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マリアム・ペトロシャン「The Gray House」(Дом, в котором…)

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The Gray House
The Gray House

ひとまず英訳を読了、アルメニア人マリアム・ペトロシャン(Мариам Петросян、1969〜)のロシア語小説、2009年出版«Дом, в котором…»。訳すと「The House in Which...」だが、英題は「The Gray House」。

ロシア語版は1000ページにもなる。英語は単語が短いためか800ページ以下になっている。それでも長い。が、最後まで予測がつかず、驚きながら読めた。

↓ロシア語版表紙はこんな感じ。

«Дом, в котором…» 2009

250617-1

どこかの町のはずれ、「灰色の家」と呼ばれる寄宿学校が舞台。生徒は体のどこかに障がいがある。「隣人を助ければ、向こうも君を助けてくれる」なんていうスローガンぽいものがそこらじゅうに貼ってある。生徒たちは助けあっているが、「家」の奇妙な伝統に従ってもいる。本名でなくあだ名が通用し、寮の部屋を共有するグループがオオカミのパックみたいなものを作って階層社会になっていたりする。

みんなに嫌われている「雉」グループのクリールシク(Smoker)くんが、自分の寮の部屋からおん出されるところから始まる。(英語で読んでロシア語のオーディオブック - Исполнитель: Игорь Князев, Музыка: Cirque Du Soleil — Quidam и Andreas Vollenweider — Book of Roses , а также Tony Scott — Music For Zen Meditation - で追いかけると、あだ名がぐちゃぐちゃになって誰が誰やら混乱、とほほ)

大人しい雉グループに合わなかった彼は、「ロード」と呼ばれる学校一の美少年(脚が悪い)や、両腕がなくて義手をつけた頭のいい「スフィンクス」なんかと同じ第四室で生活を始める。そうそう、最高のリーダーの「Blind」もいる。

架空の世界が完全に構築されていて、じょじょに慣れていくとすっかりそこにはまる。しかもその世界にはまた別世界への隙間が開いているようで、ずるっとそっちにはみ出している。

何しろ学校だから登場人物が多い。「家」での生活の詳細、昔起こった出来事、クリールシクの一人称から別の人物中心の三人称へと交代と、ついて行くのが大変。少年も少女も象とか人魚とかユニークなあだ名に個性も強く、混同はしない。カウンセラーの先生もあだ名だ。「ラルフ」だけど本名じゃないw

彼らにとって「家」が世界であって、そこで小さな事件から中くらいの「病棟送り」とか、大きないざこざがある。しまいに闘争とか。たまに死人も出る・・・ひええ。

そして卒業=出ていかなければいけない時も来る。生徒たちはそれぞれの将来への決断をせまられる。

芸術家の多い家に生まれてアニメーションの仕事をしているペトロシャン、十代のころに得た構想を10年以上かけて書いた。出版にこぎつけるまで数年、でも出た年に「ボリシャヤ・クニーガ(大きい本)」賞の読者特別賞を受賞した。今のところ8か国語に翻訳されている。

本の雰囲気とついはまる面白さ、美しさを説明するのは難しく、「読んでみて」としか言えないような作品だが、日本だと上中下3冊になるだろうし、あんまり売れなそうだし出版は無理かなー。

たまにメールで連絡しているオリガ先生に「今この本読んでます」といったら、

「あなたは本当に変わってるわ」と誉めて(?)くれた、ははは。

後はロシア語で読了しなくては。いつ終わることやら。

 

 

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| ろき | word, word, word(読書) | comments(5) | - |
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Comments:
この本の表紙の絵、すごく面白いですね。
ロシア人画家が描いたのでしょうか。

黒い鳥や奥の部屋、フェルメールの絵のように想像力を掻き立てられます。

英語で読んで、ロシア語のオーディオブックで聴くなんて、素晴らしい。
ロシア人のあだ名は困りもの。英語でもあだ名に変えているのですか、それとも同じ名前で統一されているのでしょうか。
* Kiki * 2017/06/26 9:17 AM
江川卓さんに翻訳してもらってください。
(もういらっしゃらないですね・・・)

ロシア語は、名前がもう分かりづらくて読めませんね。
英語であだ名だったらわかりやすいかも。

外の世界は出てくるのですか?
役所とか、警察とか、商店とか?
* はむはは * 2017/06/26 2:22 PM
Kikiさん、英語版の表紙は「Cover design: David Drummond」の情報のみです。彼のブログはここ:http://daviddrummond.blogspot.co.uk/
ロシア語版のイラストはウラジーミル・カマエフという人のようです。Владимир Камаевで画像検索すると面白い〜。

オーディオの方はあまり頭に入りません、やはり文字が必要のようです。
あだ名は同じですが、英語とロシア語で単語が違うのでややこしい。Mermaidが「ルサルカ」だったり。
* Loki * 2017/06/26 6:59 PM
はむははさん、江川先生ならこういうの喜んで訳してくれそう。
名前よりあだ名の方が楽ですね。途中で変わったりするんですが!(ステージが変わったみたいなとき)
外の世界は最後にちょこっと出てくるくらいです。密封された世界ですね。
* Loki * 2017/06/26 7:03 PM
Kikiさん、追伸。
カマエフのページ:
https://www.artlebedev.ru/soamo/
* Loki * 2017/06/26 7:09 PM
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