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アン・タイラー『Ladder Of Years』

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Ladder Of Years
Ladder Of Years

図書館のオンライン・サービスで電子書籍も借りられるが、当然パラパラめくって見られないから、けっこう意外な出会いがある。

アメリカ作家Anne Tyler (1941〜)の『Ladder Of Years』(邦題は「歳月のはしご」)、途中で

「え、これ古い話?」と思ったら、1995年の作だった。

ヒロインは主婦のディーリア。ある日ふらっと家出してしまう。海辺でホリデー中にヒッチハイクで別の町へ。

医師の夫を支えて事務仕事をこなしながら家族の世話をしてきた。子供たちは上が大学生、一番下が15歳で、小さいころはママ、ママいっていたのに最近は一人で育ったような顔をして母を軽く見ている。旦那さんも特に愛情表現してくれない。というより、亡き父のものだった医院を受け継ぎたいために自分と結婚したのかも?という疑惑がおきて、何だか面倒くさくなって衝動的に出て来てしまった。

田舎町でボロな貸部屋を見つけ、秘書の仕事を見つけ、新しい生活を作っていく。タイプやファイリングは得意だ。ここでコンピュータやワードプロセッサーが出回り始めている頃だとわかる。どうりで携帯電話も出てこないわけだ。

三人姉妹のうち父に特に可愛がられ(ディーリアの名前はコーディーリアの略称、あはは)、父が手元に置きたがったために医院の仕事を手伝うようになった。その後は医師として雇われた夫と結婚、一度も外で働いていないディーリアが、40歳になって初めて自立したような気分になる。

でも本名使ってるし、そのうち家にばれます。

「少し別な空気を吸うといい」と夫は迎えに来ない。

そのうちディーリアは新たな職を見つける。奥さんに逃げられたシングルファザーの家の住みこみ家政婦。すっかり生意気になった自分の子供たちと違って、そこの家の12歳の少年が可愛い!

美味しい食事を作って家族の要求を満たし、家の中心となって動く、という、手慣れた仕事をこなす。結局向いているんですね。友達もどんどんできて、1年で生活が落着く。

でも元の家はどうする?

ものすごく悩んだ挙句の家出でもなく、住処も仕事もすぐ見つかるなど、軽めに書かれ、出てくる人達も悪人はいない。

もやもやして自分でもどうしたいのか意識できていないヒロインの探しものは何なのか、考えながらたどっていくような感じ。

アメリカの田舎町の様子が珍しくて面白く感じた。みんなすぐ友達になるんだけど、そういうものなの?

ディーリアさんのような人は、親世代にはけっこういそうだし、今もいるだろう。大人しいお母さんを便利に使って粗末にしていると、いつか出て行っちゃうかも。旦那の立場の人も読むと良い本では、なんて思った。

 

歳月のはしご (文春文庫)
歳月のはしご (文春文庫)

 

 

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| ろき | word, word, word(読書) | comments(8) | - |
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Comments:
ディーリアのパパはリアさんじゃないの?

家事労働がそれほど評価されないのは日本も同じね。
評価されたいわよね。
でも、一度も外で働いていない主婦が
そんなにとんとん拍子にいくかしらね。
だまされたり搾取されたり
色々苦労するんじゃないかしらね。
と、シビアに思いますよ。
* はむはは * 2017/05/15 1:55 PM
はむははさん、リアさんかもね。末娘は可愛かったのでしょう。

家庭の雑事は大変ですよね。お金を稼がないからって評価されませんが。
そう、ちょっと甘いかなと思いました。いくら90年代の田舎でも、面接だけで職が決まるのか?
* Loki * 2017/05/16 12:00 AM
世話好きな人って多いけど、いくら尽くしても感謝されないと嫌になるんでしょうね。

夫も戻ってきてほしくないようだし、家事が好きなら家政婦として生きていくと幸福かも。

アメリカの小説やドラマを見ていると、特に理由もなく家族を捨ててふらっと姿を消す父親っていうのがやたら多い気がします。あと、いわゆる母性愛のない女性も。この小説でも、子供を置いて逃げた母親がいますね。
そういう国民性?
* B * 2017/05/16 12:59 PM
Bさん、いくら好きでやっていても、
「いいかげんにしてよ」と思ってしまいますよね。他人なら喜んでくれて給料までくれるのに。

旦那は戻ってきて欲しいのに言えないタイプかもなのでやっかいです。

>特に理由もなく家族を捨ててふらっと姿を消す父親
え、そうなの?困りますね。アメリカだからあれですかね、すべてを捨てて新規開拓を始めたい遺伝子の率が高いとか?
* Loki * 2017/05/17 12:07 AM
こんにちは。
アメリカの田舎についてですが。
アメリカって、ピューリタンの国だし、田舎にいけば、いろんな原理主義の教派のコミュニティとかがあるし、とにかく、我こそは神に救われんとする『正しい人ごっこ』してる人が多くて、それに対する違和感とか無意識に感じてる人は、ある時、フラッとどこかへ行きたくなっちゃったりするんじゃないかな、って思います。
そして、それまでの『いい人』とは裏腹の凶悪犯罪者になっちゃったり、ね。

アメリカの田舎の『無意識の偽善者』については、フラナリー・オコナーの作品なんかを読んでみると、よくわかるような気がします。
『善人はなかなかいない』とか。
ここに翻訳があります。
http://f59.aaacafe.ne.jp/~walkinon/goodman.html
* みか * 2017/05/18 2:54 AM
みかさん、そういえば作者のタイラーはクエーカーのコミュニティで育って11歳まで学校に行かなかったんですよね。
アメリカの田舎って独特な世界なんですね。
フラナリー・オコナー、読んでみようかな。短編集ならとっつきやすそう。
* Loki * 2017/05/18 6:39 AM
私もアメリカのピューリタンの文化ってヨーロッパのキリスト教文化とは全く異質。
アメリカを根本的に理解するには、宗教を理解する必要がありそう。

彼女はどんな幸せを求めているのだろう。
* Kiki * 2017/05/21 8:31 PM
Kikiさん、やはりアメリカ文化はピューリタンが基礎なんですね。フィクションに雰囲気が表現されていて、興味深い。
豊かな国の、そこそこ豊かな暮らし、でも・・・と、幸福感は別ですよね。

* Loki * 2017/05/21 11:00 PM
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