2015.08.02 Sunday 06:05
JUGEMテーマ:読書
左からイリーナ、オリガ、マーシャ。(2005年 マールイ劇場版)
チェーホフの四大戯曲は、「かもめ」、「ワーニャ伯父さん」、「三人姉妹」、「桜の園」。
このうち「三人姉妹」(Три сестры, 1901年初演)は見た回数が一番少ない。読んだのもだいぶ昔で、あまり覚えていない。
思いついて読み返してみた。
偉い軍人の父に立派な教育を授けられて育ったオリガとマーシャ、イリーナの姉妹。オリガの下にひとりだけ男子のアンドレイがいる。母はすでに死去。
モスクワから地方へ赴任して数年後、父も亡くなった。
オリガ28歳、教師の仕事をして独身。たぶんこれからも。
マーシャ21歳。18歳のときにインテリだと思って結婚した中学教師の夫が凡庸なおっさんだったと分かり、失望している。モスクワから赴任してきたヴェルシーニン中佐と不倫する。
イリーナは20歳になったばかり、働いて人生を充実させたいと願っていたが、働き始めると勤め人の辛さが身に染みてくる。金のために愛のない結婚をしようと決意。
この3人の希望の星であり、近々大学教授になることを嘱望されていた兄(弟)アンドレイも、大学に職を得られず、町の役所で秘書となる。結婚したナターリアはブルジョワで、彼の姉妹とはそりが合わない。だんだん妻の尻にしかれるアンドレイ。
なんというか、人生の幻滅の見本のようである。こんなはずではない、と思いながらも日々流され、(いつかモスクワにもどりたい)というのを希望にして生きている姉妹。
田舎町には、教養ある姉妹の友達になれる人もいないのだ。でも彼女たちには、ここを出て行く力がない。
唯一生き生きとしているのは、わが子を育てるためになりふり構わないナターリアだが、彼女は俗物として描かれている。
彼女はオリガたちのように「意義ある人生、人としての成長」を夢みたりしない。物質的に豊かで子供が安全に育ち、社会的に認められれば勝ち組として安泰だと思う。三姉妹とはそりが合わないわけだ。
でもチェーホフの視点では、どちらの生き方もさほど違わないし、100年たっても(今ですね)オリガたちの生き方、ナターリアの生き方両方あるだろう、と思っているようだ。
なにごとにも終わりがある。劇の最後では隊が移動することになりマーシャの恋する中佐は去る。イリーナが結婚しようとした男爵はまさかの決闘死。一家の生活は新たな(たぶん退屈な)ステージへと変化していく。
良いところは、軍関係者が多いので、昔の黒板みたいな濃い緑の制服が素敵(すみませんこんな感想)。
20世紀初頭だから仕方ないが、現状を変えるにはあまりに障害が多くて(たとえば女性であること)、なすすべがない主人公たちが不甲斐ない。
ただ、人間なんてたいてい不甲斐ないもので、程度の差はあっても現代でもみんな似たようなことを悩んでいる。
だから今でも、世界で上演されている。
1970年BBCのドラマ版なども良かった。アンソニー・ホプキンスが性格の弱いアンドレイを好演していた。
モスクワ・タバコフ劇場のこれは、前衛派か?最後の方でみんな「モスクワへ〜!」とわめいてる(笑)。
2011年にはイギリスで、三人姉妹をブロンテ姉妹になぞらえた作品が上演されたそうだ。これは観たかった。
ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫)
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