バレエ「フランケンシュタイン」@映画館

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しつこく映画館でのライブ中継でも見た、リアム・スカーレットの『Frankenstein』。

<Cast>
Victor Frankenstein -- Federico Bonelli
Elizabeth Lavenza -- Laura Morera
The Creature -- Steven McRae
Alphonse Frankenstein (Victor’s father) -- Bennet Gartside
Caroline Beaufort (Victor’s mother) -- Christina Arestis
William Frankenstein (Victor’s younger brother) -- Guillem Cabrera Espinach
Madame Moritz (The frankensteins’ housekeeper) -- Elizabeth McGorian
Justine Moritz (Madame Moritz’s daughter) -- Meaghan Grace Hinkis
Henry Clerval (Victor’s friend) -- Alexander Campbell
The Professor -- Thomas Whitehead

今回の主役3人はファーストキャストというんでしょうか、彼らのために創られた役ということで、やはり貫録があった。カメラでどれほどアップに迫っても、良さが際立ちこそすれ、アラが見えたりはしない。さすが。

ボネリのヴィクター・フランケンシュタインは気品ある学者肌。でもヘタレ。捨てて来たと思った怪物が自分を追いかけて来て近くにいると気づいて愕然とした表情、細かく震える指先まで、演技がうまい。
ラウラ・モレラはエリザベスの暖かい人柄をしっとりと表現。

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「怪物作っちゃう前」の屈託ない二人のパ・ドゥドゥでは、ヴィクターが、
「今日こそプロポーズするぞ!」と、彼女に話しかけるタイミングをどきどきしながらはかる。
それが、「怪物後」、心を閉ざしたヴィクターに、いったい何があったのか聞きたい、けど聞けない、とエリザベスがためらうのと、対をなしている。変わってしまった二人の関係がより明らかになる、心憎い演出だ。

マックレーも壮絶な怪物っぷり。つぎはぎの体で怖いし、裏切られて憎悪のかたまりになってしまい、でも子供のようなあどけなさが顔に残っているのが可愛く可哀そう。

幕間には世界の映画館で見ている人からのツイッターが映される。
「誰か怪物をハグしてやって〜。それとジュスティーヌも」と言っている人がいた。

ジュスティーヌ・モーリッツはフランケンシュタイン家の家政婦さんの娘。ヴィクターたちと同世代で、子供のころにはいっしょに遊んだこともある。でも身分はあくまでも召使い。

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エリザベスだって元は孤児なんだけど、娘同然に育てられたから教養あるレディ。
でもジュスティーヌの方は、舞踏会でついお客様と踊ってしまっただけで、母の家政婦・マダム・モーリッツに厳しく叱られる。
ふて腐れて家を飛び出している間に、運悪くヴィクターの幼い弟が怪物に殺される事件が起き、ジュスティーヌが犯人だと疑われる。

ヴィクターが、
「違うんだ、実はぼくが大学で造った化け物が・・・」と言えなかったばかりに、彼女は処刑されてしまうのだ。

不当な扱いを受けた不幸な娘が同情的に描かれていて、スカーレットのこの世を見る目が広くて深いなあと感心させられる。
こういう部分を決して見逃さずに的確にひろっていくところ、シェイクスピアが王侯貴族から墓掘り人まで、あらゆる人間たちに声を与えていたのを思い出す。すごい振付家だー。

この作品、今後も長くロイヤルのレパートリーとして踊られ、古典になるのでは、と個人的に思います。


またまた解剖学教室ですみません。好きなんだもの。ジョン・マクファーレンがより詳しく語る。



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BBCドラマ『The Hollow Crown』第二シーズン
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シェイクスピア・シリーズ続き、『The Hollow Crown』。 2012年の第一シーズンはジェレミー・アイアンズやトム・ヒドルストン、ベン・ウィショーなど豪華キャストで楽しめた。
第二シーズンも負けず劣らず優秀な役者ぞろい。薔薇戦争の時代を描いた3作。
最初が「ヘンリー六世 第一部」。

The Wars of the Roses, Henry VI Part 1

<Credits>
Producer    Rupert Ryle-Hodges

Henry VI -- Tom Sturridge
Margaret -- Sophie Okonedo
Gloucester -- Hugh Bonneville
Somerset -- Ben Miles
Plantagenet -- Adrian Dunbar
Mortimer -- Michael Gambon
Talbot -- Philip Glenister
Eleanor -- Sally Hawkins
Warwick    Stanley Townsend
Joan of Arc -- Laura Frances-Morgan

シェイクスピアの比較的初期の史劇。
ヘンリー六世といえばケンブリッジ大学のキングス・カレッジやイートン校を創設した方ですね。

偉大な父・ヘンリー五世の急死によって王位を継いだのが生後10か月に満たないころ。
軍人としてフランスの土地をがんがん勝ち取っていた父に対し、平和主義?の六世はフランスに巻き返されて領地を失った。さらに彼をとりまく貴族たちの政権争いで国のまとまりが崩れ、いわゆる薔薇戦争へとなだれ混む原因も作った。

同じ王族の家系でもいろんな人物が現れて時代の流れを変えていく。まだまだ序盤だが、今も昔も、権力や個人的な感情をめぐっての骨肉の争いは尽きず、画面も美しく、引き込まれるドラマ。

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フランスの場面ではジャンヌ・ダルクも登場。魔女としてイギリス側に火あぶりにされる。

若い王を演じるトム・スターリッジ、初々しく、よく言えば柔和、悪く言えば優柔不断な性格をよく表していた。
サマセット公がフランスで見つけて来た美女マーガレット・オブ・アンジュー(仏王妃の姪にあたる)がすっかり気にいって結婚、フランスと和解する、というより領地をあっさり返上しちゃう。

マーガレットのキャストがソフィー・オコネドーというのが画期的。

おとなしい王に対してマーガレットがきびきび物を言うので宮廷の人が驚く。
実は彼女、出会ったときからサマセット公と相思相愛だった。二人は手を組んで、政敵である護国卿グロスター公の追い落としをもくろむ。彼の妻エレノアから崩しにかかる。

子供のころから信頼してきたグロスターに同情的な王だが、マーガレットの泣き落としに負け・・・イングランドは今後ますます混乱することに。

最後にちらっと、ヨーク公の息子リチャード少年(後の三世)も出て来た。次はいよいよ、ベネディクト・カンバーバッチのリチャードが登場か。

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楽しみだ〜。


王妃マーガレットがグロスター公の奥さんエレノアをひっぱたく。気の強い同士。



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ロイヤル・バレエ「フランケンシュタイン」
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(三幕目の幕)

新進気鋭の振付家リアム・スカーレットの新作、全幕バレエ。もちろん駆けつけます。
ロイヤル・オペラハウスで一度観て、別キャストの映画館中継も予約済み。

<Credits>
Choreography -- Liam Scarlett
Music -- Lowell Liebermann
Designer -- John Macfarlane
Lighting designer -- David Finn
Projection designer -- Finn Ross

ロンドンで観たのは初日の翌日、ヌニェズ&ムンタギーロフの予定だった。が、あらら、配役が変わってラム&ダイアーに。
故障などではないようで、何かよんどころない事情があったんでしょう。
”怪物”が平野亮一くんだからまあいいか、と思って会場に着いたら、これもキッシュに変わっていた。彼はその後の配役には入っているので、体調の問題だったかも。

<Performers>
Conductor -- Koen Kessels
Concert Master -- Sergey Levitin

Elizabeth -- Sarah Lamb
Victor -- Tristan Dyer
The Creature -- Nehemiah Kish
Justine Moritz -- Francesca Hayward
Henry Clerval -- James Hay

予想キャスト全員に振られたわけですが、みんなプロですから大丈夫。その人の個性を活かして役を作り上げている。

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ラムとダイアー、リハーサル風景

それにしても「フランケンシュタイン」をバレエにしようとは、何たる野心。
「みんな映画のイメージばかりで原作をちゃんと読んでない」という原作ファンのリアムが、オリジナルを愛と裏切りの物語ととらえ、作者メアリー・シェリーの波乱に満ちた人生にも思いをはせつつ、大切に作ったバレエだ。

ヴィクター・フランケンシュタインは格のあるお屋敷の息子。幼いころ自宅に引きとられていっしょに育った孤児のエリザベスと恋仲。彼女に、立派な医者になって帰るよと約束し、大学へ出発する。
母が自分の弟を出産した際に亡くなった事件から、生命の謎にとりつかれたヴィクターは、熱心に勉強する。

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解剖学の講堂がバレエに出てくるとは・・・すばらしい〜。

そして実験の結果、死体の寄せ集めから本当に生命を作ってしまう。しかし生まれた”怪物”の醜怪さに恐れをなして、そいつを捨てて逃げる。
家へ帰ってからも自分のしでかしたことの重大さに苦悩し、別人のようになってエリザベスを心配させる。
一方”お父さん”に捨てられた怪物は、必死にヴィクターを追いかけてくる。

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この写真は別キャストのスティーヴン・マックレー。

よそで子供作って知らん顔している父親みたいなヴィクター、だめじゃん。
この世で生きていくすべも教えずに遺棄したら、そりゃあ追いかけて来るでしょう。
いったいなぜフィアンセが心を開いてくれなくなったのか、エリザベスも悩む。
三人三様の苦しみが、ローウェル・リーバーマンの沈んだ、優しいがひんやりした音楽にのせて描かれる。
もちろんラストは悲惨。

サラ・ラムのエリザベスが可憐だった。孤児だけど愛情を受けてきちんと教育された結果、才色兼備のお嬢様に育った感じ。
キッシュの怪物は、突然強制的にこの世に生まれ、人に化け物と怖れられ、創り主には拒否されて憎しみを知るようになるのが悲しい。
怪物は悪くありません、全部ヴィクターのせいだ。
でも18世紀の先端技術を暴走させた科学者の逸る気持も理解できる。
ダイアーのヴィクターはやや地味だが、原作でも一番分かりにくい難しい人物だそう。

ヴィクターが自分の殻にこもってしまい、エリザベスが理解できずに苦しむパ・ドゥ・ドゥは、共に踊りながら別々の思いで別の世界にいる二人を描き、複雑で美しい。
二十代でどうしてこういう踊りを創れてしまうんですかねリアムは。天才ですね。
演劇的なバレエに強いイギリスの伝統を、しっかりと受けついでもいる。

来週ボネリとモレラのキャストで観るのが、ますます楽しみ。


リハーサル風景が、1時間超えですがこちらで見られます

セットと衣装がまた豪華。デザイナーのジョン・マクファーレンの話。



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Shakespeare 400
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今年はエリザベス女王90歳に加えてもう一つ、シェイクスピア没後400年という節目でもある。
ウィリアム・シェイクスピアは1564年生まれ、1616年4月23日没。
誕生日はわからないが、洗礼が4月26日という記録があるので、23日くらいでいいんじゃない?ということになっているらしい。つまり彼は誕生日に亡くなったと。52歳というのは、戯曲37作に多数の詩という業績を考えると信じられない若さ。

今年いっぱい記念イベントが催される中、命日(&たぶん誕生日)である4月23日は特に盛大に祝われた。

ロンドンではグローブ座を中心に、いくつも屋外スクリーンが置かれて無料映画鑑賞ができたり、お祭り状態。

テレビでも多彩な催しを中継。ライブで見る暇のないわたしも、オンラインのiPlayerで当分楽しめる。
ロイヤル・オペラハウスのバレエやオペラのリハーサル、イアン・マッケランの講演はすでにチェック。

夜には、生誕地のストラトフォード・アポン・エイヴォンを拠点にしたロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの舞台から中継。

デヴィッド・テナントとキャサリン・テートが司会をつとめる。



実力ある俳優たちが名場面を見せたり、パロディを演じたり、バレエや歌が披露され、出演者のあまりの豪華さにあっけにとられた。

ウケたのが、「ハムレット」”To be or not to be ...”のセリフ、どの単語を強調するかでもめるコント。
ハムレットを演じたことのあるカンバーバッチやテナント、ロリー・キニア(わーい)らが好き勝手に持論を展開しているところにイアン・マッケラン、ジュディ・デンチも乱入、最後に本物の王子まで出てくる。



カンバーバッチがエディ・レッドメインに間違われてムッとするところが可愛い。

(追記)見られない場合は、チャールズ皇太子が出てくるところだけちょこっと:



もちろん真面目なシーンも多くあり、中でもロリー・キニアのマクベスは迫真の演技で秀逸だった。ハムレットもイアーゴーもうまかったが、マクベスもぜひ全幕演じてほしい。

蜷川マクベスの魔女のシーンの上映などもあり、世界のあらゆる舞台で演じられ続けている劇作家の偉大さがわかる。こういうスターがいるというのは誇りですね。
誇れる文化を思いきり豪華に祝うことは、世の中を明るくする。

↓ ロイヤル・オペラハウスからの中継は長いのがまるごとアップされている。
エドワード・ワトソンの「冬物語」のリハーサル風景が見られて感激。




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ボリショイ・バレエ@映画館「ドン・キホーテ」

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ボリショイ・バレエの映画館ライブも今季最後、「ドン・キホーテ」で締めくくり。
馬とロバが出た!(笑・上の写真)
大人しくておりこうだった。

宿屋の娘キトリと床屋のバジルという若い恋人たちが主役。
そうそう、ドン・キホーテとサンチョ・パンサも登場します。

Людвиг Минкус
『Дон Кихот』

Либретто Мариуса Петипа по мотивам одноименного романа Мигеля де Сервантеса

Хореография — Мариус Петипа, Александр Горский

<Cast>
Китри -- Екатерина Крысанова
Базиль, цирюльник -- Семен Чудин
Дон Кихот, странствующий рыцарь -- Алексей Лопаревич
Санчо Панса, его оруженосец  -- Роман Симачев
Подруги Китри Жуанита -- Ксения Жиганшина
Пиккилия -- Анна Окунева
Гамаш, богатый дворянин  -- Денис Медведев
Уличная танцовщица -- Анна Тихомирова
Тореадор -- Руслан Скворцов

スペインの町中のうるさいほど色彩にあふれた広場のシーンから、あっけらかんと明るく元気な舞台が展開する。

キトリは一時、金に目のくらんだ父に金持ちのおっさんと結婚させられそうになるが、駆け落ちしちゃって、最後は赦してもらうから大丈夫。

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キャストは、先日観た「じゃじゃ馬ならし」のチームが活躍。
キトリのエカテリーナ・クリサノワ、好き嫌いのはっきり顔に出る、素直でパワフルな娘。
バジルのセミョーン・チュージンはハンサムな王子顔ではない分、庶民らしくて良い。テクは完璧。

幕間インタビューに、就任して数週間しか経っていない新芸術監督のマハール・ワジーエフ(Махар Вазиев)。サンクトペテルブルクのマリインスキー・バレエで踊り、芸術監督も務めた人。

「ドンキはモスクワ(ボリショイ)のバレエと言われますが、どうですか?」との司会者の問いに、
「たしかにマリインスキーを表すのが『白鳥の湖』とすれば、ボリショイは『ドン・キホーテ』でしょう。でも2つのバレエ団も根っこは同じですから、それほど違いはないんです。
ペテルブルクではワガノワが活躍し、モスクワにはプリセツカヤがいた。その伝説は受けつがれていた方がいいですね」のようなことを言っていた。
これから芸術監督としてがんばってください。

気品と優雅のマリインスキーに、パワーとエネルギーのボリショイ、というイメージはある。屈託のないドンキは楽しい。

主役たちに加え、闘牛士たちの男性群舞、町の人、ジプシーのキャラクターダンスもそれぞれきっちり仕事していた。

ストリートダンサーのアンナ・チホミロワ、相変わらず目立つね、この人。

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可愛くて色っぽいのよね。

最初から最後までパワー前回でぶっ飛ばすパフォーマンス、ボリショイを観るには体力がいる。終わった時には気分爽快。

夏にはボリショイのロンドン公演がある。一般売り出し日の今日、「ドンキ」と「じゃじゃ馬〜」のチケットを予約した。楽しみ。


ドンキのトレイラー:クリサノワはいないが、マリア・アレクサンドロワが美しいので貼っておきます。他にチホミロワとデニス・ロヂキン:



最後に良いニュースがあった。来シーズンの映画館ライブのプログラム、正式発表はまだだが、チラ見せのトレイラーによると、やりますね、レールモントフ原作「現代の英雄」。わーい。

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(コーカサスの軍服〜!・・・とか言っているダメな観客)


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ナショナル・シアター・ライブ『As You Like It』

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映画館で演劇のライブ鑑賞、ナショナル・シアターの『As You Like It』(お気に召すまま)はシェイクスピア中期の明るい喜劇。
劇中の「この世は舞台。男も女も役者にすぎない」というセリフでも有名。

<Cast>
Philip Arditti -- Oliver
Joe Bannister -- Orlando   
Mark Benton -- Touchstone
Paul Chahidi -- Jaques
Rosalie Craig -- Rosalind   
Patsy Ferran -- Celia
John Ramm --  Duke Senior 
Leo Wringer -- Duke Frederick
       
<Production team>
Director: Polly Findlay
Set Designer: Lizzie Clachan
Lighting Designer: Jon Clark
Music: Orlando Gough


ヒロインのロザリンドは追放された前公爵の娘。追放した本人・現公爵フレデリックの娘シーリアと仲がよかったため屋敷に残され、いっしょに育てられた。

ヒーローのオーランドは父の死後、長兄のオリヴァーに差別待遇を受けている。
この二人がレスリング大会の場で出会って互いに一目ぼれ。

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(右端の赤毛の女性がロザリンド)

セットも服装も現代風。大企業のトップが公爵で、その役員の一人がオリヴァーというところか。オーランドは人が帰った後のオフィスの掃除をさせられていた。

ある日(もうこの娘に用はない)と思ったのか、フレデリック公爵がロザリンドに、屋敷から出ていくよう言いわたす。身を守るために男装したロザリンド、追放された父が住んでいるアーデンの森をめざす。
実の姉妹くらい親しい友と離れたくないシーリアは、庶民の格好で同行。
ちょうどオーランドも、このままでは未来がない、と忠臣をつれて家出し、森の中へ。

森で再会するが、オーランドはロザリンドが男装しているのに気づかず、この辺で育った少年だと思いこむ。
「稽古台になってやるからさ、おれをロザリンドと思って口説いてみろよ」という少年を相手に恋の練習。あはは。

森の中で羊飼いの恋愛騒動に巻き込まれたり、前公爵がオーランドを助けたりといろいろあるが、最後は好きな同士が結ばれ、悪い奴は改心し、前公爵は元の地位にもどる。めでたしめでたし。

森のセットに一番おどろいた。

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現代的なオフィスのセットから森の場面への移行はどうするのかと思ったら、オフィス家具がすべてワイヤでつながっていて、ずるずる引っ張られ、空中に吊り上げられた。少しでも間違うと、家具が落ちたり、ワイヤーがからまったりするじゃないの。全部見事に宙づり、驚愕。

鬱蒼と暗く、上の方からさしてくるライティングは木漏れ日のよう。高い場所にすわって鳥の声やアカペラのコーラスを担当する森の精みたいな人もいる。
美しいアートがちゃんと森を表現していた。

ロザリンド役のロザリー・クレイグは骨格のしっかりした顔で、ショートヘアの男装が似合う。おしとやかに育ったレディが、少年として言いたい放題できるのが楽しくて止まらない!みたいな勢いが可愛い。
シェイクスピアの時代は女性は少年が演じていたから、少年が「少年のふりをする女性」を演じていたわけで、ややこしいな。

とぼけたシーリアもいい味を出し、例の「この世は舞台」のセリフを言うジェイクイズ(前公爵についている臣下)を演じたポール・チャヒーディがクレイジーで面白い。

劇の主題として若々しい恋の騒動が盛り上がっているところに、
「ふ、芝居さ」と言い放ってしまう人物をすべりこませる。つくづくすごい作家だ。

キャストが粒ぞろい、それぞれ個性的で楽しいし、白いセーターを着た人間が羊を演じるなど、画期的な演出。全編とおして笑わせてもらった。

ナショナル・シアターでこの作品を上演するのは30年ぶりとのこと、凝った舞台を作ったものです。


トレイラー:



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ロイヤル・バレエ『Rhapsody』 / 『The Two Pigeons』

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先週映画館で鑑賞したロイヤル・バレエのライブは、フレデリック・アシュトンのダブル・ビル。

『Rhapsody』
Choreography -- Frederick Ashton
Music -- Sergey Rachmaninoff

<Dancers>
Natalia Osipova
Steven McRae

『The Two Pigeons』
Choreography -- Frederick Ashton
Music -- André Messager

A Young Girl -- Lauren Cuthbertson
A Young Man -- Vadim Muntagirov
A Gypsy Girl -- Fumi Kaneko
Her Lover -- Ryoichi Hirano


「ラプソディー(狂詩曲)」は1980年、ミハイル・バリシニコフのために振りつけられた。曲はセルゲイ・ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」。
バリシニコフ用だから、男性ダンサーには最高度の技が要求される。ペアを組む女性も、同じくらいの技量がないといけない。

この作品のすごいのは、音楽を完全に踊りで表しているところ。曲想、リズム、音符ひとつひとつが人間の体の動きに合致する。
オーケストラの音色の中にピアノソロが入ると同時に、スティーヴン・マックレーが白い矢のように鋭く切り込んでくる。
女性ソロの登場は対照的にきらきらとしたピアノを細かいパで見せる。
オケの音の上下を、並んだダンサーたちが交互に跳んで表し。
その音楽がラフマニノフなのだから、実に美しい。

革命で亡命した貴族出身のラフマニノフの、華やかに疾走する、だが底に哀愁を帯びたメロディーを、自由を求めて亡命したバリシニコフのために選んだのだな、と思う。

オシポワは亡命しないでロンドンでもモスクワでも舞台に立てる。ロシアの魂を表したラフマニノフの曲でここで踊れることはとても幸せ、とインタビューで言っていた。
彼女が「こんな速い振付、踊ったことがない」と言うとは、本当に速いんだな。
マックレーも常に楽しそうに、力強くのびのび舞っていた。

***
息をつめて見つめた30分の後は、可憐な若い恋人たちのストーリー「二羽の鳩」。
パリの屋根裏アトリエで、恋人の少女(カスバートソン)をモデルに描いている画家志望の青年(ムンタギーロフ)。
この女の子がじっとしていられなくて、常に気が散り、ちょこちょこ動き、青年の仕事のじゃまをする。
「あ、鳩〜!」と窓辺に飛んできた鳩の真似してみたり。

わたしだったら椅子に縛りつけて両頬のわきに五寸釘を打ちつけて固定するが。
優しい彼はそんなことせず、イラつきながらも結局いっしょに鳩になって踊っちまう(笑)。

制作が滞っている間に近所のお友達が来てさらに騒がしくなり、そのうちジプシーの一行が通る。
エキゾチックなジプシーの少女(金子)に一目惚れしてしまった青年、彼女を追いかけて出て行く。不真面目なモデルの少女、振られちゃいます。

でもしょせんジプシーとは住む世界が違った画家の彼、ジプシーの子の本当の恋人(平野)と一騎打ちして当然負け、その仲間にボコられ、ボロボロになって帰ってくる。
アトリエでひとり悲しんでいた少女の元に、しょげた恋人が戻り、ふたりはめでたく仲直りしましたとさ。というたわいもない話。
本物の白い鳩が正確に飛んできて、演出に花を添えていた。ちゃんと飛ぶか、ドキドキしちゃったけど、心配いらないプロな鳩だった。

若い恋人たちのちょっとした危機を描いて深刻にならず、ドロドロせず、上品に可愛くさらりと表現するのがアシュトンだと思う。
かまとと・・・という気がしないでもないが・・・これがロイヤル・バレエの持ち味と言えましょう。

今回のキャストはムンタギーロフがややナルシストで世間知らずな芸術家、カスバートソンがもっと世間知らずなお嬢様な感じ。
金子ふみは怪我のラウラ・モレラの代役。キュートで小悪魔的。大・悪女とか、退廃的な情熱の女とか、そういうのではなかった。まだ若いものね。

同じアシュトンでもずいぶんタイプの違う2作品が見られて楽しかった〜。


ラプソディーのリハーサルなど:



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ボリショイ・バレエ「じゃじゃ馬ならし」
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現実逃避のためにバレエばかり観ているかも。
日曜日は映画館でボリショイ・バレエの「Укрощение строптивой」ライブ中継。
シェークスピアの『The Taming of the Shrew』(じゃじゃ馬ならし)を、フランスのジャン=クリストフ・マイヨー(1960 -)がボリショイ・バレエのために振りつけた。初演は2014年。

同作は以前ジョン・クランコがスカルラッティの音楽で作っているそうだが、これはそれには関係なく、音楽もボリショイに合わせ、ロシア人のショスタコーヴィチの映画音楽から構成している。

The Taming of the Shrew
Ballet by Jean-Christophe Maillot in two acts
    
<Cast>
Katharina -- Ekaterina Krysanova
Petruchio  -- Vladislav Lantratov
Bianca -- Olga Smirnova
Lucentio -- Semyon Chudin
Hortensio -- Igor Tsvirko
Gremio -- Vyacheslav Lopatin
The Widow -- Yulia Grebenshchikova
Baptista -- Artemy Belyakov
The Housekeeper -- Anna Tikhomirova    


パドヴァの裕福な商人バプティスタには2人の美しい娘がいる。妹はしとやかで優しく、町の貴公子たちに大人気。しかし父は、姉のカタリーナの先を越して嫁にはやらん!と言っている。

このカタリーナが”じゃじゃ馬”、気が強く誰の言うことも聞かない。おそろしくて彼女に求婚する男はゼロ。
妹狙いの男たちが困っていたところ、町にやって来たよそ者のペトルーキオがカタリーナに興味を持った。制御不能な女を口説くチャレンジャー。
男を金輪際”旦那様”なんて呼びたくないカタリーナとの勝負が始まる。

気の強い同士の攻防を体で表現する。本気のバトルが大変スリリング。

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原作では「食事を与えない」などほとんど虐待みたいな手を使うペトルーキオ、バレエでも容赦せず。
カタリーナは初めて手応えある男に会ってたじろぎ、(ちょっといいかもこの人)と思うが、(いや、ダメダメ)と気を取り直して戦う。

つま先までまっすぐ伸ばした脚をぶん回すと凶器だわー。下手したら怪我するわ。
面白い〜。

甘い顔のウラディスラフ・ラントラートフだが、さすがロシア人(?)、けっこうやるな。
エカテリーナ・クリサノワ、獰猛だったのがだんだんペトルーキオに負けてきて、悔しいんだけど、負けるのもちょっと快感、みたいになってくるのが可愛い。
ちなみにこのバレエは16歳以下は見ちゃいけません。刺激が強すぎます(笑)。

妹のオリガ・スミルノワをめぐる3人の求婚者たちが、それぞれ自分をアピールする。鳥の求愛みたいな妙な踊りを披露するやつもいて笑えた。
やたら色っぽい家政婦さんのアンナ・チホミロワも良かった。全員個性がくっきりしている。

無駄のないシンプルな舞台装置に、簡素な服装のダンサーたちが余分なものを排除してシャープに踊る。女性もタイツでなく生足、脚の筋肉が見える。

一見荒っぽいようで、決して雑ではなく、研ぎすまされている。
激しく争っているかのような二人の間には、実は最初から愛があり、それが育っているのかも。
すっきりして、かつエロティック。さすがフランスの振付家。

ジャン=クリストフを招請したのはフィーリン芸術監督ということで、幕間インタビューで完成度の高い作品ができた喜びを語っていた。元気そうで何よりだ。

「じゃじゃ馬ならし」はこの夏のボリショイ・ロンドン公演の演目に入っている。これは見たい。
ついでに、他の予定は「ドン・キホーテ」、「白鳥の湖」、「パリの炎」、「海賊」。
欲を言えば、コーカサスの軍服がわんさか出て来る「現代の英雄」が見たかった…。


配役同じの、2014年のプレミア:



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イングリッシュ・ナショナル・バレエ「海賊」
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先日デッサン会で注目を集めたシーザーくんの舞台が見たくて、ロンドン・コロシアムの『Le Corsaire』(海賊)に出かけた。
ところで周りはみな英語読みでシーザーと呼んでいますが、読みは”セザール・コラレス”の方が正しいようなので、今後はそう呼ぼうと思います。

『Le Corsaire』
Music: Adolphe Adam, Cesare Pugni, Ludwig Minkus etc.

Libretto by: Jules-Henri de Saint-Georges and Joseph Mazilier (version by Anna-Marie Holmes)

<Cast>
Erina Takahashi -- Medora
Katja Khaniukova -- Gulnare
Yonah Acosta -- Conrad
Ken Saruhashi -- Lankendem
Cesar Corrales -- Ali


初演が1856年でその後いろんな人が手を入れ、曲も追加されたりしている。
手を入れたにもかかわらず、なのか、入れすぎた結果なのかわからないが、ストーリーはないようなもの。数年前に観たボリショイ版にも増して脈絡がない感じがする。
海賊の首領コンラッドがギリシアの娘メドーラに惚れ、彼女がトルコのパシャに売られちゃったり、すったもんだするものの、取り返してめでたしめでたし。
最後に船沈むけど、二人は助かるからハッピーなの。
なんとも・・・いいんです、華やかな踊りが見られれば。

主役は高橋絵里奈とヨナ・アコスタ。カルロスの甥っ子ですね。上手いが、おじさんのカリスマ性はまだないかも。高橋さんはリード・プリンシパルの技量を見せつけて安定していた。
他に奴隷商人のランケデムを猿橋賢が踊りーーサルハシ・ケン、かっこいい名前ですね。ご先祖さまはニンジャですか?ーー3人のオダリスクが全員日本人だった。
イングリッシュ・ナショナル・バレエのわりに、あまりイギリス人が見当たらなかったりする。

さて、20歳になったかならないか、まだジュニア・ソロイストのコラレスが、コンラッドの忠臣(=身分は奴隷)のアリを踊る。
1幕ではコンラッドの命令で静かに働き、控え目。メドーラを助けて来いとか言われて、きっちり任務を果たす。いつも涼しい顔をして所作が優雅なのが印象的。
彼の見せ場は2幕、海賊の住む洞窟でのソロしかない。
ここ一番というところ、見事に魅せてくれた。

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複雑なジャンプが鋭く速い。身体能力とテクがあるだけでなく、若いのに堂々とした貫録まで見えて、すばらしかった。
拍手喝采が湧いた。もっと見たいと思わせてくれる。
この先も怪我をせず、長いキャリアを積んでいってほしい。

本当は忙しくてロンドンに出ている場合じゃないんだけど、無理して行った価値はあった。
またデッサン会で見たいな。誰がそのクラスに出ているかは、行ってみないとわからないんだけど(タマラ・ロホは必ずいると思う)。


リハーサル。最初に跳ぶ黄色いシャツの人がセザールくん:



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ロイヤルバレエ「くるみ割り人形」@シネマ
181215-1
Lauren Cuthbertson

クリスマスといえばチャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」。
今年はいいかな・・・なんて思っていても、シーズンが始まると、やっぱりどこかで見ないと気が済まない。ロイヤルバレエ版を気軽に映画館で鑑賞。

「The Nutcracker」、原題のロシア語は『Щелкунчик』。

Choreographer: Peter Wright
after Lev Ivanov
Music: Pyotr Il’yich Tchaikovsky
Original scenario: Marius Petipa
Production and scenario: Peter Wright

<Dancers>
The Sugar Plum Fairy --  Lauren Cuthbertson
The Prince -- Nehemiah Kish (怪我のMatthew Goldingに代って)
Herr Drosselmeyer -- Gary Avis
Clara -- Francesca Hayward
Hans-Peter/The Nutcracker -- Alexander Campbell
Harlequin -- Fernando Montaño
Columbine -- Elizabeth Harrod
Soldier -- James Hay
Vivandière -- Fumi Kaneko

181215-2

クララとくるみ割り君、フレッシュなコンビ。ファースト・ソロイストのフランチェスカ・ヘイワードはイギリス人として今後が期待されている。たいへんキュート。

もちろん元はロシアものなんですが、ホフマン原作だから舞台はドイツ。でもロイヤルだと何となくヴィクトリア朝っぽく見えるのが面白い。

クリスマスのお祭り気分でセットも衣装も思い切り豪華、憂いのない華やかな舞台が繰り広げられる。手品規模のマジックから、空中に飛ばされるクララの弟、巨大化するクリスマスツリーなどなど、イリュージョン満載。ミスは許されず、舞台裏は大変だ。
スタッフの尽力のお陰で、見ている方はリラックスして物語に乗っていけばいいわけです。

金平糖の精と王子のペアは、カスバートソンに、マシューの怪我で急きょネマイア・キッシュが組んだ。誰も指摘しないけど彼の顔ってニコラス・ケイジの傾向じゃないですかね・・・関係ないっすね・・・踊りは柔軟で好きです。

カスバートソンは妖精というよりあくまでも人間らしいエレガントなプリンセス。最後の方ちょっとお疲れだったかな。優雅に見える踊りが最もハードなんですよね。

幕間にダーシー・バッセルがダンサーにインタビューしたり(舞台で重要な役を担う子供たち=ロイヤルバレエ学校の生徒たちが可愛い)、映画館用のおまけ映像が楽しめる。
世界で中継を見ている人たちのツイッターも流れ、イギリスの田舎からヨーロッパまで、いろんな場所からの感想がリアルタイムで入って来るのも面白い。

帰りも楽だし、映画館鑑賞は便利。とはいえロンドンでリアルに観る体験にはやはりかなわない。来年、特に「フランケンシュタイン」はぜひ現場で見たいと思ってます。


トレイラー:



もうひとつ、長めですが公開リハーサル。
42分過ぎからの金子ふみさんのお人形がシャープでお気に入り。



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