とはわかるのですが、どうなることやら。

この映画が愛されている理由のひとつに、状況にぴったり合った、レベルの高い歌が挿入されていることがある。しかも歌詞は、多くが当時当局から禁止に近い扱いを受けていた詩人たち(ツヴェターエワ、エフゲニー・エフトゥシェンコなど)の作品。なにげに大胆だな。作曲はスパイ物「春の十七の瞬間」でも音楽を担当したミカエル・タリヴェルディエフなので、良い曲になっている。

あとで授業で詩を各々1編訳すことになって四苦八苦した。一流の詩が入った映画が幅広い視聴者に受けたというのがソ連の面白さだ。

アニメーションによるイントロはこちらです。

ところでヴェラ先生が、「この映画の続編も21世紀に作られたけど、箸にも棒にもかからないから見ちゃダメ」と言っていたので、チェックしてみました(笑)。

『Ирония судьбы. Продолжение』(続・運命の皮肉)、2007年

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Режиссёр -- Тимур Бекмамбетов
<В ролях>
Константин Хабенский -- Константин Евгеньевич Лукашин
Елизавета Боярская -- Надежда Ипполитовна
Сергей Безруков -- Ираклий Петрович Измайлов

あら豪華キャスト。ハベンスキーにボヤールスカヤ、それにセルゲイ・ベズルーコフ。

これはソ連時代の2人の子供世代の話で、似たような事態になる。偶然ではなく、誰かが裏で仕組んだものということがわかるが、こじつけ感は免れません。しかしオリジナルの2人が出ているのが驚く。特に新ヒロイン・ナージャの母のナージャ(ややこしい)がまだまだ美しい。それなりに楽しい娯楽作品で、ソ連時代の、ひょっとしたら上映禁止されるかも的な、すれすれの緊張感と矜持はないのは仕方ありません。

現代だとみんな携帯を持っていたり、オリジナルのナージャの恋人はソ連の役人(闇でいろいろ手に入る)で車はラーダ、21世紀のナージャの彼氏は携帯でのべつしゃべっているビジネスマンで車がトヨタ・カムリ(だったと思う)など、時代と体制の変化が面白い。

ポスターがにぎやか:

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ロシア映画祭@ケンブリッジ

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順番がぐちゃぐちゃですが、ロシア語合宿の前後にケンブリッジ・ロシア映画祭で2作品を見た覚え書き。

まず宇宙もの。

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『Салют-7』

Режиссёр -- Клим Шипенко
<В ролях>
Владимир Вдовиченков --  командир экипажа «Союз Т-13» Владимир Фёдоров
Павел Деревянко -- бортинженер «Союз Т-13» Виктор Алёхин

実話に基づいたストーリー。1985年、宇宙ステーション「サリュート7号」からの信号が途絶えた。そのときは無人の状態で、何が起きたかわからない。制御不能になり、このままでは地球に落ちる。

まだ宇宙開発戦争中でもあり、アメリカ側が、

「うちらが回収しましょうか?」なんて言っている。

それはまずい!というわけで、人類史上初、無人の宇宙船を追いかけて行ってドッキングし、修理を試みるというミッションが、ソユーズT-13号にあたえられる。その乗組員の体験する数々の困難を描く。

監督が挨拶に来ていて、T-13のミッションだけだと「退屈な映画になるので」他の宇宙ミッションのエピソードもてんこ盛りして作ったと説明、なるほどアメリカンな娯楽大作に仕上がっている。無重力の中、浮遊するウォッカをしゅるっと飲んだり(笑)。

質疑応答中、観客の中で最低2人はすごく怒っていた(まじで。たぶんロシア人)。事実とだいぶ違うのだろう。

「ぼくはソ連崩壊時に9歳だったんで、ソ連のことは知らないんだ」とアメリカ英語で話す35歳の監督、新世代ですね。

これはこれで楽しめたが、しっかりしたドラマ映画が面白かった。

『Не чужие』(他人じゃない、という意味)

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Режиссёр -- Вера Глаголева
Автор сценария --  Ольга Погодина-Кузмина

<В ролях>
Санжар Мади — Рустам
Татьяна Владимирова — мать Галины и Милы
Лилия Волкова — Мила
Анна Капалева — Галина

英題「Clay Pit」粘土採掘抗みたいな意味だと思う。そのまま、オリガ・パガジーナ=クズミナ?作の戯曲の題。

ミーラという若い(といっても30歳前後かな)女性がモスクワから田舎町に帰ってくる。仕事でも恋愛でもいろいろあって、夢破れて実家にもどったようだ。実家には母がひとり。姉のガリーナは近くに住み、最近自分よりだいぶ若い中央アジア出身・イスラム系の青年ルスタンと婚約している。前の夫はアル中で亡くなっていて、その息子が2人、まだ小学生。

ここからどういうドラマが展開するのかと見ていたら、すごいことに。(ネタバレするので、観る機会がありそうな方は読まないでね)

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ミーラは姉の幸せが不愉快なのか、暇つぶしか、姉の夫ルスタンを誘惑、あっさり不倫が始まる。

ルスタンにも何か辛い過去があるようで、感情が一部死んでいるみたいだ。ガリーナに「よその男の子供は育てたくない」と言い、ガリーナは亡夫との子を母に預けっぱなしにする。みんなひどいなあ。お母さんはまともなんだけど、娘2人が自分勝手で気の毒。そのうち不倫がばれ、子供がお母さんに捨てられたことを悟り…。家族でののしり合い、言ってはいけないセリフの応酬!「他人じゃない」関係がこじれた泥仕合はことさら壮絶なものがある。

これはオリジナルの劇で見ると迫力だろうなと思った。というか怖い。映画は非常に美しいカメラワークで質が高い。監督のヴェラ・グラゴーレワさんはこの作品の撮影途中でガンのため亡くなったそうで、残りはスタッフががんばって撮り終えたとのこと。ラストは戯曲と違っているそうで、その方が良かったと思う。でないと救いがまるでないところだった。緊迫した秀作です。

字幕がないけど、絵がきれい、というのはわかると思うトレイラー:

 

 

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『Aufbruch』(Departure)

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ケンブリッジ映画祭は地味な佳作が多い。ここ数年は家族連れが楽しめるアニメ部門なども開拓しているようだが、わたしが見るのはやはり派手なところが全然ない作品だ。オーストリア映画、ドイツ語の『Aufbruch』(出発)を鑑賞。ルードウィッヒ・ヴュスト(あるいはヴスト)監督が主演もしている。

Director: Ludwig Wüst
Writers: Ludwig Wüst, Claudia Martini
Stars: Claudia Martini, Ludwig Wüst

偶然会った他人同士、どちらも若くなく、人生でがっくりすることがあった。そういう人は他人が抱えている悲しみも分かるのだろう。何となく助け合う。お互いほとんど話さず、自分の中に沈みこみながら、行動を共にする。女性が向かっている目的地に男性が同行してやっているという感じだが、助けてもらっても「ありがとう」も言わない彼女。自分を助けることで実は彼も助かっているのだ、ということがわかるのかも。

文学的な映画。女性はロシア詩人の詩集を持ち歩いてメモを書き入れたりしていた。誰のだか不明。

途中でイモを焼いて食べる。絶望していても、腹はすく。スティルリッツの食べ方と違うかも…というか、イモが長い。オーストリアでさつまイモを作ってる?と余計なことが気になる。やけにおいしそうだった。絶望して、戸外で食べているからかな。

特に風光明媚でも、目立つ建物があるのでもない、普通のヨーロッパの田舎の景色がきれい。

監督は小津安二郎が好きだそうで、小津ファンの監督、世界中で多いねー。すごい影響力です。

しいて言えば音楽が好みでないけど、人生こういうこともあるよな、としんみりしました。イギリスでのプレミア上映だそう、今後一般公開するのだろうか。

誰もしゃべらないトレイラー:

 

 

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