<< 水曜デッサン会(先々週) | main | ロイヤル・アカデミー、ロシア革命期のアート展 >>
『Dancer』

JUGEMテーマ:映画

030317-1

バレエ・ダンサーのセルゲイ・ポルーニン(1989 - )を追ったドキュメンタリー映画。ロンドンとの中継で、映画の後に本人のパフォーマンスとインタビューもついた企画。

Director: Steven Cantor
Stars: Sergei Polunin, Jade Hale-Christofi

ウクライナ共和国(ぎりぎりソ連)生まれのポルーニンは13歳でロイヤル・バレエ学校に入学、2009年には史上最年少の19歳でプリンシパルに出世して活躍、なのに2012年1月、突然退団して騒ぎになる。不良ダンサーと呼ばれたりした。映画はその頃から撮影が始まり、5年かけて完成したもの。

彼の退団は驚いたが、わたしは「ん〜、反抗期?」なんて軽く考えていた。本人の悩みは相当深かったことを知った。

030317-2

ウクライナの田舎町で生まれたセルゲイ、赤ちゃんの時に彼の体をチェックしていた看護師さんが、股関節がどこまでも開くのでビビったそうだ。最初から並外れて柔軟だった。小さいころから体操教室、その後ダンスのクラスへ。

(この地方都市に息子の未来はない)と考えていたお母さん、バレエの道で行けそうなセルゲイと共に首都キエフに移ってバレエ学校に(ザハロワも通ったところ)。そこでもやはり、どのクラスでも一番できるセルゲイを見て、外国に出そう、と決意したそう。孟母三遷。

彼の才能は最高の場所を要求した。けれど家の経済力はそれに見合っていなくて、お父さんはポルトガルに、お祖母さんまでギリシアに出稼ぎに行ってセルゲイの留学を支える。

英語も話せない状態で学校に入ったセルゲイ、家の期待にも応えたく、人一倍練習した。が、離れて暮らしているうちに家族は壊れてしまう。父と母が離婚。まるで自分のせいみたいに。あんまりだ。

子供のころからの映像も入れながら、ただ楽しいだけだった踊りが重く、若い体にのしかかってきた過程が描かれ、急にキレたようにロイヤルを辞めたのも、ついに限界だったように思える。

その後はロシアで、テレビの若手ダンサーのコンテスト番組(大バレエ)に出るところから始めたとは知らなかった。スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ劇場で良いメンターと会い、コンテンポラリーも踊り、新たなキャリアを築きつつある。

特異な才能を持った人の苦悩というものが、ちょっとは理解できるような。随所に挿入される踊りの場面の彼は、どの段階のどの役でもすごい。

YouTubeで1900万回近く再生されている『Take Me to Church』も映画の中で見られる。

ロンドンの会場では映画の後にポルーニンが出て来てこれを踊り、その後Q&Aに答えた。インタビュアーや会場の聴衆からだけでなく、ツイッターからの質問にも答える。

これからも踊ってくれますか、というファンの問いに、最近やっとまた踊りが楽しくなってきたので、これからも踊るだろうとのこと。

母世代の女性からは、子育てについての質問も。それには、「バランスが大事だと思う。才能があるなら伸ばしてあげるといいが、本当に子供が好きでやっているか確認して」と答える。でも母に厳しくバレエをさせられなかったら、

「犯罪者になってたかな〜」とぼそっと言っていた(笑)。

自分が苦労したことから、若いダンサーの精神的なサポートも含めたマネジメント・システムを作っているところだと言う。過去から学んで何かをつかんでいるところが立派だ。

「映画も好きなようですが、バレエにしてみたい映画ってありますか?」と聞かれ、

「えーそれは難しい質問。わからないな」と言ってから、「・・・ランボー?」とつぶやいて笑わせてくれた。それだけはやめて。

まだ27歳なのに、かなり悟りをひらいたように見える彼、さらに大物になってバレエでもそれ以外でも活躍することだろう。

ドキュメンタリーは日本でも夏に公開のようです。

 

 

.

| ろき | 映画 | comments(4) | - |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | - | - | - |
Comments:
ああ〜、『Take me to church』のビデオの中で踊ってたダンサーですね。なるほど。
「孟母三遷」という言葉は本日二度目です。こんな言葉を一日に二回も目にするとは(笑)。子供の才能を伸ばそうとして周りの大人は色々と行動を起こしたりするけど、それが本当に本人のためになっているのか、それとも、大人の期待を子供に押し付けているのか分かりません。できる限りのことはやってあげたいとは思いますが、結局、経済格差が大きく影響しますね。
* やす * 2017/03/06 9:24 PM
やすさん、え、1日2回も「孟母三遷」を見た?それは珍しい(笑)。
トップになる人は才能も努力も必要ですが、周囲も大変ですね。彼の家庭が壊れたお陰で?すばらしい踊りが見られるのか、と複雑な気持ちです。
* Loki * 2017/03/07 5:09 AM
最近は「猛母参戦」が多いようですが。

家族一緒にイギリス移住できたら良かったのにね。
或いは、モスクワのバレエ学校にセルゲイ君を連れて行って「こんな才能のある子を英国に連れてってしまいますが、どうします?」と学費免除させるとかしていれば。

私が親だったら彼の可能性に気づかず「ピョンピョン跳ねてないで座って本を読みなさい」と叱り、じゃが芋掘りや薪割りを強要して不良にしてしまったでしょう。こちらのご両親は精一杯やって、立派だと思う。

バレエ「ランボー」賛成。ダン・ヒルの歌うテーマ曲が好きです。
* B * 2017/03/07 8:38 AM
Bさん、”参戦”とは勇ましいですね。
芸事の世界には強いお母さんがいる例が多いかも。

お母さんはビザが出なかったようです。ウクライナだからなー。ロシアは嫌いだったんですかね。

代償は大きかったですね。すごすぎる子供が生まれてしまった、それも人生か。
え〜ランボー?やだー。セルゲイが踊ると美しくなる??
* Loki * 2017/03/07 10:02 PM
Comments: