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アクラム・カーンの「ジゼル」、ENB

JUGEMテーマ:エンターテイメント

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金曜は仕事休んで朝からロンドンへ。午前中はイングリッシュ・ナショナル・バレエの朝のクラスを描かせてもらうLive Drawingのワークショップ、その夜に、朝練習していた人たちの出るバレエを観るという贅沢をした。まずバレエ、アクラム・カーンの「ジゼル」から。

<Creative Team>
Direction & Choreography -- Akram Khan
Music, after the original score by Adolphe Adam -- Vincenzo Lamagna
<Cast>

Alina Cojocaru -- Giselle
Isaac Hernández -- Albrecht

Oscar Chacon -- Hilarion
Stina Quagebeur -- Myrtha

ロマンチックで可憐だがあまり現実味のない「ジゼル」をどうするのかと思いましたが、いやすごい。さすがアクラム・カーン。

舞台はインドの服飾工場。しかし今は閉鎖されてしまい、働いていたカースト外の人たち=アウトカーストは失業し困窮している、というさらに暗い設定。ブルジョワ階級のアルブレヒトはジゼルに逢うために粗末な服を着てまぎれこむが、ジゼルのことが好きなヒラリオンに疑われ、さらにアルブレヒトの婚約者である工場長のお嬢様などが突然訪ねてきて彼の身分がばれる。基本ストーリーには沿っている。

抽象化された最低限の舞台に、時に容赦なく人をシルエットにするライティング、地響きのしそうな、カタックのような重厚な音楽。簡素な服(ブルジョワ以外は)の人間は肉体がより生々しく感じられる。

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ジゼルの心臓が破けそうになるとき、アウトカースト仲間は人間のかたまりとなって心臓を表しているかのように脈打つ。

ジゼルの死には疑惑があって、どうも工場長が邪魔な女の除去を部下に命じたようだ。現場は誰にも見えず、気づいたら彼女は床に倒れ、死んでいた。恐ろしい。

2幕はオリジナルにはない、アルブレヒトが工場長たちに叱責されるシーンから始まった。そうだよ、そこ見たいよね。婚約中に浮気した彼がどういう目に遭ったか。でもこのアルブレヒトは浮気というより元々フィアンセが嫌で、ジゼルへの気持ちは真実のようだったので気の毒ではある。

カーンのウィリはオリジナルより恨みが深い(一番上の写真)。しいたげられた者の怨念を感じた。ウィリの女王ミルタが、死にたてのジゼルの遺体をずるずる引きずって登場し、フランケンシュタインが怪物に生命を与えたごとく、死者をウィリとして蘇らせる。不気味だが現実的、というのは変だが、妙にリアル。ジゼルはゾンビよりは小ぎれい、くらいの様子で動き出し、ふわっふわの白いウィリとは違う。わたしはなぜ、こんなに若くて死ななければいけなかったの、という慟哭を体で表す。

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だからこそ彼女がアルブレヒトを許すことに重みが出る。

ジゼルに許されても彼女は生き返らないし、アルブレヒトには現実の罰も待っているという結末。ずっしり来ます。

ストーリーをより納得できるように直し、へなちょこな音楽(アドルフ・アダンごめん)が大改善され、踊りはモダンで途切れることなく驚かせてくれる。文句ない傑作。

この作品、観たいと思ったときにはとっくに全回売り切れていて、キャンセル待ちをしつこく狙ってやっとチケットが取れたもの。非常に評価が高く、人気も出て、もう来年の予約すらどんどん埋まりつつある。とりあえず来年の9月の予約を取ってしまった。ヒラリオンがセザール・コラレスくんの回を見たいが、彼に当たるかはまだ不明。

レビュー入り:

 

 

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| ろき | 演劇・ダンス他 | comments(6) | - |
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Comments:
はじめまして。この記事のジゼルには全く関係ない話になってしまいます。
そしてバレエに関しては全くのド素人、せいぜい「白鳥の湖」、
「くるみ割り人形」くらいしか、わかってない人間です。
昨日というか、21日の真夜中にBSプレミアムで偶然
「フランケンシュタイン」を見ました。しかも途中から
弟の誕生日パーティのシーンからだったようです。ストーリーを
知りたくて検索し、その中でこちらのブログを見つけました。

そんな途中で、話もバレエ表現のみで、言葉もないのに、
すっかり引き込まれ、2時過ぎまで見てしまいました。
怪物を作ってしまったヴィクターの恐怖心、怪物と出会って
しまい恐怖におののく人たちの表現、殺人の濡れ衣を着せられた
メイドが絞首刑になったシーンなどなど、引き込まれました。
最後ヴィクターが自殺し、それを見た怪物が、必死に本をひも解くシーン
勝手な解釈ですが、死んだ人間を生き返らせる方法を探してたのかな?
悲しかったです。まずバレエで「フランケンシュタイン」って
どんな?という興味からだったのですが、途中からでも
話がわかるバレエの表現など、素晴らしかったです。私が見たのは
たぶんマックレーという方の怪物だったのですが、醜いというよりは
美しく哀しい怪物でした。

「ジゼル」バレエでは定番だそうですが、こちらも全く知りませんでした。
美しい衣装や少女マンガでのバレエ、くらいしか自分の中では
なかったのですが、奥が深いのですね、バレエって。
いきなり、長文で失礼しました。
* rimu * 2016/11/21 2:13 PM
rimuさん、初めまして、コメントありがとうございます。
「フランケンシュタイン」放送されたのですね。これも奥深くてすばらしいバレエですよね。
登場人物それぞれの悩みと悲しみがダイレクトに伝わってきます。
わたしもバレエそんなに詳しくないのですが、もちろん美しくて夢のような世界もいいけれど、こういう人間の深部をあばくような作品には感動します。
機会があったらこの「ジゼル」もお勧めです。
* Loki * 2016/11/21 10:43 PM
ロマンティックバレエのジゼルがこんなにモダンに変わるのですね。
薄汚れた感じの衣装が生身の人間っぽいですね。
見てみたいわ。

フランケンシュタインは日曜から月曜の深夜に放映されたので
録画しましたがまだ見ていません。
お休みにゆっくり見たいと思います。
* はむはは * 2016/11/22 6:17 AM
はむははさん、がらっと変わってました。
オリジナルがこそっと隠していた怖いものや醜いものをきちんと暴いています。でも美しい、すごい。

フランケンシュタイン録画したのね、ゆっくり見て、ぜひ感想を聞かせてください。
* Loki * 2016/11/22 6:43 PM
こんにちは。
今度は、ロイヤル・バレエじゃなくって、ナショナル・バレエですね。

英国のバレエ、やっぱりすごいですね。
ちゃんと人間の肉体と感情が表現されている作品が多くって。

エーテル的な世界のお話じゃなく、血も肉もある人間ならではの『体験』に肉薄してる、というか。
どの登場人物も、ただの狂言回しではなく、一人一人、自分の意志と感情を持つ人間として、そして、それぞれの立場で、現実的な葛藤を抱えている存在として、丁寧にキャラ作りがなされている、というか。

だけど、それだけ、すごい表現をするには、超絶的なテクニックを持つダンサーの層が厚くないとダメなわけで、それがあるからこそ、現実にこのようなものを作品化できるんだ、ということも、言えるでしょうね。

ということは、そういう優れた踊り手の人たちが、舞台での仕事に専念することで、ちゃんと食べていけるシステムがある、ってことですよね。

お金を出して気軽に舞台を見に行く人が多い、ってことも、それを支えているんでしょうね。
素晴らしい舞台を見ることのスリルと喜びをちゃんと知っている人が、イギリスには、多い、ってことなんだろうなあ。

ちなみに、この振り付け師の方、インド系の方でしょうか。
YouTubeで見てみたら、興味深い作品が多いんですね。
* みか * 2016/11/23 3:12 AM
みかさん、カーンはバングラデシュ系イギリス人だそうです。育った家の文化と国の文化が異なっていて、それが融合して創作パワーになっているのでしょうか。
バレリーナもずっとコールドだと生活が厳しい現実もあるようですが、バレエ・ファンは多いし、踊り手の裾野も広い。これからも面白い新作が期待できそうです。

* Loki * 2016/11/23 7:31 AM
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