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カーリン・アルヴテーゲン「Missing」(Saknad)

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「トランプ大統領を国賓としてイギリスに招くのを阻止しよう」署名運動は130万人を突破、参加してメールが友達から回ってきたけど、わたしの署名は有効なのかしらん。女王様の臣民じゃないけど。

Missing
Missing

図書館から電子書籍で借り、ロンドン往復の電車の中で読んだ。スウェーデンのミステリ作家カーリン・アルヴテーゲン(Karin Alvtegen、1965〜)、2000年の作品。原題『Saknad』の英訳「Missing」。ちなみに邦題は「喪失」で、ロシア語題は「Утрата」。自分が失踪する意味と、何かを失うと両方の意味があるんですね。2000年度ベスト北欧推理小説賞の受賞作。

ヒロインは32歳のホームレス女性シビラ。裕福な家に生まれながら、もう15年くらい家のない生活をしている。たまにはいいベッドで寝たい、と高級ホテルのレストランで会ったビジネスマンにうまいこと食事をおごらせ、部屋まで取ってもらい、でも彼の部屋に行ったりはせずに風呂に入ってぐっすり寝た。ラッキー。

ところがそれが不幸の始まり。なんとそのビジネスマンが翌朝死体で発見されたのだ。シビラは容疑者になってしまう。しかもすぐに第二の殺人が起こり、同じように内臓をえぐられている。事件は連続猟奇殺人の様相を呈してきた。

「何か食べること」と「寝場所の確保」だけ考えて日々生きのびてきたが、それに「逮捕されないようにすること」も加わる。ホームレス仲間は残念ながら一番信用できない。どうする?

孤立無援で追い詰められていく現在の彼女と、そもそもなぜホームレスになってしまったかの過去が交互に書かれる。シビラは地方都市の社長の一人娘、クラスメートの親はほとんどが彼女のお父さんに雇われている。なのに友達がいないばかりか、からかいの対象になっている。支配的なお母さんとうまくいかず、自尊心がまるでないのが原因かもしれない。上流階級出身のお母さんは理想の娘に育たないシビラに、無意識かもしれないが、毎日毎日、罪悪感を植えつけていた。

スウェーデンでホームレスっていうのがまず過酷だ。寒い。そうなった事情がネックとなって、身分を明かせず逃げるしかないが、本名は早々に警察に見つかり、全国に指名手配されてしまう。

「ミステリじゃないじゃん」というレビューもあるとおり、真相はヒロインより2歩くらい先に読者は気づく。被害者の共通点、怪しい人物も、少し手前でわかる。

「あー、そいつが危ないのに」と思ったりしつつ読むというスリラー。小説の利点で、ヒロインの心理がくわしく描かれるので同情するし、いっしょに腹もすく(笑)。

助けは思いがけない方向から来て、最後は明るい結末でよかった。冤罪が晴れずに捕まって有罪判決、なんて話になる前に作者がなんとかするだろうとは思うけれど、やはりラストまでハラハラする。

北欧の犯罪ものは初めて読んだ。気温の低さが肌に合う感じで、彼女の別の作品も読みたくなった。そうそう、アルヴテーゲンの大叔母さんは「長くつ下のピッピ」を書いたアストリッド・リンドグレーンだそうですね。かなり分野が違いますが。

邦訳:

喪失
喪失

 

 

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| ろき | word, word, word(読書) | comments(6) | - |
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Comments:
これ、日本語で読みました。
スウェーデンなどの北欧の国って社会保障がしっかりしているから暮らしやすいと思っていました。
色々と北欧のミステリを読むうちに、なんかそれほど豊かではないのかなと思い始めています。
何処の国でもドロップアウトすると大変なのね。
* coco * 2017/01/31 7:01 PM
おお、Cocoさんなら読んでいるかもと思いました。
このお母さん怖くないですか?わたしでもつぶされていたなあ。
救いのシステムはしっかりあるのでしょうが、訳あってID番号を知られたくないとか、隙間にはまってしまうとダメですよね。
北欧ミステリ、もっと読んでみたいです。暗いのかな・・・。
* Loki * 2017/02/01 12:22 AM
札幌のホームレスは冬、
地下通路などが閉鎖される夜は外をずっと歩き回り、
地下通路などがあいている昼間、寝るそうですよ。
夜、外で寝ると死んでしまいますからね。
それでも、突然殺される恐怖がある東京よりはましだとか。
自分が犯人でもないことで疑われてしまう恐怖ともどかしさはつらいですね。
えん罪有罪でなくてよかったわ。
* はむはは * 2017/02/01 11:29 AM
はむははさん、札幌のホームレスも大変ですね。寝たら死にますからね。
かといって地下通路を開放して、たまり場になってしまうと不都合だし。シェルターを作っても入りたくない人もいるだろうし。
底辺に落ちてしまった人間を見る他人の目は冷たいですね。冤罪晴れてよかった。
* Loki * 2017/02/01 11:37 PM
福祉国家でも、毒親から子供を守るのは難しいでしょうね。
このヒロインは究極の孤独かも。

他のホームレスとも親しくなれないし、福祉関係の人にも助けてもらえない。身元を知ったら、かなり親切な人でも「家に戻って親と話し合えば?」などと残酷なことを言ってしまいそう。「ここは本当に困っている人のための施設なの」とかね。

殺人よりよっぽど恐ろしい母娘関係に好奇心をそそられます。読もうかな。厚着して、暖かい飲み物でも用意しないと雰囲気にのまれて風邪ひきそうですね。


* B * 2017/02/02 7:42 AM
Bさん、特権階級の家庭内の精神的いじめは分かりにくいですよね。お母さん外面いいし。お父さんは仕事ばかりで家ではぼーっとしてるし。正気を保っていただけで偉いヒロインです。

ぜひ読んでみてください。わたしは宅配ピザとか食べたくなっちゃったよ(笑)。
* Loki * 2017/02/02 8:56 PM
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