ケンブリッジ・フィルハーモニー『French Connections』

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170318-2

3週間前くらいにけっこう寒くて大雪だったときの写真。それから暖か目だったが、土曜日に突然寒くなって雪。

友達がコーラスで歌うだけでなくプログラムが魅力的だったので楽しみにしていたケンブリッジ・フィルハーモニーのコンサート『French Connections』へ。パリが文化芸術の中心だった1920-30年代をイメージした特集。

Conductor - Timothy Redmond
Margo Arsane Soprano
Nicolae Mihaila & Thibault Charrin Piano
Cambridge Philharmonic Orchestra and Chorus
Guildhall Percussion Ensemble 

プログラムは:
STRAVINSKY Symphony of Psalms
POULENC Concerto for 2 Pianos
RAVEL Daphnis et Chloé Suite no. 2
POULENC Stabat Mater

演奏に入る前、指揮者が「今週は悲しいニュースがありました」と14日に亡くなったスティーヴン・ホーキング博士のことについてふれる。科学者の例にもれず博士も音楽好き、しかも今日のプログラムのストラヴィンスキーとプーランクが特に好きだったのだそうだ。1930年作曲の詩篇交響曲は博士が初めて買ったレコードで擦り切れるまで聴いた、とRadio3で言っていたらしい。そんなわけで急遽、博士に捧げる演奏会となった。

詩篇交響曲は宗教的で厳かながらストラヴィンスキーにしかできない斬新な音使い。オーケストラにヴァイオリンがなくてピアノが2台あったり、面白い。

しかし2曲目のプーランクの2台のピアノのための協奏曲 ニ短調 FP.61はさらに面白い。蓋をとりのぞいた2台のピアノを向き合わせてフルオーケストラと組み合せる。軽妙に、楽しく、競うように遊ぶように流れていく速度が気持ち良い。ルーマニアとフランスの若手ピアニストも溌剌としてよかった。アンコールはドビュッシー「ゴリウォーグのケークウォーク」。

170318-1

ルーマニアのNicolae Mihailaのほう。タイと靴下を同じ赤で統一していてお洒落だった。

休憩をはさんで、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」、バレエ音楽の躍動感が気持ち良い。海や森を感じる。ラヴェルは「だんだん盛り上げていく」のがうまいなあと思う。コーラスは歌としてでなく「音」の一部として参加している。歌い手としてはどう感じるか、後で友達に聞いてみたい。

最後の「スターバト・マーテル」(1951)はプーランクが友人の死を悼んで作った。悲しい中に優雅さと強さがある。ソロを歌ったメゾソプラノのマーゴさんの声がすばらしく伸びやか。容姿もきれいだしオペラでも活躍できそう、と思ったら、もうすでにいろいろ出ているそうです。夏には「フィガロの結婚」でケルビーノを歌う予定。

うっとりしてコンサートホールを出たら雪がわさわさ降っていてびっくり。降ってもいいけど向かい風が強いのが嫌だ。自転車で来てしまったのでまた自転車で必死に駅まで飛ばした。無事帰宅、やれやれ。

2台のピアノの〜、マルタ・アルゲリッチとネルソン・ゲルナーの演奏:

 

 

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モンテヴェルディ「The Return of Ulysses」

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250118-3

ルネッサンスのヴェネツィアで活躍したクラウディオ・モンテヴェルディ(1567 - 1643)、大好きです。ロイヤル・オペラハウスからの「今なら40%おまけしとくけど」というメールにあっさり引っかかりチケット購入。会場はいつものコベント・ガーデンでなく、少し北の方のRoundHouse。原題は『Il ritorno d'Ulisse』、日本語で「ウリッセの帰還」、今回は英語で歌われた。

Music -- Claudio Monteverdi

Libretto-- Giacomo Badoaro

Director -- John Fulljames

Set designer -- Hyemi Shin

<Performers>

Conductor -- Christian Curnyn

Ulysses/Human Frailty -- Roderick Williams

Penelope -- Caitlin Hulcup

Telemachus -- Samuel Boden

Minerva/Fortune -- Catherine Carby

Eurycleia -- Susan Bickley

Melantho/Love -- Francesca Chiejina

Eurymachus -- Andrew Tortise

Antinous/Time -- David Shipley

Orchestra -- Early Opera Company

会場に行くと本当に「丸い」のでびっくり。ステージは真ん中にドーナツ状に作られ、中央の「穴」の部分にオーケストラが入るしくみ。ドーナツの幅は数メートル?あまり広くないのに自転車こぎながら歌ったり、オペラ歌手も大変だ。ドーナツ自体、ときどきゆっくり回転し、周囲をぐるりとかこんだ観客が平等に見られる。

話はご存じのとおり、イタケーの王オデュッセウスはトロイ戦争の遠征に行ったっきり帰らなかった。貞淑な王妃ペーネロペーは言い寄ってくる求婚者たちをはねのけながらじっと待っているが、待つこと20年!一人息子も立派に成長。

そこへ冒険の末やっと帰ったオデュッセウス、旅人に身をやつし、王妃に求婚する男たちが決着をつけるために力比べをするのに参加、誰も引けなかった「王の弓」を軽々と引いたついでに彼らを射殺する。あまり久しぶりなので最初は本当に夫なのかわからない妻に認めてもらってめでたしめでたし。

旅人(コーラス)が流れ着いた難民みたい。

250118-2

セットに現代的な味つけをしていても、音楽がおっとり雅やかで優しい。でも歌われている感情はやはり今の人にも共通している。人間、中身はそんなに変わるものじゃありません。

オーケストラも古楽器が並んで、生で聴くと実に美しい。うっとり。

ただ構造上、舞台の周りを柱が20本以上ぐるっと囲んでいて、たまにどうしても視界をさえぎる。わたしの席からは何と肝心の、オデュッセウスが弓を引くところが完全に隠れた。ちょっとショックだけど、音楽さえ聞こえれば別にかまいません。

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王家の人以外に羊飼いや召使いなど庶民キャラで笑える場面もたくさんあり、楽しい舞台。欲をいえばイタリア語で聴きたかったけど、英語でも問題はなし。

ROHのトレイラー、超・一瞬だけ。もうちょっと聴かせて〜。

 

 

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Met オペラ@シネマ『Tristan und Isolde』

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181016-3

バレエより前に観たMetオペラの映画館中継、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」。

Richard Wagner『Tristan und Isolde』

初演はミュンヘン、 1865年。

<Cast>

Conductor -- Simon Rattle
Isolde -- Nina Stemme
Tristan -- Stuart Skelton
Brangäne -- Ekaterina Gubanova
King Marke -- René Pape

あらすじはご存じのとおり。コーンウォールの騎士トリスタンは幼いころに両親を亡くし、叔父のマルク王を親代わりに育った。王の花嫁となるべきアイルランドの王女イゾルデを迎えに行った船の上、間違って彼女とともに愛の媚薬を飲んでしまい、コントロール不能の恋に落ちる。イゾルデが予定通り王と結婚してもひそかに逢瀬を重ねる二人の関係はやがて王にバレてまずいことになる(まずいじゃ済まん)。

オペラではトリスタンは戦いでイゾルデの婚約者を殺したことになっている。自分の未来の夫を倒した男と知らずに介抱してやったのがイゾルデだった、という因縁がある。

なので最初から二人の間にテンションが。

181016-2

ニーナ・ステンメとスチュアート・スケルトン、拮抗する強い声同士でバランスがとれている。

舞台美術が気に入った。序曲のときからスクリーンに緑色のレーダー画像が映しだされる。近代的軍艦で迎えに行くトリスタン。

まだ婚約者を忘れていないイゾルデは、仇のトリスタンに毒を盛って、自分も死のうと思っていた。侍女に毒の手配を言いつける。

姫を殺すに忍びない侍女が取り代えた別の薬というのが、イゾルデの母が作った強力な媚薬。「これをマルク王といっしょに飲めば、王様は一生あなたの虜♪」のはずだったのに。

あー原液全部投入しちゃったか。500倍に希釈したら「いいオトモダチ」になったかもしれないのに。かどうか知らないけど。

お互い避けようとしていた関係からいきなり相手なしには生きられなくなる二人を、ワーグナーの音楽が引きずっていく。

脳が痺れてくるような厚みのある音の固まりが体を通って気持ち良いことこの上ない。

しかし裏にはすぐ悲劇がひかえている緊迫感。

友人だと思っていた男に裏切られ、王に背いていることをあばかれる。

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マルク王のルネ・パーペが、「おれは最初の妻を亡くしてからもう結婚しないでいいと思っていたのに、おまえが勧めるからこの人を娶ったのに」なんでこういう仕打ちをしてくれたのだ、と嘆く。気の毒です。

このような破壊力のある恋は当事者の死を要求する場合があり、悲劇は進行する。死はむしろ解放といえましょう。

今年はブルガリアまで「トリスタンとイゾルデ」を聴きにいったという筋金入りのワグネリアンの友達は、1幕では「ビジュアル効果が過剰で邪魔」と文句を言っていたが、2幕以後は音楽がビジュアルを抑えて完全な主役についたためか、満足した様子。

聴くのにも気合いがいるオペラ、堪能しました。

そういえばルキノ・ヴィスコンティ監督「ルートヴィヒ」でもこの音楽が使われていた。久しぶりに見たくなった。

トレイラー:

 

 

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マーティン・バートレット(ピアノ)コンサート

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230716-1

また家に籠ってしまった。夕方7時からお散歩。

金曜は、ケンブリッジ大学ジーザス・カレッジのチャペルで新鋭ピアニスト、バートレットの演奏を聴いた。

230716-2

Martin James Bartlett

1996年7月生まれ、つい最近二十歳になったばかり。2014年のBBC Young Musician of the Year受賞。

<プログラム>

Mozart Sonata in A minor K.310
Les Six L’Album des Six
Poulenc Trois Pieces
César Cui Prelude No.6
Glinka/Balakirev The Lark
Chopin Ballade No.1
Arnold Bax Burlesque
Chopin Waltz in C sharp minor Op.64 No.2
Chopin Etudes Op.25 No.12 & Op.10 No.4

モーツァルトにプーランク、ショパンと魅力的な曲が並ぶ。

出てきたピアニストは本当に若い。3日前にはまだ十代だったんだもの当然か。しかし技術が非常に安定していて少しも危なげがない。気負わず、実に楽しそうに演奏しているのがわかり、幸福感が伝染する。

会場がチャペルなため、最初のモーツァルトのソナタは反響が強すぎか、と思ったが、後になるほど気にならなくなった。

230716-3

コンサート開始前に携帯で撮ったチャペル内部。

画面真ん中の右側に、小さいライトが7つ並んでいるのが見えると思いますが、このライトが演奏中まるで音楽に合わせたかのように点滅していたのが、説明のつかない不思議な現象だった。

演奏が始まる前に、観客側のライトは消したはずなのに。

まさかライティングをコーディネートしているのだろうか、ちょっと煩いなあ、と思っていたら、休憩時間にケンブリッジ音楽祭のディレクターが係りの人と照明のスイッチのところで困ったように何か点検している。意図したものではなかったようだ。どういう故障?

どうやら直ったようだったが、後半が始まってグリンカ、ショパンと進むにつれて、がまんできなくなったのか?また証明が踊るようにチカチカ光り始めた!

音の波長が電気系統に影響を与えるなんてことはあるんですか。

そういえば、バキー!ビシッ!というラップ音みたいなものもしょっちゅうしていた。床がきしんでいる?とこれも休憩時間に確認したら、スタインウェイのピアノの下の床は石敷き、きしむはずがなかった。

ポルターガイストだったんでしょうか〜。

でもちっとも怖くなかった。チャペルの幽霊が美しい音楽に嬉しくなっちゃって踊っているみたいだったから。

速い音がクリアによく走り、メリハリがあり、ショパンのドラマチックなバラードも壮麗に表現する、すごい才能だ。幽霊もびっくりして目が覚めるというものだ。

今回初めて聴いたアーノルド・バックスの「バーレスク」(1920)は今年、エリザベス女王90歳の祝賀礼拝で演奏したもの、と本人から紹介があった。その映像があったので:

National Service of Thanksgiving to mark the 90th Birthday of Her Majesty the Queen, St. Paul's Cathedral Friday 10th June 2016

 

 

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ロイヤル・オペラ『Oedipe』(オイディプス)
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050616-1

6月は多忙のため、あまりアップできないと思います。
-- と言いつつロンドンでオペラを観てきた。予約しちゃってたもんで・・・。

ルーマニアではお札にもなっているそうな、高名なヴァイオリニストで作曲家、ジョルジェ・エネスク(George Enescu, 1881 - 1955)のフランス語オペラ『Oedipe』、1936年の作。
もちろんギリシア悲劇の「オイディプス王」を基にしている。

<Credits>
Music -- George Enescu
Libretto -- Edmond Fleg
Directors -- Àlex Ollé and Valentina Carrasco
Set designer -- Alfons Flores
Costume designer -- Lluc Castells

<Performers>
Conductor -- Leo Hussain
Oedipe -- Johan Reuter
Tirésias -- John Tomlinson
Antigone -- Sophie Bevan
Mérope -- Claudia Huckle
Jocaste -- Sarah Connolly
The Sphinx -- Marie-Nicole Lemieux

テーベのライオス王と王妃イオカステの間に息子が生まれて人々が祝っていると、予言者が現れ、「その子は父を殺し、母と結婚するだろう」というとんでもない未来を予告する。
「かわいそうだが、生かしてはおけない」と羊飼いに預けて山に捨てさせるが、赤子は救われてコリント王の実子として育てられる。

二十歳になったその子=オイディプスは、この予言をアポロンの神託で自ら聞いてしまう。
父を殺して母と〜?! そんなの絶対に嫌だ。
育ての親を本当の両親と信じているオイディプス、罪を犯さないようにと国を出る。

旅の途上、つまらない争いから正当防衛で人を殺してしまうが、それが実はライオス王だった。

その後テーベで、住民に謎をかけては取って喰っていたスフィンクスに打ち勝って滅ぼし、感謝される。未亡人イオカステと結婚し、テーベの王位につくオイディプス。

ということで予言は成就する。

050616-2
(スフィンクスがなぜかドイツの爆撃機Ju 87 ユンカース -- スペイン内戦で使われた型 -- と一体化〜)

生誕のシーンは昔風の衣装なのに、大人になった時点では24世紀ほど時間が飛んで、現代の服装になっている。オイディプスは普遍的な存在だから、タイムトラベルしちゃうのだ。

「神殿に行ってからふさぎこんで、どうしたの」と心配する育ての母・メロープ王妃は白衣姿、その横で寝椅子に寝て欝々としているオイディプス。まるで精神科医と患者の図になっていたのが笑えた。
(フロイトがエディプス・コンプレックスという概念を持ちだした著書『夢判断』の出版は1900年)

こういう話だから音楽は明るくないが、ルーマニアの民族音楽も取りいれていたり、ワグナー風にパワフルなところもあり、ドビュッシーやフォーレのように繊細な旋律もある。
謎めいた、不気味なスフィンクスの場面は特に印象的だ。



そこからまた20年ほど経過。テーベに疫病が流行し、昔の王殺しの犯人が明らかにされていないことが原因だと神託がある。

目撃者が名乗りをあげ、先王を殺したのがオイディプスであったことが明らかになる。さらに彼がコリントの王の子ではなく、死んだはずのテーベの王子であったことも、コリントからの使者の証言でわかってしまう。

王妃=母=妻のイオカステはショックのあまり自害。
オイディプスは王位を退いて、孝行娘のアンティゴネーだけを連れて荒野にさまよい出る。
最後はアテネの近くに自分の死に場所を見つけ、戻ってほしいというテーベの市民の要請は断り、現世の外に旅立っていく。
自分の生まれる前に定められた”運命”によって罪人にされた怒りと悲しみから解放されて、穏やかな気持ちで死んでいく姿が荘厳だ。

050616-3

できればイオカステのサラ・コノリーの声をもっと聴きたかった。重要ではあるが、出番は少な目。
主役が重労働。バス・バリトンのヨハン・ロイターが重厚に歌い、演じていた。

アンフェアな話だ。人間がどうがんばっても”神”の決めた運命通りになってしまう。
オイディプスは自分には責任のない理不尽な運命と闘い、破れた。が、人生の終わりに運命と折りあいをつけ、心の平安を手に入れる。
重い悲劇は、やさしく清浄な音楽で幕を閉じる。

人間みな、生まれる環境も自分のDNAも何ひとつ選べない(生まれる前に選んだかもですが)。自分で道を選択し、努力したつもりでも、結局はなるようにしかならないのが人生かも。
そうは言っても一生じたばたするのが面白いのだ。というようなことを思ってみた。

人がTerracotta Army(兵馬俑)のイメージで色使いが土っぽかったり、すべてのシーンがすみずみまで美しい、凝った舞台美術だ。

イギリスで上演されるのはこれが初めてとのこと。これから上演が増えそうな傑作と思った。


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イタリア・ルネッサンスの音楽@Fitzwilliam
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300416-1
Tiziano, Venus and Cupid with a lute-player, 1555 — 1565

エジプトの展覧会もよかったけど、今回のフィッツウィリアム博物館訪問の目的は、閉館後のコンサート『Venus and the Lute Player』でした。
Cambridge Early Musicからメールで案内があり、申し込んでおいたもの。
Northern Early Music Collectiveのメンバー4人が、ティツィアーノの絵「ヴィーナスとキューピットとリュート奏者」の中に描かれている楽器にできるだけ近い古楽器を使い、当時の音楽を演奏する企画。

5つのパートに分かれる。

1.Venice, c1500: Petrucci's pioneering music prints
-- Vincenzo Capirola (1474-after 1548) - Recercar primo
-- Marco Cara (c1470-?1525) - Liber fui un tempo in foco
-- Bartolomeo Tromboncino (1470- after 1534) - A la guerra
-- Anon. - Rompeltier
など。

2.Venice, 1530s and 1540s: Verdelot and Willaert
-- Philippe Verdelot (1470/80-before1552)/Adrian Willaert (c 1490-1562) - Madonna qual certezza
-- Verdelot/Giovanni Maria da Crema (fl1540-50) - Con lagrime et sospir
-- Verdelot - Con lagrime et sospir
ほか。

3.Ganassi's recorder and viol treatises (Venice, 1535 and 1542/3)
-- Sylvestro di Ganassi (1492-mid 16th century) - Recercar Primo
-- Giacomo Fogliano (1468-1548)/Ganassi - Io vorei Dio d'amor

4.Rome, 1553: Ortiz and Arcadelt
-- Diego Ortiz (c1510-c1570) - Recercata quinta
-- Jacques Arcadelt (?1507-1568) - O felici occhi miei
ほか。

5.De Rore: mid 16th-century madrigals with late 16th-century diminutions
-- Cipriano de Rore (1515/16-1565) - Anchor che col partire
-- Ricercare a 4 voci di B.M.
-- Rore/Dalla Casa - Beato mi direi
など。

歌手と演奏者は:
Faye Newton (soprano), Pamela Thorby (recorder), Susanna Pell (viol) and Jacob Heringman (lute)

100人もいないだろうお客が閉館後のギャラリーに案内され、実際にティツィアーノの絵が飾られている部屋で音楽を鑑賞するという、ぜいたくなコンサート。きりっと冷えた白ワインもいただいた。

リュートも笛も、優しい音色ながら、イタリアらしい華やかさがある。
ソプラノのフェイさんはモンテヴェルディを得意とするそうで、甘くしっとりした声。間近で聴くと一段と美しい。

ヴィーナスの絵ですから、愛の歌が集められる。愛の喜び、せつない恋、様々なシチュエーション。
中には、
「戸を叩かないで!亭主が家にいるのよ、今日はダメなのよ」なんてのもあり。
おや、奥さん、いけませんね。
喧嘩したのか、罵詈雑言の歌もあった。面白い〜。

コンサート会場でなく、美術品にとり囲まれたギャラリーの親密な空間で聴くルネッサンス音楽は、格別の味わいだった。
ジョルジオーネ展以来、ヴィネツィアづいているかも。


なんとなく声質が似ているEmily van Everaによる "Liber fui un tempo in foco"



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コンサート、アルヴォ・ペルトの「テ・デウム」など
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060316-2

友達が入っている合唱団が歌うので、コンサートに行ってきた。
ケンブリッジ、West Roadのホールは音響がいいです。

Cambridge Philharmonic Orchestra and Chorus
Conductor: Timothy Redmond
Leader: Steve Bingham

プログラムは:
DAVID WILLCOCKS: Ceremony of Psalms: Psalm 98 (O Sing Unto the Lord a New Song), Psalm 130 (Out of the deep) and Psalm 65 (Thou, O God, Art Praised in Sion)
   
ARVO PÄRT: Te Deum
MAURICE DURUFLÉ: Requiem

Soloists:
Bethan Langford (Mezzo soprano)
060316-1

Josep-Ramon Olivé (Baritone)


アルヴォ・ペルト(1935 -)とモーリス・デュリュフレ(1902 - 1986)、グレゴリオ聖歌に影響を受けた二人の宗教曲。

その前に、ケンブリッジの音楽活動に貢献して去年亡くなったデヴィッド・ウィルコックス氏の曲が披露された。キングス・カレッジ聖歌隊の指揮者なども務められたそうだ。イギリス人らしく知的で明快、力強い曲想だった。

わたしにとってメインのペルト「テ・デウム」は1985年の作品。Dの音を中心に7つくらいしか音を使わず、繰り返される旋律が微妙にハーモニーを変える。
エオリアン・ハープの地鳴りのようなゴーッという音も美しい。歌うのは非常に難しいと思う。
ちょっとリハーサル不足?と感じた箇所もあったわ。みなさん他に仕事などある人達だから仕方ないよね。
シンプルなだけに間違うとすぐバレてしまう、恐ろしい曲でもある。

ところで臨席の男性が落着かないやつで、演奏中にスマホでメールを打っている。とうとうメール打つやつがでてきたか。
その上呼吸音がやたらうるさい人だった。静かな曲にザーザーと雑音が入るではないか。どちらかというとスマホより呼吸の方がいやだ。でも息をしないでくれとは言えない。休憩後に空席に移って解決。
見たら、彼の真後ろの席2つも人がいなくなっていた、ははは。

次のデュリュフレは、ペルトより輪郭のはっきりした、フォーレを思わせる優しい曲。合唱団も自信もって歌っていた。
ソロがバリトンとメゾソプラノなのが、落着いた音域になっている。
二人とも若くてフレッシュ。特にメゾのラングフォードさんはまだ学生ながらオペラにもデビューしているそう。一所懸命に丁寧に歌っていた。

デュリュフレのレクイエムは生で聴くのは初めて。神は信じていないけれど、信仰心の清浄さは感じることができる。いい気分で帰宅できた。


サラ・コノリーがレクイエム中の「ピエ・イエズ」を歌う。
Sarah Connolly sings: "Pie Jesu"



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ヨナス・カウフマン、プッチーニの夕べ
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160216-1


昨年6月にミラノ・スカラ座で行われたヨナス・カウフマンのオール・プッチーニのリサイタル。
すでにDVD化していると思いますが、せっかく映画館でやるというので、大スクリーンで鑑賞。

Jonas Kaufmann: An Evening With Puccini


曲は:(公式プログラムをコピペしたら大文字と小文字がヘンですが、一応わかるのでそのままにしときます)

Preludio sinfonico A-dur

le Villi
Ecco la casa ... Torna ai felici dì – Prelude and La Tregenda

edGAr
Orgia, chimera dall’occhio vitreo
– Edgar Prelude to Act III

Manon lescAuT
Donna non vidi mai
Intermezzo
Ah! guai a chi la tocca! ... No! pazzo son! Guardate!

ToscA
Elucevan le stelle
– Prelude to Act III

MAdAMA BuTTerflY
Intermezzo

lA fAnciullA del WesT
Una parola sola! ... Or son sei mesi

suor AnGelicA
Intermezzo

TurAndoT
Nessun dorma

encore

本編前に、世界的セレブであったプッチーニ(Giacomo Puccini, 1858 - 1924)の生涯などさっと紹介し、カウフマンのインタビューがあった。

すこし陰りのあって深く力強いテノールが魅力なカウフマン。イタリアには縁があって、子供の頃から家族で年に2,3度は行っていたそうだ。
現地の子供といっしょに遊んで自然に覚えたイタリア語の発音はネイティブ並み。後にオペラのスターになるような子は耳と頭がいいもんね。

ミュンヘン生まれの彼がミラノでイタリア人を前にプッチーニを歌う、その感動をみんなと分け合いたかったからカメラを入れたそうで、お陰でわたしたちも映画館で見られる。

スカラ座フィルの演奏と、カウフマンの歌が交互に披露される。
オペラのときは舞台下にいて見えないオーケストラが舞台に上がっているのも面白かった。

(第一ヴァイオリニストがイケメン・・・)と、カウフマンがいない時はきょろきょろしていたわたし。シリアスな音楽家のFrancesco De Angelisさん、不真面目な客ですみません。
でも友達も後で、
「うん、黒髪に濃い顔、典型的なイタリアの美男だった」と言っていた。


もちろんカウフマンがいるときは、普通の人間に見える彼がどうやってこの精妙な声を出すのか、と目が離せない。見たってわかるものでもないですが。

プログラムは初期の作品からほぼ年代順に並んで、プッチーニの成長も感じることができる。巨人ヴェルディの後、ワーグナーとちょうど同時代で、スタイルの確立に苦心した初期から、徐々に自分の音楽が育ってくる。

そういえば「ラ・ボエーム」からは1曲もなかったのは、カウフマンのレパートリーの都合かな。

最後はもちろん人気のトゥーランドット「誰も寝てはならぬ」。
いや、そんな無茶なこと言わずに寝かしてよ。
1990年のサッカー・ワールドカップでパヴァロッティが歌った名曲、カウフマンは
「ちゃんと歌えるようになるまで待った」そうです。
愛と情熱と、自信を表現しなくてはならない曲、満を持したのですね。すばらしかった。

拍手が止まず、アンコールが延々続く。立ちあがった人は帰るのではなく、スタンディングオベーションのため。ミラノのお客さん、いつまでも聴いていたかったのだろう。プッチーニでない歌曲も混ぜ、とうとう5曲も歌った。

アンコール中ハプニングというか一度とちってしまって可愛かった。もうその頃はお客さんも音楽に酔っぱらっているから、笑って赦す。
ドイツのラテン系?バヴァリア人らしく陽気でお茶目なカウフマンだ。


トレイラー:



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The Sixteen クリスマス・コンサート
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201215-1

精鋭16人の合唱団、主として宗教曲を歌う”The Sixteen”。エセックスのサフロン・ウォルデンの新しい音楽ホール「サフロン・ホール」でのクリスマス・コンサートに行ってきた。
指揮者はハリー・クリストファーズ(Harry Christophers, 1953 - )。

魅力的なプログラム:
Plainsong -- Puer natus est nobis
Tallis --  ‘Gloria’ from Puer natus est nobis
Tavener -- The Lamb
Ord -- Adam lay bounden
Traditional -- Rejoice and be merry
James MacMillan -- O Radiant Dawn
Gabriel Jackson -- The Christ-child
Byrd -- Ave Maria
Plainsong -- Nesciens mater
Lambe -- Nesciens mater
Tallis -- Videte miraculum
Howard Skempton -- Adam lay ybounden
Pygott -- Quid petis, O fili?
Traditional -- A child is born in Bethlehem
Tavener -- O, do not move
Alec Roth -- Song of the Shepherds
Peter Phillips -- O beatum et sacrosanctum diem
Robert Parsons -- Ave Maria

すべて楽器なしのアカペラ。古い単旋聖歌からチューダー朝のトマス・タリスの華やかな和音へ、それからぐっと締まって現代のタヴナーの複雑な仔羊へ。引き込まれる導入。

ウィリアム・ブレイクの詩をもとにした『The Lamb』。これが入っているから聴きに来たくらい好き。



ソプラノで一人だけハイチェアに腰かけている人がいて、よく見たらお腹が大きかった。聖母マリアがテーマのコンサートにふさわしいかも。とはいえお疲れさまです。『A child is born in Bethlehem』では立派にソロを歌っていた。

彼女が産休に入ったらThe 15になっちゃうのかな、と思って数えてみたら、なんと、
18人いる!
適宜補充しているのですね。
しかも女声が7人であとは男声。どんだけ女声がパワフルなの。
一人一人が強い声の持ち主で、出所がわかり、見事なハーモニーで声が練り合わされる。人間の肉声は良いです。新しいホールの音響がいいのも嬉しい。

知らない曲の中で面白かったのは、Howard Skempton (1947-) の『Adam lay ybounden』。15世紀のテキストだそうだ。

別の合唱団のですが:



キリスト教徒でも何でもないけど、しかも12月25日はジーザスの誕生日ですらないんだけど、クリスマスの音楽は心に沁みる。

このサフロン・ホール(Saffron Hall)は、最寄りの鉄道駅Audley Endからは少し離れているため、無料シャトルバスが運行されている。
コンサート開始1時間前から数往復してくれて便利。帰りも駅まで送ってくれる。
運転手さん、ちゃんとお客の顔を覚えていて、「〇〇に帰るご夫婦がまだ来てないからちょっと待って」、とか言っていた。
大部分の人はさっさと車で帰るわけですが、公共交通機関も利用できるようにしているのは良いアイデア。

来年のスケジュールにはバッハ・コレギウム・ジャパンもあり。行こうかな。


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アルヴォ・ペルト「受難曲」@キングス・カレッジ
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181115-1

先週末から暗いニュースばかり。つい映像を見てしまい、気分的によくない。
こういう時は、きれいな音楽で心を休めるのが一番。
ケンブリッジ秋の音楽祭の一環のチケットをゲットした。

Arvo Pärt: 'Passio'(1982)

Ben Johnson -- Pilate
Edward Grint -- Christ
Choir of King’s College Cambridge
Endymion -- Stephen Cleobury

エストニアの現代作曲家アルヴォ・ペルト(Arvo Pärt, 1935- )が、ヨハネによる福音書からキリスト最期の時間を抽出した合唱曲。1時間強、休憩なしで歌われた。

ご存じのように、ナザレのイエスは弟子のユダの裏切りでローマ兵に捕まり、適当な裁きを受け、十字架にかけられて死ぬ。

捕まってから死ぬまでの場面を追っているのに、静まりかえった音楽。不思議な曲だ。
弟子ペテロがイエスのことを「知りませんよ、私は関係ありません」としらばっくれたり、わけわからん群集が「十字架にかけろー!」とか叫んでいても、あくまでも柔らかく美しい。
陰のある和音。同じ旋律が繰り返されて、催眠術のようにふーっと眠くなる。それも心地よい。

イエスがバリトンで、裁判長をつとめたユダヤ総督のピラトがテノールなのも、年齢から言っても逆のような気がしたが、バリトンが良い声で納得した。

言い争っているというより、お互い内側に向かってつぶやいているような応酬だ。

キングス・カレッジの聖歌隊は全員男声。ソプラノは少年が担当。10歳くらいの子もいて可愛い。透明感がすばらしい。
女声はソロのソプラノひとりだけという構成。カウンターテノールも力強く高音を担当していた。

情景としては、北の国の緑深い森の中に湖があって、海と違うおとなしい波が寄せている。そこに時おり白い霧がさーっと湖面を渡っていって、霧を通した太陽が白く低いところに見える感じ。静か。

こういう音を、高い天井の礼拝堂の中で生で聴くのが実に貴重。ほどよいエコーが上空に昇っていく。
多少、隣りの席の人が歌詞を読もうとプログラムをガサガサしたり、前の方のおじさまが咳き込んだりしても、雑音は忘れてしまい、透明だった曲の名残りだけ記憶に定着する。
これで気持がリセット。時間を工面して行ってよかった。

それにしても。ユダヤ教からスピンオフしたのがキリスト教で、イエス・キリストも預言者のひとりとして取り込んで生まれたのがイスラム教。
世界のモメゴトのかなり多くにこの3つが関わっているんじゃん。何とかしてくれませんかね。とも思った。


ダラム大聖堂での演奏、冒頭部分。ソロの人がヨハネの第18章を歌う。



2012年スウェーデンのルンド大聖堂で。こちらは女声がけっこういますね。いよいよ十字架にかけられちゃう場面:



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