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北欧ミステリ2冊追加

JUGEMテーマ:読書

北欧ミステリをロシア語訳で読む、一石二鳥?で邪道なロシア語勉強法を続けています。

アルヴテーゲンは例によって「人体デッサン」ポーズの表紙、しょうがないな。

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2003年の作品『Svek』、裏切り、ロシア語でも「Предательство」。

三十代のエーヴァとヘンリックには幼い息子がいる。在宅勤務の夫が保育園の送り迎えも含め、かなり家のことをしてくれるので、バリバリ働いているエーヴァだが、最近夫が冷淡だと感じていた。ついにある日、彼の浮気を発見してしまう。

しかも相手は許せない立場の身近な女。悩んだ挙句、エーヴァは大胆なイヤガラセ行動に出る。ばれたら問題だけど、大丈夫かな。

彼女に協力者が現れる。悩んでいたときにバーで出会った青年ヨーナスだ。意識不明の恋人が亡くなるまで毎日見舞っていたこともある献身的な、しかしどうも思いこみの激しい彼、エーヴァに同情し、頼まれもしないのに勝手に独自の方向に走っていく。善意のストーカーみたいなものでしょうか。

エーヴァの行為による波紋とヨーナスの暴走がからまって、事態はどんどん悪い方向へ。

これもまたそれぞれの登場人物の心理が的確に描写されていて、同じ場面を両方の立場から書いていたりもし、よく理解できるとともにおそろしい。結末はちょっと納得いかないが、映画などにすると本当にぞーっとする衝撃のラストとなることだろう。

次はアイスランド作家にいってみた。

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アーナルデュル・インドリダソン(1961-)、北欧ミステリの「ガラスの鍵賞」を受賞したという『Grafarþögn』(2001)。和訳の題は「緑衣の女」、ロシア語題だと「Каменный мешок」=石のバッグ、牢獄のことだそう。英題は「Silence Of The Grave」。

レイキャヴィク郊外で人骨が発見され、考古学者と警察が呼ばれる。骨はかなり古い。現場の住宅造成地には、第二次大戦時にはイギリスやアメリカ軍の基地もあった。警察チームを率いるのはエーレンデュル刑事。急いで仕事をしようという意識がまるでない学者に手を焼いたりしながら、地道に捜査していく。

それと並行して、60年前のある家での暴力が描かれる。外では気さくで働き者の父親が、家では妻に毎日肉体的・精神的暴力をふるっている。幼い子供が3人、なすすべもなくそれを見ている。発見された骨は、当然この家族の誰かなんだろう。

一方仕事の外では、エーレンデュル刑事の娘、エヴァ(ヤク中で妊娠中)が意識不明の重体になっていた。娘の母とは離婚して疎遠。エーレンデュルは暇さえあれば病院に行って反応のない娘に語りかけ、仕事では現場近くに住んでいた人々に聞きとり調査、事件の真相に迫っていく。

謎解きミステリとしてはそれほど凝っていない。骨の正体は誰でも推理できると思うし、最後は事情を知っている人が現れてあっさり種明かしをする。

ただ「ドメスティックバイオレンス」というものを何とかしようという意識とか、シェルターなどもなかった時代の、人の魂を殺す暴力が克明に書かれている。読んでいると黙って殴られている方にも腹が立ってくるが、あまりいじめられていると精神も壊れるから、反撃どころか、正常な判断ができなくなるんだよね。一番可哀そうなのは子供だ。

暴力をふるう本人も、何かの理由で辛くて暴れている。近い将来にはうまく治療できるようになるんだろうか。「昔はこんなのも治せなくて悲惨だったんだね」と思う時代になってほしい。そうそう、ついでにアルヴテーゲンのヨーナスのストーカー気質も治してやって。

話は重いが笑える場面もあり、プライベートで難問をかかえたエーレンデュルにも興味が持てる。次を読むとしたら、少し丁寧に、英訳にしようか。

 

和訳:

 

裏切り (小学館文庫)
裏切り (小学館文庫)

 

緑衣の女 (創元推理文庫)
緑衣の女 (創元推理文庫)

 

 

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| ろき | word, word, word(読書) | comments(4) | - |
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Comments:
アルヴテーゲンは『影』、『罪』、『裏切り』と読み、インドリダソンは『緑衣の女』、『声』、『湿地』と読みました。(もちろん日本語でよ)

土地の描かれ方が北海道の釧路出身の桜木紫乃の描く荒涼とした北海道と北欧の雰囲気が似ているなと思いました。

『声』も『湿地』もおもしろいので、ロシア語で読んでみてね。
* coco * 2017/03/12 3:34 PM
Cocoさん、すごいですね、ほとんど制覇?
風景や気候が北海道に似ていますね。吹雪で、すぐ横にいる人さえ見えなくなっちゃうとか想像できるし。
アイスランドに行ってみたい気がします(温泉〜♪)。
次は「湿地」いってみようかな。
* Loki * 2017/03/13 12:01 AM
ロシア版の表紙、著者は納得しているのかしら?
今度のは影が妖怪人間ベロ。

夫婦の愛憎劇は怖いですね。もともと愛情があった分、怒りや恨みがとんでもない形で爆発したりして。
簡単には別れられないでしょうが、とっとと決断した方が傷が浅いかも。

「緑衣の女」も面白そう。
アイスランドですか。ますます知らない、わからない世界です。
* B * 2017/03/14 10:00 PM
Bさん、毎回本物の人間じゃない感がすごい表紙ですよね。著者も面食らっているかも。
夫婦でも「愛情冷め方曲線」(なんじゃそれ)は一致しませんから、急に裏切られた方は大変なことになります。
日本だと、黙って証拠つかんで慰謝料請求すればいいよね。

「緑衣の女」はDVシーンがすごくてきついですが、アイスランドらしさが伝わります。小国なのにサッカー強いんだよ・笑。
* Loki * 2017/03/15 12:49 AM
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