ロシア語週末講座

JUGEMテーマ:学問・学校

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金曜夜から日曜午後まで、大学の週末ショートコース「中級ロシア語〜モスクワとペテルブルク」というのに参加、久々に頭使って疲れたけど、楽しかった。

ケンブリッジ中心からだいぶ外れた、お城のようなホールで開催。本当はここに泊まりたかったところ、コース予約時にはいっぱいで、別にB&Bをとったのは前回書いたとおり。

庭も広かった。

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ケンブリッジ大で教えるヴェラ先生が、モスクワやサンクトペテルブルクの歴史と文化、住民の気質など興味深い話をおりまぜながら、ロシア語を鍛えてくれるという魅力的な講座。生徒は6人、特にできる上級者が3人いたけど、わたしも含めてその他の人もたっぷり話す機会があって良い。

一言でいうとモスクワは伝統的なロシアで、今は首都として現代的ビルがばんばん建っている。成金さんもいる。サンクトペテルブルクは元首都、歴史は300年ほどと新しい。西欧に向かって開かれている。住民はブランド物に興味ない文化的インテリが多い。

というのがステレオタイプだそうです。でもヴェラ先生がレニングラード(今のサンクト)生まれで、モスクワに3年住んだけど早く帰りたくて仕方なかった、というからバイアスかかってますよね?w

「ボリショイ・バレエよりマリインスキー!」だそうです。

こりゃー発言に気をつけなきゃ、なんて思ったが、わたしもどっちかというと文学の舞台になっているペテルブルクの方が好きなので、それほど困りもしなかった。

ロシア語の面では、テレビや本など受け身の視聴で分かった気になっていても、語彙も文法もまだまだと痛感。真面目に「単語帳」で覚える、みたいなことをしたほうがいいかもしれない。たぶんやらないだろうけど〜。

「ロシア語には自由詩というものはない」ということに驚いた。必ず韻を踏まなくちゃダメだそう。

でも「ロシアに長調の歌なんてないのよ、みんな悲しい歌なの」と極端なことをいう先生なので、例外もあるかも。

歌といえば、ソ連時代から有名なアーラ・プガチョワの「レニングラード」の意味が初めてわかった。この都市に住んで逮捕されラーゲリに送られた詩人のマンデリシュタームが、家に帰りたい、と書いた詩が元だった。

昔聴いて、なんで「まだ死にたくない」って繰り返しているんだろうと思ったが、そうだったのか。音楽はユダヤのメロディだそうです。

プガチョワの歌:

詩そのものの朗読だとこうなる(コンスタンチン・ライキン)。怨念がこもってる!

「あの街にはまだおれの電話番号がある、それで死んだ人の声も聞ける」という一節が、歌では”死んだ”が省略されているとか、細かい情報が面白い。

ちんぷんかんぷんではなく言っていることは分かる、でも簡単すぎということは全くない、手応えのあるちょうどよいレベルで楽しめた。生徒も40代から60代の本格的にがんばっている人で励みになる。

ランチやディナーで別の講座を取っている人ともいっしょになる。「ワグナーの”リング・サイクル”」とか「北欧の画家」、「ハムレットと復讐のテーマ」みたいな魅力的なものがたくさん、いろいろ話が聞けて興味深かった。見たところ子育てが一段落した世代が多いような。でもかなりお歳の方も、外国からも参加者がいて、生涯学び続けようという人は気が若い、と触発されもした。

最終日、ドイツ人のドクター、エビー(50代)は、これからパリまで自転車で行く、と帰っていった。彼はロンドンから自転車で来たのだ(100kmはある)。ドイツ人てたまに鋼鉄みたいな人いるよね。

カレンとステファニーは8月に別のカレッジである5日間講座(先生は違う人)にも行くそうで、

「まだ空きがあるみたいだから、一緒にどう?」と誘われた。その会場なら駅から近いから泊まらずに通いもできるんだけど、さすがに休暇がないかもしれない。また来年かな。

 

おまけ:B&Bの人懐こく大人しいわんこ、13歳ビンゴくん。

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BBC 4 『The Art of Japanese Life』

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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ロシア語のコースにもうすぐ出かけます。今頃になって(当日の昼)大学から、

「別のクラスがキャンセルになったのでカレッジのお部屋空くけどどうですか」と知らせがきた。よろずいきあたりばったりのわたしも、さすがにB&Bは予約済みです。「予約金なんか要らないわよ」といってくれたB&Bを当日キャンセルなんて申し訳ないので、大学の申し出はパス。また機会もあるでしょう。

BBC 4、日本月間の目玉は各1時間で3回にわたり日本のアートを紹介したジェームズ・フォックス博士の『The Art of Japanese Life』

1. Nature
2. Cities
3. Home

まず初めにイザナギ・イザナミの神話からというのがアカデミックだ〜。

1回目は自然に恵まれ、自然に溶け込むようにして暮らしてきた日本と、近年の工業化、それに最近の自然の見直しというか復興の動き。

2回目は京都と江戸、東京を順に、みやびな貴族文化と伝統(源氏物語絵巻を紹介)の京都、19世紀のパリにもなぞらえられる賑やかで人間くさい江戸(浮世絵や春画も)、そして現代の東京への変化。都市の文化として茶の湯も見せる。ちゃんと正座してお薄をいただくフォックス博士。

もちろん随所に光琳の燕子花図や雪舟の水墨画、根付など美術・工芸品、造園・建築の傑作、伝統芸術・芸能がちりばめられる。

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雪舟、山水図

こういう絵の見方を知っている目利きはすばらしいし、頭の中整理されてるなーと思う。勉強になった。

お茶も、お花ももちろん家元の偉い人がお手本を示してくれるので、彼らの話や作品も面白い。伝統的なものだけでなく、東京の庶民の小さくてきたなーい部屋を写して歩いている写真家(お名前失念)など、ユニークな活動をする現代作家も忘れない。

書道では川尾朋子さんが大きな箒みたいな筆をもって走り回って巨大な作品を創作。

3回目の「家」では日本の建築の移り変わりから、災害が多いため”壊れるものである”として造る哲学、そしてまた自然に帰るかのような、ユニークな家も見せる。

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藤森照信、高過庵

徹底的なリサーチにもとづいて要所をおさえてある。アート好きなら事前に知識なしで、そしてかなり知識のある人でも新たな発見があって楽しめる、丁寧なドキュメンタリーだ。

番組のサイト『The Art of Japanese Life』

 

 

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BBC 『Handmade in Japan』

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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ロシア語の宿題がまだ終わらないうち、さらに授業で使われるパワポのスライドも何十枚か送られてきた。さすが大学の講座はしっかりしている。というか予習が追いつかない。

BBCの教育テレビ、BBC4で、日本の文化とアート特集をしていた。6月が日本月間だったようです。30分の短いクラフト紹介『Handmade in Japan』も3回全部見た。

1. Samurai sword
2. The Kimono
3. Mingei Pottery

1では四郎國光の日本刀づくり、2は大島紬の糸染めから着物に仕立てるまで、3では益子の陶芸。

いずれも、どの過程もゆるがせにできない手作りの職人芸がすばらしく、見とれる。

ほとんど機械化していないのがすごい。手や、素朴な道具だけで作業する。習得には時間がかかる。伝統を引き継いていくのは大変、でも「家業だし」と淡々と働く人達がいて、頭が下がる。

益子はイギリス人陶芸家のバーナード・リーチがたびたび訪れて仕事もした土地なので、日英の交流がある。益子からも濱田庄司がセント・アイヴスに行って窯を作ったりしたそう。震災で益子の窯も崩壊してしまったときには、リーチ・ポタリーを中心にいち早く募金を集め、立て直しに力をかしてくれたそうだ。

今は濱田の孫の代。

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濱田友緒氏、やっぱり電動ろくろは使わず、微調整ができる蹴ろくろが良いそう。

彼は新しいデザインのアート陶芸を開拓している。

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世界には緻密な工芸がたくさんあるが、日本は中でも洗練され、技が磨かれているなあと思う。体や手を動かして物を作るのは人間にとって大切なことでもある。

着物の回、見られますかね:

Handmade in Japan, Series 1 2 The Kimono BBC Documentary 2017

 

 

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映画「クトゥーゾフ」1943年

JUGEMテーマ:映画

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もうすぐ出席するロシア語中級講座の宿題がきて、中にプーシキンの「エヴゲーニー・オネーギン」のモスクワに関する一節を訳すというのがある。ナボコフの決定版英訳を持っているので、つい書き写したくなるが、見ないようにしてますw

その部分は、タチアーナがモスクワの社交界に送られたところで語り手プーシキンがモスクワへの思いをつづるところ。1812年、ロシアに攻めこんだナポレオンがモスクワに入城!したものの都はもぬけの殻、ロシア軍が自ら放った火でぼうぼう燃えていた・・・というくだり。恋愛の話だけじゃないのです「オネーギン」、脱線が面白いの。

そこでロシア・K(カルチャー)チャンネルのアーカイブから、1943年の古いモノクロ映画「クトゥーゾフ」を見てみた。

『Кутузов』

Режиссёр -- Владимир Петров

<В главных ролях>
Алексей Дикий — генерал - фельдмаршал Михаил Илларионович Кутузов

Николай Охлопков — генерал от инфантерии Михаил Богданович Барклай-де-Толли

Семён Межинский — император Наполеон Бонапарт.

ミハイル・イラリオーノヴィチ・ゴレニーシチェフ=クトゥーゾフ公爵は1812年にナポレオンのロシア遠征を迎え撃った総司令官。ボロジノの戦いで大激突し、両軍合計10万人近くの死者を出すが決着がつかず。

モスクワを明け渡すと見せてナポレオン軍を引きこみ、包囲。そのうち「ロシアの冬」(神風と同義)が来てあきらめて撤退する仏軍を猛追してすごい勢いで追い出した。という英雄。

とめどなく広い国土の奥に誘いこんで冬を待てば、だいたい勝てるロシアである。

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仏頂面のナポレオン。

「モスクワを失っても、ロシアは失われない」と周囲を説得するクトゥーゾフ将軍、終始落着いて戦局を把握している。実際はどうだったのかは、わからないけど。

この映画が封切されたのは1943年、まだ第二次世界大戦の真っただ中。ソ連がドイツ軍に対して巻き返し、どんどん領土を奪回していた年だが、作っていたのはもっと前だったわけで、戦争で苦しくてもこうして映画を作っていたんだなあ、と思う。プロパガンダの意味はもちろんあるだろう。それにしてもかなり物資も人間も投入して大作を撮ったものだ。

この1812年の戦いは祖国戦争(Отечественная война)と呼ばれ、1941年6月22日から1945年5月9日の対独戦は大祖国戦争(Великая Отечественная война)と呼ばれる。祖国戦争の名がついたのはこの2つだけ。

↓ ロシアKチャンネルのページ。イギリスからは普通に見られます。ありがたい。

Кутузов. Х/ф

 

 

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レンブラントとルーベンス@National Gallery

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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Self Portrait at the Age of 34, 1640, Rembrandt van Rijn

アンドリューの「ハムレット」の前に少しだけ時間があった。劇場から近いナショナル・ギャラリーへ。さすがに手荷物検査はあったけど、やはり誰でも無料で入れてくれる美術館はありがたい。大きな特別展を見るほどの余裕はなく、1時間以内で見られる1階Bギャラリーの企画展示に行く。

Rubens and Rembrandt

17世紀北ヨーロッパを代表する巨匠2人、ルーベンス(1577 - 1640)とレンブラント(1606 - 1669)を特集。年齢は親子ぐらい離れてますね。

絵の奥へと引き込むレンブラントに対し、向こうから何か放射してくるルーベンス、と感じる。

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Portrait of Susanna Lunden(?) ('Le Chapeau de Paille'), probably 1622-5, Peter Paul Rubens

華やかでチャーミング。

歴史画でも、ルーベンスの「サムソンとデリラ」には動きがある。

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Samson and Delilah, c.1609-10, Rubens

サムソン重そう〜!「脚しびれた」(デリラ)w

対して、レンブラントの「ベルシャザルの酒宴」は、宴会で騒いでいたら空中に手だけ出て来て何か字を書いた! その驚愕の瞬間を切りとり、時を止めている。

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Belshazzar's Feast, c.1636-8, Rembrandt

色合いも違うこうした作品が、向かい合わせに展示されている。

レンブラントは動いていてもゆっくりで繊細だ。

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A Woman bathing in a Stream (Hendrickje Stoffels?), 1654, Rembrandt

静かな水音が小さくこもって響くよう。

ルーベンスはダイナミック。↓「ライオン狩り」のデッサン。

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A Lion Hunt, c.1614-15, Rubens

いずれもナショナル・ギャラリー所蔵なので見たことのある絵。ふだんは時間が空くとレンブラントやフェルメールのある部屋にまっすぐ行ってそこだけ見る、みたいなことをして、ルーベンスは通過してしまっているかも。まとめてあると、同じような時代で作風の違う2人の対比が観察できます。

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Self Portrait at the Age of 63, 1669, Rembrandt

この展示は無料、8月6日まで。

 

 

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マリアム・ペトロシャン「The Gray House」(Дом, в котором…)

JUGEMテーマ:読書

The Gray House
The Gray House

ひとまず英訳を読了、アルメニア人マリアム・ペトロシャン(Мариам Петросян、1969〜)のロシア語小説、2009年出版«Дом, в котором…»。訳すと「The House in Which...」だが、英題は「The Gray House」。

ロシア語版は1000ページにもなる。英語は単語が短いためか800ページ以下になっている。それでも長い。が、最後まで予測がつかず、驚きながら読めた。

↓ロシア語版表紙はこんな感じ。

«Дом, в котором…» 2009

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どこかの町のはずれ、「灰色の家」と呼ばれる寄宿学校が舞台。生徒は体のどこかに障がいがある。「隣人を助ければ、向こうも君を助けてくれる」なんていうスローガンぽいものがそこらじゅうに貼ってある。生徒たちは助けあっているが、「家」の奇妙な伝統に従ってもいる。本名でなくあだ名が通用し、寮の部屋を共有するグループがオオカミのパックみたいなものを作って階層社会になっていたりする。

みんなに嫌われている「雉」グループのクリールシク(Smoker)くんが、自分の寮の部屋からおん出されるところから始まる。(英語で読んでロシア語のオーディオブック - Исполнитель: Игорь Князев, Музыка: Cirque Du Soleil — Quidam и Andreas Vollenweider — Book of Roses , а также Tony Scott — Music For Zen Meditation - で追いかけると、あだ名がぐちゃぐちゃになって誰が誰やら混乱、とほほ)

大人しい雉グループに合わなかった彼は、「ロード」と呼ばれる学校一の美少年(脚が悪い)や、両腕がなくて義手をつけた頭のいい「スフィンクス」なんかと同じ第四室で生活を始める。そうそう、最高のリーダーの「Blind」もいる。

架空の世界が完全に構築されていて、じょじょに慣れていくとすっかりそこにはまる。しかもその世界にはまた別世界への隙間が開いているようで、ずるっとそっちにはみ出している。

何しろ学校だから登場人物が多い。「家」での生活の詳細、昔起こった出来事、クリールシクの一人称から別の人物中心の三人称へと交代と、ついて行くのが大変。少年も少女も象とか人魚とかユニークなあだ名に個性も強く、混同はしない。カウンセラーの先生もあだ名だ。「ラルフ」だけど本名じゃないw

彼らにとって「家」が世界であって、そこで小さな事件から中くらいの「病棟送り」とか、大きないざこざがある。しまいに闘争とか。たまに死人も出る・・・ひええ。

そして卒業=出ていかなければいけない時も来る。生徒たちはそれぞれの将来への決断をせまられる。

芸術家の多い家に生まれてアニメーションの仕事をしているペトロシャン、十代のころに得た構想を10年以上かけて書いた。出版にこぎつけるまで数年、でも出た年に「ボリシャヤ・クニーガ(大きい本)」賞の読者特別賞を受賞した。今のところ8か国語に翻訳されている。

本の雰囲気とついはまる面白さ、美しさを説明するのは難しく、「読んでみて」としか言えないような作品だが、日本だと上中下3冊になるだろうし、あんまり売れなそうだし出版は無理かなー。

たまにメールで連絡しているオリガ先生に「今この本読んでます」といったら、

「あなたは本当に変わってるわ」と誉めて(?)くれた、ははは。

後はロシア語で読了しなくては。いつ終わることやら。

 

 

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アンドリュー・スコットの「ハムレット」

JUGEMテーマ:エンターテイメント

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今日あたりからまた涼しくなったけど、1週間ほどやたら暑くて30度前後だった。もっと南の方では40年ぶりの34度を記録。しかも草の花粉がすごい飛んで、アレルギー薬漬けの日々。こういう時にかぎって忙しく、2日続けてロンドンに通わなければならなかった。

さすがに疲れてキレそうになったので、ロンドン2日目の夜に芝居へGO。BBCドラマ「シャーロック」のモリアーティ役が可愛いアンドリュー・スコットの「ハムレット」。Almeida劇場(上のポスター)で好評だったプロダクションをハロルド・ピンタ―劇場で再演しているもの。

『Hamlet』 Harold Pinter Theatre
Director -- Robert Icke
<Cast>
Andrew Scott -- Hamlet
Juliet Stevenson -- Gertrude
Angus Wright -- Claudius 
Jessica Brown Findlay -- Ophelia
David Rintoul -- Ghost/Player King 
Joshua Higgott -- Horatio
Luke Thompson -- Laertes
Peter Wight -- Polonius

 

設定は現代。先王の幽霊は城内監視カメラの映像に登場するし、ノルウェー王の動向やロイヤルファミリーのイベントはテレビで報道される。

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デンマーク王の死後すぐに、その弟が王冠と王妃を引き継いだ!王子ハムレットにとっては叔父が父親になるという異様な事態。家族として表向きには仲良さそうにメディアに対応する3人。それが壁のスクリーンにニュース画面として映し出される。見出しがちゃんとデンマーク語(読めないが)になっていた。

あまりに有名なモリアーティの印象を払拭しなくてはならないアンドリューだが、たいへん良かった。話し方は基本低めでやわらかく、アイリッシュ訛りの巻いたRがセクシー。でも神経過敏ですぐ動揺し、激高して直後にそれを鎮めようとしたりする。発言は穏やかでも手が不安そうに動いていたり、全身をよくコントロールしたパフォーマンス。今まで見たことのないタイプの、感情と思考が内部で錯綜しているハムレット、うまいなーと思った。

アンガス・ライトのクローディアスはつかみどころのない政治家ふう。一番生の感情が出るべき「兄の殺害の結果を畏れて神に祈るシーン」でも、心の底の動きが見られない。長年仮面をつけすぎて顔に貼りついてしまった人のよう。

ガートルードはいつも難しい役だと思うが、ジュリエット・スティーヴンソンはさすが、女として新しい夫に夢中な姿(まっ人生そういうこともあるわよね)から、現夫の正体をようやく悟って息子の身代わりに毒をあおって死ぬところまで、変化を見せた。

ジェシカ・フィンドレーのオフィーリア、気丈な娘だったのに周囲からスパイの役など押しつけられて重圧で気がヘンになる。最後は車椅子で登場していた。

インテリアがシンプルすぎてほとんど粗末、これで王室?と思ったが、登場人物がゴージャスなのでそのうち気にならなくなる。面白いプロダクションだったが、結局は主役が良いという結論になるでしょう。

ところで仕事の会議の担当者がデンマーク人だったので雑談のときに聞いてみたら、

「シェイクスピアのハムレットは一度も見たことありません」とのこと。見たくない気持ちはわかる気がする。わたしもオペラ「蝶々夫人」は舞台では観てないわ(話が別?)。

監督とハムとオフェリアのインタビュー。カンバーバッチのハムレットは観たし、向こうもアンドリューのを見に来たけど、非常に個人的なものなので比較にならないそう。

 

 

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北斎展@大英博物館

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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凱風快晴、1831 - 1833

大英博物館の「北斎展」、行ってきました。

Hokusai -- beyond the Great Wave

入場時間制限つきの予約制、時間内に入れば好きなだけいていい。非常に混んでました。

”大波を越えて”というタイトル通り、初期から中年期まではサラッと、歳とともにますます研ぎ澄まされた北斎(1760 - 1849)の後期に重点がおかれていた。

まずドキュメンタリーでも見た上の赤富士。実はこれは印刷の手間をちょと省略してしまったもので、北斎が意図したのはもっと薄い色の「ピンク富士」だったそう。

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色があせたんじゃなく、こっちが本当。2つ並べて見ると、確かにこちらの方がニュアンスが豊か。でも赤いのもインパクトある。

木版を刷る過程のビデオも流れていた。下絵の筆の方向まで注意して掘る人も、色をぴたっと合わせて刷る人も、磨きぬかれた技だ。

植物も美しい。

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朝顔に雨蛙、 1832

蛙?ああ、いたいた。静物だが動きがある。

「百人一首」も新鮮だった。

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百人一首、1835 - 36 

源宗于朝臣の
「山里は 冬ぞさみしさまさりける 人目も草もかれぬと思へば」

煙が生き物のよう。なんだか楽しそうで、あまり淋しくないけど・・・。

版画もすばらしいが、肉筆画はもっとすごい。ぐっと奥行きが出る。

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軍鶏図 1826 - 1834

やたら強そうな鶏!後ろの雌鶏がまた、旦那が偉いから自分もいばってます感があって可愛いわ。

初めて見て驚いた西瓜。

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西瓜図 1831 - 1832

な、なんと斬新な。「充電中のスマホ」を描いていたホックニーを思い出す。

北斎は西洋画も知っていて、遠近法も使ったりした。またオランダの商館?の偉い人に依頼されて日本の日常を描いたシリーズがオランダの美術館にある。

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「年始回り」

オランダ国立博物館の所蔵。年代のメモを忘れたが北斎50代の頃の作らしい。手前のわんこも年始の挨拶でおちりの嗅ぎあい・・・。

三女のお栄さん=応為の作もあった。彼女も立派な絵師。

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葛飾応為、関羽割臂図

大作だ。黒と赤が効いている。彼女の「色の作り方」や、北斎の死を報告した手紙など肉筆が展示されていた。筆の字、読めないけど。

日本はもちろん、世界から集めた選りすぐりの傑作ぞろいで堪能した。

死の間際の龍が迫力。辰年生まれで思い入れがあったのですね。

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龍雲図 1849

間近で見ると実に立体的でリアル。

90歳でも眼は衰えていなかったようだ。彼の野心通り、本当にあと20年寿命があったら、と思うとそら恐ろしい。人間としてこのくらいにしておいて正解だったのかもしれない。

8月までやっているので、機会があったらもう一度くらい見たいな。

 

 

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マトヴェイ神父『Отец Матвей』

JUGEMテーマ:エンターテイメント

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ついにロシア正教会神父の探偵が!(笑)

1000ページの長い小説を読んでいて何もできない(仕事はしてますけど)。息抜きのテレビはロシアの2014年のドラマ『Отец Матвей』(マトヴェイ神父)。

Режиссер -- Валерий Девятилов

<актеры и роли>
Владимир Колганов -- отец Матвей (Матвей Петрович Корнеев)

Родион Галюченко -- Иван Шерман, лейтенант полиции

Виктория Адельфина -- матушка Валентина

イギリスのケンブリッジ近郊を舞台にした牧師探偵の「グランチェスター」に似ているような。自転車に乗っているとますます似ている。でも50年代イギリス、インテリや金持ちの多い地域の話と違って、このドラマは21世紀、そして庶民的。

知的でハンサムなマトヴェイ神父(ウラジーミル・カルガーノフ)はモスクワの大きな教会に勤めていた。奥さんが女の子を産んだばかりで幸せいっぱいだったのだが、ムショ帰りの実の弟にうっかり貴重な聖書の置き場を教えてしまい、あっさり盗まれる。弟はまた捕まり、兄の神父も犯罪を助けた疑いをかけられて左遷され、という始まり。

飛ばされたのはスーズダリ地区の小さな町。そこで起きる事件に何となく巻きこまれ、持前の観察の鋭さと推理力を発揮して解決に協力、という話。初回は夫が自殺したことが信じられないという女性に頼みこまれ、つい真相を探り始める。

神父に何かと助けてもらう警察の若手がロジオン・ガリュチェンコの演ずるイワン・シェルマン。

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まだ最初の数回しか見ていないが、悪いことした人に聖書の、「キリストが逮捕された時に『わたしは関係ありません』としらばっくれて一生後悔したペテロ」の話など持ちだして反省をうながしたり、そんなんで大丈夫かと思うのどかさが良いです。

この調子で、連続猟奇殺人などあまりひどい犯罪は起こらないまま、素朴にやってほしいです。

 

 

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『Hokusai』大英博物館@映画館

JUGEMテーマ:アート・デザイン

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『冨嶽三十六景』「神奈川沖浪裏

大英博物館で葛飾北斎(1760 - 1849)の大規模な展覧会が開催されている(8月13日まで)。

Hokusai -- beyond the Great Wave

もちろん予約した。その前に、映画館でこの展覧会にちなんだドキュメンタリーが上映されたので見に行く。

Producer & Director -- Patricia Wheatley

北斎といえばこの大波、日本人でなくても知っている、ほとんどモナリザやムンクの「叫び」と同じくらい有名な絵だ。この展覧会、そしてドキュメンタリーでは、北斎がこの波以後も、歳をとるごとにどんどん腕を磨いて傑作を描いていたことを紹介している。

NHKとの共同制作なので日本の映像も多く、実際に木版を掘ったり、芸大の学生が模写して見せたり、興味深い映像ばかりでためになった。

貧しい生まれだが小さいころから絵が好きで、浮世絵師として成功。破産したり火事で焼け出されたり、豊かではなかったが全然気にせず、90歳まで芸術に邁進。すごい画家だ。

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『冨嶽三十六景 尾州不二見原』 北斎改為一筆(葛飾北斎画)

自分も庶民だから働く人や町の人の登場が多く、活き活きしている。構図も斬新。

そして絵に動きがある。

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Poppies. Colour woodblock, 1831-1832

ちょっと「波」に似ているリズム。

イギリスの一流美術評論家が解説したり、こちらも長寿画家デヴィッド・ホックニーが、「北斎はすごい画家です。ぼくも長生きしてがんばりたいが、彼ほどには描けないけどね」と謙遜したりしている。

版画で大量生産されていたから、蕎麦2杯分で誰でも買えた。「たいへん民主的な芸術だ」と解説者が言っていたのが印象的。

そして版画の質が悪かったからべたっと赤くなった「赤富士」が有名になっているが、本当はあれはもっと薄い、ピンクの富士だったとか、聞いたことがあったような。今回スイスの収集家から借りて質の良い版を展示しているそうだ。

長年北斎を研究してきた人(名前失念)が今回ついに大英博物館での展覧会を実現させた。彼が感激屋さんでしょっちゅうウルウルしているのが可愛かった。少なくとも3回は声をつまらせていた。感無量なんでしょうね。

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Weeping cherry and bullfinch. Colour woodblock, c. 1834.

こういう空間のとり方とか、さかさまの鳥、すごいわー。

役者絵を描き、小説の挿画や漫画を描き、西洋画も研究した北斎、「この調子で110歳までいけばまともな絵が描けるかな」と言っていた、前向きさがすばらしくて元気が出る。地元映画館の2番目に大きいスクリーンは満員、人気を物語っている。

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『富士越龍図』(死の3か月ほど前の肉筆画)

辞世の絵でしょうか、実物を早く見たい。
トレイラー:

 

 

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