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チェーホフ「黒衣の僧」& ソ連映画

JUGEMテーマ:読書

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今度の日曜日にアントン・チェーホフ(1860 - 1904)原作の芝居の中継を見に行くため、予習として読む(例の、プーシキン・ハウスで。今度は大丈夫か)。

1894年の中編『Черный монах』(黒衣の修道僧)は異色作。

哲学者で文学修士のコヴリン、勉強のしすぎで疲れてしまった。療養も兼ねて、田舎のエゴールの果樹園で過ごすことにする。エゴールは親代わりにコヴリンを育ててくれた人。

エゴールの娘で幼なじみのターニャがすっかり美しい女性に成長しているのに魅せられるコヴリンだが、一方で伝説の「黒衣の僧」を目にするようになる。どうやら自分しか見えていないようだ。だいいちその伝説をいつどこで聞いたのかもさっぱりわからない。しかし思いきって話してみると、穏やかな、立派な僧だ。彼と話をするうちに、コヴリンは自分が特別な使命をもった天才であるという確信を得る。

もちろんそれは彼の妄想なのだろう。結婚して妻になったターニャは椅子に向かってしゃべっている夫を発見、「あなたは病気よ」と心配してさっさと病院に送る。

”治って”僧を見なくなったコヴリンは自分が凡庸になったように感じ、不幸になり・・・。という、全体的に不気味な雰囲気をただよわせる作品だ。和訳が「怪奇小説傑作集 ドイツ・ロシア編」に入っちゃっている。

千年前にも現れたという、コヴリンに姿を見せた僧は何なのか。幻覚が見えていたときは絶好調だった彼の仕事は、人類にとって価値があるのでは。などいろいろ考えさせられる。時間ができたら辞書を引きながら精読したい1編だ。

1988年にモスフィルムが映画化している。

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Режиссёр -- Иван Дыховичный
Станислав Любшин — Андрей Васильевич Коврин
Татьяна Друбич — Таня Песоцкая
Пётр Фоменко — Егор Семёнович Песоцкий

「そして誰もいなくなった」にも出ていたタチアーナ・ドゥルビッチがターニャ。少しものうげな繊細さを見せる。

詩的な演出で、風にゆれるカーテンや、高い森などの背景がなにごとか語るようだ。タルコフスキーに影響されている?

肝心の黒衣の僧は一度も姿を現さず、コヴリンがこちらに向かって、まるで視聴者が僧かのように話すのが面白い。

暗めの、圧迫感のある雰囲気がよく出ていた。もう少し、理屈っぽい部分をくわしく見せてほしかったかな。理解できないかもだけど。

映像で主人公の精神状態を表現するシーン。

この作は戯曲ではないので、セリフなども脚本家の自由。日曜日に見るМТЮЗ(モスクワ、若い世代のための劇場)がどう料理したのか、楽しみだ。

和訳。読んでないけどこの本は訳が良いはず。

怪奇小説傑作集5<ドイツ・ロシア編>【新版】 (創元推理文庫)
怪奇小説傑作集5<ドイツ・ロシア編>【新版】 (創元推理文庫)

 

 

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| ろき | word, word, word(読書) | comments(4) | - |
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Comments:
哲学と文学を勉強しすぎたら、幻覚くらい見ても不思議じゃないですね。学問は危険だ。
自分を天才だと感じたら、まず病気と思って間違いない。薬で治ったことを感謝しなくちゃいけません。
…それより、この奥さん、大丈夫?

難解な小説の映像化、更にややこしくなっているようで、ちょっと興味がある。
まずは小説に挑戦しようかな。
* B * 2017/03/23 9:12 PM
Bさん、わたしの友達で勉強好きだった人、考え事に集中しすぎて呼吸するのを忘れ、気絶したことがあるそうです。危険ですね。

「病気」が治ったら不幸に感じた、というのが気の毒ですが。
奥さんも、健康的で快活な人よりも、青白くメランコリックな女が好き、という基準で選んだみたいです。
小説読んでみてください。短編集いろいろ出ているけど、できれば創元推理文庫の訳でどうぞ。
* Loki * 2017/03/24 12:16 AM
これ、読んだことあると思うのですが
何しろ昔すぎて覚えていません。
その辺を探せば出てきそうなので
また読んでみます。
* はむはは * 2017/03/26 10:56 PM
はむははさん、お返事遅くなってごめんなさい。ロンドンに行って帰って寝てました。
読んだことあるのですね。ちょっと怖い、よくよく考えるとさらに怖いような作品ですね。
* Loki * 2017/03/27 7:02 PM
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