BBCドキュメンタリー『Civilisations』(文明)

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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次の仕事がつい面白くてはまっている。趣味と実益だ。たいして儲からないのが玉に瑕だけど。

BBC2で春に放送されていた『Civilisations』、ようやくキャッチアップ。BBCのサイトで来年3月まで見られる。美術史を軸に、文明という大きなテーマに取り組んだ9回シリーズ。

毎回1つのテーマに沿って、1人のプレゼンターが語っていく形式。

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左からDavid Olusoga、Mary Beard、Simon Schama。

BBCでは1969年に同じタイトルで、西欧文明を軸にした秀作ドキュメンタリー『Civilisations』があったそうで、これはその現代版として世界全体に目を向けている。プレゼンターの顔ぶれを見ても(バランスとってるな)と思わせる。

エピソードは、人間の文化の原動力や、人は人間の姿をどうとらえてきたか、宗教と芸術、イスラム文化のルネッサンスへの影響、文明同士の出会いと帝国主義、などなど、テーマに沿って自由に時間・空間を飛ぶ作り方。オープン・ユニバーシティと協力し、いずれも優秀な歴史学者たちの作った骨組みがしっかりして、毎回引き込まれる。

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Süleymaniye mosque、Istanbul

このモスクが建てられた頃に、イタリアではミケランジェロが巨大ドームを設計していた。ヨーロッパとイスラムのライバル関係も面白い。

ナイジェリア生まれ・イギリス育ちのデヴィッド・オルソガは異なる文明が出会ったときのインパクトを紹介。メキシコのアステカ文明はスペイン人の武力攻撃と、ついでに持って来た梅毒などの伝染病でほぼ全滅した。ひどい。

対照的に日本は九州の港に着いた西洋人を「がさつな奴ら」だと見て、出入りを制限し、キリスト教は否定し、科学技術面などいいとこ取りだけした。助かった。島国で地理的に有利だったのもあるけど、日本というのは面白い国だ。

芸術家は興味深いものをすぐ取り入れる。

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円山応挙、 氷図屏風 c.1780

西洋の遠近法を使いつつ、現代美術のようなすごい作品です。

これ、大英博物館にあるのね。今度拝みに行って来なくては。

ちなみに一番上の写真、16世紀アフリカの美しい象牙マスクも、頭にポルトガル人をくっつけているそうで。交流が始まっていたということですね。

最終回はサイモン・シャーマ(彼はユダヤ系)が、ゲットーに送られて子供たちに絵を教えていた女性画家が残した、ユダヤ人の子供の絵を紹介。描いた子の大多数は収容所送りになってしまった。たまにこうして「壊してしまう」、しかもその壊し方が年々凄くなってきた人類の悪癖を、アートは救えるのかと問いかけた。

火薬でアートを作っている中国人の蔡国强(Cai Guo-Qiang)氏の作品がすごい。火薬を発明したのは中国、最初は平和な目的で使っていたのだ。

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キャンバスの上に型紙?と色の違う火薬をうまく置き、爆発させて作るアート。何ともいえない不思議な効果がある。しかもこの後再び爆発させ、かなーり黒くなる。さらにその上に重ねて置いていたキャンバスに転写された像もできて、すべてが終わればこんなものか、みたいな無常感を覚える。

なにしろ文明黎明期の洞窟の牛の絵から、イスラムやインドの寺院、ゴヤからエル・グレコ、レンブラント、日本の浮世絵からピカソまで幅広くカバーしているのですごい情報量だ。まだしばらくは公開されているので、たまに見返そう。

子供の絵の話から始まる冒頭部:

 

 

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