リチャード・スキナー『The Mirror』
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The Mirror
The Mirror

Richard Skinnerは知らない作家、図書館の新着本コーナーで見つけた。初版は2014年、中編の『The Mirror』、『The Velvet Gentleman』が収められている。

裏表紙に、1編が1511年のヴェネツィアを舞台にしているとあったので手に取ってみたもの。先日展覧会を見たジョルジオーネが亡くなった翌年だ。
そうしたら本当に彼に関係があったのでちょっとびっくりした。本人ではなく、その弟子が登場するのが『The Mirror』。

ヴェネツィアの女子修道院で修業する見習いのオリーヴァは16歳。もうじき一人前の修道女となる儀式―キリストとの結婚式―を控え、緊張したり悩んだりしている。
地震のシーンから始まるのが何かの前兆のようだ。

修道院長の肖像が描かれることになり、画家が招かれる。ただし院長はいつも忙しいから、歳は違うが顔が似ているオリーヴァが代わりにモデルになることを命じられる。
亡くなったばかりのジョルジオーネの直弟子だったという画家、制作に必要だといって鏡を持参。修道院の一室でオリーヴァを描きはじめる。

修道院育ちで男性と口を聞く機会もほとんどないオリーヴァは、派手な服装の若い画家の前に座るのが気づまりだ。彼女の気持ちが読めるように、「もっと違う人生があるんじゃないの」みたいなことを言ってくる画家。

ほとんど子供といっていい見習い修道女の語る院内の生活が清貧で、読んでいると気分がいい。
ただ、教会の上の方からの締めつけが厳しかったり、女子修道院の立場の弱さもわかる。そこで修道女たちを守ろうとしている院長は立派な女性。しかし院内では人間関係の軋轢や、オリーヴァの親友オッタヴィアの駆け落ち脱走など、波風もけっこう立つ。

夜のお仕事をしていただろう母に赤ん坊のころ修道院に捨てられたオリーヴァは美貌だ。誘惑に負けずに修道女になれるかなあ、と思って読んでいたら、ラストは思わぬゴシックホラーな展開でびっくり。面白い。文章も美しくて、硬い宝石のように締まった中編。

次の 『The Velvet Gentleman』は舞台ががらっと変わる。
語り手はエリック・サティ(1866 - 1925)、そう、あの作曲家。しかも死んだ後。
気がついたら駅みたいなところにいる。
案内係り?のタカハシさんがやって来て、ここは次の段階へいく途中駅です、1週間かけて、来世に持って行きたい思い出をひとつ選んでください、と言う。

飛行機の手荷物より厳しい、思い出一個限定。
どれにするか。自分の生涯を思い起こしはじめるサティ。駅で同じように待っている人と話してみたり。

サティって1866年生まれだったんだ。(ビアトリクス・ポターさんと同年)
もっと後の時代のような気がしていた。「家具の音楽」とか「ヴェクサシオン」とか、なんと斬新な。しかも59歳の若さで亡くなったんですね。

彼の作曲家としての道のり、ドビュッシーやラベル、ピカソなど芸術家たちとの交友が回想される。
サティの人となりは知らないので、語りが彼らしいのかはわからない。やや淡々としすぎて単調な感じがする。それが味わいなのかな。
さて彼はどの思い出を持って行こうと決めるのか。

この話の設定は是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』(英題:After Life)のプロットをそのまま借りた、と作者が述べている。思い出の映画を作るところもいっしょ。
「まだ見ていない方、ぜひ見てください」だそうです。はい、そのうち。

リチャード・スキナーは詩やノンフィクションも書く作家で、フィクションはこの本の前にマタ・ハリを描いた『The Red Dancer』があるそうだ。


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Shakespeare 400
250416-1

今年はエリザベス女王90歳に加えてもう一つ、シェイクスピア没後400年という節目でもある。
ウィリアム・シェイクスピアは1564年生まれ、1616年4月23日没。
誕生日はわからないが、洗礼が4月26日という記録があるので、23日くらいでいいんじゃない?ということになっているらしい。つまり彼は誕生日に亡くなったと。52歳というのは、戯曲37作に多数の詩という業績を考えると信じられない若さ。

今年いっぱい記念イベントが催される中、命日(&たぶん誕生日)である4月23日は特に盛大に祝われた。

ロンドンではグローブ座を中心に、いくつも屋外スクリーンが置かれて無料映画鑑賞ができたり、お祭り状態。

テレビでも多彩な催しを中継。ライブで見る暇のないわたしも、オンラインのiPlayerで当分楽しめる。
ロイヤル・オペラハウスのバレエやオペラのリハーサル、イアン・マッケランの講演はすでにチェック。

夜には、生誕地のストラトフォード・アポン・エイヴォンを拠点にしたロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの舞台から中継。

デヴィッド・テナントとキャサリン・テートが司会をつとめる。



実力ある俳優たちが名場面を見せたり、パロディを演じたり、バレエや歌が披露され、出演者のあまりの豪華さにあっけにとられた。

ウケたのが、「ハムレット」”To be or not to be ...”のセリフ、どの単語を強調するかでもめるコント。
ハムレットを演じたことのあるカンバーバッチやテナント、ロリー・キニア(わーい)らが好き勝手に持論を展開しているところにイアン・マッケラン、ジュディ・デンチも乱入、最後に本物の王子まで出てくる。



カンバーバッチがエディ・レッドメインに間違われてムッとするところが可愛い。

(追記)見られない場合は、チャールズ皇太子が出てくるところだけちょこっと:



もちろん真面目なシーンも多くあり、中でもロリー・キニアのマクベスは迫真の演技で秀逸だった。ハムレットもイアーゴーもうまかったが、マクベスもぜひ全幕演じてほしい。

蜷川マクベスの魔女のシーンの上映などもあり、世界のあらゆる舞台で演じられ続けている劇作家の偉大さがわかる。こういうスターがいるというのは誇りですね。
誇れる文化を思いきり豪華に祝うことは、世の中を明るくする。

↓ ロイヤル・オペラハウスからの中継は長いのがまるごとアップされている。
エドワード・ワトソンの「冬物語」のリハーサル風景が見られて感激。




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デッサン会・続き(1週間後)
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ドイツのシュピーゲル紙のエリザベス女王を特集した雑誌、コメディ番組で紹介されていた。
DIEは"THE"だけど、英語読みにしちゃうと残念なことに・・・「〇ね、女王」に。
「チャールズ皇太子が依頼した記事なんだろう」とジョークが飛んでいた。腹痛い。

さて、1週間後も同じモデル(アナ)だった、先日のデッサン会。
一度家に帰る時間があったため、久々に紙のスケッチブック(A3)と木炭、パステル数本を用意。描き方忘れてたりして。

クイックポーズ。

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紙に木炭が触れる実感が、ツルツルしたiPadの表面にJOTペンが当たるのと違って、楽ですねやはり。

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何より画面が大きいのが描きやすい。A3だからそれほど大きくないのに、かなり違う。

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これは5分くらいだっけ。
今回はバーバラが仕切るので、後半は多少長いポーズになる。

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10分が数回。
ポートレートも描いてみた。

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もうちょっと時間が欲しい。

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白い紙の次に、パステル用の色つきの紙を使う。

グレーのはあまり変わらなく見えるが、白コンテのハイライトが使える。

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うらやましいアタマの形である。

ラストは30分だったので寝たポーズ。楽そうだけど、保つのは大変なんですよね。

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今回もしっかりポーズを保ってくれたアナでした。お腹の子は第二子だそうで、上の子は2歳とのこと。小さい子もいるのに芸術、というかわたしたちの道楽のために貢献してくれて、ありがたいことだ。


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デッサン会・先週
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イギリスはエリザベス女王の90歳の誕生日ですっかり祝賀ムード。
毎日公務をこなすバリバリの現役。偉大な人物です。
彼女の長生きの秘訣は、デスクワーク以外の仕事も多いこと、質素な食事(晩餐会などは別として、夜はデンプン系抜き)、少なめのアルコール(2杯目を飲むことはまれ)、堅固な結婚生活、エクササイズ(わんこの散歩、乗馬etc)などだそうです。

もう先週の話になってしまった、水曜デッサン会。遅すぎ。
たまたま昨日も同じモデルだったので、2回続けます。
今回は先週の、iPadで描いたもの。

モデルのアナは妊婦さんだった。 ショートヘアの似合う知的な佳人。

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元々細ーい人が、一部だけ巨大化していて面白い。

でもモデルするくらいだから、落着いてポーズも保てる。
ダンスとかヨガとかやっていそう。

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Procreateで、ペンか鉛筆に、さっと水彩を足す感じで。
それが一番楽なので(笑)。

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何分だったかな、忘れてしまった。
前回のリーダーは短いポーズが好きな人だったから、最長でも15分。あとは1分、3分などのクイックポーズが多かった。

これは15分だったと思う。
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ArtRage使用。平筆で色付け。

ぐらつかないし、細長い手足がきれいな妊婦。めったにないチャンスで楽しめた。
と思ったら今週は、急にモデルのキャンセルが出て、ピンチヒッターで来てくれることになったため、2週続けて描けたのだった。それはこの次に。


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「モネと庭」展@ロイヤル・アカデミー
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季節は明るくなったのにちっとも暖かくならない、とさんざん文句を言ってましたが、歩いている地面が揺れず、寝ている家の天井が落ちないだけでありがたい、と思いなおしました。
熊本もエクアドルも、強い余震が長引いて恐ろしい。早く終息するよう祈ってます。

ロイヤル・アカデミーの特別展、最後の週末にすべり込みで行ってきた。
Painting the Modern Garden: Monet to Matisse

近代庭園、モネからマティス。いかにも庭好きのイギリス人が飛びつきそうな企画。
予想を超えた規模で、2時間かけてへとへとになりながら堪能した。

目玉はモネの睡蓮として、彼のそれ以外の花や庭、さらにモネ以外の画家の作品も大数展示され、近代〜現代の人が園芸や造園を楽しみ、また絵のテーマにもしていった流れが見えるようになっている。

知らなかった画家の中ではスペイン人のホアキン・ソローリャ(1863 – 1923)が華やかで目を引いた。

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Joaquín Sorolla, Garden of Sorolla House, 1918

南国だ。花の香りも甘そう。

どこか知らないけど明るい色のカンディンスキー。

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Wassily Kandinsky, Murnau The Garden II, 1910

色使いが彼らしい。

ムンクもいた。

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Edvard Munch, Apple Tree in the Garden, 1932-42

りんごの樹が青くて実がずっしり生っていて、向こうに人間が2人。相変わらず、色も構図も面白い。

ほかにサージェント、ゴッホ、クリムト、マックス・リーバーマン(Max Liebermann, 1847 - 1935)などなどの植物と庭が並ぶ。

そうそう、マティスの名もついている展覧会だけど、彼の作品は少数。
キノコみたいなテーブルが可愛い。

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Henri Matisse, The Rose Marble Table, 1917

さてメインのモネ。
元々花を描くのが好きで画家になったようなものだ、と本人も言っている。1883年にジヴェルニーに移り住み、そこに好みの庭を造った。見取り図も展示されていた。ずいぶん広い土地に、有名な睡蓮の池と「日本風の橋」だけでなく、花壇スペースに様々な花が植えられている。
パリからここに足を延ばしたことはないので、いつか行ってみたい。

20世紀になってから、池の睡蓮を描き出す。

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Claude Monet, Water Lilies, 1904

自分の家の強み、いつでも描ける。日の出ているあらゆる時間帯のいろんな光線の下、それぞれ違う表情の水と睡蓮、空気を表現。

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Claude Monet, Water Lilies, 1907

同じく庭園を描いた作品群の中でも、別次元の美しさを感じる。水のせい?
この初期睡蓮の部屋もすばらしいが、歳を経るごとにますます凄くなっていく。

いわば、風景のエッセンスを取り出しているような。

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Claude Monet, Water Lilies and Weeping Willow Branches, 1916-19

第一次大戦中に描かれた大作。
戦場に近く、安全な土地に移るよう人に勧められても、モネはこの家と庭から離れなかった。
息子も義理の息子も前線で戦っている。モネは平和な風景を描き続けることで、愛国心を表した。

最後の部屋には、別々に売られた三連作のパネルが、アメリカの美術館から集められ、久々に本来の姿で並んでいる。

クリーヴランドから来た1枚。

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Water Lilies (Agapanthus), c. 1915–26, The Cleveland Museum of Art

1作が大きいので3枚並ぶと実物の池の前にいる感覚が味わえる。
睡蓮は抽象化され、空に浮遊しているようにも見え、また水は底なしで別の世界に開けていると錯覚することもできる。
いつまでもこの空間から動きたくないのは人情、異例の混みようだった。

「お庭の絵ね〜」と軽い気持ちで出かけ、圧倒された展覧会。行ってよかった。
ガーデニング愛好家が喜びそうな資料があり、制作中のモネの映像もあり、本当に盛りだくさん。
最終の週末に見られたのは、予約なしに入れる、ロイヤル・アカデミー友の会・会員の友人のお陰です。


最後の部屋の三部作について解説している映像:



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ジョルジオーネの時代展@ロイヤル・アカデミー
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Giorgione, Portrait of a Young Man ('Giustiniani Portrait'), c.1503

現在ロイヤル・アカデミーのメインの展覧会はモネと庭園。
その他に中規模の特別展『In the Age of Giorgione』も開催中。
ルネサンスのヴェネチアで活躍した画家ジョルジオーネ (1477/1478? - 1510)を中心に、その同時代の画家の作品を集めている。

彼の先輩、ヴェネツィア派の第一世代のジョバンニ・ベリーニや、アルブレヒト・デューラー、彼より少し若いティツィアーノなど、15 - 16世紀の作品が並ぶ。

タイトルに"Attributed to" とついているものが多い。生前から人気が高かったが惜しくも31〜32歳で早死にしたため作品が少なく、確実に彼の作と考えられるものは数点しかないそうだ。
上の若い男性の肖像も、若いころのティツィアーノの作だと主張する学者もいる。

”たぶん” ジョルジオーネ、もうひとつ。

Giorgione, Portrait of a Young Man (Antonio Brocardo?), c.1510.

絵も人物も美しいわ。
モデルは詩人のアントニオ・ブロカルドかもしれないそうだ。言われてみれば詩人ぽいような。

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Attributed to Sebastiano del Piombo, Portrait of Francesco Maria della Rovere, c.1505

セバスティアーノ・デル・ピオンボ(1485? - 1547)か。
肖像の多くは当然、高貴な人たちのもの。この少年も身分が高い。
たまに庶民が描かれていると、顔つきまで違うのが面白かった。

宗教画の部屋にはティツィアーノの大作。
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Madonna and Child between Saint Anthony of Padua and Saint Roque, 1510

これはジョルジオーネの教会の壁画に影響を受けているのだそうだ。壁画の実物はないが、写真が添えてあった。

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Giorgione, La Vecchia (Old Woman), c.1508-10

味のあるお婆さん。

日本の室町時代にあたる頃。ジョルジオーネは血肉のある柔らかい人物を描き、それまで絵の背景だった風景を主役にして、風景画というジャンルを創った。
ヴェネツィア派の礎のひとり。短い生涯ながらすべき仕事は果たしたのかもしれないけれど、もっと長く生きてティツィアーノと競い合ったら、どんな傑作が生まれていただろう、とも思う。


展覧会の紹介。ティツィアーノは英語読みでティシャンと呼ばれている:



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ボリショイ・バレエ@映画館「ドン・キホーテ」

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ボリショイ・バレエの映画館ライブも今季最後、「ドン・キホーテ」で締めくくり。
馬とロバが出た!(笑・上の写真)
大人しくておりこうだった。

宿屋の娘キトリと床屋のバジルという若い恋人たちが主役。
そうそう、ドン・キホーテとサンチョ・パンサも登場します。

Людвиг Минкус
『Дон Кихот』

Либретто Мариуса Петипа по мотивам одноименного романа Мигеля де Сервантеса

Хореография — Мариус Петипа, Александр Горский

<Cast>
Китри -- Екатерина Крысанова
Базиль, цирюльник -- Семен Чудин
Дон Кихот, странствующий рыцарь -- Алексей Лопаревич
Санчо Панса, его оруженосец  -- Роман Симачев
Подруги Китри Жуанита -- Ксения Жиганшина
Пиккилия -- Анна Окунева
Гамаш, богатый дворянин  -- Денис Медведев
Уличная танцовщица -- Анна Тихомирова
Тореадор -- Руслан Скворцов

スペインの町中のうるさいほど色彩にあふれた広場のシーンから、あっけらかんと明るく元気な舞台が展開する。

キトリは一時、金に目のくらんだ父に金持ちのおっさんと結婚させられそうになるが、駆け落ちしちゃって、最後は赦してもらうから大丈夫。

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キャストは、先日観た「じゃじゃ馬ならし」のチームが活躍。
キトリのエカテリーナ・クリサノワ、好き嫌いのはっきり顔に出る、素直でパワフルな娘。
バジルのセミョーン・チュージンはハンサムな王子顔ではない分、庶民らしくて良い。テクは完璧。

幕間インタビューに、就任して数週間しか経っていない新芸術監督のマハール・ワジーエフ(Махар Вазиев)。サンクトペテルブルクのマリインスキー・バレエで踊り、芸術監督も務めた人。

「ドンキはモスクワ(ボリショイ)のバレエと言われますが、どうですか?」との司会者の問いに、
「たしかにマリインスキーを表すのが『白鳥の湖』とすれば、ボリショイは『ドン・キホーテ』でしょう。でも2つのバレエ団も根っこは同じですから、それほど違いはないんです。
ペテルブルクではワガノワが活躍し、モスクワにはプリセツカヤがいた。その伝説は受けつがれていた方がいいですね」のようなことを言っていた。
これから芸術監督としてがんばってください。

気品と優雅のマリインスキーに、パワーとエネルギーのボリショイ、というイメージはある。屈託のないドンキは楽しい。

主役たちに加え、闘牛士たちの男性群舞、町の人、ジプシーのキャラクターダンスもそれぞれきっちり仕事していた。

ストリートダンサーのアンナ・チホミロワ、相変わらず目立つね、この人。

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可愛くて色っぽいのよね。

最初から最後までパワー前回でぶっ飛ばすパフォーマンス、ボリショイを観るには体力がいる。終わった時には気分爽快。

夏にはボリショイのロンドン公演がある。一般売り出し日の今日、「ドンキ」と「じゃじゃ馬〜」のチケットを予約した。楽しみ。


ドンキのトレイラー:クリサノワはいないが、マリア・アレクサンドロワが美しいので貼っておきます。他にチホミロワとデニス・ロヂキン:



最後に良いニュースがあった。来シーズンの映画館ライブのプログラム、正式発表はまだだが、チラ見せのトレイラーによると、やりますね、レールモントフ原作「現代の英雄」。わーい。

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(コーカサスの軍服〜!・・・とか言っているダメな観客)


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エドマンド・ドゥ・ヴァールのトーク

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Edmund de Waal

ケンブリッジ市の文学フェスティヴァルCambridge Literary Festivalが開催中。
最新作『The White Road』を予習済みのドゥ・ヴァールを聴きに行く。

小さな会場で地味にやるような気持ちで行ったら、とんでもない、一番広い学生組合の講堂。入場を待つ人の列も長い。
彼はケンブリッジ大学の卒業生だし、フィッツウィリアム博物館やケトルス・ヤードでの展覧会もあり、人気者ですよね考えてみたら。

背の高いやせ型のドゥ・ヴァール、飄々として現れ、学生時代に専攻した英文学の指導教授だった老婦人とステージへ。
昔の先生といっしょなのは、
「怖いです」と聴衆を笑わせたが、演壇でははっきりした声で、大学の講義のように明快に話した。アカデミックな人柄を感じた。

本の構成に沿って、白磁の歴史のキーとなる土地、景徳鎮、ドレスデン、プリマスその他を旅した体験を語る。
本の図表やそれ以外の数々の写真もスライドで写され、理解しやすい。

景徳鎮の壺移動係りの人、囲いも何もない台だけの文字通り「台車」にいくつも大きな壺を並べ、普通に移動している。神業。

マイセンの自称錬金術師ベトガーを不良青年ぽく描いた挿絵が笑えた。
「これ映画になるね」
ベドガ―を監督した数学者チルンハウスの方に入れ込んでいるようだった。やはり山師ではなく探究者・学者が好きなんだな。

嬉しかったのは景徳鎮の破片、マイセン初期の破片、プリマス(ウェッジウッドに破れた)初期の小皿などを会場内に回して触らせてくれたこと。手で触れると繊細さがわかる。

質疑応答でも活発に質問が出た。印象的だったのは、詩についてのかかわり。
ドゥ・ヴァールは詩が好きだが、理由のひとつが「余白が多いこと」。へえーやはり白いところが好きなんだ。
音楽も余韻があるのが好き、とのこと。徹底している。

どういう質問だったか忘れたが、
「磁器は装飾美術じゃないんです」という言葉が新鮮に響いた。
「飾りのためのマイナーなアートの一分野ではないんですよ。磁器は意味(meaning)であり情熱(passion)であり生きること(living)なんです」だそうだ。
ドゥ・ヴァールが言うから重みがある。

最後の質問は陶芸家の娘がいる女性が、娘さんの代理で聞いたもの、
「なぜ色を使わないんですか」
答えは「わたしは数百種類の釉を使ってますよ(=色は使っている)」
彼の白は純白じゃなく、ほんのり色がついている。その微妙な色合いが持ち味だ。

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本も面白いし磁器も美しい。本人も大変知的な人だった。手が大きいのに驚いた。わりと細面の小顔なので両手で顔が 全部覆えそう。そして指の部分が長いのだった。


↓ BBC2の番組『Artsnight』でドゥ・ヴァールがダッハウ収容所の「アラク磁器」を紹介しているので貼っておきます。30分のうち前半が彼で、その後別の話題となり、最後の方22分ごろから今度は音楽の話題でドゥ・ヴァールが締めくくっている。



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デッサン会、テリー
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今日は文学フェスティヴァルでドゥ・ヴァールの話が6時から始まる。早退しなくてはならない時刻だが、それなら久しぶりに有給を取った方がいいや、忙しい時期も過ぎたし、と休んだ。

のんびりする予定だったのに、タイミングよく?パニックになった友達から連絡があって、仕事を手伝うことに。
ある仕事を外部に依頼していたところ、締め切りの2日前になっても半分しかできていないことが判明したそうで。
わたしよりも呑気な大物がいたか・・・でも間に合わないのは困るよね。

そんな訳で、朝から働き、夕方に出かけ、また帰って仕事を仕上げて納品した。
時間がないからデッサン会のアップだけ。

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Procreate。5分、モデルはテリー。60歳にはなっていると思うベテラン。いろんなポーズをとってくれ、持ちも良い。

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バックを赤くしてみたり。これは10分だったかな。
微妙にお肉がたるんだりしているところに味がある。

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20分あったのでポートレート。

最後は25分。ArtRageに変えてみた。

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ArtRageは画材がぱっと見てわかりやすく、急いでいるときに便利。これは平筆で荒く描いてから輪郭を鉛筆機能で足してある。
今度は太さだけ調節して平筆ですべて仕上げてみようかな。

休んだのに机にへばりついた変な日だったので、今日はこのへんで。


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タルコフスキー『Иваново детство』(僕の村は戦場だった)
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英題が直訳の「Ivan's Childhood」、ちょっと見てイワン雷帝の子供時代の話かと思っちゃったよ。違った。
1962公開、タルコフスキーの「僕の村は戦場だった」でした。見たことがないので、映画館に出かけた。

『Иваново детство』

<В ролях>
Николай Бурляев — Иван
Валентин Зубков — капитан Холин
Евгений Жариков — старший лейтенант Гальцев
Степан Крылов — старшина Катасонов
Николай Гринько — подполковник Грязнов
Валентина Малявина — Маша

タルコフスキー初の長編作品。彼は1932年生まれだから、撮ったのは30歳になる前。ヴェネツィア国際映画祭でサン・マルコ金獅子賞受賞、サルトルほかの知識人に称賛されたそうだ。

第二次大戦下、ドイツ兵に母と妹を殺されたイワン少年、国境警備の父も多分死んでしまって孤児となる。パルチザンに参加し、その後ソ連の赤軍に拾ってもらった。まだ12歳くらいだが戦う気まんまん。小さい体が見つかりにくいのを活かして、何度か偵察任務を達成した。

でも子供だからねー。グリズヤノフ中佐など、イワンを心配する大人は、彼を前線から離して学校に送ろうとする。軍事学校がふさわしいだろう。
それを拒否するイワン。今戦いたいということしか眼中にない。復讐したい、という思いだけ。

復讐で武力を使えばエンドレスになる、ということを大人も言ってあげられない。自分たちだって今戦争中なんだから。
悲惨な「子供時代」だ。子供時代がない、と言ってもいい。
そしてイワンは最後のミッションに出て行く。

人間が照明弾打ち上げたり偵察し合ってごたごたしている現場の森がひっそり静かで美しい。

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タルコフスキーらしい詩的な表現にあふれる。
それにやはり水がある。ソ連軍と独軍を間に流れる川、イワンの夢に出てくる井戸、しょっちゅうどこかで水音がしている。
夢の中にだけ家族との幸福な生活があるイワン。その子供らしい表情と、兵士になった固い顔つきを演じ分けている少年俳優ニコライ・ブルリャーエフがうまい。

こういう子供は今でもたくさんいる。
劇中誰かが、「これが最後の戦争になるのかな」と言っているが、そうだったらよかったんだけどね。

モノクロの映像が美しいが、ヘビーな映画。しばらく見返す気にはなれないと思う。
見たくなったら、モスフィルムがYouTubeで公開しているから、いつでもここで全編見られます(英語字幕あり)。

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↑  ズビャギンツェフ監督「リヴァイアサン」のクジラの骨を思い出したシーン。
地面に刺さってますが。パイロットのドイツ空軍の人、ちゃんと脱出できたのかしら、心配。


イワンの夢のシーンのひとつ。お母さんが、「井戸が本当に深いと昼でも星が見える」と大嘘ついてます。



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