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ジョン・マグレガー『Reservoir 13』

JUGEMテーマ:読書

Reservoir 13
Reservoir 13

4月に出たJon McGregorの新作『Reservoir 13』。13号貯水池?大き目のハードカバー336ページ、ゆっくり読んだ。

イングランド中部の田舎が舞台。クリスマス時期に休暇で来ていた都会の家族の13歳の娘が行方不明になった。両親とウォーキングをしていて、少し距離が空き、あれ、いないなと思ったらそれっきり。村人たちも総出で捜査するが、手がかりなし。

近くに車道もあるから誰かに連れ去られたのではないか。貯水池や水路に落ちたのではないか。家出か。

捜査は長引き、何週間も、何か月も続くが進まず、そのうち月が年になる。

村人たちも気の毒だと思うし何とかしてあげたいが、自分たちの生活というものもある。仕事はしなければならないし、家族の用事もある。普通の暮らしを取り戻したいと思うが、いつもうっすらと、事件の影がさしている。

だんだん記憶がうすれていっても、完全になくなることはなく、その間にも高校生だった子供が大学生になり、老人はさらに老い、子供が生まれて夫婦の仕事に変化がおきたり、事業がうまくいかなくなったり、様々な人生が、季節と共に進行し、さらにキツネの仔が産まれて穴から出て来たり、ツバメが規則正しく帰ってきたりする。

登場人物が大勢で、それぞれ人間としてありがちな問題や喜びを味わって生きている。淡々と、自然の流れの中に埋もれるように書かれていて、いろんなことが起こっているが、何も起きていないようでもある。

読者としては(レベッカちゃんは見つかるのかいな)と思って読んでいるが、新たな動きもほとんどなく、判で押したように新年の花火、サマータイムの開始、夏、サマータイム終了、クリスマス・・・と何度もサイクルが繰り返されるうちに、(まあダメなんだろうな)という気分になってくる。そちらへの関心が薄れて来る。気がつくと本の中で、13年も経っていた。

人間がいなくなることは時々あり、解決しないこともある。家族にはもちろん巨大な穴が開くが、その周囲の社会も変化せずにはいられない。この村のようにお互い昔から知っていてわりと関係が密な共同体だと、全体として影響を受け止める。

精密に構成された交響曲のようだ。合唱つきかも。それぞれのパートが奏でる音が合わさってひとつの世界を作っている。

すごい作品だ。二十代のデビュ―から注目されていて、若い作家と思っていたマグレガーも40歳、凄みが増しております。

 

 

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| ろき | word, word, word(読書) | comments(2) | - |
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Comments:
人生はこういう日々のささやかなイベントの積み重ねなんだと再認識させられます。
長いようでいて短い、短いようでいて長い。
幸せも日々の積み重ねなんですね。
* Kiki * 2017/05/13 7:40 PM
Kikiさん、毎年繰り返されることも変化があるし、次はないかもしれない。人生の時間は貴重ですね。
マグレガ―お勧めです。
* Loki * 2017/05/14 3:48 AM
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