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K.アルヴテーゲン「恥辱」

JUGEMテーマ:読書

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スノードロップが咲いた。春は近い。

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カーリン・アルヴテーゲンの2005年作『Skam』のロシア語訳を読んでみた。ロシア語題は「Стыд」、かなり強い”恥”。

彼女の文体は平明な言葉で複雑な心理をわかりやすく書いているので、ロシア語でもわかるかと思って。大筋は追えたかな〜程度ですが。

ストックホルムに住む2人の女性:

38歳のモニカは医師として成功しているが、十代のころに兄を事故で亡くしている。母子家庭のスターだった兄が死んで自分だけ生き延びたのが後ろめたく、責任があるかのように感じている。日本語訳の「恥辱」よりも、罪悪感に近い。

もう一人は50代のマイブリット、体が不自由でヘルパーに見の周りのことを世話してもらっている。(超肥満のため、というところを読み取りそこねていた。修業が足りない)

美少女であった彼女、宗教的に凝り固まった両親から、お前は教会に役に立つようにと産んだのだ、自分で選んだ相手と結婚なんかもってのほか、と「原罪教育」を叩きこまれて育った。恋をして家出同然に結婚しても、親の呪いから逃げられず、夫とうまくいかなくなり・・・という事情がある。

お互い面識もないこの2人が、ある事故をきっかけに接点を持ち・・・という話。

「それで、殺人はいつ起こるの?」と読んでいたが、最後まで起こらず。あくまで心理的なスリラー。それでも十分ハラハラする展開。

”この事故”が記憶にある”あの事故”のパターンとぴったり一致した、とモニカが思いこんだことから、いつもは理性的な彼女が暴走しはじめる。

その行動を偶然目撃するのがマイブリット。

モニカの壊れ方とその大胆な行動には、こっちまで心拍数が上がります。

子供のころに理不尽に植えつけられた罪の意識の破壊力がおそろしい。植えつけた親も、自分でもどうしようもなかったり、あるいはむしろ子供に良かれと思っていたりするので、単純な糾弾はできないのだが。

最後に多少の救いと平和が垣間見られるので、読後感は悪くない。救いをもたらすのが、現実に本当に「罪」を犯してそれを償っている人であるというのが面白い。

アルヴテーゲンの作はマフィアが出てきてカーチェイス、とかはなく、身近で起こっても不思議はない事件をテーマにしていて、飛躍がないため話がたどりやすい。邪道な読み方で作者には悪いけど、もう1作くらいロシア語訳でチェックしようかと思う。

英訳:

Shame
Shame

ただし後に「Sacrifice」(犠牲)という題に変えられている。

和訳:

恥辱 (小学館文庫)

 

 

 

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| ろき | word, word, word(読書) | comments(4) | - |
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Comments:
スノードロップ可憐ですね。
ロシアの継母が「まつゆきそうを摘んでこい」と継娘を真冬に家から追い出した童話を思い出した。

アルヴテーゲンの「影」と「喪失」読みました!
どちらも一気読み。
読者を釣り込むのがうまいですよね。
「喪失」は、確かに読んでいるだけで飢えた〜。

また、毒親に壊された人が登場するんですね…よし、これも読もう。
* B * 2017/02/18 8:20 AM
Bさん、スノードロップ可愛いですよね。
一番早く咲くとはいえ、ロシアの冬では無茶です。
この話のお陰で、「月の名前は全員男性名詞」と覚えました(笑)。

読むの早いですね。この作家、淡々と書いているのに先を読みたくなるのがすごいと思う。
わたしも今「影」を15%ほど読んだところです。
* Loki * 2017/02/19 5:52 AM
満開のスノードロップ、可憐ですね。いよいよ春の足音が聞こえ始めましたね。
自然のリズムはすごいですね。ちょっとした違いを感知して、きちんと春だと分かって、毎年同じ時期に花を咲かせる。

* Kiki * 2017/02/19 4:20 PM
Kikiさん、この花を見ると、今度の冬も生き延びたなーと感じます。春はすぐそこ。
植物の時計というかカレンダーはすごいですね。
* Loki * 2017/02/20 6:39 AM
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